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伝説の男 ロジャー・スミス

 メンフィス・レスリングで、ハルクとワイトが戦ったとか。此間までECWのチャンプだったワイトが、負けている場合ではないとかいうことはさておき、このショーに出ているアサシンズが気になった。一説によると、正体はファイア&フレイムだという。このファイア&フレイムがオリジナルだとするなら‥。


 フレイムは、オリジナルだとしたらロジャー・スミス。どんなサイトで詳しく調べてみようとしても分からない、謎の多きグラップラーだが、我々はいつも彼を、実力者として注目してきた。WWFやAWAをはじめ、JCPやGCWなどにも出場経験は、少なくともロジャー・スミスとしてはないので、アメリカのマニアですら、キャリアをしっかり把握していない。


 彼の名を見つけられるタイトル史は唯一、旧アライアンスNWAの、80年のテネシー/アラバマ。ここでミッドアメリカ・タイトルを、ロジャー・メイスンの名で獲っている。そしてまたAWA系のCWAが支配することになった同地で、86年、ダーティ・ローズという、アメリカンドリーム・ダスティ・ローズのニセモノギミックで、やはりミッドアメリカ・チャンプになっている。おそらくそのくらい。


 この記録だけを見ると、どうということのないローカル悪党の域だが、スミスの場合、スミスではなかった時の記録が、あまりよく解られていない。つまり、マスクマン・アサシンとしての顔。


 スーパーデストロイヤーといえば誰を思い出す?スボイラーでもあったドン・ジャーディン?或いはビルとスコットのアーウィン兄弟?マークⅡがつけば、後にサージとして一時代を築いたボブ・レムス。ではアサシンといえば?ハミルトン以外に‥。80年代前半、フロリダで猛威をを振るったアサシンズの正体は、ドイツ系の実力派ハンス・シュローダーと、日本のオリンピアン・ミスター・サイトー、そしてこの、ロジャー・スミスだったと言われている。特に、ダスティ・ローズが世界チャンプだった時にフロリダで挑戦し、ダスティをピンフォールし、悪党マスクマンなのにもかかわらず、世界王者になりかけたⅢの正体は、スミスだと。


 スミスは、若かっただろう頃からかなり老けて見え、ダスティ・ローズのパロディを出来るくらいに太ってもいたが、驚くくらいに技は切れ、電光のサンセットフリップで、83年頃のパキスタンのショーなどでは、谷津やアニマル浜口を斬って落しまくっている。日本での戦績も、猪木と藤波以外にはピンされていないはずだ。テネシー以外で素顔での実績はなく、アメリカのマニアにも往生されるスミス。しかしその隠し切れない実力は、ここ日本で、今もこうして伝説として語り継がれている。


 なかなか面白い存在のメンフィス・レスリング。ハルク次第のプロなのだろうが、我々としては、ここはひとつ伝説の実力者ロジャー・スミスの、一世一代の晴れ舞台を期待したい。つまり、ロジャー・スミスが電光のサンセットフリップで、インモータル・ハルク・ホーガンを光速のピンに処するという‥。夢を見過ぎだろうか。しかしハルクがバンプ出来るというのなら、スミスはきっとそのパフォーマンスを遂行してくれる。伝説の男ロジャー・スミスならやってくれる。


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We bet to “the gun for hire”.

 NWAが、あくまで世界の2文字をタイトルから除去することを条件に、そして出来れば、ブリスコ由来のデザインを変えたほうがいいということを付け加えた上で、新NWAチャンプ決定トーニーの開催を支持する。あれはハングリーで、実力優先主義の若い狼のためのチャンスのタイトルとのニューギミックを与えた場合、俄然面白くなる。


 今度のトーニーに顔を揃えた面々、ブライアン・ダニエルソン、ブレント・オルブライト、アアロン・アギレラ、アナーキー・チャンプ・チャド・パーム、ミスター・ミッドアトランティック・ダミエン・ウェィン、サイコシス、マシンガン・カール・アンダーソン、スクラップアイアン・アダム・ピアース、チャンス・プロフェット、ボビー・ジョ・マーシャル、これにノースアメリカン・チャンプのドル・オニキスやナショナル・チャンプのコリー・ウィリアムス、カナダのネルソン・クリードなど、質実剛健なタイプも少なくない。ワールドなどと鯱張るから乗れない。プロのスタンダードを示すエキシビジョンとして見た場合、有意義とすら映る。


