【三橋貴明】”消費税に関する信じ難い歴史的事実”の混同【グローバリズム】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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 19日、私は、三橋貴明の18日のブログ記事を批判する記事を公開した(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12412767011.html)。

 この記事では事実関係に関する論述のみに留めたが、それ以外にも疑義がある。

 事実関係がどうあれ、論理的におかしいのではないか。

 香山健一と土光敏夫のくだりだ。

 

 

 

「消費税に関する信じ難い歴史的事実」 三橋貴明ブログ2018年10月18日

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12412669678.html

 

「 もっと吃驚したのは、「グループ1984年」の中心だった「香山健一」という人物です。


 香山は政治学者ということになっていますが、全日本学生自治会総連合(全学連)の第二代委員長です。


 1956年に、全学連の委員長に就任した香山は、日本共産党との対立後に、島成郎とともに共産主義者同盟(ブント)を結成した「バリバリの極左」でございます。(この種のレッテル呼称は好きではないのですが、他に呼びようがないので)


 この香山が中心になった「グループ1984年」が文芸春秋で発表した「日本の自殺」が、当時の経団連会長であった土光敏夫の目に留まり、大型間接税導入の動きが始まったのです。

 

 土光氏は日本人グローバリストの「祖」のような人物であったため、「日本の自殺」が気に入ったのは当然でしょう。」


 

 

 

 三橋は、「香山健一=共産主義」とし、「土光敏夫=グローバリスト」とする。

 土光が香山が執筆ないし主導した「「日本の自殺」が気に入ったのは当然」と言うのは、「香山=共産主義=土光=グローバリズム」という図式に立っていることになる。

 さて、チャンネル桜など保守系メディアで「共産主義とグローバリズム(新自由主義)は同根」というような話を聞くことがある。

 馬渕睦夫氏などがこういう話をしており、保守系の人に割と人気のある言説であると思う(https://ameblo.jp/getthegear/entry-11938582245.htmlhttps://ameblo.jp/getthegear/entry-12414390477.html)。

 しかし、(毎回「いいね」を押してくださるranmarucoさんには申し訳ないが)これは奇を衒った(ユダヤ)陰謀論の域を出ず、疑った方がよいものだと私は考えている。

 

 

 

 私が聞いた理屈はこういうものだったと思う。

 「共産主義は世界革命を目指す。新自由主義・グローバリズムも他国に市場開放を迫り、制度を変えようとする。両者は(ユダヤ的で)同根だ。」というものだ。

 一見もっともらしいが、2点、疑義がある。

 1つは、本当に同根なのかということ。

 もう1つは、同根だろうがそうでなかろうが、別物なのではないかということだ。

 ラグビーとサッカーは同根だが、「同根だからラグビーとサッカーは同じ」などと言う人はいまい。両者は別物だ。

 同根だから同一視できるとは限らない。

 

 

 

 共産主義・社会主義は、自由経済(自由国家)に対する批判から生じたものではなかったか。

 産業革命期、自由な経済活動が行われたが、労働条件は劣悪で、貧富の格差が拡大したため、資本家を打倒しようという共産主義・社会主義が生じ、広がったのではなかったか。

 共産主義・社会主義は自由経済に対する批判であり、資本家(グローバル資本を含む)は打倒の対象となる。

 自由な経済活動を肯定する新自由主義・グローバリズムと、これを否定する共産主義とは、同根でもなければ、本質的に全くの別物だろう。

 「現行制度と異なる制度を志向する」という共通性を見出して同根・同質とすると、全く方向性の違うものを同一視して混同してしまう。

 自由の増進も自由の抑圧も、現行制度を変えるものだとして一緒くたにしてしまうと、新自由主義・グローバリズムと共産主義を同一視してしまう。しかし、両者は180度違うものだと言えよう(新自由主義の内容が不明確ではあるが、その問題は置いておく。関連記事としてhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-12345761876.htmlhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-12362415709.htmlなど)。

