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BM11

そのマイク・グレアムにGSHを教えたのは、フロリダに居するゴッチの弟子のマツダであり、フィギュアフォーは親父エディー譲りなのだが、マイクはデビューに際しては、わざわざ北部ミネソタの、ガニアキャンプに送り込まれてもいる。だからマイクは、ゴッチ、マツダ、マレンコ、エディー、そしてロビンソンやアイアンシークのコーチも受けている。

このマイクが、徹底的にアメリカの後進を指導しない手はなかったのだが。

マイクらの居た時代、ガニアキャンプのヘッドコーチはビリー・ロビンソン。日本の基礎をゴッチが作ったように、アメリカの以後の多くのマットメンは、ロビンソンによって命を吹き込まれている。言うなればアメリカも日本も、ビリー・ライレーの孫弟子曾孫弟子だらけで構成されていると。

ロビンソンはアメリカを作ったが、ロビンソンのレスリングそのものを受け継がせたわけではない。ロビンソンの流れるようなムーヴは、子供の頃からその水流に身を委ねなければ身につくものでもない。ロビンソンが受け継がせたのは、レスリングとそのエトスが発散する、本身の考え方だ。

ロビンソンはシューターのフッカーだったのかも知れないが、同時にけれんを愛するショーマンでもあった。英国紳士、伊達男、気障野郎、華麗なる男・・。投げキッスに女性の手にするキス。このロビンソン・テクニックと切り離せないこの思想を、レスリングとともにアメリカにフローしたのである。フレアーもスティムボートもローズもパテラも、皆そのショーマンシップはロビンソン流なのである。

ロビンソンから何を学ぶか。それはあのロビンソン流の、投げキッスの仕方を学ぶのである。投げキッスとロビンソン・テクニックやマットワークは、同根を成すのである。ロビンソン流の、優麗なるレスリングの源なのである。ロビンソンスタイルのフラムボーヤンスがそこに見える限り、レスリングの本流の思想のDNAも、アメリカには再生可能だと思っている。

ロビンソンは、誰も真似のできない流麗な動きをベースに、高度かつ複雑なテクニックを、誰も理解出来ないレヴェルでショウイーに操っていた。シュートかどうかになど大した意味はない。高等かどうかに意味がある。ロビンソンの場合、それがなおかつ派手でもあった。

そのテクニックの最たるものが、

9位、ビリー・ロビンソンのワンハンドバックブリーカー。

本来はバックドロップバックブリーカーとかと言うらしいが、日本ではこのテクニックは、ワンハンドバックブリーカーと呼ばれた。

あたかも片手で持ち上げるように、ブッチャーやカマタや馬場などの超巨漢を、目の上よりも高い位置に振り上げて、そこから一本立膝に思い切り叩き落としつける。怪力自慢でもマッスルマンでもないロビンソンが、タイミングだけでカマタやブッチを上空に舞い上がらせる。なぜあんなことが出来たのか、今でも不思議だが、確かにロビンソンは、それを我々の目の前でやってみせていた。

ブッチャーのような巨体をくるくるくるくる、目にも止まらぬわけにもわからぬ複雑ムーヴでコントロールして、あれよという間にワンハンドバック、である。これが出来ずして、プロがダブルリストロックなどばかりにこだわって何になる。

ロビンソンは卍にクイットしていないと言っていた。ということはスクリュージョブで、一本目の電撃の逆さ押さえ込みもダムトゥルーということになる。あの逆さ押さえ込みも超高度この上なかった。

政治力にはいつも勝てなかったロビンソンだが、何が本当に価値あるものなのかについては、我々が連綿と語り継いで行こう。

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NWA会長になっていた男

そのカーン、藤波、マイク・グレアムの、NWAIJrタイトルをめぐる、GSH合戦を伴う極東の一連で、藤波に勝ち切ったのがマイク・グレアム。

スティーヴ・カーンが、マツダ譲りの必殺GSHを引っさげて、王者として来日。それを藤波がGHSで返り討ちに処して、その藤波を倒すためにやって来たのが、カーンの盟友マイク・グレアム。グレアムもこれまた見事なGSHの使い手だった。

