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BM ⑧

15 ドルフ・ジグラーのジグザグ

サイド・ロシアンレッグスゥイープをシグネイチャにした最初のプロは、ブラッド・アームストロングだと思うのだが、その後この技は、ブレット・ハートに重用され有名になる。

サイドとわざわざ言うからには、サイドでないロシアンレッグスゥイープという技が元々あるからであり、正ロシアンレッグスゥイープは、プロではあまり見ないが、80年代のロシアのアマレス界では頻繁に見られた、東側のアマレス技。正面から組んで脚を巻きつかせ、自ら反るように、脚を伸ばしながら、相手を横に回転させるようにぶん投げる、どちらかというとベリートゥベリースープレックスの一種。

最近は、最後は流星仮面のネックブリーカーのようなフォームになることが多く、近回のSSでは、スリングブレイドのような回転式のものも見せていたジグザグだが、飛びつきロシアンレッグスゥイープだという原型は保ちつつ、使い分けるやり方がいいだろう。厳密にいうとロシアンレッグスゥイープではないのだろうが、レッグスゥイープ技では、かろうじてはある。

とはいえこの技の底流を流れる原典は、マッチョマンがただ後ろからジャンプして襲い掛かり続けるという、マッチョマン・サヴェージの本当のシグネイチュアを技として体系化したとでもいうものだから、一番保持して貰いたいのは、そのマッチョマンイメージ。

あのマッチョマンの、技とも言えないが、それでいて最もその魅力の根幹を成していた後ろからの飛び掛り、空中でやるマットワークとでも言うべきアレを、フィニッシャーのマヌーヴァとしてデファインしてみせたことの功績は大である。

これにより、フライングアックスハンドルよりもマッチョマンを表現するに適切だったあのムーヴ群もつまり、ジグザグ群だったのだと今、認識できよう。

14 ディーン・マレンコのテキサスクローバーリーフ

テリー・ファンクが最初の引退間際に使い始めて紹介された技だが、元々はシニアのランチや北限のデンやリトアニアのプロフェッサーなどが、アングラ使用していたものだと思される。プロフェッサーからディーンに引き継がれて、90年代のWCWホースメンで脚光を浴びるに至ったと見るのが自然だと。

殺し屋ディーンにマッチしたように、救いようのないドレッドマヌーヴァで、一歩間違えばナスティだが、これほど説得力を有す技もまた少ない。トリプルH?は、新たな使い手としてお気に入りの?シェイマスにこれを与えようとしているが、シェイマスがこれを自在に操り始めたらもう、手がつけられない。

確かにブロークキックは、世界ヘヴィー級王者のフィニッシュとしてよろしくはないだろうが、シェイマスにこの技は、鬼に金棒過ぎるきらいが、なきにしもあらずだ。シナがライバックが、シェイマスの尻の下で悶絶している風景が容易に目に浮かぶ。

確かに、シェイマスのこの技なら、ブロックを仕留めることも可能だろうが。

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BM ⑦

20 マスクド・スーパースターのフライングネックブリーカードロップ

アイルランド系のモンゴルズボロは、ある日ルーザーリーヴマッチに負けて、ミッドアトランティックを後にする。そして突然現れたのが、巨漢覆面のスーパースター。77年、ジョージ・スコット産。

スコットは流星仮面に数々の飛び技を与える。フライングクロスアタックにハイクロスボディに、フライングネックブリーカードロップ。同時に種々のリバウンドムーヴも。リヴァースエルボーバッドにクロスチョップ。リングを縦横無尽に使う多くの3Dアクションを楽しませた。特にこのネックブリーカーには、走る背後に流星群が確かに見えた。

ハイジャックバックブリーカーという流星仮面らしからぬ静止技を与えたのが誰かは知らないが。

19 オカダ・カズチカのスタンディングドロップキック

フィニッシュに至る七つくらいの技が全て見せ場だという新進の獅子の、最も驚嘆の上がる助走無しの見事な一発。こんな凄いドロップキックは見たことかないと、そんな素直な感想を誰もが、オールドファンまでもが思わず漏らしてしまう。