 これらを同一視するのは無理やりなこじつけに思えるのだが、抽象的な思想の話になると通用してしまいやすいようだ。

 ていうか、かく言う私もいったんは信じたことがある。

 馬渕氏のように、元外交官で、保守言論業界で認められている人が発言すると、そういうものなのかなと信じてしまう。

 しかし、新自由主義批判が共産主義勢力側から出てきたものであることなどを知ると、「新自由主義・グローバリズム=共産主義」という図式に違和感をおぼえるようになってくる(上念司「経済用語 悪魔の辞典 ニュースに惑わされる前に論破しておきたい55の言葉」(イースト・プレス、2015年)69~73ページ。https://ameblo.jp/bj24649/entry-12181970348.htmlにて引用)。

 ちなみに、三橋(・中野剛志)は、共産党を「反グローバル化」に位置づけている(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12297106650.html)。共産党は反グローバリズムなのに、「共産主義=グローバリズム」となるのはなかなか合点がいかない。

 

 

 

 

 

 

 そう考えると、どうだろう。

 三橋が述べるように、「土光氏は日本人グローバリストの「祖」のような人物であったため、(共産主義の香山が執筆・主導した)「日本の自殺」が気に入ったのは当然でしょう。」つまりは「香山=共産主義=土光=グローバリズム」と思えるだろうか。

 私は「日本の自殺」も読んでいないし、土光がいかなる経済思想を有していたかも知らないが、三橋が述べるように香山は共産主義であり、土光はグローバリストであるならば、土光が香山らの「日本の自殺」を気に入るとは考えにくいだろう。

 特に土光は経団連会長であり、共産主義者にとって打倒の対象の最たるものだと考えられる。「日本の自殺」が共産主義で、これを土光が広めたならば、それはまさに土光にとって「自殺」行為だ。

 三橋の論述は、「当然」どころか、そんなことがあり得るのかと、違和感が強い。

 私も詳しいことは知らないが、三橋の記述をおいそれと鵜呑みにするのは危なく、いったん疑ってみた方がよいと思う。

 

 

 

 19日の記事で述べたように、香山は反共に転向し、「グループ1984年」は「日本の自殺」の前に2本の共産党批判の論文を出した。

 そういう経緯があった上で、土光は「日本の自殺」に関心をもった。三橋ブログにはこの経緯が抜け落ちている(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12412767011.html)。

 ところで、土光はグローバリストで反日のとんでもない男なのだろうか。

 私のブログを見るような人であれば、保守言論誌「正論」(産経新聞社)は知っているだろう。

 この「正論」を含むフジサンケイグループは、土光の業績を称えて「土光杯」という弁論大会を開催している。

 来年で第35回を迎える。

 いやはや、「正論」はグローバリズムの反日極左言論誌なのだろうか。

 三橋は自身のYouTubeチャンネルで「正論」元編集長の上島嘉郎氏の「新プロジェクト」を始めるが、土光をグローバリストとして相容れない存在とするなら、この企画も考え直した方がよいのではないか(https://www.youtube.com/watch?v=col7ianZvb4)。

 土光の人物像は私も知らないが、こういう大会が存在することを考えると、土光をグローバリスト呼ばわりして拳を振り上げる対象にするのは控えた方が無難だと思う。

 

 

 

 

「第35回土光杯全日本青年弁論大会 出場者応募エントリー」 産経iD

https://id.sankei.jp/v/?VID=user.event.entry&OP=detail&ID=226

 

「今大会のテーマ 私の100歳プロジェクト

日時 論文締切 2018年11月14日(水)郵送:消印有効 メール添付送信:16時

場所 大手町サンケイプラザ(東京都千代田大手町1-7-2)

(中略)

フジサンケイグループは、行政改革に大きな足跡を残した故土光敏夫臨時行政調査会長の「行革の実行には若い力が必要」との呼びかけに応じて1985年に「土光杯全日本学生弁論大会」(当時)を創設しました。受賞者の論文は産経新聞に掲載され、さらに最優秀賞土光杯受賞者の論文は月刊「正論」にも掲載されます。言葉と情熱で自分の可能性を切り開き、政界や財界、言論界などで活躍中の過去出場者に続いて自らの才能を発揮する若者をお待ちしております。

