さて始まりました自民党総裁選、私が評価のポイントとしたいのは「新型コロナ対策」、「経済」、「エネルギー、半導体、DX等含めた産業政策」といったところです。
「新型コロナ対策」については今のところ積極的に押したい人はおらずです。
- 中には「新型コロナウイルスなど危険ではなくインフルエンザの方がはるかに危険、マスコミは危機を煽りすぎる、国民にとってはコロナよりも経済が危機、新型コロナウイルスを感染症法第2類から第5類に変更すれば解決する」という、私にとってはとんでもない路線の方もおり、こういう人にはどうか総裁にはなって欲しくないと思います。
- 尤も、記者に質問させない、答えない、気に食わない人のSNSはブロックするような人も困りますが。
- 所得税収と法人税収を引き上げる必要がありますが、これに手を付けずに消費税を引き下げれば、ますます特例公債に頼らざるを得なくなります。
- そこで紙幣発行権のある国はいくら紙幣を刷っても破綻しないという‟MMT理論”に頼るしかなくなります。
税制は総合的に考えねばならず、また税の目的には歳入確保以外に「格差是正」やN分N乗方式のように「少子化改善」などの目的もあり、従来の固定観念に捕らわれない税制改革が必要です。
例えば所得税については「一億円の壁」の原因となっているキャピタルゲインの分離課税制度、法人税については「受取配当金の益金不算入」「租税特別措置による減税」「欠損金の繰越控除」「外国子会社配当益不算入制度」などです。
■分離課税制度
分離課税制度とはどういうことかというと、所得は資本所得(株の売買益など)と勤労所得(一般の所得)に分けられ、勤労所得については累進課税で最高所得税率45%、住民税10%、計55%です。
しかし資本所得に対しては一律15%、住民税5%の計20%です。
高額所得者ほど資本所得の割合が増えますが、その結果、所得と所得税率の関係を見ると、次のグラフのように所得1億円を超えると逆に所得税率(負担率)は下がってゆきます。
受取配当金の益金不算入
「受取配当金の益金不算入」とは、法人が受け取った株式の配当金については税額を低くするという制度です。大企業は子会社や関連会社をはじめ、多くの株式を保有し、その配当金は利益の多くを占めます。大企業の利益は配当金の割合が非常に高いのですが、その配当金に対する税額は低く、これが大企業の実際の税負担は低いと言われる大きな理由です。
また自動車は70%以上が海外生産ですが、海外での企業活動を外国子会社の形にして、利益を配当益として本社に還流すれば、還流額のたった5%しか企業の利益に算入されず、残りの95%は非課税になります。(外国子会社配当益金不算入制度)
租税特別措置による減税
「租税特別措置による減税」は、景気を良くするために、政策上の目的を持って立法される様々な減税措置です。たとえば、企業が積極的に研究開発や設備投資を行った場合に減税となるような措置があります。しかし、そもそも投資に多額の資金が必要であったり、適用の要件が厳しかったりといった理由により、大企業が活用しやすい仕組みになっているのではないかとの指摘があります。
欠損金の繰越控除
過去の赤字と将来の黒字を通算して減税できるという制度が「欠損金の繰越控除」です。中小企業は、多額の赤字が出た場合にはそもそも事業継続が困難となります。一方で、大企業は多額の赤字にも耐える企業体力があり、この制度の恩恵を受けやすいとされます。
※大分前の話しではありますが、メガバンクが納税を免れたとか、トヨタが5年も法人税を免れています。
というような事を考えてきましたが、高市早苗氏の政権構想を見て驚きました。
これまで与野党議員とも触れてこなかった税制について切り込んでおり、本来これは野党から提言して欲しい内容です。
もちろん高市議員はかなり右寄りですし、‟MMT理論”論者のようですから私の考えとは合わない事もありますが、この方、経済に対しては左派といえそうです。
以下引用
ーー前略ーー
「内部留保課税」よりも、「現預金課税」で
次に、嫌われる増税の話です。
ーー省略ーー
「内部留保」は貸借対照表では「貸方」ですが、私は、むしろ貸借対照表では「借方」の「現金・預金」に着目している。
『法人企業統計調査』の2021年1~3月期を見ると、前年同期に比べて「現金・預金」が約34兆円増え、総額235兆円を超えている。仮にこの「現金・預金」だけに1%課税しても、2兆円を超える税収になる。ただし、資本金1億円未満の企業は課税対象外にするという方法も考えらます。