実際に藤波を倒した技は、親父譲りのF4LLだったかもしれないが、カーンより藤波より、力強いGSHがもっとも印象に残っている。

藤波はフロリダに追いかけてまで、折角手にした後のPWFタイトルを取り返すが、マイク・グレアムこそは、史上最も藤波を手こずらせた相手。来日時の暴れっぷりはそれは凄かった。

当時は、ダイナマイト・トム・ビリントンが小型ハンセンなどと言われていたが、マイクの暴れっ振りはハンセン以上だった。鋭く重そうなパンチとナックルパートで、藤波をボコボコに追い込んでいた。フロリダの御曹司は凄いラフファイターだなと思ったことを憶えている。

ラフファイト以上に技術も一級品のマイクは、あの当時既に若くして凄い貫禄で、小型ハンセンどころか、ハンセンを従えている風すらあった。いずれNWA自体を仕切ることになるのだという、覚悟を従えていたと言ってもいい。08年のHOFで本当のHOFerとかと一くさりしていたが、世が世なら、CWFの大ボスとして、往時大NWAの会長になっていてもおかしくはなかった。マイク・グレアムとはそういう男だった。

NWAIの後は、フロリダのすべてのタイトルを獲ったことはもとより、AWAライトヘヴィー級タイトル創設に際してはガニアに頼られ、ほぼ無償で初代AWAライトヘヴィー級王者に迎えられている。マイクもガニアキャンプの出身。将来のNWAのボスは、エリートとして、方々で一目置かれる存在だった。

もちろん世界ヘヴィー級のコンテンダーとして、リック・フレアーとも何度も激戦を展開した。リック・フレアーの最大のライヴァルの一人だったと言っても過言ではない。ガニアキャンプ出身の同門で万能のタイプ。フレアーにとっては、ターリー・ブランチャードとチェイスを繰り広げるような嫌さがあったことだろう。

先日、誰かが06年のWWLレジェンドのPPVのメーンを上げていたが、これが実質、マイクのリタイア戦だったのだろう。相手はターリー・ブランチャードとデイヴッド・フレアーwJJの“ホースメン”だったが、実際、マイクとターリーは、フロリダで実力拮抗の凄いフュードを請け負っている。ターリーの最大のライヴァルは、マイクだったかもしれない。だから引退戦の相手だったのだろう。

WCWのPPVでは、ライトヘヴィー戦でライガーと激闘。WCWではグレッグ・ガニアとともにアシスタントブッカーも務めていた。

ヘヴィー級のコンテンダーとしてはサイズに恵まれず、必殺のGSHも功をなさなかったが、藤波より強かったJrチャンプとしてのそれは、藤波より素晴らしいつまり世界最高のそれだった。というわけで、

 BMの10位は、 マイク・グレアムのジャーマンスープレックスホールド。

引退戦ではまだきれいだったので、両腕一杯のタトゥーは、いいおっさんになってから入れたのだろう。大NWAの会長になっていた男は、バイカーとしてタトゥーの腕で終わっていった。終わり方だけは親父に似ていたが。

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BM ⑩

12 ダスティ・ローズのバイオニックエルボー

WWEのものでも、40何位かにあったはずである。肘だけが別の生き物のように動くという、ダスティ・ローズのエルボー群。

額へ首へ、鈍角で時には鋭角で、順手で逆手で、グサグサと何発も突き刺して来るエルボースタッブ。クルクルと回したり回さなかったり。ロープに走ればリヴァースエルボーバッドが飛び、締めには巨体を舞わしてのフライングエルボードロップ。

特にエルボースタッブだったのだろう、バイオニックエルボーと呼ばれたのは。大きく振りかぶって大きく振り下ろす。いろいろなフォームで、モーションで。髪を掴んで片足を大きく上げて、ガツガツと音を立てて。

ダスティは3か月間だったがチャンプとして活動し、チャンプ時代にはチャンピオンらしい技なども使ったが、ハイクロスボディとこのバイオニックエルボー以外は、殆ど上手くはなかった。言い換えればエルボー一本で、あのカリスマのキャリアを作り上げたということ。ミーンズ、ジ・アッメリカンドュリーム。

ダスティはエルボー一本で全てを作った実績を背景に、各地域でブッカーとしての手腕も振るった。その腕はおそらくVKMのもっとも恐れるレヴェルのもので、TNAにかかわろうとするとすぐ呼び戻されたりする。今もNXTをカリスマ一本で引っ張っているのは周知。

