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ECW'94 夏

 NWAタイトルトーニーでは下馬評通り、オルブライトとダニエルソンが、強敵を降して勝ち上がっているよう。


 ドラフトではECWが、ベンワーとナイトロを獲得した。ECWには何よりも濃さが要る。ECWにとっては、いいドラフトだったと思う。ベンワーひとりが居るだけで、我々は観る。


 しかしこのままECWが、オリジナルとかニューブリードとか、ルッソ時代のWCWのようなことをしていていいとは思わない。ベンワーに期待されるのは、不動のECWチャンプとして、イライジャやヴォン、ナイトロそしてパンクなどを、ボッコボッコにして鍛えてやること。ただひたすら、ハードノックスの嵐にさらしてやれ。どんなアングルやギミックマッチよりも、それがエクストリームであることは、間違いないと思う。


 これでやっと、ECWが面白くなるの予感。


 旧ECWの、94年夏の、いくつかのショーの結果。


7/16/94 フィラデルフィア ECW


 アクセル&イアン・ロテン b ロッキー・レヴェル&ハック・マイヤース
TVタイトル
 マイキー・ウィップレク b チャド・オースティン
 トミー・ドリーマー b スティーヴ・リチャーズ
 ミスター・ヒューズ b ドリーマー
 タズマニアク&サブ b ピットブルズ
ダブルチェーン・マッチ
 サンドマン b トミー・カイロ
ECWタイトル
 ダグラス cor サブ


8/13/94 ECWアリーナ


 ハック・マイヤース b レベル
 チャド・オースティン b トミー・カイロ
TVタイトル
 ジェイスン b マイキー・ウィップレク
 スヌーカ&タズ p ピットブルズ(スパイク&レックス)
 911 p 3:00 ミスター・ヒューズ
 サンドマン dq ドリーマー
 パブリック・エネミー(ロッコー・ロック&ジョニー・グランジ) b バッド・ブリード(ロテン兄弟)
 サブ p 21:07 2COLDスコーピオ
 テリー・ファンク b キャクタス・ジャック


8/27/94 ECWアリーナ


NWAヘヴィー級チャンプ決定トーニー1stラウンド
 ディーン・マレンコ q ニシムラ
 911 p ドインク
 ダグラス p タズ
 2-COLD p ベンワー
2ndラウンド
 ダグラス p マレンコ
 2-COLD cor ベンワー
ファイナルラウンド
 ダグラス p 2COLD
ECWタグ・タイトル
 キャクタス&ウィップレク b P・E


 ECWタイトルについては、いずれ話しをしてみたいと思っている。


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フロリダ・ヘヴィーウェィト・タイトル

 WWEがDSWからフロリダに、ディヴェロップメント拠点のひとつを移し、ここの名称が、フロリダ・チャンピオンシップ・レスリングに決ったという。FCWは2004年に、実質的に活動を停止している同名団体があるが、まだHPは健在だ。ダスティ・ローズやマイク・グレアムなどのフォツも並んでいる。ここは勿論、ボスのスティーヴ・カーンにもゆかりの深いところ。ここがWWEのディヴェロップメント化したという理解でいいのだろうか。だとすると面白い。


 フロリダの老舗、エディ・グレアムのチャンピオンシップ・レスリング・フロム・フロリダは、87年にJCPに買われた。FCWは、CWF終了後、CWFのメンバーの一人だったマイク・グレアムが興したグループ。FCWは、伝統のフロリダ・ヘヴィー級タイトルを、CWFより受け継いだ。


 フロリダ・ヘヴィー級タイトルは、戦前から続くパブリック・タイトル。長らくNWA下のCWFの管理にあったが、勿論NWAのものではない。CWFやFCWのものでも。土台会社間で売買できる性質にはなく、フロリダの、全てのレスリング・ファン達に属する財産だ。いや、CWF時代にあのタイトルで紡がれた多くのメモリを考えるなら、その規模はフロリダのファンの間だけに止まらない。


