ジャクソン・ブラウン『Running on Empty』 | Music and others

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 72年にセルフ・タイトルのアルバムでデビューを飾った、「アメリカを代表する偉大なるシンガー・ソングライター」と言う言葉がふさわしいアーティスト、ジャクソン・ブラウン(Jackson Browne)の5枚目のアルバム『Running On Empty』が再度リマスターされてライノ・レコーズ(Rhino Records)より発売されました。
 
 
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2005年11月には、エレクトラ/ライノ名義でボートラ2曲が追加されたDVD AUDIOとのセットになった2枚組でリリースされました。 今回は、ストリーミングが追加になっていますが、何故なのかボートラ2曲がカットされています。
 
この77年リリースの『Running On Empty』は、今までにアメリカ国内で累計700万枚のセールスを記録した、ジャクソン・ブラウンにとって最大のヒット・アルバムです。
 
世界的にも人気はピークに達しており、1980年に組まれた2度目の来日公演では、武道館でのライヴ公演が2日間も組まれていました。 日本全国を回るツアーで全10公演を行いました。 80年ですから、次の6枚目のアルバム、ファンの間では余り評判のよろしくない『Hold Out』がリリースされていたので、「Hold Out」ツアーと言う呼称でした。 11月23日(日)に武道館で観たライヴは本当にダイナミズムに満ち溢れており、最高でしたね。 強いて言えば、ダニー・クーチマー(Danny Kortchmar)が参加しないで、替わりにビル・ペイン(Bill Payne)が加わったダブル・キーボードの編成になっていたことが少し残念でした。
 
1977年3月に初来日した時に、目の当たりにしたライヴは今でも忘れられません。 今はもう存在しない新宿厚生年金会館大ホールでした。 当時の資料、パンフレットやティケットの半券などは処分してしまいました。 77年3月19日(土)でしたが、初めて聴いた”Fountain Of Sorrow
”の凛とした美しさに感動したこと、未だに心に焼き付いています!
 
当時の館内の周囲にいた人達は、筋金入りのコアなファンばかりでしたね。 ある曲のコード進行の意外性だったり、ユニークなコードの響きの素晴らしさを絶賛していたように記憶しています!!
 
個人的に最も好きなアルバムは、非常に硬質なサウンドが展開されている1976年リリースの『The Pretender』なんですけれど。 ただこの『Running On Empty』は、その制作過程が画期的であったことが後世にまで語り継がれるべきアルバムだと言えます。
 
1977年8月から9月に掛けて行われた全米ツアーの毎日の中での様々なシチュエーションに於いて、ドキュメンタリー映画のような形で曲が産み出され、レコーディングされたのです。
 

ライヴ・ステージ、ホテルの一室、バック・ステージのリハーサル・ルーム、走行中のツアー専用バスの中と、ありとあらゆるシチュエーションにおいて、カヴァー曲を含む新曲が熟練したセクション(The Section)と言う最高のミュージシャン達により演奏されています。 まるで”瞬間冷凍”されたかのように・・・・。  

あのキャメロン・クロウ(Cameron Crowe)曰く、「More than a live recording, Running On Empty was closer to a life recording," adding that Browne was backed by his "mightiest band yet.
 
「ライヴ・アルバムというより、もはやライフ(人生の)レコーディング・アルバムだと。 そして、今までにない最強のバンドにバックアップされたジャクスン・ブラウンがいる!」
 
”常に真摯にアメリカ社会に向き合い、真のアメリカを語るシンガー・ソングライター”と惜しみない賞賛を受け続けるアーティストですが、ある時期にはあまりにも政治色を絡めることに癖々して距離を置いたこともあります。 
 
でも、当の本人は全くその姿勢は変わることなく、自らの使命でもあるかのように歌い続けて来ました。 勿論、歌(詩)が心に響いてくるからこそ、時代を超えて変わらず支持されるのですが・・・・。

 

