ダニー・オキーフ  『So Long, Harry Truman』 | Music and others

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BRUTUS Songbook』に端を発してから(ブログはここ↓↑)、ダニー・オキーフDanny O’Keefe)三昧になっていました。
 
隠れたる名盤の誉れ高い3枚目のアルバム、『Breezy Stories』(取り上げたブログはここ↓↑)に続いて制作された『So Long, Harry Truman』です。
 
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アルバム・タイトルは、当時アメリカを揺るがしたウォーターゲイト事件とそれに伴い現職大統領であったニクソン氏の辞職に言及した曲です。 
 
ダニー・オキーフ(Danny O’Keefe)には失礼かもしれませんが、見た目や楽曲から受ける印象とは大きく異なり、彼は70年代より環境活動家としての支援活動を続けて来ております。 ですから、反原発のムーヴメントの一環として開催されたライヴである、ノー・ニュークス(No Nukes: The Muse Concerts For a Non-Nuclear Future)にも参加していたそうです。 今でも、このことは誇りに思っているそうです。
 
75年リリースのアトランティック(Atlantic Records)レーベルでの3枚目、そして最後のアルバムになります。 結果的にはセールスには結び付かなかったた為に、この後ワーナー・ブラザース(Warner Bros. Records)に移籍して2枚のアルバムを制作しました。
 
その後は、独立系レーベルにてマイペースでの活動を続けています。
 
□ Tracking List *****
1.So Long, Harry Truman
2.Quits
3.Rainbow Girl
4.The Delta Queen
5.The Kid/The Last Days
6.Covered Wagon
7.It's Been a Good Day
8.Fiddler's Jamboree
9.Steel Guitar
10.Hard Times
 
□ Personnal
Danny OKeefe: guitar
 
Glenn Frey: guitar
Larry Knectal: Piano, bass
Andrew Gold: piano
Jim Fielder,Chuck Domanico,Randy Meisner: bass
 
Don Henley,John Guerin,Gary Mallaber: drums
David Lindley: lap steel guitar
Sneaky Pete Kleinow: steel guitar
Tom Scott: woodwinds
John Boylan: mellotron
David Grisman: mandolin
 
Don Henley, Bernie Leadon, Linda Ronstadt: background vocals
 
Produced by John Boylan
Engineers: Rick Heenan, Village Recorders; Paul Grupp, Capitol Studios; Jim Gaines, Kaye-Smith Studios
 

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1曲目がアルバム・タイトルと同じ楽曲になります。 第33代大統領であり、誠実で実直であったと言われているハリー・トゥルーマン(Harry Truman)を引き合いに出して、当時アメリカ国内に渦巻いていた政治の衰退を比喩的に表現しているようですね。 直接的な表現は見られませんが、トゥルーマンが執務室に置いていた置物に書かれていた有名な言葉、「the buck stops here」(直訳は「バック(ポーカーで用いられる親の印)はここで止まる」、意味は「ここが終点だ=ここが決定の場だ」)をそのまま引用しています。
 
余談ですが、あのシカゴ(Chicago)も丁度同時期の75年にそのものズバリの楽曲、”Harry Truman”をレコーディングしてシングル・カットしています。 日本人からすれば、原爆投下が決定された当時の大統領であり、彼が元凶のように伝えられている面があり複雑ですね。 サウンドは、ダン・フォーゲルバーグ(Dan Fogelberg)を彷彿とさせますが、より素朴でくたびれた感じにしたと言うのが最もフィットしています。
 
□ Danny O'Keefe - "So Long, Harry Truman" from So Long, Harry Truman

 

 

 
 
 
 
次の曲、“Quits”はこのアルバムの中では最もお気に入りの曲ですね。 スニーキー・ピート(Sneaky Pete Kleinow)のスティール・ギターとリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)の素晴らしいハーモニー・ヴォーカルが際出させていると思います。
男女の関係の終わりを描いたシンプルな歌詞です。
 
□ Danny O'Keefe - "Quits" from So Long, Harry Truman

 

 

 
 
この曲、”Rainbow Girl”何がレインボーなのかは良く判りませんが、ラヴ・ソングです。 元々ギタリストだっただけに、エフェクト(フェイズ・シフター)を掛けたフレージングがいいアクセントになっています。
 
 
 
次の”The Delta Queen”は、ピアノをバックに歌うオールドタイミーな楽曲で、ダニーの得意とする曲調だと思います。
 
 
 