 大NWA時代は、ステート・タイトルなのにもかかわらず、NWAレーティングの上位に評価されていた名タイトルのフロリダ・ヘヴィー級。その歴代王者群には目を見張る。グレアム、ブリスコ、ローズ、ムラコ、ウィンダム、そしてスティーヴ・カーン。フロリダ・ヘヴィー級タイトルもまた、レスリングの歴史に属するタイトルのひとつ。


 マイク・グレアムがWCWに参加以降は、NWAフロリダのハワード・ブロディ元プレジデントらが、これを扱った。ブロディが2002年に活動を止めてからは、やはりNWA系の新CWFグローバルが少しかかわったようだが、FCWが復活を見せた2004あたりから、フロリダ・ヘヴィー級タイトル史は止まっている。


 フロリダに、WWEのディヴェロップメントが来るなら、世界へ続く道として、そこに伝統のフロリダ・ヘヴィー級タイトルはあるべきだと思う。実質的に87年以来、フロリダ・ヘヴィー級タイトルはその本来的な意味を伴って復活する。カーンが、マイク・グレアムが、ダスティが、ウィンダムが協力し後押すなら、フロリダの歴史を誰よりも知る彼らがそこにいるなら、その運びにならなければ嘘だ。


 WWEのディヴェロップメントというシステムが、万全であるかは分からない。SMWからのOVWは何とかその役割を果し、HWAやMCWは上手く機能しなかった。ディヴェロップメントというシステム自体、ディヴェロップメント上にある。しかし‥。


 フロリダはかつて、エディ・グレアムやマツダやボリスが、マイク・グレアムやカーンなどを鍛え上げ、彼らはフロリダ・ヘヴィー級やサザン・タイトルを争い、その肩書きで、フレアーに挑んだ。テキサス、アメリカン、PNW、サウスイースタン‥世界ヘヴィー級タイトルへ続く途上にあるべきタイトルは、本来はそこ以外に在ってはならず、あるべくもなく、またそれらはそこにこそなくてはならない。かつての伝統的ローカルタイトルをその価値に扱うのもまた、世界ヘヴィー級タイトルを管理する者のオブレイジ。


 FCWに復活する伝統のフロリダ・ヘヴィー級タイトルは、ディヴェロップメントのシステム自体にも、きっと何かを光明してくれる。


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オーストラリアン・ワールド・タグティーム・チャンピオンシップス

 NWAはタグタイトルもTNAから引き揚げさせ、TNAはTNAで新しい名称で従来のタグタイトルを運営する。NWAは新タグ・チャンプも決めるのだろう。要するに世界タグタイトルと言われる、あるいはそう名乗るタイトルが、またひとつ増えたということ。しかしおそらく、世界タグティームタイトルにも、原点はある。


 本場アメリカにおいて、世界タグティームタイトルは、戦前には見当たらない。戦後の、NWAシカゴか、サンフランシスコのものが、世界タグティームタイトルの最初と考えられる。その説においては西海岸の方が、地理的に優位だろうか。


 今やオフィシャルなコンペティションとしての足場も揺るぎないタグマッチの旧式学名は、オーストラリアン・タグティーム・アトラクション。ファビュラス・ロイヤル・カンガルーズで有名なオーストラリアで盛んだったゲームは、輸出の地アメリカでも瞬く間に、その面白さが流行した。


 しかし当初は、あくまでもアトラクション扱い。マチニク体制の大NWAが、ついぞ最後まで、タグティームタイトルを正式な世界タイトルと認めなかったのは有名なハナシ。だからシングルの世界タイトルとは違い、世界タグティームタイトルはNWA内に、いくつか許容されていた。


 しかしシカゴもの正統史はAWAに持っていかれたゆえ、長くAWA世界タグタイトルが、タグの最高峰と言われた。リック・フレアーとグレッグ・ヴァレンタインのニュー・ブロンズで有名な、ミッドアトランティック・ヴァージョンの世界タグタイトルは、このシカゴものの、NWAサイドの空位論を主張して、かのジョージ・スコットが東海岸で復活させたものだ。


