中央線で読む新書 -48ページ目

第五の権力 アメリカのシンクタンク

「Eポリティクス」の著者による。
ネオコンの本丸はPNAC。1997年設立のシンクタンク。設立趣意書には
チェイニー、ラムズフェルドの名前が並ぶ。(建前上はシンクタンクは中立)。
もともとネオコンはユダヤ系アメリカ人の知識層を軸に、ベトナム反戦運動の
反動保守として60年代後半に登場。

反対に民主党支持のシンクタンク一般に支持する)の新しい波に、ジョージ・
ソロスが出資するCAP(アメリカ進歩研究センター)がある。ソロスが愛する
オープンソサエティにブッシュの敵と味方を峻別するやり方が反するとの立場から。
市場原理主義者のソロスが市場原理を重視する共和党を批判する構図である。

#本書はブッシュの一期目に出版されたものである

【つまみ読みにGOOD】 2004年
横江 公美
第五の権力 アメリカのシンクタンク

教養主義の没落

現代新書の奇書「立志・苦学・出世」の著者による。
「立志~」は受験文化だが、本書は学生文化が題材となっている。

共産主義はなにより前衛である。この点を現在は忘れ去れている。
エリートによる民衆の指導がその本質である。
なぜ大学が共産主義の土壌となりえたのかは、他でもなく大学が
エリートと結びついていたからに他ならない。

さて本書。まず古い教養主義と新しい教養主義としての共産主義。
つづいて戦後。石原慎太郎から見る戦後のねじれ。当人が通った
一橋大学(ロシア的)と弟の通った慶応大学(アメリカ的)、大学寮
(ロシア的)と実家のある湘南(アメリカ的)の対比が面白い。ロシア
的環境に身を置いたが故に「太陽の季節」は生まれたのである。

学生文化、岩波書店、文化土壌、大学の大衆化と続く。

【話のネタ本にGOOD】 2003年
竹内 洋
教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化

日本<<島旅>>紀行

34の島々の紀行文。
これよりは「島に行ってうまい魚を食う本 」野村祐三の方が
目的がはっきりしている分いい。

【他によいものがある】 2005年
斎藤 潤
日本《島旅》紀行

時間の止まった家

猫屋敷やゴミ屋敷などがワイドショウで話題になる度に、行政は
なにをしているのかとコメンテイターが言う。

本書は行政の側から「時間の止まった家」を訪問し、説得し、
解決にあった女性医師(1972年生まれ)の記録である。

ホームレスのケーススタディはよくあるが、変な方向に
突っ走った老人のケーススタディは珍しいこともあって、
一気に読める。

この書物に収録された事例を前にすると、今日、低年齢化した
純文学などは実に軽い。一方で、ゴミ屋敷にシラミにまみれながら
暮らす老人に引けを取らない私小説の大家・川崎長太郎や葛西
善蔵は並はずれた困りものであると改めて想う。

【通勤用にGOOD】 2005年
関 なおみ
時間の止まった家 「要介護」の現場から

不思議の国サウジアラビア

国全体をイスラムの聖地と見なし、他の宗教活動を許さなず、
(宗教警察がバレンタインまで取り締まる)、出入国が厳しくて
(イスラエルの入国歴があるとダメ)、観光ヴィザが存在すらしない。
そんなサウジアラビアを、逆にテーマパークとして愉しんだ著者の書。
読みやすくて、解説も適宜しっかりと入り、楽しく読める。

著者の洞察で興味深いのが、サウジのフランスへの接近。
いかに人権を抑圧する国家であろうとも、石油産油国であるために
米国はサウジを容認してきたことはよく聞く話である。
しかし、サウジはイラン革命・湾岸戦争を経て、フランスにシフトした。
フランスが武器輸出国であることと非アングロサクソン国であることより。
(フランスの武器輸出先の第1位はサウジ。また湾岸戦争時、ミッテランは
決して「神の名において」などとくちにしなかった)。
またこの地域はナポレオンの遠征以降、フランス風の枠組みを取り入れ
てきた経緯もある。