 
中盤の”The Kid/The Last Days”で、とてもjazzyで跳ねるようなビートを叩き出すのは、西海岸ではお馴染みのジョン・グエリン(John Guerin)です。 細かい符割りが巧いですね。 
イントロとアウトロでは、スペインの詩人の詩や諺の一節が語り調で重ねられています。 歌詞との関係性は不明ですが。 何処か、当時のジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)の傑作アルバム、『Court and Spark』を想い出させます。
 
 
折り返しの6曲目、”Covered Wagon”は、イーグルス(The Eagles)の3rdアルバムのハード目のカントリー・ロック、“James Dean”を彷彿させる曲ですね。 
ハープが入っていると思いますが、クレジットはありません。ギターのオーヴァーダブはダニー一人でやっていますが、良いところでファイド・アウトしてしまいます。
 
 
 
7曲目の”It's Been a Good Day”ですが、バックで鳴り響くシンセのような音は、トム・スコット(Tom Scott)の操るリリコン( Lyricon )のようですね。
 
 
 
終盤の”Fiddler's Jamboree”はオールドタイミーなジャグタイム・ブルーズであり、ジム・クエスキン・ジャグバンド Jim Kweskin Jug Band )が演っているような錯覚を覚えますね。
 
 
続いての”Steel Guitar”は、71年リリースのセルフ・タイトルのアルバム『O’Keefe』に収録されていた楽曲ですが、再登場でガラリと雰囲気を変えています。
メンバーを見れば、Danny OKeefe with the Eagles と言う豪華メンバーです。グレン・フライ(Glenn Frey)のスライドに、デヴィッド・リンドレー(David Lindley)によるラップ・スティールのトゥイン・ギターと言う豪華さです。
 
 
 
最後の曲は、”Hard Times” と言う曲ですが、内容は少し宗教的な意味合いを持っています。 
 
楽曲にまつわる話よりも、音楽雑誌による彼のインタヴューを読むとより彼の生き方やキャリアがどう培われたのか分かり、面白いと感じたので紹介してみたいと思います。 彼がコーヒーハウス・サーキットを廻っている時に知り合った数多くの人達の中では、やはり、ボブ・ディラン(Bob Dylan)は別格の存在であったようです。63年に初めて出会い、その後楽曲を共作したりしています。
 
また、観客として見たライヴでのベストは、リトル・リチャード(Little Richard)とジェフ・ベック(Jeff Beck)が在籍していた後期ヤードバーズ(The Yardbirds、メインアクトは、何と!ビーチボーイズです!!)だそうです。
 
テレキャスターをプレイするジェフ・ベックの変幻自在なプレイには釘付けになったそうです。ステージに備え付けのギターアンプ、Vox Super Beatle amp を完全に飛ばしてしまったとのこと。
次にステージに登場した、ビーチボーイズのアル・ジャーディン(Al Jarden)は、喚き散らして自分のギターを放り投げたそうです! アルも若かったんですね、血湧き肉踊る頃があったなんて(笑い)。
 
そして、70年代に2つのメジャー・レーベル、アトランティック・レコーズ(Atlantic Records)、ワーナー・ブラザーズ(Warner Bros.)を渡り歩いた彼ならではコメントが興味深かったです。二つのメジャー・レーベルは全く異なる世界観を持つレーベルだったと・・・・。
 
アトランティック・レコーズでは、オフィスとレコーディン・スタジオとが同じ敷地内にあり、数多くのミュージシャン、 ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)を筆頭に、ホールアンドオーツ( Hall and Oates)ベット・ミドラー( Bette Midler)、キング・カーティス( King Curtis)等に出会い、会話を交わし、お互いのレコーディング・スタジオを自由に行き来し演奏に加わったそうです。 会社を経営する人たちの誰もが、心の底から音楽を敬愛している空気が満ち溢れていたそうです。
 
そして、その筆頭がアリフ・マーディンArif Mardin)その人であり、今でも彼のことを尊敬し想いを 馳せることがあるそうです。

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それに比べると、ワーナー・ブラザース(Warner Bros.)ではより多様なミュージシャンが所属していたにも関わらず、顔を合わす機会も殆ど無く、ボニー・レイト(Bonnie Raitt)と知己を得るくらいだったと。 スタジオとオフィスとが全く異なる立地だった以外にも、何か違う空気感だったとは本人の追想です。
 
ただ、ワーナーでは期待されたにも拘らず、全くヒット曲を産み出すことが出来ずに自ら去る以外に選択肢はなかったと、試行錯誤して色々とやり過ぎたのかも知れないと・・・・・。
 
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