ジャンピング・ジム・ブランゼルよりも高く、ジャンボ鶴田のような助走は無しで、カート・ヘニングのように狙いを予め確認せず、瞬時にカウンターで、スーパーハイジャンプを決めて繰り出す。

こんな1800年代からあるシンプルなムーヴでも、しっかりした使い手がしっかり使えば、2012年の満員両国のメーンの、ハイライトを作り出せる。変な技を作って流行らせようとする必要はないことが分る。えげつないナスティマヌーヴァも、誰も求めていないことが分る。

フュージョン時代から使っているネックブリーカーもヘヴィーレインもいい技で、レインメーカーも含め、アマレスでも使えるくらい、レスリング技としてのグレードは高い。

18 クリス・ジェリコのウォールオブジェリコ

これも伝統ゴリゴリのシンプルなボストンクラブを、2000年代のWWEで通用せしめた、クリス・ジェリコの功績技。WCW時代は不安定なフォームだったが、WWFに入ってヘヴィウェイトに専念し、フォームも伝統的なものに安定した。それはWWFHQの功績。パット・パターソンの功績か?

初代IC王者パターソンも、この技の名人で、1800年代の技を、ジョニー・ウォーカーとともに、1970年代に継承した。そしてハンセン、マーテルと続き、ジェリコが引き継ぐ。そして次にこれを受け持つ者も現れるだろう。

ウォールオブジェリコの後にこの技が何と呼ばれる技になるかは分らないが、次にこの技のしっかりした担い手になる者は、チャンピオンにもしっかりなれる男ではないのか。

17 ジ・インテリジェント・センセーショナル・デストロイヤーのフィギュアフォー

西海岸WWAのチャンプで、ジョージワグナーを終わらせた60年代のスター、駆逐艦デストロイヤーは、WWAが終わってからも、小気味よいフライングメイヤーと必殺足4の字を武器に、90年頃まで、かつて力道山を苦しめ白覆面の魔王と怖れられた日本で、息の長いレスラー人生を全うした。

どんな体勢からでもびゅんびゅんと足4の字に入る構えをみせる、まさにこの、レスリング史上の大傑作技のグランドマスター。次にこのフィギュアフォーをシグネチュアにできるスターは必ず世界を制すと思うのだが、デストの4の字協奏曲の構成は是非お手本に。リック・フレアーもここから少なからず学んでいる。

16 ハーリー・レイスのダイヴィングヘッドバッド

倒れたところに相手がいて、たまたま頭が当たったのであり、それは重力のせいであると、重力以上の力を加えないのが、この技群のミソ。70年代のドロップ技には、まだレスリングの精神が息づき、それゆえの雅さが、全体を流れる旋律を支配していた。

重力に身を乗せるようなダイヴィングと、バンプ。自然と調和する風と葉のような美しさ。だから美獣。

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BM50 ⑥

25 ローラン・ボックの鋼鉄風車

そのスティールの如き冷たさと硬さを、竹内はこう評した。メキシコ五輪代表のシュットガルトの英雄、ローラン・ボックの、有無を言わせずクラッチしては投げる、バタフライスープレックス。ブチ投げて埋めるかのようなそのスープレックス群をして、墓堀人とも呼ばれた。

大金を叩いてシュットガルトに大物を呼び付け、半ば騙すような形で偶像破壊に勤しんだ。マスカラスを壊そうとし、アンドレは本気で怒らせ、アリと闘った男には泣きべそを掻かせた。人間風車のみならず、普通のグレコの反り投げもバック投げも凄まじかった。

WWUという新興グループのチャンプも勤め、久々にヨーロッパに革命が起こるかとも言われたが、レスリング以外のところで問題を抱え、自滅みたいなことになって消えた。一時はIWGPの目玉だったはずなのだが。

24 スーパースター・グレアムのフルネルソン

ご存知レスリングの正統技フルネルソン。鉄腕グレアムの、その‘鉄腕’の由来。70年代にグレアム革命と言われた変革を起こさしめた稀代の存在だったグレアムは、76年にWWF王者となり頂に昇るが、それを頂点に下って行く。