11 ドラゴン・フジナミのジャーマンスープレックスホールド

今や本当に大学で講義しているという藤波教授の、数限りなくあるグレイトマヌーヴァーズの、ほんの一つ。

カール・ゴッチの全盛時を知らぬ者たちにとって、ジャーマンスープレックスホールドとはドラゴン藤波の技であり、ビリー・ロビンソンのそれを見たことがない者にとっては、ジャパニーズレッグロールクラッチとは、藤波の技である。

今全盛時のそれらのオリジナルを見たとしても、その感覚は変わらない。藤波の方が凄いと。

藤波の方が凄い。それはあらゆる技に関してそう思う。

ドラゴンロケット=トペは、ロープの間から抜けて顔や肩にペチンと覆い被さる技ではない。高速で一直線に矢のように飛んで、前頭部を相手の心臓目掛けて、射抜くようにぶち当てる技である。

ドラゴンスクリューはえげつない技なので、けれんを弄じてはいけない。デヴァステイトな相手のドレッドかつ不用意なキックなどに、全身全力をもってしなければ対抗できないことを表すのが、ドラゴンスクリューという全霊の片足タックルだ。

本物のドラゴンスープレックスというのは、スープレックスホールドではなく超危険なパイルドライヴァーなので、IWGP実行委員会からバンされるのが正しい。あの技でスープレックスホールドピンするというのは体勢的に無理があり、ホールドピンするための技の形、ましてや、カウント2で返されるレヴェルならやらない方がなんぼかマシというものであろう。

GSHもしかりで、返されるならやらない方がマシ。やるならべた足と鼻先の確固たるブリッジで、かつ強烈なガットレンチを決め、パワーボムのように抑えピンを確実にしなくてはならない。

そういうGSHを、カーン、藤波、マイク・グレアム、剛の、Jr.タイトルターモイル黎明時代は、確かにやっていた。ヒロ・マツダ譲りか。

Jr時代の藤波の技はすべてがAAA+級だった。ヘヴィーになってからのドラゴンスリーパーなどはいただけないが。

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HWD's Best Maneuvers 50 ⑨

13位 バディ・ロジャースのバディ・ロジャース・ストラット

ロジャースは、フィギュアフォー以外にも強烈な大技を有した。例えば、復帰してフレアーと初対決した際に、フレアーを一発で沈めたパイルドライヴァー。ロジャースのそれはデッドリードライヴのようなフォームで放ったという。

しかしロジャースの、最も待たれ、且つ沸くムーヴ、ロジャースのシグネイチャとも言うべきアクションといえば、やはり、バディ・ロジャース・ストラットではないのか。

フットボールプレイヤーがゴールを決めてランペイジするように、カラテガイが息吹オスオスとやるように、レスラーは独特の気取り歩きをする。誰が何時始めたのか、誰彼ともなく紡がれて、伝統は今にも伝へられる。通称レスラーウォーク。

日本の相撲のような、踏み足プラス押し手のような所作がその源流であるとか、タックル切り対応のゆえだとか。多くはやや前かがみに、開いた両手を自分の体の前に出しながら、後ろ足をなるべく後ろへ遠ざけるように。

魔王デストロイヤーもよくやった。極道ダスティも。フリーバーズのマイケル・ヘイズ、プレイボーイ・バディ・ローズ、ファンタスティックスのボビー・フルトン。ターリー・ブランチャードにジェフ・ジャレット。ショウン・マイクルス。そしてバディ・ロジャースとリック・フレアー。最近はドルフ・ジグラーがやりたくて仕方がないようだ。

誰彼ともなく紡ぐ。グッドレスラーはグッドレスラーであるがゆえのショットを決めた後、自然とこのステップを踏みたくなるのか。レスラー式の見栄の切り方として。米ショーマン派の専売というなかれ、ボフの鷹の舞、ヤールグレシュの戦士の行進と、それ様の儀式は古今東西にも見え隠れする。

