HWD's Best Maneuvers 50 ⑨ | HWD+e

HWD's Best Maneuvers 50 ⑨

13位 バディ・ロジャースのバディ・ロジャース・ストラット

ロジャースは、フィギュアフォー以外にも強烈な大技を有した。例えば、復帰してフレアーと初対決した際に、フレアーを一発で沈めたパイルドライヴァー。ロジャースのそれはデッドリードライヴのようなフォームで放ったという。

しかしロジャースの、最も待たれ、且つ沸くムーヴ、ロジャースのシグネイチャとも言うべきアクションといえば、やはり、バディ・ロジャース・ストラットではないのか。

フットボールプレイヤーがゴールを決めてランペイジするように、カラテガイが息吹オスオスとやるように、レスラーは独特の気取り歩きをする。誰が何時始めたのか、誰彼ともなく紡がれて、伝統は今にも伝へられる。通称レスラーウォーク。

日本の相撲のような、踏み足プラス押し手のような所作がその源流であるとか、タックル切り対応のゆえだとか。多くはやや前かがみに、開いた両手を自分の体の前に出しながら、後ろ足をなるべく後ろへ遠ざけるように。

魔王デストロイヤーもよくやった。極道ダスティも。フリーバーズのマイケル・ヘイズ、プレイボーイ・バディ・ローズ、ファンタスティックスのボビー・フルトン。ターリー・ブランチャードにジェフ・ジャレット。ショウン・マイクルス。そしてバディ・ロジャースとリック・フレアー。最近はドルフ・ジグラーがやりたくて仕方がないようだ。

誰彼ともなく紡ぐ。グッドレスラーはグッドレスラーであるがゆえのショットを決めた後、自然とこのステップを踏みたくなるのか。レスラー式の見栄の切り方として。米ショーマン派の専売というなかれ、ボフの鷹の舞、ヤールグレシュの戦士の行進と、それ様の儀式は古今東西にも見え隠れする。

レスラーは古代から、独特の歩き方で、レスラーであることの何かを表す。レスラーウォークは、レスリングの本質より沸き出でた、レスリングのエッセンスのひとつであると。

近代の米プロでは、ネイチュアボーイからネイチュアボーイへと受け継がれ、ターリー、ジャレット、HBKと、そのネイチュアボーイのごくごく周辺にだけ使うことが許された、特出的にも特別なムーヴになっているが、誰が何処でその許認可を出すかというなら、それは最終的には、やはりファンとの総意なのだろう。この際は、よりエシックな者にだけ、これは許されると。

ネイチュアボーイに足らない者が決めても、ストラットを踏むことにファンは同意しない。心底させるには、ある種の、徳性ともいうべき何かが要る。レスリングだけが涵養可能な徳の究極を、歩き方に表すのだと。

「ネイチュアボーイ」は、このスポーツをキングオブスポーツ足らしめている最終位階。王者の上にも立つ王者が、それに相応しい技を決めて、最後にストラットを踏んでその美学は完遂するのだと。

レスリングファンは、ロジャース・ストラットにリック・フレアー・ストラットに、マヌーヴァの上にも立つマヌーヴァーとしての思いを込める。

Buddy Rogers/Rosen Publishing Group

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