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小川洋子『人質の朗読会』

●小川洋子『人質の朗読会』

 海外旅行中(南米のようだ)の日本人一行8名を乗せたバスがゲリラに襲われ拉致される。事件後に拉致現場を盗聴したテープが公開される。そのテープでは拉致された8名がそれぞれの思いでを語っていた。事件の結末については、ここでは触れません。

 拉致された8名は、それぞれの想い出を物語として書き、それを毎晩朗読しあった。それを短編仕立てにしたのが本書なんだけど、拉致されている状態と拉致 されている8名の短編の内容には全くと言って良いほど関連はなく、なので拉致という前振りがなくとも読める短編集なのです。が、、、どうなんだろ。

 小川洋子らしい透明感のある文体で、それぞれの物語がすっきりときれいだ。辛かったことや後悔そして日常からのちょっとした逃避などが書かれているけど、それらがドキドキ感をもって語られる ことで、というか今まで生きてきた中でのちょっとドキドキした事を想い出して語っているので、こっちもつい引き込まれ、う~んそれはしかたないよ、とか成る程ね、とか親近感をもって読んでしまう。読ませてしまう小川洋子が巧いんだけど。

 一編一編はどれもいい物語だ。最後まで読んでみて、別に拉致された状況でなくとも、普通の短編集でもよかったように思う。どうなんだろ?

 最後の一編「ハキリアリ」は、拉致事件が起きた国の解決に当たった特殊部隊通信班員による後日談であり、少年時代に初めて日本人に出会った時のことを語っている。ハキリアリとは蟻の名前だった。ここで登場する日本人は昆虫学者だろうか?3人組で現れ、少年とその家族にハキリアリのことを楽しそうに熱心に教えてくれる。

 最後のこの一編のために、ゲリラによる拉致という設定が必要だったのだろうか?どうなんだろ?短編集として一編一編とても良かったので、やはりこの設定に戸惑う。
人質の朗読会/小川 洋子
¥1,470
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ふちがみとふなと『6がつのうた』

●ふちがみとふなと『6がつのうた』

 ふちがみとふなとの最新アルバム。録音は盛岡、仙台が1月、いわきと小名浜が7月。つまり3.11の震災を挟んで東北の町で行われている。録音された場所も、それぞれライヴでお世話になったお店や教会のようだ。だからといって、このアルバムはことさら震災への思いを歌ってはいない。いつものふちふなさんがいる。それでも内省的な静かな歌が、いつもより印象的だ。

 ♪ かたちのない気持ち 言葉に変えてみる 好きと思った時 少し空が晴れた ~「立春」 少年のようなきれいな歌声で純子さんが歌う。純子さんの歌声は、日本中どこにもない素敵な歌声だと思う。そして不思議な歌声だと思う。この歌声は、語り部になりうる声だと思う。わたしたちの日常のあれこれを、さっと掬い上げて「気が付いてなかったでしょ?」と、そっと知らせてくれる声だと思う。まるで(高田)渡さんのように。

 船戸さんはいつもそっと傍らにいて、そっと素敵な曲を差し出し、そっとコーラスして、そして、そっとベースを添える。こんなにも、そっといることがサマになってるひとはいないと思う。

 ふちがみとふなとの歌は、会いたくなる歌で、そしてもちろん、会いたくなるふちふなさんなのだ。

音盤ながし
ふちがみとふなと『6がつのうた』はここで買えます。
メタ・カンパニー



青山陽一『ブルーズ・フォー・トマト』

●青山陽一『ブルーズ・フォー・トマト』

 青山陽一の新作にはバンド感が溢れてるなあ。スライド・ギターが多用されてるのも本作の特色。前からギターの上手いシンガーだと思っていたけど、随所にセンスのいいプレイが顔を出し、ギタリストとしての評価が高いのも頷けるアルバムだ。

 メトロトロン・レコードから登場した頃のホームメイドな多重録音のイメージが未だに強いのは、やはり俺の不勉強のせいだね。もうあれから20年くらい経ってるわけで、この世界でも、もう中堅といえるシンガー・ソングライターなんだよね。

 スティーヴ・ウインウッドを敬愛してるだけあって、ソウルやブルースの取り入れ方に誠実さを感じさせる。見た目からも誠実さが伺えるのもウインウッドに似ているし(笑)去年ウインウッドの公式サイトで開催された「can't find my way home」カバー・コンテストで2位になったことは、誰よりも本人が一番嬉しがっていたことだしね。それをバンドで録音し直したヴァージョンが本作に収録されていて、これがまたかっこいい。

 バンドはthe BM'sと名乗り、伊藤隆博(kbds)、中原由貴(ds)、千ヶ崎学(b)、そして青山のギターとヴォーカルが加わる。よくわかり合ったメンバーによる、息のあった演奏が爽快で、これはやはり生で聴いてみたくなるバンドであり音楽だ。

ブルーズ・フォー・トマト/青山陽一
¥2,625
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樋口明雄『紅の匣子槍(モーゼル)1 弾頭』

 11月23日、昨日までに家と家の周りの雪囲い、そして消雪ホースの設置など、冬への備えはほぼ整い、あとは物干しテラスの防雪ネットを張るだけ。

●樋口明雄『紅の匣子槍(モーゼル)1 弾頭』上下巻
 

 久しぶりの冒険活劇小説。面白かった!先ずモーゼルってのがいい。プラモデルで作った想い出のモーゼル軍用拳銃。ワルサー、ルガーと並ぶドイツの名銃だよね。詳しいわけじゃないけど。


