ワールド・ヘヴィーウェィト・チャンピオンシップ
エッジが世界ヘヴィー級タイトルを奪い、TNAが新ベルトを創設、NWAは新王者を決める。PPVをはじめたROHにも、自称世界王者が存在する。このあたりで、正統な世界ヘヴィー級タイトルの歴史考証をしてみたくはないか。
現在SDにある世界ヘヴィー級タイトル。WWEは02年のHHHからしか歴代王者を数えていないが、02年のアンフォーギヴェンを観れば解る通り、あの王座をゴッチとハックの死闘以来の、歴史的に正統な世界王座として考えている。
あの黄金のベルトは、86年2月から、NWAチャンプでもあったフレアーが、このあいだまでケージが巻いていたのと同じデザインのベルト、つまり、赤くNWAのタイトルロゴのあるベルトを、意思をもって廃した上で巻きはじめたという、歴史的に正統な世界王者である面のみを強調したベルトだ。
あのベルトは、かつてはかなりの大きな割合をもって、NWAタイトルと呼ばれた。今や意外だとすら響くが、NWAはかつてあのベルトを、本物の世界ヘヴィー級チャンピオンとともに管理していた大組織だった。
サム・マチニクが中心となって戦後に組織された、レスリングの統括団体NWA。マチニクは、キャピタリズムと合議制からの多くの矛盾と戦いながらも、基本線で厳しい態度を貫き通した。
よく、かつての大NWAの批判の折に出てくるものに、戦後のテーズまでを、各地にあった世界タイトル史を継ぎ接ぎして、架空のタイトル史を作り上げた、という一節がある。
戦前の世界タイトルの正統史については、おそらく今や誰も、何が真実かは判断出来ない状況だろう。それはゴッチとハックの死闘についてすら。だから現在のNWAはテーズから数えているし、WWEは2002年に新たな発進を広報した。しかし、かつて、ワトソンやスタニスラウスやルイスやロンソンらが世界王者として活躍した時代があり、それが現在のWWEやTNAのベルト、そしてNWAのベルトにもつながっているのは間違いないわけで、よく分からないからといって、彼らの歴史を遠方の彼方に追いやっていいとは思わない。
いろいろな意見はある。が、我々としては、あの当時の大NWAがしていたタイトル管理に関する強い態度を支持し、それが歴代史にも厳格に適用されていたと診て、かつてのNWAが、苦心して吟味した、最適タイトル史配置を、価値あるものとして評価する。現在我々が知り得ることを、当時マチニクが知らなかったわけがない。それを知った上で、正調タイトル史を整備する必要性を感じ、そもそもNWAを作ったのだ。戦前各地に乱立したタイトル史は確かにあやふやな面が多いが、当時大NWAが作ったものにこそ唯一、ある真実への手掛かりの一片が隠されていると見ている。
時代の流れ、JCPの独占、WCWの誕生、リッカード、新NWA、WCWの吸収、RAW、SD‥。時と場所を替え、あのベルトの呼ばれ方も変化して来た。新NWA世界ヘヴィー級タイトルベルトに始まり、WCWタイトルを兼ね、WWFでリアルワールド・タイトルと言われ、裁判でモザイクをかけられ、WCWで改めてNWAタイトルと呼ばれ、WCWのNWA脱退でゴールドベルトやWCWIタイトルとも称され、WCWワールドタイトルに改めて取って代わり、WWFタイトルと統一された上でアグレッシヴに分裂復活、RAWで究極の本名、世界ヘヴィー級タイトルとして落ち着いた。そしてSDに移る。
NWA、WCW、WWE、RAW、SD‥管理運営をして来たエージェンシーは変わる。しかし、世界ヘヴィー級タイトルが、レスリングの歴史そのものに属するプロパティだということは変わらない。その時を代表するレスリングカンパニーが、必死で守り抜いてきたレスリングのストレイン。WWEチャンピオンシップはWWEのものでいいし、NWAが、NWAタイトルを持つのもいいだろう。しかし、世界ヘヴィー級タイトルには、究極の公的タイトルとして、我々ファンを含め、レスリングの歴史に携わる全ての者の、共通の財産だという性格を、持ち続けさせなければならないと思っている。あのベルトは今や、レスリングの歴史上、最も尊重されなければならない、レスリングの足跡そのものとしての、ミーュジアム的側面をも有するものにもなってしまっているのだから。かつて自らが厳しい態度で管理して来た、組織そのものが公的存在だと言えるNWA、歩んできた歴史の質の迫力が違うTNA、ましてや血脈に全く由縁しないROHなどは、これでも、かの世界ヘヴィー級タイトルの前で、世界を名乗っていいと思うか。
歴史と伝統、そして更にホットシズルなプレゼンスも紡いで、SDの世界ヘヴィー級タイトルは最前線でアライヴし続ける。歴史的に正統な世界王座の、ベストと言える管理を、ミスター・マクマンに感謝する。
世界ヘヴィー級タイトルは公的タイトル。USタイトル及びICタイトルも公的タイトルだと言えるが、なんとなればその全てを、TNAやNWAに出場なども、させられる道もないではないと、我々は、レスリングの歴史に携わる者のひとりとして考える。しかしそれは、各所に、ワールド・ヘヴィーウェィト・チャンピオンを、あらゆる意味で“ザ・マン”としてトリートする用意があるというのなら、のハナシである。
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