 このミッドアトランティック・ヴァージョンの世界タグタイトルは、やがてNWA世界タグタイトルと呼ばれ、WCW世界タグタイトルとなっていった。この過程でAWAを飲み込んだWCWは、シカゴ正統史も取り込み、世界タグタイトル史を一本化した。


 WWWF世界タグタイトルは、元はオリジナルの、USタグティームタイトル。これがモンゴルや日本を巻き込んでインターナショナル化し、世界に育った。現在のWWEの2本の世界タグティームタイトルは、これら3本の世界史が一度統一されて等分に分裂したもの。オリジナル・ミネソタ・レッキンクルーやイーストウェスト・コネクション、ヴァリアント・ブラザースらの栄華の時代も、全てこの2本の中に等しく生きている。


 NWAが初めて正式に、世界タグチャンプを決めたのは、92年。もう既に、NWAを抜けることは最初からの決定事項だったWCWが、NWAチャンプスを決めた上で、改めてWCW世界タグに取り込むことを前提に仕切った、肝いりのトーニー。しかしこれはNWAに、正式に世界タグチャンプを大々的に決めたという既成事実を与えて今に至る。


 NWAは、93年のWCW脱退と同時に、NWAタイトル機能のみをWCWから引き揚げる。少なくとも後にそう主張する。とても世界を名乗れないだろうチャンプスを並べながら、TNAのAMWやLAXで見事復活。調子のいいことに、JCPでホースメンが巻いていたデザインのベルトも使っていた。


 タグタイトルに関しては、NWAに一本取られたか、花を持たせたかの感だ。NWAタグタイトルなどもともと無かったし、世界タグタイトルの実質は、JCP/WCWが全て持っていたのだから、タイトルトーニーすら開く必要も、本当はなかった。シングルでの協力を取引材に、新タイトルを差し上げた格好だ。


 ただ、歴史的に言うならば、あの時WCWから、USタグティームタイトルがなくなっていて、これがNWAタイトルに変貌したとは、言えないこともない。USタグタイトルは、元はNWAフロリダのCWFにあったタイトルで、サザン・タグやノースアメリカン、グローバル・タグとも言われた、共有性、及び流動性も高いタイトルだった。JCPがCWFを買った時にそこにあった由縁で、WCWが半ば惰性的に使用して来たが、WCWにその権限は、実はなかった。CWFに権利あったわけでもなく、NWA南部の共有タイトルだから、NWAに返す義理は、あったと言えば、ないこともなかった。NWAの冠を大々的に広告するというノシ付きでも。


 かつてのNWAアティチュードに敬意を表し、タグタイトルにまで細かいことを言う野暮は控える。しかしUSタグティームタイトルの歴史を紐解けば現る、サザンジャスティスの荒野。マイク・グレアム&スティーヴ・カーンの代名詞。レダックとムラコ、アメリカンドリームとラストアメリカンヒーローのドリームティーム、ロジャー・スミスとシュローダーのニュー・アサシンズ、ブリスコ兄弟とファンク兄弟、DFJ&DVE、ブルース・リードとスキップ・ヤング、ケントとヘッファーナンのカンガルーズ、マグナムとポーツの息子、USエクスプレス、ナイドハートとクルスチェフ、ラヴィシン・リック・ルード&ブルドッグ・ジェシー・バー(!)、ファビュラス・ワンズ、ニュー・ミッドナイト・エクスプレス、スタイナーズ、そしてフリーバーズ‥。


 ナッシュヴィルで、AMWによって再び立ったNWAタイトルには、かつての激戦区フロリダの風が過ぎった。USタグタイトルはSDにあるUSヘヴィーウェィトとは、兄弟分の関係にもある。イヴァニェスのクアトロネイツよろしく、歴史のダイナミズムはきっとこのインダストリそのものを、よりタファーなものへと導いてくれると思うのだが‥。


