ダニー・オキーフ 『Breezy Stories』 | Music and others

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このアルバムをまた引っ張り出して聴いたキッカケは、雑誌『BRUTUS』と山下達郎氏のラジオ番組『Sunday Songbook』とのコラボ企画である『BRUTUS Songbook』のある一節です。 BRUTUS Songbook - 山下達郎(ブログはこちら↑↓
 
山下氏の挙げた影響を受けた音楽関係の人達の中に、偉大なプロデューサーの一人であるアリフ・マーディンArif Mardin)が挙げられており、そのページの片隅にこのアルバムが取り上げられていました。

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さて、ダニー・オキーフDanny O’Keefe)名前を知ったのは、ジャクスン・ブラウンJackson Browne)の77年リリースのアルバム、『Running on Empty』でカヴァーされた楽曲、”The Road”の作者としてです。 オリジナルの楽曲を聴いて興味を持ちました。
 
□ Danny O'Keefe - "The Road" from O'Keefe

 

 

元々は、この曲は72年リリースの2ndアルバム、『O’Keefe』に収録されていたタイトル通りの内容の楽曲でした。 朴訥でシンプルな語り口のシンガー・ソングライターらしい曲調です。
 
何と言っても、彼の才能?に目を付けていたのが、アトランティック・レコーズの創業者であり、偉大なプロデューサーであった、アーメット・アーティガンArmet Arteigan)だと云うことから、期待を持って見られていたわけですね。 2作目以降もアリフ・マーディンArif Mardin)のプロデュースで、バッキング・メンバーも錚々たる顔ぶれが揃っています。

 
60年代後期の事ですが、アトランティック・レコーズ主催のテレフォン・オーディションに応募したのがキッカケと言われています。





 
□ Danny O'Keefe - "Good Time Charlie's Got the Blues" from Breezy Stories

 

 

彼の楽曲、”Good Time Charlie's Got the Blues”がビルボードのヒット・チャートの9位に入るヒットとなり、一躍その名前が知られるようになります。 この楽曲、その後、ウィリー・ネルスン(Willie Nelson)、エルヴィス・プレスリー(Elvis Plesley)、リオン・ラッセル(Leon Russel)など多くのミュージシャンにカヴァーされています。
 
この異形のジャケットを使った3枚目のアルバム、漂う猥雑なイメージとは全く異なる内容であり、バックのリズム隊の刻むビートが当時のトレンドであったニューソウルの16ビート、あるいは、サザーン・ソウルのニュアンスだったりで、同時代のSS&Wのアルバムと少し違うテーストがします。
 
73年リリースですが、何故もっと評価されてセールスに結び付かなかったのでしょうか?
 
また、原題は『Breezy Stories』ですが、『そよ風の伝説』と云う邦題は“当たらずも遠からず”でしょうか。
 
リイシューされたアルバムには、ボーナス・トラックとして上に挙げた知名度の高い楽曲、2曲が追加されています。 ある意味非常に価値ある追加と言える判断ですね!
 
オリジナルは全11曲からなるコンセプト・アルバムと言えます。 全体の印象を一言で言えば、ダーカーな部分を持ったニルソンHarry Nilsson)か、或いは、ジミー・ウェッブJimmy Webbと言う感じではないでしょうか?
 
□ Tracking List *****
1. Angel, Spread Your Wings
2. Magdalena
3. Junk Man
4. Portrait in Black Velvet
5. She Said "Drive on, Driver"
 
6. Steppin' Out Tonight
7. If Ya Can't Boogie, Woogie (You Sure Can't Rock & Roll)
8. Mad Ruth/The Babe
9. Catfish
10. Edge
11.Farewell to Storyville (Good Time Flat Blues)
 
□ Bonus track
12.The Road
13. Good Time Charlie's Got the Blues
 
□ Personnal
Danny O'Keefe                 Fiddle, Guitars Vocals, Vocals (Background), Voices
Donny Hathaway              Keyboards          
Hugh McCracken             Guitar (Electric), Guitar (Rhythm), Slide Guitar
Gordon Edwards     Bass
Bernard "Pretty" Purdie  Drums
Airto Moreira                    Percussion, Tambourine
Norman Pride                    Chant, Congas, Percussion
Montego Joe                     Conductor, Congas
Richard Davis                   Bass (Upright)
 
Hayword Bishop               Percussion
David Bromberg               Dobro, Guitar, Guitar (Acoustic), Guitar (Electric)
Dr. John(Mac Rebennack)         Keyboards
Hugh McDonald              Bass
Steve Mosley       Drums
 
The Sweet Inspirations ;Cissy Houston , Myrna Smith , Sylvia Shemwell     Vocals (Background) on 5
 
Arif Mardin                       Marimba, Producer, Remixing, String Arrangements, Vibraphone, Vocals (Background)
 


