本日のサマリー
懸念されるのは年末、年度末に向けてのリストラですが、「コロナ解雇」の傾向を分析し、どのような業種で雇用危機が深刻化しそうなのか考えてみたいと思います。現在、解雇や雇い止めの対象は製造業や飲食業が中心になっています。その範囲は今後、拡大する可能性があります。
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帝国データバンクによると、10月現在、新型コロナウイルスの影響を受けた倒産が全国に2179件、法的整理が2020件にのぼったことが明らかになりました。今後、急激な業績悪化により、“従業員削減”を迫られる企業の増加が予想されます。
懸念されるのは年末、年度末に向けてのリストラですが、「コロナ解雇」の傾向を分析し、どのような業種で雇用危機が深刻化しそうなのか考えてみたいと思います。
現在、解雇や雇い止めの対象は製造業や飲食業が中心になっています。その範囲は今後、拡大する可能性があります。緊急事態宣言は飲食業をターゲットにしたものでした。
そのため、直接的に影響を受ける飲食業中心に解雇・失業が増える恐れがあります。飲食業の8割はパートやアルバイトなどの非正規従業員でその多くは女性や学生です。飲食業の不振の余波は製造業、建設業、宿泊業に派生すると予想できます。
■製造業は?
現状では製造業でのコロナ解雇が最も多く、今後も増えることが予想されます。理由としては元々の就業者数が多いためです。総務省の労働力調査によると、すべての業種の中で製造業が最も多いことが分かります。母数が多いので解雇人数も必然的に高くなります。
製造業は景気変動と業績変動にタイムラグが生じるため、後から影響を受けます。例えば、企業が設備投資をしようとするとき、景気の予測や将来的な見込みに基づいて設備を整えます。その際には、何年で回収できるかなど入念なシミュレーションを行うものです。
さらに、製造業は複雑な下請け構造になっています。下請けが作った製品を、最終的に1次請けの会社が組み合わせて最終商品として完成させます。完成までにはいくつかの複雑な段階と長いスパンが存在します。コロナ禍により新規発注が減少すると、景気悪化の影響と業績悪化は段階ごとにタイムラグが発生していきます。
■建設業は?
製造業と同様、建設業も景気変動と業績変動のタイムラグが生じやすい業種です。建物は着工から完成までに長い期間を要します。製造業と同じく、下請けも何層にも続いていることから、同様に影響を受けやすいことが予測できます。
■宿泊業は?
宿泊業は運転資金が不足することによる資金ショートの第2波の発生が懸念されます。昨年のコロナ禍では、ホテルや旅館の廃業や倒産が相次ぎました。それでも各種給付金や銀行融資などにより、資金繰りを持ちこたえていたところもありました。
しかし、今回、業績が回復していなければ、追加融資を受けることが難しくなります。そのため、資金ショートするホテルや旅館が増加することが予想されます。そうなれば、リストラによる解雇の増加は避けられません。
■どの業界にもリスクがある
景気が低迷すれば雇用状況が悪化し、安泰だと思っている業種への影響も分かりません。政治家は与野党に関係なく、雇用を維持するための方策を考えるべきです。
果たして英知は結集できるのでしょうか。
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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員
※18冊目となる『伝わる!バズる!稼ぐ!文章術』(秀和システム)を出版。
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