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八重山料理。実食。

 

車に乗り込むとすぐ、運転席の金城支店長が振り返って言った。
「お昼は、八重山料理を召し上がっていただきます」

 


 

「八重山料理ですか……」と俺は思わず口に出した。




目新しさは正直ないなぁ。

 

一通り、いただいてみる。


「旨い。本当においしいですね」と俺が言うと金城支店長が微笑んだ。

斬新というわけではない。むしろ、どの料理も、どこか懐かしさがにじむ不思議さ。

「正しい表現かどうか分かりませんけど。そう、全く違和感がない。むしろ、落ち着く味なんです」

「う~ん、そうなんですよ」と金城支店長が頷いた。
「おそらく、石垣島には長年、日本各地から観光客が訪れてきました。その影響で、知らず知らずのうちに、料理の味付けも本土寄りになっていったのかもしれませんね」
「なるほど。そういうことですか……」
言われてみれば、なるほど腑に落ちる。旅先で“地元の味”として提供されるものが、実は観光客の舌に合わせて進化してきた——そんな事情が、この島の料理にもあるのかもしれない。

「いやぁ、でも本当においしいですよ」
それは本心だった。味の奥に流れる、この島の時間と空気が、確かに俺には感じられた。

 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。

戦後80年。市長の想い

 

「戦後80年。市長として、どのような想いをお持ちですか?」と千﨑部長が問う。

 


「今年は太平洋戦争終結からちょうど80年。私たちが享受している平和は、多くの犠牲の上に築かれたものです。そのことを忘れてはならない。石垣島から世界に向けて、恒久平和を訴え続ける。それが、我々に課せられた責任だと考えています」

「国防や有事への備えについては?」

「もちろん、平和を願う一方で、万一の事態に備えるのも行政の責務です。感情論だけでは住民は守れませんから」

重く、そして真っ直ぐな言葉だった。

「地域産業の振興にも力を入れておられるようですね」

「ええ。農業では『チャレンジ畑人(はるさー)事業』を立ち上げ、新たな作物――たとえばアボカドやドリアンといった高付加価値作物の栽培を支援しています。若手農家への後押しにもなっていますよ」

「観光とインフラ面の展望は?」

「2025年度にはクルーズターミナルが稼働予定です。並行して雨水対策や無電柱化も進めています。住みよい石垣を築くには、どれも欠かせない布石です」

「教育と医療については?」

「子どもたちの未来を守るためには、教育の環境整備が必要です。英語力を伸ばすため、外国語支援員の増員とAI教材『World Classroom』の導入を進めました。医療では、島外通院を強いられる患者さんの負担を軽減すべく、通院費助成制度を拡充しています。臓器移植や希少疾患の子どもたちにも、確実に支援が届くようにしたいのです」

市長の視線は遠くを見据えていた。
その先に描かれているのは、理想論ではなく、具体的で現実的な“未来の石垣島”だった。

わずか15分の面談だったが、国境を抱える離島のトップが背負う覚悟と責任感。それが、ひしひしと伝わってきた。

俺は、ただ感心するばかりだった。

 

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これまでも、これからも…。仲間たちとK-1

XSRの男が、負けじと前に出てきた。

「山さん、俺のことも……覚えてるよね?」



またもや難題だ。
なんとなく、顔に見覚えはあるが、名前が出てこない。
俺より少し若い――けれど確かに、どこかで……。

「YAMAHAに乗ってるけど、SEED(ホンダ系)を今でも着ているよ。当時はNSR250Rだったからね」

その一言で、記憶の扉がパチンと開いた。

「……わかった、イトケン。伊藤 健一、だな」

「ピンポーン!」

イトケンは、嬉しそうに笑った。

「お前ら、ずっとK-1走ってたのかよ?」

俺がそう聞くと、シータが肩をすくめた。

「まあな。仕事だ家庭だ、抜けてた時期は長かったけどさ」

「俺もです」とイトケン。

時間は流れても、バイクはずっと、心のどこかに残っていたのだ。

「実はな、森から聞いてたんだよ」

シータがニヤニヤしながら言った。

「最近、ネジが何本か抜けた中年ライダーが、峠をせっせと走ってるってな。しかも俺(R1)を目の敵にしてるらしいって」

俺は思わず、森の方を振り返った。

「森~、お前、話を盛りすぎだろ!」

 



「だってさ、山ちゃんバカだから、そっちの方が面白くなりそうだったんだもん」

わざとらしく怯えたポーズを取る森に、吹き出しそうになりながら怒鳴る。

「アホか、お前は!」

全員が笑った。
自然と、あの頃の空気が戻ってくる――そんな気がした。

シータが一歩前に出て、静かに言った。

「……よーし。儀式は終わったな」

そして、力強く続ける。

「俺たちは、仲間だ。K-1はこの50年間、いつでも、誰でも、初心者でも、楽しく走れるコースであり続けてる」

「安全運転、無理は禁物。……山ちゃん、そこんとこ、ヨロシクな」

「了解!」

俺はまっすぐ彼の目を見て、力強く返した。

天気のいい日曜日。

K-1の風は、まるであのバブルの時代のように、心を軽くしてくれる。

俺は今、あの頃に戻ったような――
なんとも言えない、幸福感と高揚感に包まれていた。

 