なお、各曲毎の参加ミュージシャンの情報は、ダニー・オキーフのウェブ・サイトに掲載されています。(サイトはこちら↑↓
 
 
1曲目の”Angel, Spread Your Wings”は、いわゆるティピカルなSSW的なニュアンスの楽曲ですね。この曲は、ジュディ・コリンズ(Judy Collins)がカヴァーしています。
 
□ Danny O'Keefe - "Angel, Spread Your Wings" from Breezy Stories

 

 

 
 
次の”Magdalena”は、独特の雰囲気を持つダニーならではの楽曲ですね、スライド・ギターとエレピの絡み具合が最高ですね。 エレピは間違いなく、ダニー・ハサウェイDanny Hathaway)その人ですね、7曲に参加しているので脇役とは言えない貢献をしています。
 
□ Danny O'Keefe - "Magdalena" from Breezy Stories

 

 

 
 
同じファースト・ネームが縁だった訳ではないですが、ダニー・ハサウェイ自身がこの曲をカヴァーしています。収録されているのは、あまり評価されていないであろう、最後のスタジオ・アルバムである『Extension of a Man』(邦題は「愛と自由を求めて」)です。 何故か、ゴードン・エドワーズヒュー・マクラッケンという同じ顔触れのミュージシャン達が参加しています。 また、レオ・セイヤーLeo Sayer)もカヴァーしていました。
 
□ Danny Hathaway - "Magdalena" from Extension of a Man

 

 




 
 
次の”Junk Man”は、ワウワウ・ギター(弾いているのは、ヒュー・マクラッケンです!)が縦横無尽に駆け巡るストリート・ファンクの様な仕上がりです。 歌詞の内容は、反ドラックについて言及しています。 終盤のインスト部分は、とてもダニー・オキーフのアルバムの曲には聴こえない位の昂ぶりがあります。
 
□ Danny O'Keefe - "Junk Man" from Breezy Stories

 

 



 
 
4曲目の”Portrait in Black Velvet”は一番不思議な曲調で、かなりミステリアスで異形な曲であり、英国のトラッド・フォーク、ケルティックの古い詠歌のような印象を受けます。
 
She Said "Drive on, Driver"” は、6分近い凄いグルーヴに埋め尽くされたファンク、ニュー・ソウルで真っ黒な曲です。ドラムとパーカッションとが織りなすビートの上をダニー・オキーフのソウルフルなヴォーカルが走ります。 このアレンジを本当に意図したのか、結果的にそうなったのか、この辺りの真相は分かりません。
 
□ Danny O'Keefe - "She Said "Drive on, Driver"" from Breezy Stories

 

 



 
 
バーナード・パーディー(Bernard "Pretty" Purdieならではのスネア&ハイハット・ワークが冒頭から全開ですね、凄い! そして、ダニー本人のエレクトリック・ギターによる風変わりなソロ・フレーズが満載で、アクセントになっています。 
 
何処か、亡くなったウォルター・ベッカーWalter Becker)のことを想い起こしました。(ブログはこちら↑↓
 
次の5、6曲目(アナログで言えば、B面の1、2曲目)が彼の本来の姿のように思いますが、どうでしょうか?
 
Steppin' Out Tonight”はもう50年代のブギウギの様でもあり、バックでピアノを弾いているドクター・ジョンDr. Johnが歌っているような錯覚を覚えてしまう。
 
 
次の”If Ya Can't Boogie, Woogie (You Sure Can't Rock & Roll)”もジェリー・リー・ルイス(Jerry Lee Lewis)が演奏しているかのようなオールド・ロックンロールですがいいです!。
 
 
Mad Ruth/The Babe”、これはダニーのストーリー・テラーとしての本領が発揮された曲です。 ある男がベイブルースの事を回想している内容であり、試合での一コマだったり、Mad Ruthと呼ばれた女性に翻弄された話が語られて行きます。
 
□ Danny O'Keefe - "Mad Ruth/The Babe" from Breezy Stories

 

 

 

 
 
Catfish”、この曲は、何処かジョン・セバスチャン(John Sebastian)の様な感触がある、カントリー・ブギーです。
 
The Edge”は短いが直接的な表現で、男女の非日常的な出会いについて描写しています。
 
オリジナル・アルバムの最後に来るのが、”Farewell to Storyville (Good Time Flat Blues)”です。
 
ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)か、ビリー・ホリデイ(Billie Holiday)が歌っていそうなディキシー・ジャズかラグタイム・ブルース、30年か40年代に戻ったような錯覚を覚える曲ですね。 バックでは、ドクター・ジョンがピアノ、そして、デヴィッド・ブロンバーグ(David Bromberg )がギターといい味を醸し出しています。
 
 
75年にはジョン・ボイラン(John Boylan)のプロデュースで、大ブレークを果たす前のイーグルスのメンバー全員、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstad)、デヴィッド・リンドレー(David Lindley)が参加したアルバム、『So Long, Harry Truman』がリリースされました。 

悪くは無い内容ですが、このアルバムほどの濃密さはありませんでした。 詳細は、次のブログで触れてみたいと思います。
 

なお、ダニーは現在でもマイペースでの活動を続けています。




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