□ Track-listing *****
1."Running on Empty"   (Browne)  – 5:20
 * Recorded live (8/27/77), Merriweather Post Pavilion, Columbia, Maryland
2."The Road"   (Danny O'Keefe)  – 4:50
 * Recorded in room 301 (8/27/77), Cross Keys Inn, Columbia, MD (first — 2:58) and live (9/7/77), Garden State Arts Center, Holmdel, New Jersey
3."Rosie"   (Browne, Donald Miller)  – 3:37
 * Recorded backstage (9/1/77) "in the big rehearsal room", Saratoga Performing Arts Center, Saratoga Springs, New York
 ** Doug Haywood and tour photographer Joel Bernstein sing harmony.
4."You Love the Thunder"   (Browne)  – 3:52
 * Recorded live (9/6/77), Holmdel, New Jersey
5."Cocaine"   (Reverend Gary Davis, additional lyrics by Browne and Glenn Frey)  – 4:55
 * Recorded in room 124 (8/17/77), Holiday Inn, Edwardsville, Illinois
6."Shaky Town"   (Danny Kortchmar)  – 3:36
 * Recorded in room 124 (8/18/77), Holiday Inn, Edwardsville, Illinois
 ** Danny Kortchmar sings harmony.
7."Love Needs a Heart"   (Browne, Valerie Carter, Lowell George)  – 3:28
 * Recorded live (9/17/77), Universal City, California
8."Nothing but Time"   (Browne, Howard Burke)  – 3:05
 * Recorded "on a bus (a Continental Silver Eagle) somewhere in New Jersey" (9/8/77)
 ** Russ Kunkel is credited as playing "snare, hi-hat, and cardboard box with foot pedal." The song was recorded aboard the band's Continental Silver Eagle tour bus (hence the lyrical reference to "Silver Eagle") while en route from Portland, Maine to their next gig in New Jersey. The bus's engine is audible in the background throughout, and its downshift and acceleration can be plainly heard during the bridge.
9."The Load-Out"   (Browne, Bryan Garofalo)  – 5:38
 * Recorded live (8/27/77), Merriweather Post Pavilion, Columbia, Maryland
10."Stay"   (Maurice Williams)  – 3:28
 * Recorded live (8/27/77), Merriweather Post Pavilion, Columbia, Maryland
 ** David Lindley and Rosemary Butler share lead vocals with Browne.
 
 
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Personnel
 Jackson Browne – guitar, piano, vocals
 
 David Lindley – lap steel guitar, fiddle, co-lead vocal on "Stay"
 Danny Kortchmar – lead guitar, harmony vocals (on "Shaky Town")
 Russ Kunkel – drums, snare drum, cardboard box, hi-hat
 Leland Sklar – bass guitar
 Craig Doerge – piano, Fender Rhodes piano, Minimoog, Oberheim synthesizer, string synthesizer, Hammond organ
 Rosemary Butler – background vocals, co-lead vocal on "Stay"
 Doug Haywood – background vocals
 Joel Bernstein – background vocals (on "Rosie")
 
 
 
 
本来であれば、ドイツのパラス社により製造された180gの重量盤アナログで聴いてみたかったのですが、自宅には視聴可能な機器がないので。 
 
78年のオリジナル・リリース(アナログ盤)では、冒頭の”Running on Empty”は何の前触れもなくいきなりスタートしていたのですが、リマスター盤になってからは空白の25秒が付け加えられました。 マスター・テープに録られた、会場のざわめき、聴衆の歓声、あるいは、MCや曲のカウントの一部が何らかの理由で消失したのかも・・・・と言われていますが、真相は分かりません。 これがオリジナルなのですから・・・・。 いつもの様に観客のリクエストの声、“Late for the Sky”がかすかに聞こえますが…。
 
□ ”Running on Empty” by Jackson Browne

 

 

 
 
この曲の疾走感がこのアルバムの全体の雰囲気を形創っていると想います。 今の私の気分にはしっくりくる曲です。
 
そして、続く曲、ダニー・オキーフ(Danny O'Keefe)のカヴァーですが、宿泊先のホテルでのセッションとステージでのライヴレコーディングが巧みに繋げられています。 選曲の妙とこの繋ぎのアイデア、どうやって考え出したのでしょうか? 鳴り響くフィドルは、もちろんデヴィッド・化け物・リンドレー(David Lindley)の担当です。 
 
□ ”The Road” by Jackson Browne

 

 

 
 
 
 
この曲のカヴァーのお陰で、ダニー・オキーフのアルバムも聴きこみましたね・・・・。
 
     ダニー・オキーフ 『Breezy Stories』(ブログはこの辺です↓↑
     ダニー・オキーフ  『So Long, Harry Truman』(ブログはこの辺です↓↑
 
