中央線で読む新書 -47ページ目

三島由紀夫の二二六事件

北一輝と三島由紀夫と昭和天皇の緊張関係を226事件を中心に論じた
新書で、 やたらとウヨクサヨクとレッテルを貼るバカこそ読むべき良書。

日本人の精神を天皇教的な神秘主義に埋没せしめてしまおうとする
ファシストたちの中にあって、北は終始天皇機関説を執って動かず、
けっして天皇教に転向はしなかった。が、しかも彼自身は法華教の
信仰に身心をゆだね、カリスマ的予言者として終わった。
(村上一郎「北一輝論」1970年)

この北一輝は明治維新を王政復古でなく民主主義ととらえた。
そのため「言論の自由」「思想の独立」を弾圧する「国体」を批判した。

そして北が天皇機関説をとったことは広く知られるが、北が「日本改造
法案大綱」で主張したことの「七割方が皮肉にも実現された」のが
日本国憲法であると三島由紀夫は指摘するにいたる。

例えば北は天皇を「天皇ハ国民ノ総代表タリ」としたが、現行憲法の
第一条と同じである。

【通勤用にGOOD】 2005年
松本 健一
三島由紀夫の二・二六事件

世界を動かす石油戦略

石油をめぐる俗説(米国は石油利権のためにイラク戦争を仕掛けた)を
打ち破るところから本書は始まる。

・米国一次エネルギー市場における中東原油のシェアは2%程度。
・石油権益は70年代以降の資源ナショナリズムの興隆によって
 ほとんどが国有化されている。
・石油は国際商品であり、世界単一の市場を形成している。

以上により、米国軍がイラクに攻め込むのは石油権益を得るためではない。
米国のねらいは石油供給の安定にあるに過ぎない。(原油価格と日本株とが
逆相関の関係-原油価格が下がれば日本株が上がる-にあることを思い
出せば簡単な理屈である)

続いて面白いのが中国。中国が資源をかき集めていることは今日頻繁に
耳目を集める。その中国は石炭に長らく依存していたために石油危機を
経験して居らず、備蓄石油を保有しないため、次に中東発の石油危機が
起きた際に、中国が懸念材料と成りうる。

第一次第二次石油ショックは、日本の商社がパニックを起こし、OPECに
とんでもない高額なオファーを出したために、余計に価格が上がり、ショックを
大きくしたことは外国では常識とのこと。

なぜ飢饉は都市でなく農村で発生するのか。都市は多チャンネルの流通で
食料を得るために価格の上昇に耐えさえすればすむためとのことで、それを
引き合いにポートフォリオが石油に関しても通用することを知る。(171-173)

【書物としてGOOD】 2003年
石井 彰, 藤 和彦
世界を動かす石油戦略

マクロ経済学を学ぶ

岩田先生によるマクロ経済学の解説。
同様に「経済学を学ぶ」(ちくま新書)がミクロ経済学の解説、
日本経済を学ぶ 」(ちくま新書)が低成長に甘んじる日本経済の解説、
「金融入門」(岩波新書)「国際金融入門」(岩波新書)もある。

古本屋で100円であれば是非とも買い求めておきたい新書。
折に触れて読み返したい。

【つまみ読みにGOOD】 1996年
岩田 規久男
マクロ経済学を学ぶ

明治大正翻訳ワンダーランド

翻訳家による明治大正時代に後々まで読み継がれる名作の
翻訳秘話といったところ。それを通じての翻訳の妙味を教えてくれる。

「コンクラーベ」を日本人が耳にすると、「根比べ」しか思いつかない不自由を例に
著者は「言葉が違うというのは、なんと豊かな不自由であるか」と書いている。
そこに翻訳の妙があろうか。

荷風訳の「女優ナヽ」は「をんなやくしゃ なな」と読ませると始めて知るのだが、
これも翻訳の妙味であろう。

「フランダースの犬」が日高柿軒の訳で日本にお目見えした際に、ネロが「清」、
パトラッシュが「斑」であった。こうした例は少なくなかったとのこと。

【通勤用にGOOD】 2005年
鴻巣 友季子
明治大正 翻訳ワンダーランド

北朝鮮報道

北朝鮮をどう報じてきたのかを検証。
帰国運動・礼賛キャンペーン・議員訪朝団・テロと拉致と章を割って
検証していく。

おおむね稲垣武の「『悪魔払い』の戦後史 」とかぶる。

【他によいものがある】 2004年
川上 和久
北朝鮮報道

韓国の軍隊

副題に「徴兵制は社会に何をもたらしているか」。

【読むだけ無駄】 2004年
尹 載善
韓国の軍隊―徴兵制は社会に何をもたらしているか

韓国人は、こう考えている

黒田勝弘「韓国人の歴史観 」(文春新書)と合わせて読むと
いいかも知れないが、黒田のものほど面白くはない。

こちらは現代の韓国人の米国・中国・北朝鮮・日本について
どう考えているのか。

面白いのが北朝鮮との宥和である。「太陽政策は北韓を陽光に
あてて、北韓が来ている古い冷戦のコートを脱がそうと始めた策で
あるが、実際は陽光にあてられたのは韓国社会の対北警戒心だと
いえる」(玄仁沢高麗大学教授 P93)、その一方で中央日報の
調査では統一しなければならないとした人の推移は年々減少し、
98年には82.5%であったのが03年には59.0%と成っている。
(P169)

【話のネタ本にGOOD】 2004年
小針 進
韓国人は、こう考えている

国富消失

内需拡大を一向にはかろうとしない小泉の政策批判。
2003年10月の本だが、銀行が立ち直ったのと量的緩和を
解除した以外は現在と変わらない。

構造改革により供給面から内需を刺激する、これは橋本政権
時に経済審議会に出した報告書(これでは98-03年に年平均
2.3%の成長を構造改革や生産性の向上で見込んでいる)も
小泉・竹中の構造改革路線も同じである。

こうした達成不能な成長率をバックに国債を発行し、一方では
一向に内需が拡大せずに税収が増えずに増税にいたる訳だが。

【通勤用にGOOD】 2003年
葉山 元
国富消失

日本の地下経済

ウクライナの地下経済のサイズがすごい。
名目GDP比が128%である。(1997年)

地下経済は経済統計に反映されないが、
無視も出来ない。実体のある経済活動で
あるため、それを省いた景気対策を行って
しまい、有用性が低くなるためである。

【わざわざ読むほどではない】 講談社+α新書 2002年
門倉 貴史
日本の地下経済―脱税・賄賂・売春・麻薬

はじめての部落差別

部落出身のフリーライターによる。
興信所への聞き取りなど、目新しいものが多々ある。
たいへん面白く読める。

暴力団員の多くが部落出身ということは広く言われることである。
本書によると、かつては部落出身と名乗り出ると失業保険の
受給期間が長くなった。その際に、なんの審査もなくただの自己申告
であったという。つまり単に暴力団員の多くが、生活保護などの受給を
有利にするために自称しているだけの可能性が高いのではないか。

【通勤用にGOOD】 2005年
角岡 伸彦
はじめての部落問題