 モーゼルときて次は馬賊。馬賊で満州、そして伊達順之助だ。伊達政宗の末裔で実在の人物が重要な役回りで登場しているのでより面白い。

 舞台は満州事変後の満州そして侵攻前夜の熱河。主人公紫火は”仏の子(フーズ)”と呼ばれる女馬賊だ。女馬賊といってもまだ少女なんだけど、その乗馬と拳銃さばきは天才的。そこで、同じく全満州に拳銃の腕前で名を轟かせていた伊達順之助との馬上の一騎打ちが始まるわけだ。なんか、北方水滸伝を思い起こさせるリアルでスリリングなシーン印象に残る。


 僕がまだ小学生低学年の頃、TV番組でアメリカの西部劇が多く放映されていた。「ララミー牧場」「ライフルメン」とか。だからウエスタン映画より先に西部劇ってのが刷り込まれてるんだよね。馬に乗りながら拳銃をぶっ放す。早撃ちを競う。酒場での殴り合い。真昼の決闘。などなど。そしてそんなストーリーを日本に置き換えるのが難しいので、冒険作家達は海外へ日本人を放り出すか、かつての満州を舞台にすることがよくある。戦前の満州を真面目に考えるのは別の本や場所にしといて、ここではあくまでもエンタメ小説として楽しめばよし。

 マカロニウエスタンと水滸伝、その両方の面白さを兼ねそなえたこの”
紅の匣子槍シリーズ”、続編がとても楽しみです。
紅の匣子槍Ⅰ頭弾(上) (双葉文庫)/樋口 明雄
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紅の匣子槍Ⅰ頭弾(下) (双葉文庫)/樋口 明雄
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浜田真理子『ひそやかなうた会2011』

ライヴ●浜田真理子『ひそやかなうた会2011』
     11月18日 新潟市ジョイア・ミーア

 ♪ 別れの前に 抱きしめた 小さな肩よ ああ 新潟は新潟は 面影の街 ~ 行ってきました真理子さんの新潟初ライヴ。会場は新潟市の繁華街にある洒落たレストラン、ジョイア・ミーア。もちろんお酒を味わいながらの嬉しいライヴでした。

 会場に入り、先ず12月10日十日町公演の打ち合わせもあるのでマネージャーの市川さんに挨拶。そこで今回の主催者佐藤哲さんを紹介されました。佐藤さんは仙台を中心に大きなコンサートを手がけるプロモーターで、今回のみちのく~新潟ツアーを、自らの車を運転しながら真理子さん・市川さんと同伴とのこと。真理子さんの歌に惚れ込み、宣伝用無料CD「浜田真理子おみあいCD」を制作し、関係各所に配っているという程、ハマダ愛に満ちた佐藤さんでありました。

 ハマダ愛に満ちたと言えば、わざわざ遠方より駆けつける皆さんもおりまして、大阪からゴッチさん(赤い人)、東京からふるさん、三条のナゴヤさん、もちろん僕も遠方組ですが。みなさん2002年シアターコクーン以来お馴染みのハマダ愛に溢れた方々なのです。

 さてこの夜のプログラムはこんなでした。

第一部
 ひそやかなうた
 のこされし者のうた
 水の都に雨が降る
 ミシン
 I'm So Lonesome I Could Cry
 Honeysuckle Rose
  ~わたしの好きなもの
 あなたへ
 
第二部
 The Crow
 これ以上
 失恋ブルース
  ~Baby Won't you Please Come Home
 骨董屋
 遠い場所から
 夜明けのうた
 わたしたちのうた
 流転
 
アンコール
 1本の鉛筆
 新潟ブルース
 
 オリジナル曲の中で、ライヴで初めて聴いた曲は「ミシン」「骨董屋」「遠い場所から」の3曲。
「ミシン」「骨董屋」はブルージーなラブソングで、「遠い場所から」は3.11以降を思わせる祈りの歌という感じを受けました。こうした素敵な新曲を聴かされると、早く新しいアルバムを聴きたいと思い、リリースが待ち遠しいですね。

  「わたしの好きなもの」は 佐良直美のヒット曲だけど、改めて楽曲の良さを思い知り、昭和の歌謡曲のクオリティーの高さを感じました。ジャズ・ソングも得意とする真理子さんならではの小粋な感じが良かった。ハンク・ウイリアムスの名曲「I'm So Lonesome I Could Cry」を聴くのは2002年のコクーン以来相変わらずの、心に沁みる歌唱でした。変わらないといえば「のこされし者のうた」はやはり凄い曲だと改めて実感。この曲を歌う時の真理子さんの歌唱は、やはり絶品でした。

 「1本の鉛筆」は美空ひばりさんも歌っていた
松山善三作詞
、佐藤勝作曲の反戦歌で、♪1本の鉛筆

があれば 私は あなたへの愛を書く  
1本の鉛筆があれば 戦争はいやだと 私は書く ~ と歌われる清冽な歌です。こうした静かな反戦の歌は、ずっと歌い継がれなければならないのだ。と聴きながら切実に感じ入りました。

 そしてアンコール最後に歌われたのが「新潟ブルース」。美川憲一が歌った僕も大好きな曲です。この新潟公演のためにわざわざ用意してきた曲だと思われ、そんな真理子さんの好意がほんと嬉しかった。そしてこうしたムード歌謡を歌う真理子さんがとても素敵なんですね。ほんとみんなに聴かせたかったよ(笑)


 終演後は古町の夜(笑)。ハマダ愛に満ちた皆さんで打ち上げへ繰り出し午前様。真理子さん、市川さん、佐藤さん、そして皆様どうもありがとうございました。


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聖歌~はじまりの日/浜田真理子
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