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コロンとハングマン・ボビーの激闘の歴史

 新NWAタイトル・トーニーの全様が決まったようだ。ジャック・ブリスコ・ブラケット、ハーリー・レイス・ブラケット、テリー・ファンク・ブラケット、ルー・テーズ・ブラケット‥。今のNWAにはいささか重い響きなのは否めないが、おそらくファイナルを構成するだろうファーストラウンド、ダニエルソンvs.クリード、オルブライトvs.西村などを筆頭に、興味深いカードが並ぶ。



 ケージからすら取り上げてまでも、あいかわらず世界を名乗り続けるNWA。94年8月に於ける世界との断絶は、あまりにもNWA側に分がないのにもかかわらず、それでも世界だと言い張る、その言い分の原点には、あまり壇上に上らない、カレントオペレーションの主張する論理がある。現行NWAサイドのロジックを、検証してみる必要性はある。



 かつての大NWAと現在のオペレーションの違い。それは歴代タイトル史に明確に現れる。かつての大NWAと、メンバーが一人もダブらない現在のNWA。その新たな主張は、全く違う組織ではないかというくらい大胆だ。



 勿論、デーン・デットンの時代のことは、我々には良くは分からない。現在のNWAはかつての大NWAが認めなかったデットン王者論を立てる。デットンから続くのだろう、オヴィル・ブラウンの方の歴史を正統とすることで、世界を名乗れるという組立。かつてはフランク・ゴッチから数えたものだが、今はヨーロッパ王者ハックを初代の世界とする論拠もまた、唐突に現れる。



 オヴィル・ブラウンは、テーズに負けなかった戦前王者の一人。戦いを前に、事故で統一戦に不参加した。かつてのNWAはブラウンをチャンプに数えなかったが、現体制にになってから、突如ブラウン派の勢力が台頭、ブラウンの事件を引っ張りだし、そこから始まる別枝の世界タイトル史を主張しはじめる。



 今頃になってブラウンを担ぎ、それに付随させるように、微妙な判定を呈した一戦でのタイトルチェンジを軒並み認めることで、新たなNWA世界タイトルの容認は可能か。ジャック・ヴェネーノというチャンプを知っているか?ドミニカ共和国でフレアーを倒し、世界を制した男だと、今のNWAは言う。



 確かにドミニカでは、そういうことになっているらしいが、当時の大NWAはそれを世界中にアナウンスしなかった。つまり正式には認めなかった。ミッドナイトライダーしかり、NZLのレイスしかり、藤波もまたしかり。今のNWAの数え方によると、フレアーは25回位、世界王者になっているらしい。これらををどう判ずるか。



 カーロス・コロンの事例は、そんな中、我々にひとつの材を提供してくれる。



 プエルト・リコの帝王、カーロス・コロン。WWCのボスで、カリートの親父。82年、フレアーの最初の転落劇を演出した人だと、今のNWAは言う。確かに、この時の微妙な判定は世界が聞いた。しかし当時の、ガイゲルやクロケットの体制のNWAはタイトルチェンジを認めず、コロンはタイトル史に名を刻めなかった。そして翌年、NWAの第二副会長になったコロンは、王者フレアーをサン・ジュアンに招聘、ベースボール・スタジアムでの、結論の不透明なまま尾を引いていた一戦の、ケージマッチによる決着戦を開催した。



 コロンはこのケージ戦を、2人の世界王者格のファイターによる、宇宙一決定戦と公言し、ユニヴァーサル・チャンピオンシップと喧伝した。はたしてコロンは現役の本物世界王者を金網で破り、宇宙一強い男に駆け上がる。世界王者より強い男、ユニヴァーサル・チャンピオンの誕生。



