アジャン・ブラム「マインドフルな毎日へと導く108つの小話」
第82話 二種類の自由
マインドフルな毎日へと導く108つの小話
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自由についての話である。
---あらすじ---
自由には二種類ある。
欲しいものを追求する自由と、欲しいものから解放される自由である。
近代民主主義の国々では、前者の自由が是とされているが、
そうした人々が自由を感じていないというのは驚きに値する。
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これは確かに驚きに値した。
昔、この本を読んだ時の驚きを思い出した。
自由からの逃走 新版
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今では新版が出ているが、最初に読んだ当時はもちろんこちらである。
この表紙が懐かしい人も多いのではないだろうか。
自由主義の国々は自由を守るために様々な対価を支払っている訳だが、
そうして得た自由から逃走してしまうという逆説が驚きであった。
原著が書かれたのは1941年である。
その後で読んだソロー 「森の生活」は更に衝撃的だった。
「ひとは暗闇の中でも自分自身を見失わないでいられるように、なるべく質素な身なりをしているべきである。」(上P47)
と言い、
「家具をもつのは、ありったけの罠をベルトにくくりつけるようなものだ。」(上P119)
と言い、
「今日のひと針は明日の九針を省く、などと言いながら、明日の九針を省くために、今日は千針も縫っている。」(上P162)
と言っている。
実に鋭い。
問題の本質は贅沢にあるのではなく、自分自身を見失う事とそれをもたらす罠なのだ。
最近のミニマリストと言われるライフスタイルも、
問題意識には通じるものがあるのではないだうろか。
こうしたライフスタイルをソローは、この時すでに「自発的貧困」(上P29)と呼んでいる。
原著が書かれたのは1854年であり、
この時代にこのライフスタイルが予見されていた所にもう一つの衝撃がある。
我々が罠にはまり続けているのは無知の故にではないのである。
その50年後に心理学が興り、
更に50年後にフロムが人間の自由に関する解明を試み、
更にその50年後にマインドフルネスの指導者が同じことを指摘しているのである。
「いい生き方」の項でも書いた通り、時代が変わるのを待っていては生き損ねるに違いない。
マインドフルな心は、持つことからも自由である。