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本日のサマリー

 

いま振り返っても、私の提案が最善だったという確信はある。

細部を上手く調整していったら、成果を上げられたかもしれない。


ああ、あの日に戻れたら……。
私は何度目か分からないため息をこっそりと吐いた。

社内はネゴシエーションが10割である。

 

皆さま、おはようございます!!

コラムニストの尾藤克之です。

 

ひらめき電球ご訪問ありがとうございます!

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その日は、某物流会社の業務改善コンサルティングを行うための会議が開かれていた。

既存顧客で、昨年度の2倍の成果を上げてほしいとの要望だ。

会議のメンバーは、私と同僚の大川、上司である。

 

「では、発表してもらおう」

 

顧客に提案すべき改善内容をプレゼンテーションする。

自分で言うのも何だが、私のプレゼンにはそつがない。

誰もが認める論理的かつ成功確率の高い提案であるのに、

上司は必ず難癖をつけてくる。

 

「本当にそれは実現可能なのか? 他社事例は?」

 

会議といっても上司が自分の案を発表することはない。

ふかふかのソファ席にふんぞり返りながら、

部下のプレゼンを聞いて、提案内容のあら探しをするだけである。

 

そこには、論理性も新規性も何もない。

気分が乗るか否か、それだけである。

 

「確かにまだ、これほどの規模の会社で同様の成功例は見られませんが・・・」

「他社との差別化を図るためにもここは革新性を持って新規の提案を・・・」

「大企業に横流しで提案することが革新とはねぇ・・・」

じゃあ、てめぇが、もっと革新性のある意見を発表しろよ!

と心の中で反論するが、必死に口角を上げ、感情を抑える。

大川が立ち上がりプレゼンが始まった。

私は「またか……」とつぶやきたくなるのを、グッとこらえた。

 

新入社員の時、初めて提案した内容が採用された大川は、

「良いプレゼンだった」と褒められたのが忘れられないらしく、

その後も延々と同じ提案をし続けてくる。

 

基本の提案は新入社員の時と全く変わっていないということである。

 

面白味もなければ、進歩もない男だ。

あくびをこらえながら聞いていると、

上司の表情が徐々に緩んでくるのが分かった。

結果、特に横やりが入ることなく、大川のプレゼンは終わった。

 

全員のプレゼンを聴き終え、上司がに口を開いた。

「今回は大川の提案を採用しようと思う」

その言葉を聞いた瞬間、思わず私は立ち上がった。

「待ってください!大川の提案も悪くは無いですが、

それではミッションをクリアできません」と私。

 

「じゃあ、君の提案だったら2倍の成果を上げることができるというのか?」

と上司がかえす。

しかし、ここで折れるわけにはいかない。

「もちろんです!必ずや成果を上げてみせます!」

 

「分かった。目標を達成できなかったらどうなるか、分かっているな」

と上司は、ヒヒヒと妖怪のような不吉な笑い声を発した。

 

1年後。「いや~、あのとき大川の案を採用していたらなぁ」。

私はもう何百回も繰り返される上司からの嫌み攻撃に毎日耐えていた。

 

結果、私の提案は失敗した。

確かに、顧客の業務を抜本的に改善し、売上を大きく伸ばすことができた。

しかし、その数値はわずかに届かなかった。

 

いま振り返っても、私の提案が最善だったという確信はある。

細部を上手く調整していったら、成果を上げられたかもしれない。

 

そうすれば、私はこんな嫌みや文句を

言われることはなかっただろう。

ああ、あの日に戻れたら……。
私は何度目か分からないため息をこっそりと吐いた。

社内はネゴシエーションが10割である。

 

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尾藤克之(BITO Katsuyuki)

コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員

※11月に18冊目となる『バズらせて稼ぐ文章術 』(秀和システム)を上梓します。

 

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