待望の増員
6月2日(月)。
出社すると、千﨑部長が俺と成瀬代理を席に呼んだ。
「待望の増員だ」
開口一番、そんな言葉が飛び出した。
「わずかではあるが、マネタイズの種もようやく芽を出し始めてる。このタイミングで一気にテコ入れしていきたい」
それはそうだ。地域振興なんて、どこも似たようなことをやってる。その中で一歩抜け出すには、今しかない――そんな部長の気合が伝わってくる。
「さて、そこでだ。この地域戦略部に、圧倒的に欠けているものは何か?」
千﨑部長の目が鋭くなる。問いかけに、成瀬代理がすぐに応じた。
「……女性の視点ですね」
「その通り!」
部長がパッと成瀬代理を指差して、まるでクイズ番組の正解発表のように声を張った。
「人事部に掛け合って、即戦力の女性管理職1名と主任調査役1名。今日から来てもらうことになった」
「どなたですか?」俺もつい身を乗り出して訊ねた。
「まあ、それは来てからのお楽しみってことで。どちらも間違いなく優秀だぞ」
珍しく上機嫌な部長。さては、よほど自信のある人材なんだろう。
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