コロンとハングマン・ボビーの激闘の歴史
新NWAタイトル・トーニーの全様が決まったようだ。ジャック・ブリスコ・ブラケット、ハーリー・レイス・ブラケット、テリー・ファンク・ブラケット、ルー・テーズ・ブラケット‥。今のNWAにはいささか重い響きなのは否めないが、おそらくファイナルを構成するだろうファーストラウンド、ダニエルソンvs.クリード、オルブライトvs.西村などを筆頭に、興味深いカードが並ぶ。
ケージからすら取り上げてまでも、あいかわらず世界を名乗り続けるNWA。94年8月に於ける世界との断絶は、あまりにもNWA側に分がないのにもかかわらず、それでも世界だと言い張る、その言い分の原点には、あまり壇上に上らない、カレントオペレーションの主張する論理がある。現行NWAサイドのロジックを、検証してみる必要性はある。
かつての大NWAと現在のオペレーションの違い。それは歴代タイトル史に明確に現れる。かつての大NWAと、メンバーが一人もダブらない現在のNWA。その新たな主張は、全く違う組織ではないかというくらい大胆だ。
勿論、デーン・デットンの時代のことは、我々には良くは分からない。現在のNWAはかつての大NWAが認めなかったデットン王者論を立てる。デットンから続くのだろう、オヴィル・ブラウンの方の歴史を正統とすることで、世界を名乗れるという組立。かつてはフランク・ゴッチから数えたものだが、今はヨーロッパ王者ハックを初代の世界とする論拠もまた、唐突に現れる。
オヴィル・ブラウンは、テーズに負けなかった戦前王者の一人。戦いを前に、事故で統一戦に不参加した。かつてのNWAはブラウンをチャンプに数えなかったが、現体制にになってから、突如ブラウン派の勢力が台頭、ブラウンの事件を引っ張りだし、そこから始まる別枝の世界タイトル史を主張しはじめる。
今頃になってブラウンを担ぎ、それに付随させるように、微妙な判定を呈した一戦でのタイトルチェンジを軒並み認めることで、新たなNWA世界タイトルの容認は可能か。ジャック・ヴェネーノというチャンプを知っているか?ドミニカ共和国でフレアーを倒し、世界を制した男だと、今のNWAは言う。
確かにドミニカでは、そういうことになっているらしいが、当時の大NWAはそれを世界中にアナウンスしなかった。つまり正式には認めなかった。ミッドナイトライダーしかり、NZLのレイスしかり、藤波もまたしかり。今のNWAの数え方によると、フレアーは25回位、世界王者になっているらしい。これらををどう判ずるか。
カーロス・コロンの事例は、そんな中、我々にひとつの材を提供してくれる。
プエルト・リコの帝王、カーロス・コロン。WWCのボスで、カリートの親父。82年、フレアーの最初の転落劇を演出した人だと、今のNWAは言う。確かに、この時の微妙な判定は世界が聞いた。しかし当時の、ガイゲルやクロケットの体制のNWAはタイトルチェンジを認めず、コロンはタイトル史に名を刻めなかった。そして翌年、NWAの第二副会長になったコロンは、王者フレアーをサン・ジュアンに招聘、ベースボール・スタジアムでの、結論の不透明なまま尾を引いていた一戦の、ケージマッチによる決着戦を開催した。
コロンはこのケージ戦を、2人の世界王者格のファイターによる、宇宙一決定戦と公言し、ユニヴァーサル・チャンピオンシップと喧伝した。はたしてコロンは現役の本物世界王者を金網で破り、宇宙一強い男に駆け上がる。世界王者より強い男、ユニヴァーサル・チャンピオンの誕生。
しかしここで考えたい。コロンは世界王者になるのをあきらめたからこそ、諦めるのと引き換えに、ユニヴァーサル・タイトルの新設と、新設の一戦での自身の勝利を、ガイゲル以下、当時の大NWA幹部に取り付けられたのだろうと。自身も大NWAの幹部の一人、第二副会長として、それは納得済みの取引でもあったはずだ。当時主要メンバーだったコロンは、俺が世界チャンプだとごねたか?それともそれを不満に脱退したか?そうはしなかった。代償として引き換えに、ユニヴァーサル・タイトルを貰ったのである。ユニヴァーサル・タイトルの現存が、コロンがチャンプにならなかったことの、何よりの証明だ。かつてメンバーだったコロンが参加していない今のNWAが、コロンはチャンプだったと騒ぐのも、おかしなハナシではないか。
WWCは、ユニヴァーサル・タイトルでビジネスを安定化させ、コロンは、南海の島の誇り高きヒーローとして、プエルト・リコという宇宙の無敵の王者に君臨した。コロンが世界王者だったとして、ではユニヴァーサル・タイトルで紡がれた、ハングマン・ボビー・ジャガーズやグレッグ・ヴァレンタインとの激闘はどうなる。歴史は巻き戻せない。
ジョン・オリン、ウラディク・ズビスコ、デイヴ・レヴィン、ソニー・マイヤース、カーペンティーアー、ブラジル‥。かつて大NWAに、世界チャンプの正史に数られなかった、史上に名だたる強豪連。彼らの歴史の復権は、一部の人の念願だ。しかし、世界王者でなかったことにはそれぞれ意味がある。歴史を符合させえない事実の新たな創出は、未来のファンをも困惑させる。
オヴィル・ブラウンとミッドナイトライダーを世界王者と頑固として認めていた現在のオペレーションのメンバーは、ガイゲル体制の時代、どこにいた?オヴィル・ブラウン以来、どこにいた?名称とベルトのデザインは継ぎ、かつての正統史は継がない。NWAはこのアップサイダウンに未だ答えていない。
コロンが世界をあきらめたからこそ出現したユニヴァーサル・タイトル史では、TNAのストーリーを手掛けるダーティ・ダッチ・マンテルも、その一ページを織り成した。ダーティ・ダッチなどはこれをどう考える?ご都合主義だと皮肉られる以外のことを、NWAはNWAとして、整然として説明する義務を要す。
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