献食菜集 -148ページ目

10月

柿 朱色


金木犀  朱色


捨てられた 看板 朱色


駅の 広告 朱色


前の席の ワンピース 朱色


夜 雨の街燈 朱色


朝 消防車 朱色


小学生の 傘 朱色


すべてを 

鳥瞰 したい


トゥバ ホーメイ


夕に 
こおろぎの 声を
秋のかぜが のせてきた


夜空の空気が 澄んでいるので
よく光る ガリレオ衛星と
木星との 間に 視線が 吸い込まれていく


高輪の寺からの 帰路
広い道路には 車も 人も まばらで


送り盆 を 皆が故郷で 過ごして
ほんの 少しの間


ホーメイ がイギルの音とともに
高輪のお寺に響き渡る


風の音 水の音を 表現するのだと
トゥバの 男は 言った


時間をともにした 人間たちの 
幸福と 無事を祈る そのこころは
トゥバの 人たちの こころ


ちいさい目と 小さな鼻の
トゥバの 男


夕に 
広いトゥバの草原に
吹く風を 
やさしい歌ごえが のせてきた
















































 


バウル・吟遊詩人


一弦楽器を 人さし指で
トロトロトロトロ


腰にぶら下げた 太鼓を
もう 一方の手で
トウン タッ  トウン


両足首には 2列に並んだ
鈴が 巻きつけられて
サンスクリッ サンスクリッ


のびやかな 声が 辺りに
響き渡り 彼の黒目は
うるんだように 光を放っている


手足の筋肉の 躍動が
そのまま 拍となり


その小さな バウルの男は
空気をかき混ぜ 振動させた


となりでは 彼の妻が
水晶のように 静かに


高く澄んだ 金属の
拍 で 


空たかく 舞いあがってしまいそうな
彼の 躍動を


舞台の 上に
つなぎとめていた




















































されど 空の青さを知る

やっとのことで
フェリーが 岸から離れる


やはり少しさみしいが
離れてしまったら こっちのもの


この地を 慕って 来たが
住めないと あれば 仕方な


忘れなければ またたずねるし
こられるなら また


スクリューに切られた 白い水のうねりが
水面に 踊りだす


ここに来られて とても 良かった


自分の意識が 拡張したぶんだけ
世界は広がる


ひとところでの 微視的な観察でも
大股での 巨視的な観察でも
大切なものは 見つけることが出来るであろうが


万彩な人たちに出会うのには
思い切って 出かけるのが 良いだろう


貧弱で 矮小な 私の世界から
そうせよ と
そうしてくれよ と


懇願している
声が 聞こえる















































映画館

なんども同じ人間として
記憶を消されながら 
生まれ変わってきて

殺されなければ
決して死ぬ事のない人間


そんな映画を 観た後で
考えた


私は 自分の生は 一回きりだと
実感するのは いつだろう


どういうわけで
出会う人たちと 出会い
出会わぬ人たちと 出会えず

このように先の見えぬ 道を 
歩いているのか


いくらでも 代替のきく
役割に 携わり
一生を 過ごすのは
決して フィクションではない


出会い その人とかかわりあう事で
お互いが 唯一のもので
あることを 
初めて 知る


鏡のように 映じあって
一回きりの 自分の存在を 
知り 知ってもらう のであろう