 ベットするなら、ブレント・オルブライトだと思っている。御存知ガナー・スコット。SDで披露したジャックナイフロールの切れ味。当代きっての技巧派。ケガをさせた相手を気遣わなかったことでWWEを追われたと聞いているが、それを大目に見て余りあるテクニシャン振り。OVWでライヴァルだったCMパンクや、ケネディ、MVP等に実力では一歩も引けを取らない。どころか、細かい技術ではスコットに軍配が上がる。フロリダのマイク・グレアムのような実力者の風情だ。


 このガナー・スコットが、不動のNWAチャンプとして、いささかレヴェルにばらつきのある現行のNWA参加プロモーションズを統率していくというのなら、これはかなり興味深い。NWAはTNAが抜けても、台風の目を維持できる。スコットはクリスチャンやライノとなら真っ向勝負も可能だし、ジャレットやアングルですら追い込める。NWAチャンプとして、新TNAチャンプとも対峙もできる器だろう。サモアンサブミッションマシーンと何の遜色があろう。NWAはアメリカンドラゴンではなく、スコットでいくべきだと思う。


 ついでに言っておくと、ノースアメリカンやナショナルのタイトルは、USタイトルに統合されており、NWAはこれを廃さなくてはならない。廃して、新しい概念のタイトルを創造した方がいい。そういったことをまとめていくためにも、ここは偏重なくらいの実力の徒、スコットの登板が求められる。歴史と伝統を今も強調するNWAオペレーション。だからこそシンプルに、原点に、スコットに帰るべきだ。今のNWAタイトルは“ノーギミックニーディッド”から始まったからこそ、辛うじてそのグレードを維持できたのだ。


 レスリング・ビズは、たったひとりの才能の出現で、その様相は変わる。ジェフ・ジャレットが、たったひとりでTNAを作り上げたように。もしNWAのどこかに、27歳のリック・フレアーが現れたら、世の中は変わる。またそういう存在によってしか、このインダストリは大きく動かないものだ。ガナー・スコットの役割は、そのいつかの為に、歴史と伝統を厳しく維持していくこと。それはかつて、たったひとりでNWAを救った弱冠21歳のキャンディードのガッツに、現在の数十名のNWAメンバー達が報いなければならない義務でもある。

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NWAタイトル・トーニー?

 NWAが新NWAチャンプ決定トーニーを準備中だ。ブレント・オルブライトやカール・アンダーソンらがプロモで吠えている。本命はアメリカン・ドラゴンだという。まだ詳細は分からないのだが、TNAからNWAタイトルが引き揚げるのは時間の問題らしい。


 現在、TNAにあるNWAタイトルを、そもそもどう診るのか。NWAワールド・ヘヴィーウェィト・タイトルと、そう言われて、素直にNWAタイトルを世界タイトルだと合意していいのか。現在のNWAタイトルの歴史を改めて、検証する時が迫っている。


 NWAのオフィシャルサイトを訪問するなら、歴代王者がお出迎えしてくれる。テーズ、DFJ、レイス、ローズ、フレアー‥。確かに彼らはかつて、NWAのチャンピオンと呼ばれていた。しかしその歴史は、現在のNWAに直結するものだろうか。オフィシャルサイトの玄関ページでフレアーが持つベルト。そのデザインは現在クリスチャンが持つものと一緒だが、同じなのは外見だけ。実質的には違うタイトルだということは、かつての王者フレアーのファンなら、誰だって知っている。今のNWAのオペレーションは、ベルトの姿形だけ同じものをあつらえ、レイスやローズをサイトに配すことで、意図的に混乱を与えようとしていないだろうか。