体調も崩し、もう完全に終わりかとも思われたが、東洋の神秘に出会い、ブッダに傾倒するとともにカンフーを学び、黒帯のマスターとして復帰する。坊主に口髭で妙なカラテ型をデモンストレーションし、かつてとは別人のようになっていたが、フィニッシュに使ったのは変わらぬこれ、フルネルソンだった。革命家グレアムの精髄を成す正道のエッセンス。

23 キングコング・ブロディのワンハンドスピンスラム

日本では超獣と言われたブロディの、フィニッシュではないながらも、その超獣振りを象徴するような、デヴァステイトなオリジナルムーヴ。これまた別名ゴリラスラム。片手で回し上げられて放り捨てられる方は、格と桁の違いに沈んで行く。

22 ジミー・スヌーカのスーパーフライ

ダイヴィングボディスプラッシュと言えば、今ではエディ・ゲレロ産の蛙飛びが主流だが、スヌーカのスーパーフライは岩石の塊が加速度ドロップして来る型。硬い筋肉の鉄鉱石の塊が、覆うように落っこちて来る。

トップロープを使うのでこれも反則には違いないが、これもやはり重力ドロップベースなのがミソ。蛙飛びは雅力に欠ける。

21 スコット・スタイナーのベリートゥベリースープレックス

オーヴァーヘッドと体向を入れ替えてのサイド式を、使い分けていろいろ繰り出すアマレスの、特にアメリカ系カレッジスタイルの基本技。ビッグパパパンプなどというヒール様キャラで、この基本技を操るスコットは、特異特出なベビーフェイスで、トリプルHなどはそれがよく分かっていたので、自身のロッカ=スティムボートに起用し、オーヴァーヘッドのこの危険技を何度もバンプした。

ただ本人が、自分が優秀なベビーフェイスであるということをあまりよく理解せず、キャラの自運転には苦労していた。ヒール演技の中で見せる入れ替え式のこの技などは、雨空に晴天を見るような矛盾感で、見ているこちらは、フランケンシュタイナーを喰らったようなライトパニックに襲われる。

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BM50 ⑤

30、グレッグ・ヴァレタインのザ・ハマー

鈍角に肘を固定し、体全体を移行させることで肘を打ち付ける、合法工夫が凝らされた、美しきバーバリックレスリングムーヴ。多くは重力ドロップのエクスキューズと、それゆえの優美さを伴う。それが花咲ける70年代のミッドアトランティックムーヴのミソ。

29、レックス・ルガーのパワースラムとトーチュアラック

マットレスリングなどはほとんど見せず、ジャンピングエルボードロップなどは自分のダメージの方が大きいのではというくらい、ベタ背中から落ちていたルガーだが、カウンターで瞬時に繰り出すパワースラムは、スクープスラムというより正にパワースラムの名称が似合う、力強さが感じられて上手かった。

技としては、この連係がルガーの唯一の見せ場。

そしてそれに続くトーチュアラックは、古のアルゼンチン・ロッカ以来の復刻技。つまり、ロジャースの宿敵だったロッカの技で、フレアーを悶絶させる場面を作りたかったというHQの意向が強く働いている。同時に、ロジャースの時代を終わらせた、ブルーノのカナディアンバックブリーカーの意味も含有させている技マーケティング。

レックスは十分以上にその役割を果たし、この技でフレアーと、フレアー史上でも有数と言える、名勝負を残した。

28、スネイク・ロバーツのDDT

80年代になってから、拡汎力のある技を作り得たことに驚きを持って称える、苦労人ジェイク・ロバーツの、魂のクリエイション。この技が出来、それが流行り定着し、クラシックになっていく過程をつぶさに目撃出来たことを喜ぶ。

27、キング・ローラーのパイルドライヴァー

誰のパイルドライヴァーが最も素晴らしいのかは議論を呼ぶが、これを最も効果的に使っていたのは、キングだろうと思われる。テネシーのアスレチックコミッションを巻き込んで、この技をわざわざ禁止に指定してから、キングに使わせた。

