ある晴れた日曜日
6月。
梅雨の合間を縫って現れた、貴重な晴れ間。日曜日の昼下がり。
俺は和歌山県伊都郡高野町、高野山にある峠道――通称「K-1」に来ていた。
道の途中、小さな休憩所。脇には飲み物の自販機が一台。
そこに、見慣れた2台のバイクが停まっていた。
グリーンのKawasaki Ninja ZX-25R。そして、SUZUKIのモタード、DR-Z400SM。
そのそばで、ライダーたちが肩を揺らして笑っていた。
俺は静かに、2台の横に愛車――HONDA CB650Rを滑り込ませた。
「よ、山ちゃん。元気そうだな。K-3で会って以来か?」
「そうだな……言われてみれば、ちょっと久しぶりかもな」
森君だ。ZX-25Rのオーナーで、相変わらずの笑顔。

「それにしても山ちゃんのCB、だいぶ独特なスタイルになってきたな。フロントフェンダーに餃子返しみたいなのついてるし、サイドバッグもなんだかヨレヨレじゃん」
俺は苦笑いしながら、持ってきたペットボトルのお茶を一口すする。
「まあ……“普通のおじさんツーリングライダー”ってやつだからさ。森君の言う通りな」
すると、SUZUKIのライダーが俺に向かって軽く頭を下げた。
「はじめまして。竹田といいます」
年齢は……俺より若いか? けど、丸坊主のせいでよく分からない。
「この人、K-1じゃ昔からの顔役みたいなもんでさ。しかもこのモタード(SUZUKI DR-Z400SM)がとんでもなく速いんだわ」
森君が畳みかけるように言ってくる。

「へぇ、そうなんだ」
俺は肩をすくめ、お茶をもう一口。
そんなやり取りの最中、森君が声をかけてきた。
「山ちゃん。俺たち、K-1をひとっ走り行ってくるけど、どうする?」
「うーん……俺は今来たばっかだから、ちょっとゆっくりしてるよ」
そう言って、2人を見送る。
モタードがフロントフォークを大きく伸ばし、今にもウイリーしそうな勢いで加速。
そのすぐ後ろを、Ninjaが鋭く追いかけていった。
……数秒。
山には、再び静けさが戻っていた。
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