ビフリュオレ通信<BIFLUORESQUEMENT VOTRE> -77ページ目

フィールドワーク・リポート その2 開演 [第73号 07.03.15]

シャンソン・プリュス・ビフリュオレ イッサンジョー・ライヴ (2006年9月2日 20:30開演)
 町外れの丘の上にある会場Foyer Rural。だらだら続く坂道を上って辿り着いた時には、全席自由とあって入り口には既に列。開場まであと10分だが、筆者はチケットさえ持っていない。彼らからメールで「喜んで招待するよ nous nous ferons un plaisir de t'inviter」と書いてもらっているのだ。けど本当に大丈夫なんだろうか。昼間訪れた観光案内所では、切符を買いに来る人が何人かいて、もう残り僅かだというのが聞こえていた。もし駄目だったら、日本からわざわざ彼らのために3日もかけて来たんだから、脇の通路でも楽屋裏でもいいから入れてくれと駄々をこねる覚悟で、おそるおそる受付らしいところへ進み出て「あの~招待があると思うんですけど」「誰からですか?」「アーティストから…」。係の女の子は一瞬絶句して「確認してきます」。一旦奥へ引っ込んだ後ほどなくして「間違いありません。こちらからどうぞ」とひと足もふた足も先に中へ入れてもらった。
 まだ準備中のホールには、まるで町民会館で開催される講演会みたいに、パイプ椅子が並べてある。「どこへでもお好きな所へ」と言われて、かぶりつきはちょっと遠慮して(というか、床が平面なのでこれじゃ舞台の板しか見えない)、6列目中央のいちばんよく見えそうな席を選ぶ。かしこまってお座りしていると、ステージ裏からギターの音が…感動~!!でもここに始まるまでいていいんだろうか。
 ステージにミシェルが姿を現す。続いて現れたシルヴァンが挨拶してくれた!それを見たミシェル、シルヴァンに「あれはR***か?」こっちを向いて投げキッス。2人は最終チェックといった感じで、舞台中央のマイクを確かめたり、シルヴァンはピアノの前に座ってしばらく弾いてみたり…その音色に夢見心地で聴き入りながら、あまりキョロキョロしちゃ悪いかな、邪魔になってないかなとか、ずっと緊張のしっ放し。
 しかし予想していたよりもずっと質素なホールだ。後で訊いてみると450席とのこと。後ろの方こそ階段状の固定座席があるが、今時の小学校の講堂ならもっと立派なのもありそう。などと思っているうちにようやく一般客が入ってきた。当然前の方から埋まっていくが、前の2列は招待席というのが後から来た人たちにわからず、行ったり戻ったりかなり混乱。文句を言う人がいないのは田舎のいいところか。そうこうしているうちに席が埋まり、場内が暗くなった。例によって「終演後にサイン会」のアナウンス。
 オープニングはアルバム未発表曲*で、大ヒット映画『コーラス』主題歌の替え歌!元歌が子ども達による合唱曲だけに、彼らの持ち味のハーモニーと、七色の声ミシェルの「黄色」が効果満点。歌詞はツアーとリハーサルに明け暮れる芸人生活を「まるで徒刑囚だ~。もう疲れた、休みくれ~」とボヤくという、のっけから人を喰っている。
 かくして "Poum!"と名付けられたステージは、最新アルバムPeinture à carreaux*からの曲、旧作、アルバム未発表曲を交えながら進行する。(à suivre)
*Peinture à carreauxから僅か1年後の06年12月、2枚組アルバムDe concert et d'imprévuが前触れなしに突如リリースされた。De concertと名付けられた1枚はライヴ音源集。廃盤となっていたLe meilleur en public[97]の版権を買い取り、これに新音源を追加して再発するついでに、未発表曲とレア物でもう1枚(D'imprévu)作っておまけしちゃえ、という太っ腹!上述の替え歌Le forçat du gogierも収録されている。

イッサンジョー丘
イッサンジョー 丘からの眺め

フィールドワーク・リポート その1 スタート [第72号 06.12.15]