(中略)

大会テーマ 「私の100歳時代プロジェクト」 日本は誰もが100歳まで生きることが当たり前となる時代を迎えつつある。日本人が経験したことのない時代を前に、どうすれば個人の意識や組織の在り方、社会構造の変革を促せるか。働き方改革や災害問題対策、介護問題、外国人労働者の増加や障害者の活躍といった多様性など、若者の立場から大胆で斬新な提言を求めます。」

 

 

 

 香山健一や土光敏夫、さらには「グループ1984年」などについて知らないのは仕方ないと思う。

 しかし、「共産主義=新自由主義・グローバリズム」という認識に違和感を持つならば、リブログ元の三橋の記事をおいそれと信じることはあるまい

 保守系の人々の間で根強く「共産主義=新自由主義・グローバリズム」という認識が見られる。

 これは全く異質のものを混同していると思われ、私としては、(重ねてranmarucoさんには申し訳ないが、)この認識は疑ってみた方がよいと思う。

 新自由主義批判・グローバリズム批判自体の信憑性が怪しいのに、さらに新自由主義・グローバリズムと共産主義を混同すると、わけのわからない話になってしまうおそれを感じる。

 

 

 

 

 

 

◆ 余談1 ◆

 

 


 私は、19日(5時公開)の記事で、18日の三橋ブログをリブログした。

 

 

 

 

 

 

 アメーバブログは、リブログをすると、リブログ元の記事にリブログ先へのリンクが自動で作られる。

 28日、三橋の当該記事を確認したところ、私の上記記事へのリンクが非表示になっていた。

 何か「やましい事情」でもあるのだろうか(https://ameblo.jp/nozomi2016/entry-12264045398.html)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 余談2 ◆

 

 

 

 20日、チャンネル桜が「【討論】表現者クライテリオンスペシャル「消費増税は安倍退陣と日本滅亡への道」[桜H30/10/20]」という番組を配信した。

 出演者が気になったため、ニコニコ動画で確認してみることにした(https://www.nicovideo.jp/watch/1539919382)。

 三橋は「表現者」ではないはずだが、まぁ実質的に「表現者」のスピーカーみたいなものなので、構わないとしよう(三橋メルマガ「「新」経世済民新聞」の現執筆者のうち、藤井聡、佐藤健志、施光恒、小浜逸郎は「表現者」で執筆している(https://38news.jp/author)。かつて三橋メルマガで執筆していた柴山桂太も「表現者」で執筆している。三橋に強い影響を与えている中野剛志も「表現者」で執筆していた。)。

 驚いたのは、コメントがたった2つしか付いていないということだ(28日4時時点)。

 人気の高い経済討論でしかも消費税再増税が題材なのに、このコメント数はちょっと考えられない。

 「なっとるやろがい!!」と言われたらそれまでではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 ひょっとして…と思って、三橋がキャスターを務める「【Front Japan 桜】消費への罪、利益への罪 / 危険を顧みぬ自衛官に想いを寄せて / 整備新幹線~日本最大の交通インフラなのに民間が負担?[桜H30/10/19]」も確認してみた(https://www.nicovideo.jp/watch/1539930302)。

 動画の内容は視聴していないが、タイトルからして法人税について謬論を述べたものだろう。

 いかにもツっこみのコメントが入りそうなものだが、なんとコメント数が0だった(28日4時時点。同日夕方にはコメントが1つ付いていた。)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三橋の半年以上ぶりの新著「帝国対民主国家の最終戦争が始まる 三橋貴明の地政経済学」(ビジネス社)の発売日は20日だった(https://bit.ly/2OTHFqD)。