 

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2026年夏公開予定です。

 

山中市長が静かに口を開いた。

「実は、離島をテーマにした映画を撮る計画があるんですよ。門田 隆将さんのノンフィクションが原作です」

「門田さんといえば、映画『Fukushima50』の原作を書かれた方ですよね。私も観ました。非常に印象深い作品でした」と俺は思わず口をはさんだ。

 

門田 隆将 氏


「ありがとうございます。その門田氏の新作を、石垣市が中心となって映画化しようとしているんです。歴史的、文化的にも意義のある取り組みになると考えています。ヒューマンストーリーとして共感を呼び、全国規模で公開したい」

市長の目には確かな情熱が宿っていた。

「今年の秋にクランクイン、来年夏の公開を目指しています。製作費はおよそ10億円。そのうち3億円ほどをクラウドファンディングでまかないたいと思っているんです」

「完成の暁には、千﨑部長、そして山本副部長にもぜひご覧いただきたい。大阪でのプロモーション、ぜひよろしくお願いしますよ」

山中市長は語気を強めた。

 

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θ(シータ)?

R1の男が、低い声でぼそっと言った。

「下手なアラ還ライダーは、最高速度制限も60キロにする!」

 



「……はあ?」

一瞬、何の話か分からず、俺は困惑した。

するとR1の男が、ズイッと俺に詰め寄ってきた。
その迫力に思わず身構えると――

「山ちゃーん、俺のこと忘れたの? 薄情だねぇ〜」

……ん?

今度はトーンを落として、まるで旧友に話しかけるような口ぶり。

だが、俺にはまったく見当がつかなかった。

「36年ぶりか……干支が3周しちゃったもんな」

ますます分からない。

「昔さ、お前のSUZUKI WOLF 250と、俺のTZR250の後方排気で何度も何度も追いかけっこしたろ?」

その瞬間――


「……思い出した! お前、高野山大学の同級生、“θ(シータ)”か!!」

「ようやく気づいたか!」

R1――いや、かつての“シータ”は、満面の笑みを浮かべていた。

※補足しよう。
“θ(シータ)”というあだ名は、大学時代のある出来事から生まれた。

数学の授業中、彼は居眠りしていた。
突然、教授に名を呼ばれて飛び起き、「θ(シータ)です!」と寝ぼけた返答。
教室中が大爆笑に包まれ、それ以来、彼のあだ名は“シータ”になった。

バイクに関しては筋金入りで、当時から「俺、絶対白バイ隊員になる!」と宣言していた。
そして本当に、交通機動隊で白バイに乗る男になったと聞いていた。

「警察はもう退職したのか?」

俺が尋ねると、彼は照れくさそうに頭をかいた。

 



「おう。今は安全協会のおじちゃんだぜ」

「そりゃ……お似合いだな」

俺が苦笑交じりに言うと、その場にいた全員が、どっと笑った。

 

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山中市長面談!(もちろん、フィクションです)


まだ、新築の香りがする小会議室で、我々三人は静かに待っていた。

やがて、バタバタと足音が近づいてきたかと思うと、山中市長と、市職員と思しき男性が慌ただしく入室してきた。

(市長はかりゆし姿だが、もう一人はスーツ姿だ)

 

 


名刺交換を済ませ、椅子に腰を下ろすと、自然と雑談に入る。

市長と一緒に現れた男性の名刺には、「総務部 防災危機管理課長 富口 公彦」とあった。

 

「今年の3月に、沖縄県の国民保護訓練を実施したんですよ」と富口課長が語り始めた。

「具体的には、離島からの住民避難と受け入れに関する机上訓練です。令和4年から続けてまして、国と沖縄県、そして先島五市町村※が連携して、有事を想定した訓練を実施しているんです。避難先は九州・山口方面です」
※石垣市、宮古島市、与那国町、竹富町、多良間村

 

 


「そのような訓練があったとは、大阪にいるとまったく耳に入りませんでした」と俺は率直に答えた。

「まぁ、正直に言えば――」と富口課長が苦笑する。

「不謹慎な言い方ですが、九州各県の皆様も、その内容を知らないが多いかもしれませんね」

「なるほど……」

国と地方自治体、そして離島という立地の制約。そこに有事という非日常が加われば、どれほど綿密にシミュレーションしても、実際の運用には課題が残るだろう。そう感じさせる説明だった。

富口課長が手元の資料から、写真を二枚取り出して見せた。

 




「これがそのときの訓練の様子です」

 

「なるほど、これはなかなか本格的な訓練ですね」と俺は素直な感想を述べた。

 

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石垣市役所 ??