 90年と91年の7月にリッカードが執った行動を支持する。92年のワッツの選択も、それしかなかったと理解出来る。93年8月のNWAの対応も、ジェントルマンのそれだったと思う。しかし94年にECWでやったトーナメントは、間違っていた。その後に続くコラーゾ等の闊達を許したことはそれに輪をかけて。


 48年発進の歴史への敬意を最大限に払い、94年から04年までのことを不問に伏し、NWAタイトルを特別なタイトルとして認めてもいいと思う。しかし、世界タイトルを名乗るのは間違っている。それはそれこそ、フレアーやレイスの栄光を宣伝する、その栄光の時代にNWAが執っていた態度と、矛盾する見解だと思うからだ。ここまで来れば、TNAが独自のタイトルを持つのは自然な成り行きだろうし、それはNWAタイトルの流れを汲むものとなるべきだとも思う。しかし、それだから今のオペレイションが、新しくNWAチャンプを決めて、それを世界と名乗らせるというのは、間違ってもいるし、大体実体にそぐわない。


 コラーゾ以降のオペレイションが、何とか踏ん張ったからこそ、ジャレットとTNAはここに来た。WWAやWWSでは立ち行かなかっただろうことにも納得する。NWAは以降のレスリング界にも依然必要な、デモクラシーの一車輪だとも思う。しかしブライアン・ダニエルソンがワールド・チャンプだというのは、かつてのレイスやフレアーの栄光をむしろ傷つける。NWAは過去の経緯を正直にコンフェッションし、だからNWAは今はワールド・タイトルは持てない旨、そしていずれはワールド・タイトル問題に決着をさせるべく、WWEとも何らかの交渉を持つ用意がある旨、これらを明刻した上で、SDのベルトを世界タイトルだと認め、NWAタイトルから世界の2文字を自ら削り取るべきなのだ。かつてWWWFにそれを強いたように。


 WWEがかつてNWAのメンバーだった時代、WWFタイトルは準世界タイトルとして特別視され、その存在を尊重されていた。NWAタイトルにも、我々はその視線を送る準備はある。しかしそれは現在のNWAが勇気をもって分をわきまえ、世界を名乗るのを止めた時に初めて適用される儀だ。我々は勿論、クリス・キャンディードをグッド・レスラーだったと評価している。しかしキャンディードはあの時、フレアーにもホーガンにも、ダグラスにすら勝った訳ではない。現在のNWAタイトルはそこから始まったのだ。彼らも誇る王者フレアーは常々こう言っていた。「to be the MAN, you have to beat the MAN.」と。世界王者になるには、世界王者を倒さねばならない。我々はフレアーのこの成句を、くれぐれも正しく理解しなくてはならない。



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インターコンティネンタル・ヘヴィーウェイト・タイトル

 USタイトルの歴史に触れたので、WWEのもうひとつの準世界タイトル、ICタイトルの歴史についても見ていきたい。外国での予想外なタイトルチェンジで、注目されている折でもあろうし。


 ICタイトルの母体は、カルガリーのノースアメリカン・タイトルだ。おそらくそうだと確信している。


 ICタイトルを辿っていくと、結局デトロイトに行き着く。ブラジルや日本でのことは措いておこう。とまれ、デビアシーがテキサスから持って来た、ノースアメリカン・タイトルがその母体であることに違いはない。テキサスにこれを持ち込んだのは、デロトイトでブルドッグ・ドン・ケントを叩いたFVEで、ドン・ケントはデロトイトに同タイトルを持って来た、カウボーイ・フランキー・レインからこれを奪っている。


 フランキー・レインがどこから持って来たか。これが問題。が、レインは、この直前までカルガリーにいたはずなので、カルガリーのノースアメリカン・タイトルが、レインによってデトロイトに分裂したことは、大いに考えられる。つまりレインがタイトル奪取を主張し、ビッグタイムのオフィスがそれを支持したと。デロトイトはUSタイトルを分裂させた過去があるし、オリジナルを分裂させるために、この方法はよく使われる。