 この頃の三橋ブログのコメント削除やリブログ非表示を思うと、都合の悪いコメントを削除したのかなぁと勘繰ってしまう。

 削除したのではないとすれば、それはそれで人気の低下を窺わせる。

 新著は果たしてどの程度売れているのだろうか。いまだにアマゾンにカスタマーレビューが付いていないが(28日22時)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ 余談3 ◆

 

 

 

 上記「【討論】表現者クライテリオンスペシャル「消費増税は安倍退陣と日本滅亡への道」[桜H30/10/20]」のパネリストに菊池英博が名を連ねている。

 菊池は、反新自由主義・反グローバリズムを標榜し、「TPPはアメリカの日本占領政策」とするTPP反対派である(https://www.diamond.co.jp/book/itemcontents/9784478025918.htmlhttps://books.bunshun.jp/common/browsing/9784166610419/2.gif)。

 西田昌司参議院議員の「週刊西田」に二度登場し、(http://www.shukannishida.jp/nishidavision-kikuchi.htmlhttp://www.shukannishida.jp/nishidavision-kikuchi2.html)、同議員の招きにより自民党の勉強会で講師を務め、さらには同議員に政経セミナーにも招かれている(https://ameblo.jp/j-shoujinishida/entry-12331757932.html)。

 西田議員の菊池に対する信頼の強さが窺える。

 菊池自身は「表現者」で執筆していないが、西田議員は「表現者」の前身の「発言者」で執筆していた(西田昌司「総理への直言」(イースト・プレス、2013年)188ページ)。

 

 

 

「自民党の財政政策勉強会」 中西哲参議院議員ブログ2017年4月19日

http://nakanishi-satoshi.hatenablog.com/entry/2017/04/19/181318

 

「19日(水) 12時から参議院自民党の政策審議会の勉強会が開かれた。講師は菊池英博・日本金融財政研究所所長、テーマは「経済成長によるデフレ脱却と財政健全化」、西田昌司参議院議員が招いた方だ。」

 

 

 

 

 

 この菊池、8月に「使ってはいけない集団的自衛権」(KADODAWA)という本を出したのをご存知だろうか。

 出版社HPによると、本書は、安倍外交で日本は孤立する、国難はでっち上げだとして、集団的自衛権行使容認に反対するというものだ(https://www.kadokawa.co.jp/product/321802000134/)。

 8月にこういう本を出したばかりの菊池を出すというのは、チャンネル桜の見識は一体どうなっているのだろうか。

 ついでに述べておくと、同局で「TPP亡国論」を唱え、一躍有名になった中野剛志も、同局責任編集の「言志 第1号」(ビジネス社)で、「集団的自衛権容認で日本の自主防衛は遥かに遠のいた」という論考を書き、集団的自衛権の行使容認に反対する(http://www.genshi-net.com/image/2014/p2.jpg)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らの言説は、結局のところ、中国の覇権を容認するのに等しいのではないだろうか。

 TPPが頓挫すれば一帯一路の障害は減るだろうし、日米の同盟関係が弱ければ弱いほど中国に対する抑止力は働かなくなる。前回の記事で述べたとおり、中野は谷内正太郎氏を「戦略的志向の欠如」と非難するが、これも中国には都合がいいように思える(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12414572872.html)。

 中野は、8月、米トランプ政権の関税引上げが一帯一路を加速させた、日本は無策、などと述べたが、一体どの口が言うかという気がしてくる(https://toyokeizai.net/articles/-/234839)。

 チャンネル桜を見ると、親米保守は戦後保守、反米保守こそ真の保守、という論調が見られることがあるが、反米の裏側には親中・利中があり得ることは意識した方がよいと私は思う。

 書名からして三橋は新著を書くにあたり中野の「富国と強兵 地政経済学序説」(東洋経済、2016年)を参照したものと思われるが(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12227011586.html)、中野の戦略論自体の信用性が怪しく、しかも中野を参照して「チャイナ・グローバリズムをくい止める」とするのは無理を感じる(https://bit.ly/2OTHFqD)。

 

 

 

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