企業規模別の統計は、2019年度分が最新データ。同年度の法人企業の「現金・預金」の総額は、221兆2,943億9,100万円。資本金1億円未満の企業の「現金・預金」総額122兆7,305億400万円を除くと、98兆5,638億8,700万円。ここ数年間の増額傾向を考えると、現状、概ね100兆円と推測できます。仮に1%の課税で1兆円、2%の課税で2兆円ということになる。
ただし、「現金・預金」への課税であれ、「内部留保」への課税であれ、法人課税された後のものなので、「二重課税だ」という不満は出ると思います。
仮に「従業員への分配」を進めることだけを目的にするのならば、各種特別措置を廃止して法人税率を一律25%にして、5%以上の昇給を実施した企業については5%の減税措置を講じる方法もある。
「炭素税」の在り方
これも、増税の話になります。
菅内閣が「2050年カーボンニュートラル」という大きな目標を表明したことから、「炭素税」の議論が活発になってきている。
現在の日本で「炭素税」と呼べるものは、CO2排出量に比例して課税されている「地球温暖化対策税」です。石油石炭税の上乗せ税率として、2012年に導入されました。
「地球温暖化対策税」では、全ての化石燃料に対してCO2排出量1トンあたり289円が課税されています。英国では約2,600円、フランスでは約5,600円、スウェーデンでは約1万5,000円という水準だそうだから、日本は極端に低い。
この「地球温暖化対策税」の税率を引き上げるというシンプルな方法も考えられますが、その税収は「エネルギー特別会計」に繰り入れられて、地球温暖化対策に充当される。
事業者の税負担が増え、消費者に転嫁される可能性が高い場合、その税収の使途は、所得税減税で家計負担を軽減したり、法人税減税で企業の負担を軽減したり、産業構造転換に使ったり、納得感のあるものにできるほうが望ましい。
すると、使途が限定されてしまう「地球温暖化対策税」の引上げ以外の方法を考慮したほうが良い。
現行の「石油石炭税」については、CO2排出量1トンあたりの税負担が、品目ごとにバラバラで不公平感が大きい。原油・石油製品は779円、ガス状炭化水素は400円、石炭は301円。この格差をなくすような「炭素税」を設け、原油・石油製品は低額に、石炭は高額に設定する方法もあるでしょう。
公平で、使途についても納得感があり、事業者の技術革新を促し、成長に繫がるような税制を構築しなければならない。
今後も専門家による様々なアイデアが出てくると思うので、よく注視しながらベストな税制を考えていきたいと思います。「金融所得税制」の在り方
金融所得税制については、「逆進性」が大きい。不満は出ると思いますが、この時期には増税をさせていただきたい。
マイナンバーを活用して金融所得(配当所得と譲渡益)を名寄せして、50万円以上の金融所得の税率を現状の20%から30%に引き上げると、概ね3,000億円の税収増になります。2021年度(予算)の配当所得と譲渡益に係る財務省資料の数字を基に試算です。※筆者注)この税率は住民税込みのものだと思われます。
「給付付き税額控除」の導入を
私は、「格差の是正」を目指す場合にも、「勤労インセンティブを促す」税制にすることが必要だと考えます。
低所得の方に対しては、勤労税額控除である「給付付き税額控除」を導入して支援したい。一定額を下回る所得層に対して還付金を給付するもので、税制を社会保障に活用するので、行政コストも安く済む。
「給付付き税額控除」が最初に議論されたのは麻生内閣の時でしたが、当時は正確な所得の把握が課題だった。2016年に導入されたマイナンバー制度により、正確な所得把握の条件は整っているし、銀行口座情報をマイナンバーに紐づけることによって迅速な給付が可能です。
日本経済が成長軌道に乗れば、将来的には、所得税課税最低限の引き下げとセットで所得税率を一律10%程度にすることで、所得税収総額は減らさずに、各人が努力しただけ報われる税制とすることが私の理想です。
「払う人」と「貰う人」の2分化が進み過ぎると、リスクをとって努力する人が日本に残らなくなってしまう。しかし、コロナ禍の現状では、前記の方法で財源を確保して、「分厚い中間層」を再構築するための格差是正策を断行する必要がある。
以下省略、引用終了
右だ左だという議論は脇に置き、自民党総裁選候補者がこのような構想を公表したことは高く評価したいと思います。
他の候補者の構想にも期待したいと思いますが、このような構想を出せない候補者は淘汰されるべきでしょう。
もちろんこれだけで政治思想や人物が分かるわけではありませんが、小泉政権以来の竹中平蔵氏との関係が絶ち切れそうな人が勝って欲しいと思います。