事件も残す危険技だが、ゆえに完璧なフォームとタイミングでのそれは、説得力を持つ、必殺技の貫禄を持つ、数少ないプロ技のひとつ。

名手としては他に、ハーリー・レイス、ポール・ヴァション、ラリー・ズビスコ、バディ・ローズ、アダム・ピアースなど。

26、スーパー・デストロイヤーのスーパープレックス

若くして病死した、ガニアキャンプ出身スコット・アーウィンが遺した、スーパーデストロイな技。MSWA時代のスーパー・デストロイヤーは、これをしっかり倒立させて使ったという。ゆえに強烈過ぎて、自身すぐに使用自粛に走ったとも。だからスーパーDの初期Ver.のこの技は、あまり観た人の少ない、幻の大技。

厳密には大反則技ではあるのだが、これにもやはり、必殺技のムードが充満する。ウィンダムのものなど、目を覆うほど危なかった。これで決まらずにGTSやAAで決まるなど興醒めもいいところ。スーパーAAにはそれなりの迫力はあるが。

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HWD's BM50 ④

35、ティム・ウッズの倒立式パッケージホールド

アトランティッククコーストの60年代のスター、ミスターレスリング・ティム・ウッズの、正統レスリングピン技に精一杯の飾りを付けた、上品奥ゆかしいけれん技。今もアマレスでやれば、多分喝采を浴びる。

34、ブッチ・リードのゴリラスラム

82年、ローディーズにやや先駆けること数ヶ月、ブルース・リードという黒人の新鋭が、フロリダでこの技を流行らせている。リードは当時、AJのインターナショナルチャンプだったDFJをフロリダで破り、一時AJのインターナショナルタイトルを奪っているはずである。

その勢いを駆ってフレアーにも挑んだ彼は、王者を何度もこのゴリラスラムで叩き付け、フレアーに派手なバンプの見せ場を作ってみせている。ゴリラスラムという名称は、この技に関してはリードに附されたのが最初ではなかったか。

33、ボブ・バックランドのハイアングル・アトミックドロップ

背中まで吊り下げるように上げるハイアングルのアトミックドロップは、当時少し流行していて、フレアーもハイアングルのものを、元ウェイトリフターの力自慢を誇示するように、よく使った。

後期にはチキンウィング一辺倒になってしまったWWF王者バックランドの、ジャーマンスープレックスやパイルドライヴァー、ジャパニーズレッグロールなどとともに、最盛期を彩る十八番。

32、ミル・マスカラスのフライングクロスアタック

子供達のアイドル・マスカラスの、子供には真似の出来ない気品あふるる一発。

ドントライディスな風景において、子供達が一番真似のしたい技なのにもかかわらず、そのフォームの何より優雅さの雰囲気がまったく決まらず、自らの格のなさに打ちひしがれるという、格ある大人の芸術技。

仮面貴族はフライングボディアタックのフォームも、目の演技とともに誰にも、ドスカラスにも真似をさせなかった。マードックやフレアーのジャンピングエルボードロップも然り。模倣すらさせないのが、キャントトライディスの芸術品。

31、ミシェル・マクールのヨーロピアンアッパーカット

ヨーロピアンアッパーカットのレスリング論的位置付けについては、あくまでクリンチの過程の、移行における偶発的な殴打様事象?なのだと思う。それは今でも、建前上は。“ヨーロピアンアッパーカット”という名称についても、それが果たして本当に正しいのかは分からない。

しかしヨーロッパ系がよく使う、合法的なレスリング打撃で、外観を描すれば、それはヨーロピアンアッパーカットとしか表現の仕様はない。

鈍角に固定した肘の内側を打ち付けるという、非常に上品な美しい打撃で、こういう打撃を創出したレスリングを、我々は誇りに思っていいという代表的な一技。これで殴りつけることを選んだ時に、我々は人類の知性と理性をあらためて確認する。

史上最美のミシェルのこの技は、美しさの上にも美しさが乗る。カシアスオーノやミサワやバレットあたりと肘で殴り合って、ミシェルがこいつらを殴り倒した時のことを想像すれば、この技の価値が全く理解できる。

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