 
Rosie”はリハーサル・ルームでレコーディングされていますが、このアルバム・ジャケットを担当したフォトグラファーのジョエル・バーンスタイン(Joel Bernstein)がバック・コーラスで参加したりと意外な人選が成立しているところが凄いですね。
 
□ ”Rosie” by Jackson Browne

 

 

 
 
 
 
You Love the Thunde”は、1曲目同様にデヴィッド・リンドレー師匠のラップ・スティールが冴え渡る楽曲です。歌心のあるベースが得意なリーランド・スクラー(Leland Sklar)も、ここではドライブ感のあるフレーズを連発しています。
 
Shaky Town”は他人には殆ど自作曲を提供しない、ダニー・コーチマー(Danny Kortchmar)のオリジナルですがいい味を出しています。 今度取り上げようと思っている、ジェームス・テイラー(James Taylor)のワーナー時代の全アルバム、6枚のリマスターボックス・セット、『THE COMPLETE WARNER BROS. ALBUMS: 1970-1976の中にもダニーのオリジナルが収められています。 そう、『One Man Dog』の中のBack On The Street Again”です。
 
□ Shaky Town” by Jackson Browne

 

 

 
 
 
続くバラッド、今は亡き故ローウェル・ジョージ(Lowell George)とヴァレリー・カーター(Valerie Carter)とによる共作曲です。 とても美しい曲ですが、ダニー・コーチマーのオブリガートが冴えています、何気ないふれーずですが・・・・・。
 
□ ”Love Needs a Heart” by Jackson Browne

 

 

 
 
 
 
そして、その余韻を楽しむ様に次の曲に引き継がれます。”Nothing but Time”は、何とツアー専用に仕立てた大型バスの中で走行中にレコーディングされています。間奏の部分では、バスの走行音がアコギの音のバックで聴こえますね。 この辺りの意匠も偶然ではなく、敢えてカットせずに効果的なSEとして残したのでしょうね。
 
そして、エンディングに相応しい、でも正面きってこんな事言うのは結構気恥ずかしい気がしてしまう”The Load-Out”に、切れ目なくメドレーで続く”Stay”で幕を閉じます。 ジャクスンだから許されるような気がしますが、日本語の訳詞で歌っていたのは故桑名正博さんでしたね、確か・・・・。
 
 
 
□ The Load-Out~Stay” by Jackson Browne

 

 

 

 

 

 

 
1980年11月の武道館でも、アンコールでいきなりこの曲を演りましたね。 私はデヴィッド・リンドレーの奇声の方が印象的でした、楽器の演奏振りとは全く異なるヴォーカル、本当に”化け物”のような奇才ですね、今でも変わらずに。
 
 
何れにしても、こんな画期的ではあるが手間のかかるコンセプトのプロジェクト、最後までやり遂げるなんて、その労力たるや凄まじいと思います。 関わったスタッフの献身的なサポートに拍手したいと思います!
 
どのくらいのヴォリュームのミュージック・ソースが録られたのか、いつか必ず完全版らしきボックス・セットをリリースして欲しいものです。
敢えて、映像の無いライヴ・ドキュメンタリーとしたところに制作スタッフの知恵を感じます、ひょっとしたら結果論かも知れませんが…。
 
 
来日すれば可能な限りライヴには参加したいと思わせるアーティストの一人です。 
このブログでも少しばかり取り上げた過去の内容を挙げておきます。
 
            『Southern Blood』- グレッグ・オールマンの遺作(ブログはこの辺です↓↑
 
            ジャクスン・ブラウン 東京公演 2015年3月13日(ブログはこの辺です↓↑
 
            ジャクスン・ブラウン 『I'll Do Anything』(ブログはこの辺です↓↑
 
            ジャクスン・ブラウン 『Standing In The Breach』Vol. 1(ブログはこの辺です↓↑
 
 
 
さて、個人的なことですが、8月中旬より、“Microsoft Life-cycle Policy“に呼応するIT関連のプロジェクトがスタートしており、土日両日共に毎週の様に休日出勤しております。
今回のブログ更新の後、今まで以上にブランクが長くなると思います。  でも、音楽はずっと聴き続けています。
 
ただ、余裕がないとブログをアップさせる事は難しいです、私の場合は。 
更新はしばらくできないかも知れませんが、時々立寄ってください。

 


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