 ノースアメリカン・タイトルのオリジナルと言われる、ファンク・シニアやボブ・ガイゲルのアマリロものは、DFJが世界を取った後、ウェスタン・ステーツ(後にJCPで復活し、USタイトルに取り込まれる)と名を変えた。ノースアメリカン名のタイトルは、その直後にオクラホマ(のちのUWFタイトル)とカルガリーに出来るが、北米の名称は、カナダのそれに、より迫力が存した。いずれにしても、当時の大NWAが分け与えたノースアメリカンの名は、限りなくオリジナルに近いことの証明だと言える。


 87年には、カルガリーの現役ノースアメリカン・チャンプのホンキートンク・ウェインが、不敗のままWWFにジャンプし、ICタイトルを制した経緯もある。そしてそののち、スタンピード・オフィス自体がWWFと提携、続くスタンピードのクローズに際し、ノースアメリカンの本流も、ここで結局は完全に、ICに合流したと言われている。このように、ICタイトルには、カルガリーのノースアメリカンの血が、かなり色濃く流れている。


 骨っぽいチャンプだったウマガを、短期政権にして取って代わらせ、ICターモイルに急浮上して来たイタリア青年サンティノ・マレラは、勿論オハイオヴァレイから上って来た新鋭レスラーだ。“イタリアン・センセーション”サルヴァトーレ・ベロモは終ぞ就けなかったこのタイトルで、イタリアとマレラは、再びWWEを席巻するだろうか。


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クリッブラー・スティーヴンスの代名詞

前回、AWAタイトルの稿で、USタイトルの歴史について触れた。現在SDにあるUSタイトルには、色々な名タイトルズのメモリーが詰まっていると。今回はその補足をもう少し。

 

JCP時代後期、JCPはNWA内の組織をまとめた。正確に言うと、各社を買収のうえ吸収合併した。オレイ・アンダーソンのジョージアを皮切りに、ミッドサウスのUWF、フロリダのDSWC(CWF)、セントラルステーツのハート・オブ・アメリカ‥。それに伴って、各地のタイトルも整理統合した。ジョージアのナショナル・タイトルは統一戦をした上で、USタイトルに併せた。その他のステイツタイトルスも、ほぼ全て、USタイトルに併されたと考えられる。

 

さて、では、AWAタイトル以外の分裂USタイトルの雄、デトロイトとサンフランシスコはどうなったか。

 

今年のWWEHOFer、オリジナル・シークで有名なデトロイトのUSタイトルは、ビッグタイムの終焉とともに、ケンタッキーのICWに取り込まれる。ここのプロモーターだったアンジェロ・ポッフォは、シカゴからこれを分裂させた張本人。そのICWも数年後にクローズして行くのだが、基本的には、ランディ・サヴェージとそのICWタイトルを通じて、WWFのインターコンティネンタル・タイトルにスポイルされたと考えていいと思っている。

 

ロイ・シャイアのサンフランシスコは、最後はフロリダCWFのエディ・グレアムに権利を譲って終わり、最後のチャンプはダスティ・ローズだと言われているが、最後の数年に、“プレイボーイ”バディ・ローズによって二度悶着、このタイトルは分裂している。バディ・ローズはチャンプのまま、ロン・スターとの対決を避けるようにSFを去っている。

 

このバディ・ローズのタイトルを有効だとして、ミッドアトランティックが、SFが終わった後の81年の春、バディ・ローズをSFの分裂正統US王者として招聘、ローズはその際に、タイトルを賭けてフレアーに敗れている。そしてフレアーがSFのUSベルトを持ったまま、ミッドアトランティックのUS王者パイパーをも降したことで、USタイトルは統一されたとされている。USタイトルを統一したのは、直接パイパーを下したローズだとする説などもあるが、それはまたいずれかの機会に。

 

こうして、シークの伝説も、カウパレスに黄金時代を築いたSF版USタイトルの歴史も、両準世界に合流して今に至る。リック・フレアーにも多くの影響を与えたと言われる金髪の爆撃機、レイモンド“ザ・クリッブラー”スティーヴンスの勇姿も、WWE・USタイトルの中で、今も完全に生きていると言える。

 

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