 イッサンジョー?どこやねん、それ。
 我が愛するグループ、シャンソン・プリュス・ビフリュオレから、当初予定していたストラスブール郊外でのライヴが中止になった、とわざわざメールで連絡があった。この9月の休暇を利用して4年ぶりに会いに行きます、とサイトを通じて伝えてあったのだ。滞在可能な日程からして、残る可能性は9月2日のYssingeauxのみ。
 4年前に比べて一段と発達したインターネットで、それがオーヴェルニュの山中、標高800mを超える所に位置する小さな町だ、ということぐらいはすぐ調べがつく。列車なんか通ってないことだって。近くの大きな町といえばLe Puy en Velay かSt Etienne。ここらからのバスがあるのかな?あった。この2つの町を結んでいる路線、時刻表まで出ている。朝夕1便ずつか…。本当に辿り着けるのか?
かくして大いに不安を抱いたまま、4年ぶりのフィールドワークに乗り出した。今回はこのChanson Plus Bifluoréeを皮切りに、あとは…着いてからのお楽しみ。ネットで調べてもどうも目ぼしいのが出てこない。ヴァカンス明けのこの時期は、秋のシーズンとの端境期になるらしい。しかしパリに行きさえすれば、何もやっていないということはあるまい。幸い9月15日から3日間、共産党系紙『ユマニテ』のお祭りFête de l'Humaがパリ郊外で開催され、カリ Cali, テット・レッド Têtes Raides, ベナバール Bénabarといった今最もホットなアーティスト達のライヴが予定されていることが分かって、俄然楽しみになってきた。
 さて、出国のタイミングは仕事スケジュールとの関係で、この未知の土地でのライヴの前々日、8月31日が精一杯。ようやく予約の取れた福岡発キャセイ機は、香港での乗り継ぎ9時間、やっと搭乗できたその機内で、整備不良とやらで更に1時間待機。ようやく9月1日早朝、ドゴール空港に着いたと思ったら、今度は不審な手荷物が出てきて入国ゲート前で足止め、トイレにも行けやしない。どうにかリムジンバスに乗り込み、TGVからリヨンで普通列車に乗り継いで、中継地サンテチエンヌに辿り着いたのが午後3時過ぎ。へろへろだったが明日に備えて寝るだけというのも勿体ないので、ちょっとだけ観光。そこらじゅうで工事をやっている。交通システム刷新中なのだ。
 9月2日。8:05発の高速バスに間に合うよう朝食は6:45にしましょうと言ってくれたホテルの女主人(偶然にもイッサンジョー出身)がそれをすっかり忘却、こっちが払ってもいない朝食代3ユーロを寝ぼけて返そうとしてくれた。飲まず食わずのまま、まず市内バスで郊外路線発着所のベルヴューBellevue広場に移動。イッサンジョー経由ルピュイ行きはどこから出るのか?掲示板もないし、人に聞いても誰もが「多分そこのホームだと思うけど、他の誰かに確かめてね」。乗り損なったらどうしよう…。
 発車時刻直前にようやく現れたのは、バスというより大型バン。学校休業期のためとか。普段は通学の子どもたちで一杯なんだな。女運転手は馴染み客とお喋りしながら、くねくねした山道をぶんぶん飛ばす。どんどん標高が高くなる。かつて日本国内でこんな山奥に旅したことがあっただろうか。飛び去る景色に目を丸くすること1時間、ようやく降り立ったのは、石畳の路地に石造りの古い建物が立ち並ぶ、素朴で愛らしい町だった。かくして2泊3日の旅を経て、イッサンジョーに参上!(à suivre)

イッサンジョー街並
Yssingeaux街並

Peinture à carreaux [2005]

Peinture à carreaux [2005, Chanson Plus-Rym Musique/Universal 3017150]

CD05

このアルバムについては『サリュ』バックナンバー第68号 で紹介しています。替え歌は09のみ。17はオッフェンバック作、19はトラッド曲。16・18は17・19導入の短いMC。残りはオリジナル。
01 Moi la télé テレビと僕
02 L'argent カネ、カネ、カネ
03 Heureux comme un poisson 魚のように幸福
04 Te dire 君に言うには
05 Le quartier maître 海軍兵長
06 Tous les Gaels すべてのガエルたち
07 La fête aux oiseaux 鳥たちの祝祭 <試聴>
08 Peinture à carreaux 碁盤模様の塗り絵
09 L'informatique    パソコン
10 Le champignons de Paris マッシュルーム
11 Notre petit appartement 二人の小さなアパルトマン
12 Petit déjeuner au lit ベッドで朝食
13 Ni oui ni non ウィでもノンでもない
14 Zootomobilistes  カードライバー生態学
15 Femmes au parapluie 雨傘の女たち
16 Chers petits gâtés ボーナストラックだよ
17 Le trio du Jambon de Bayonne トリオ・バイヨンヌのハム
18 Ce petit coin de mare この小さな池の片隅は
19 Sommes-nous des grenouilles 俺たちは蛙じゃない