レスラーは古代から、独特の歩き方で、レスラーであることの何かを表す。レスラーウォークは、レスリングの本質より沸き出でた、レスリングのエッセンスのひとつであると。

近代の米プロでは、ネイチュアボーイからネイチュアボーイへと受け継がれ、ターリー、ジャレット、HBKと、そのネイチュアボーイのごくごく周辺にだけ使うことが許された、特出的にも特別なムーヴになっているが、誰が何処でその許認可を出すかというなら、それは最終的には、やはりファンとの総意なのだろう。この際は、よりエシックな者にだけ、これは許されると。

ネイチュアボーイに足らない者が決めても、ストラットを踏むことにファンは同意しない。心底させるには、ある種の、徳性ともいうべき何かが要る。レスリングだけが涵養可能な徳の究極を、歩き方に表すのだと。

「ネイチュアボーイ」は、このスポーツをキングオブスポーツ足らしめている最終位階。王者の上にも立つ王者が、それに相応しい技を決めて、最後にストラットを踏んでその美学は完遂するのだと。

レスリングファンは、ロジャース・ストラットにリック・フレアー・ストラットに、マヌーヴァの上にも立つマヌーヴァーとしての思いを込める。

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閑話

明日ヘルで、ライバックがいきなり挑むのだが、勝つだろうか? これ、全員が何とも言えなく思っているのではなかろうか。

負けはしな・・いのだろう。負ける風景は浮かばない。では勝つのか? 勝って新王者で、勝ち続けるのか? それに一点の不安も無いとは、首脳部とて思ってはいなかろう。では、・・。

ゴールドバーグの再来と人は言い。本人は、俺は以上だとのたまひ。フレアーUS王者時ののヴァーティカルスープレックスを思わすシェルショックド、確かにアレはJハマーよりもいい。

ゴールドバーグはジュウだったが、今回は相手がジュウだ。我々などが最もジュウらしいジュウだと認識せざるをえない、ポール・ヘイマンと、パイプボンに長けるカルトオブパーソナリティの足腰にも、ダヴィデの星がズラリと並ぶ。

そういえばゴールドバーグのスターケードの相手ナッシュもジュウだったなぁ。いえばスタイナーズも。マレンコ、DDP、メロ、ピルマン、ミッシーにナスティ、レイヴェン。後期のWCWはだらけだった。ジュウは母系社会だそうで、母親がジュウのマッチョにディヴィッド・フレアーも、ジュウなのだそうだ。ちなみに母親がスゥェーデン系ジュウのオバマも、黒人の前にジュウなのだそうだ。今も、ケインにヘイズに、ケリーケリーにテンサイ・・か。

パンクの親友カバナもか。ピアースのタイツにもダヴィデマーク。ECWファウンダーのトッド・ゴードン。NWAファウンダーのサム・マチニク。多い、な。本当に人口の2%に満たない比率しかいないのだろうか。

ホーガンはイタリア系と長らく言われつつも、今ではポーランド系で定着している。ポーランドというのは、数え方によっては90%がジュウとなるそうである。アメリカでも数え方によっては、半分位がジュウとなるのではなかろうのか。そんな実感がある。特にキッシンジャーだのナイだのグリーンだのアーミテージだのキャンベルだのと、軒並みジュウの人にハンドルされている国の住人たれば、2%弱と聞いて驚きを隠せない。20%は確実にいると思っていた。むしろアメリカはジュウの国だと当たり前ぐらいに思っていたと。

日本人を名乗る?テンサイ、ブルームはジュウである。カザール系らしい背中毛。白人にもアジア系にもそれとなく溶け込めるのが、カザール人の強み。ちなみにアシュケナジーグラバー商会代理店のサカモト龍馬も、背中に鬣のような毛があったとのこと。

ポグロムおそれてマラノして、隠れて信じて結束し、地下で黙して支配する、か。我々は99%だとするデモ隊と、残りの1.7%は符合する。

かつて23才ぐらいで、ウィンディシティレスリングという新興団体を、インターナショナルアンフィシアターの7千人に導いたポールE。今や横顔がネイサン・ロスチャイルドにそっくりときている。

よしんばアリメカがデフォルトの憂目に遭っても、アメリカ人はそこ新大陸で依然立ち続ける。破産国家に世界ヘヴィー級タイトルを置くことになる我々も、そこでそれをどう運営していくかを迫られる。

一から見直して嘘を暴き、逆説の世界史にアングロがアングルを立てる逆手で先頭を取るのは、今しか無いように思うのだが。

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