 しかしここで考えたい。コロンは世界王者になるのをあきらめたからこそ、諦めるのと引き換えに、ユニヴァーサル・タイトルの新設と、新設の一戦での自身の勝利を、ガイゲル以下、当時の大NWA幹部に取り付けられたのだろうと。自身も大NWAの幹部の一人、第二副会長として、それは納得済みの取引でもあったはずだ。当時主要メンバーだったコロンは、俺が世界チャンプだとごねたか?それともそれを不満に脱退したか?そうはしなかった。代償として引き換えに、ユニヴァーサル・タイトルを貰ったのである。ユニヴァーサル・タイトルの現存が、コロンがチャンプにならなかったことの、何よりの証明だ。かつてメンバーだったコロンが参加していない今のNWAが、コロンはチャンプだったと騒ぐのも、おかしなハナシではないか。



 WWCは、ユニヴァーサル・タイトルでビジネスを安定化させ、コロンは、南海の島の誇り高きヒーローとして、プエルト・リコという宇宙の無敵の王者に君臨した。コロンが世界王者だったとして、ではユニヴァーサル・タイトルで紡がれた、ハングマン・ボビー・ジャガーズやグレッグ・ヴァレンタインとの激闘はどうなる。歴史は巻き戻せない。



 ジョン・オリン、ウラディク・ズビスコ、デイヴ・レヴィン、ソニー・マイヤース、カーペンティーアー、ブラジル‥。かつて大NWAに、世界チャンプの正史に数られなかった、史上に名だたる強豪連。彼らの歴史の復権は、一部の人の念願だ。しかし、世界王者でなかったことにはそれぞれ意味がある。歴史を符合させえない事実の新たな創出は、未来のファンをも困惑させる。



 オヴィル・ブラウンとミッドナイトライダーを世界王者と頑固として認めていた現在のオペレーションのメンバーは、ガイゲル体制の時代、どこにいた?オヴィル・ブラウン以来、どこにいた?名称とベルトのデザインは継ぎ、かつての正統史は継がない。NWAはこのアップサイダウンに未だ答えていない。



 コロンが世界をあきらめたからこそ出現したユニヴァーサル・タイトル史では、TNAのストーリーを手掛けるダーティ・ダッチ・マンテルも、その一ページを織り成した。ダーティ・ダッチなどはこれをどう考える?ご都合主義だと皮肉られる以外のことを、NWAはNWAとして、整然として説明する義務を要す。


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ワールド・ヘヴィーウェィト・チャンピオンシップ

 エッジが世界ヘヴィー級タイトルを奪い、TNAが新ベルトを創設、NWAは新王者を決める。PPVをはじめたROHにも、自称世界王者が存在する。このあたりで、正統な世界ヘヴィー級タイトルの歴史考証をしてみたくはないか。


 現在SDにある世界ヘヴィー級タイトル。WWEは02年のHHHからしか歴代王者を数えていないが、02年のアンフォーギヴェンを観れば解る通り、あの王座をゴッチとハックの死闘以来の、歴史的に正統な世界王座として考えている。


 あの黄金のベルトは、86年2月から、NWAチャンプでもあったフレアーが、このあいだまでケージが巻いていたのと同じデザインのベルト、つまり、赤くNWAのタイトルロゴのあるベルトを、意思をもって廃した上で巻きはじめたという、歴史的に正統な世界王者である面のみを強調したベルトだ。


 あのベルトは、かつてはかなりの大きな割合をもって、NWAタイトルと呼ばれた。今や意外だとすら響くが、NWAはかつてあのベルトを、本物の世界ヘヴィー級チャンピオンとともに管理していた大組織だった。


 サム・マチニクが中心となって戦後に組織された、レスリングの統括団体NWA。マチニクは、キャピタリズムと合議制からの多くの矛盾と戦いながらも、基本線で厳しい態度を貫き通した。