面白いのが、シンガポール同様にメイドをフィリピン人で賄っている。
理由がカトリックが多いために、日に5度ある祈りの時間を考慮せずに
済むためという。

また本書は9.11の直前に出版されているのだが、宗教警察による
取締が厳しくなったのは、湾岸戦争で米軍の女性が肌を露出した格好で
ガムを噛みながら闊歩したために、引き締めにまわったためと、長年住む
フランス人から聞いたとある。
サウジアラビア出身のビンラディンが反米にまわった理由が、米軍の駐在で
あることは広く知られるが、それは決してこじつけの動機付けではないのである。

【通勤用にGOOD】 2001年
竹下 節子
不思議の国サウジアラビア―パラドクス・パラダイス

頭脳国家シンガポール

10年くらい前に読んだのだが、先日シンガポールに行ったので
再度読む。(日本にならって取り入れられたという交番は滞在中ただの
一度も見かけなかった。子供の眼鏡率が異常に高いのが目についた)

人間の行動の80%は遺伝で決まり、残り20%が教育で決まる、
リー・クアンユー(客人出身)の信念である。
フィリピンからメイドとして労働力を得ているが、そのフィリピン人
メイドも大卒である。
革新官僚・岸信介とリーを比べる評論でもあれば面白かろうか。

【つまみ読み程度なら】 1992年
田村 慶子
「頭脳国家」シンガポール―超管理の彼方に

教養としてのキリスト教

読み物として面白い。

キリスト教関連で読んできたものを一端整理する。
岩波新書「多神教と一神教 」 文春新書「ローマ教皇とナチス
現代新書「ユダヤ人 」「原理主義とは何か 」「聖書vs世界史
ユダヤ人とローマ帝国 」「一神教の誕生 」「聖書の起源
キリスト教と日本人 」。

【時間潰しにGOOD】 1965年
村松 剛
教養としてのキリスト教

ヒトラーとユダヤ人

ウィーン時代は月並みな反ユダヤ主義者であった
・取引先の画商にユダヤ人が多くいた。
・男子独身寮にもユダヤ人の友人が複数いた。
・母親の主治医がユダヤ人で関係は悪くなかった。

ミュンヘン時代以降は月並みなヒトラー本である。

【他によいものがある】 1995年

大沢 武男
ヒトラーとユダヤ人

ユダヤ人とドイツ

ドイツにて穀物が不出来であったりペストが流行すると、
魔女狩りやユダヤ人狩りが行われたことは講談社現代新書
魔女とカルトのドイツ史 」に詳しい。

ではなぜドイツでユダヤ人狩りが断続的に起き続けたのか。
本書では宗教的背景から社会的背景とそれから派生する
ドイツの後進性を解説。

なお、1905年からワイマール時代にかけてノーベル賞を受賞した
ドイツ人は40名、そのうち11人がユダヤ人である。当時の人口比では
1%程度のユダヤ人が25%を占めている。

【つまみ読みにGOOD】 1991年

大澤武雄
ユダヤ人とドイツ

テクニカル分析入門

アマゾンでやたら世評判がいいので読む。
これが役に立つとは思えない。
新井邦宏の「投資の王道」など、いいものがいくらでもある。

月別のアノマリー(*)を扱っているが、それぞれが日本・米国
どっちの市場に出るかが書かれていない。決算時期と税制の違いで
売りが集まる時期は当然異なるのだが。
騰落レシオを取り上げているが、騰落レシオのチャートとセットで
アノマリーを説明するくらいのことはした方がよかろう。

アノマリー(*)
経験上観察できる株価の習性。
たとえば10月は1929年や1987年の歴史的暴落が起きた月で
米国では安値を付けやすい。
ミューチュアル・ファンドが節税のために売る時期であり、

イスラム教のラマダンと重なりもする。
 
【読むだけ無駄】 2005年

田中 勝博
テクニカル分析入門―株の売り時、買い時を知る