 

サトウキビ畑の脇を抜け、市街中心部へと向かう。石垣島の天気は変わりやすいという。今朝は晴れているが、午後からは雨の予報だった。

 



助手席に座った金城支店長が、ふいに後部座席を振り返らずに話し始めた。

「千﨑部長、朝一番で市役所に連絡しまして、山中市長とのアポが取れました。ただ、お忙しい方なので、面談時間は十五分とのことです」

「いやぁ、お会いできるだけで光栄です」

「市長?」思わず俺は声を上げた。

「なんで、いきなり市長に面談のアポが取れるんですか?」

「いや〜、渕上会長のお願いですから。さすがに断れませんよ」と金城支店長は苦笑いを浮かべた。

「はあ……」俺は理解が追いつかず、ため息を漏らすしかなかった。

「それと、石垣海上保安部の石橋副部長との面談も午後に予定されています。こちらも渕上会長から連絡がありました」

「副部長と、ですか。それはまたすごいですね。石垣島に来て、海上保安部を視察しない手はありませんから」と千﨑部長が言った。

車はやがて市街地に差し掛かった。窓の外に広がる街並みは、離島とは思えないほど。

ふと、視界に立派な建物が飛び込んできた。

「石垣市役所です。2021年竣工の新庁舎ですよ」

金城支店長の声に、俺は感嘆の声を漏らした。


 

「すごい……。立派な建物ですね」

 

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石垣島初上陸!


その日は急きょ、「ダブルツリーbyヒルトン那覇」に宿を取ることになった。翌朝、千﨑部長と二人で石垣島へ飛ぶ予定だ。



翌日。

 

那覇から、石垣までの所要時間は約一時間。


石垣空港に到着すると出口付近に、ひときわ存在感のある男が立っていた。

「あれ、あの方が、我々のお迎えですかね」と俺がつぶやくと、千﨑部長がその男に声をかけた。

「金城支店長、お久しぶりです」

男は穏やかに笑みを浮かべ、俺に向かって名刺を差し出す。

 



「ようこそ、石垣島へ」

名刺には「沖縄海洋銀行 八重山支店 支店長 金城義孝」と印字されていた。

「千﨑さんとお会いするのは、鹿児島の城山ホテルでのセミナー以来ですね。もう五年になりますか」

懐かしそうに金城支店長は言った。

「昨日、渕上会長からお電話をいただきましてね。日曜日ですよ、日曜。で、今朝、千﨑部長に飛行機の時間を伺った次第です」

「はあ、特別待遇、ありがとうございます」

俺は軽口を交えつつ礼を述べた。

駐車場には白い軽自動車が停められており、車のそばには若手らしき銀行員が立っていた。我々に気づくと、軽く頭を下げた。

「狭いですが、どうぞお乗りください」

そう言って金城支店長が後部ドアを開ける。俺と部長は乗り込み、車は静かに走り出した。

 

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OIST、その後。

 

講演後、レンタカーで那覇空港へ向かう準備をしていると、部長がふいに俺に声をかけてきた。

「山本副部長、明日、月曜は何か外せない仕事がありますか?」

「いえ……特には」

「そうですか。――じゃあ、一緒に石垣島へ飛びましょう」

「えっ? 今からですか?」

「別に、私一人でも構いませんけど?」

「いえいえ、せっかくですからお供します……が、何をしに行くんですか?」

「経済安全保障の現実です」

「……経済、安全保障?」

その意味がわかったのは、後日、別のところから聞いた話だった。

――天野次長の講演直後、渕上会長から千﨑部長にメールがお礼のメールが入ったが、セミナー終了直後にお礼の電話が入ったという。

 



「千﨑さん、私、借りを作るのは嫌いなの。だから、何かお礼をしたいのよ。せっかく沖縄まで来てるんだから、石垣島を視察して帰ったらどうかしら? 『海上保安庁石垣海上保安部』に電話しておくから。あと、不正を働いていた課長については、徹底的に調べ上げるよう学長に釘を刺しておいたわよ」

――そういうやり取りが、トップ同士で交わされていたらしい。

そして、俺は人生で初めて、石垣島へ飛ぶことになった。

 

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あなた…。

 

これは、あとで聞いた話になるが――
講演を終えた天野次長が講師控室へ戻ると、間もなくして、あの渕上会長が控室に現れたという。


「あなた、やるわねぇ」
会長は開口一番、そう言ったらしい。

「OBC(大阪ビジネスコンサルタンツ)辞めて、うちに来なさいよ。あなただったら、部長……いえ、役員待遇で迎えるわよ」

一瞬、場が静まり返った空気が目に浮かぶ。



「いやぁ、私、粉もんが大好きなもんで」
天野さんは軽く肩をすくめて、いつもの調子でかわしたそうだ。

だが、会長も一筋縄ではいかない。
「じゃあ、逆ワーケーションでいいじゃない? 大阪に住んで、沖縄の仕事をするの」
と、ニヤリと笑って返したという。

その場にいた大杉主任は、さぞビビったことだろう。

ちなみに、千﨑部長は渕上会長とは直接顔を合わせなかったが、携帯に一通のショートメッセージが届いていたという。

「千﨑さんのおかげで助かったわ。ありがとう」

そのメッセージを見た千﨑部長は、天野次長に短くLINEを送った。

「上出来です。大杉さんもお疲れさまでした。渕上会長からもお礼の連絡がありました」

その簡潔さが、不器用な部長らしい。

 

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