 よく、かつての大NWAの批判の折に出てくるものに、戦後のテーズまでを、各地にあった世界タイトル史を継ぎ接ぎして、架空のタイトル史を作り上げた、という一節がある。


 戦前の世界タイトルの正統史については、おそらく今や誰も、何が真実かは判断出来ない状況だろう。それはゴッチとハックの死闘についてすら。だから現在のNWAはテーズから数えているし、WWEは2002年に新たな発進を広報した。しかし、かつて、ワトソンやスタニスラウスやルイスやロンソンらが世界王者として活躍した時代があり、それが現在のWWEやTNAのベルト、そしてNWAのベルトにもつながっているのは間違いないわけで、よく分からないからといって、彼らの歴史を遠方の彼方に追いやっていいとは思わない。


 いろいろな意見はある。が、我々としては、あの当時の大NWAがしていたタイトル管理に関する強い態度を支持し、それが歴代史にも厳格に適用されていたと診て、かつてのNWAが、苦心して吟味した、最適タイトル史配置を、価値あるものとして評価する。現在我々が知り得ることを、当時マチニクが知らなかったわけがない。それを知った上で、正調タイトル史を整備する必要性を感じ、そもそもNWAを作ったのだ。戦前各地に乱立したタイトル史は確かにあやふやな面が多いが、当時大NWAが作ったものにこそ唯一、ある真実への手掛かりの一片が隠されていると見ている。


 時代の流れ、JCPの独占、WCWの誕生、リッカード、新NWA、WCWの吸収、RAW、SD‥。時と場所を替え、あのベルトの呼ばれ方も変化して来た。新NWA世界ヘヴィー級タイトルベルトに始まり、WCWタイトルを兼ね、WWFでリアルワールド・タイトルと言われ、裁判でモザイクをかけられ、WCWで改めてNWAタイトルと呼ばれ、WCWのNWA脱退でゴールドベルトやWCWIタイトルとも称され、WCWワールドタイトルに改めて取って代わり、WWFタイトルと統一された上でアグレッシヴに分裂復活、RAWで究極の本名、世界ヘヴィー級タイトルとして落ち着いた。そしてSDに移る。


 NWA、WCW、WWE、RAW、SD‥管理運営をして来たエージェンシーは変わる。しかし、世界ヘヴィー級タイトルが、レスリングの歴史そのものに属するプロパティだということは変わらない。その時を代表するレスリングカンパニーが、必死で守り抜いてきたレスリングのストレイン。WWEチャンピオンシップはWWEのものでいいし、NWAが、NWAタイトルを持つのもいいだろう。しかし、世界ヘヴィー級タイトルには、究極の公的タイトルとして、我々ファンを含め、レスリングの歴史に携わる全ての者の、共通の財産だという性格を、持ち続けさせなければならないと思っている。あのベルトは今や、レスリングの歴史上、最も尊重されなければならない、レスリングの足跡そのものとしての、ミーュジアム的側面をも有するものにもなってしまっているのだから。かつて自らが厳しい態度で管理して来た、組織そのものが公的存在だと言えるNWA、歩んできた歴史の質の迫力が違うTNA、ましてや血脈に全く由縁しないROHなどは、これでも、かの世界ヘヴィー級タイトルの前で、世界を名乗っていいと思うか。


 歴史と伝統、そして更にホットシズルなプレゼンスも紡いで、SDの世界ヘヴィー級タイトルは最前線でアライヴし続ける。歴史的に正統な世界王座の、ベストと言える管理を、ミスター・マクマンに感謝する。


 世界ヘヴィー級タイトルは公的タイトル。USタイトル及びICタイトルも公的タイトルだと言えるが、なんとなればその全てを、TNAやNWAに出場なども、させられる道もないではないと、我々は、レスリングの歴史に携わる者のひとりとして考える。しかしそれは、各所に、ワールド・ヘヴィーウェィト・チャンピオンを、あらゆる意味で“ザ・マン”としてトリートする用意があるというのなら、のハナシである。


Wwe: Unforgiven 2002
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