ビフリュオレ通信<BIFLUORESQUEMENT VOTRE> -82ページ目
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CH+B追っかけ紀行・その1&その2 [第31&32号 96年9月15日&12月15日発行]

 …といってもそのためだけに10万単位の金をつぎ込んだのではないので念のため(そんな余裕があれば!)。どう考えても研究資料が足りない状況が、実はもうとっくに限界に達していたのである。あとは事前に何とか彼らのコンサート日程でも入手できれば…。しかし結局はその情報入手が思うようにいかず、かといってそのためにかくも多くの心優しい恩師・友人にその友達までを煩わせた手前、今更「行かない」なんて言えなくなってしまったのだった。ともかく大ヤマ張って3月8日から3週間の予定で出発した次第。その結果やいかに!?
「CH+B追っかけ紀行・その1」(第31号、96年9月15日発行)

 30日までの滞在期間中、運良く彼らのコンサートにでも当たれば儲けもの、外れても何か目ぼしいイベントをハシゴするつもりが、Pariscope誌などで得られる情報はいまひとつ。フレデリック・フランソワFrédéric Françoisのオランピア公演ねぇ…。それにパリ以外の催しとなるとどこで調べればいいんだろう。10年ぶり2回目というパリでこんなふうに思うに任せず右往左往、ストレスが頂点に達したある日。「プロダクションに直接きいてやろうか?」小心者の自分がまさか使うことはないと思いつつ、一応CDジャケットから控えてきた電話番号を眺めながら「旅の恥はかき捨て、だよナ」。受話器を取った陽気な声のおねえさんにおそるおそる「あのー、おたくのアーティスト、シャンソン・プリュス・ビフリュオレの公演スケジュールが知りたいんですけど…」と切り出すと、事も無げに3ヵ所のツアー場所を教えてくれた。「パリからだったら23日のランブイエが近いですよ。」会場の電話番号は自分で調べてくれとのことなので、ホール名だけしっかり確認して電話を切る。万歳!! 大ヤマ当たり、ああ来た甲斐があった — と涙するのは早かった。実はこのホール名が大ウソ、どこで調べたってThéâtre de Rambouillet[ランブイエ劇場]なんて出てこない。最後は滞在中借りてたアパートの家主(恩師の友人)に泣きついてやっと辿り着いたのがCentre culturel de Rambouillet[ランブイエ文化センター]内のThéâtre Nickelodéon[ニケロデオン劇場]、全然ちゃうやんけ~… ちょっと、Viva Productions! 自分とこの芸人の演る小屋の名前ぐらいしっかり把握しとけっ!!
[ 「CH+B追っかけ紀行・その2」(第32号、96年12月15日発行) 以下次号]

フランス語・フランス(語圏)文化好き人間の集まり「アミカル・フランセーズ」会報に載せたものです。日本語訳やカナ表記など適宜補っています。新たに加えた注釈は[ ]で示しています。

CH+B中毒は治らない [第30号 96年6月15日発行]

『サリュ』— フランス語・フランス(語圏)文化好き人間の集まり「アミカル・フランセーズ」会報に載せたものです。日本語訳やカナ表記など適宜補っています。新たに加えた注釈は[ ]で示しています。

"Chanson Plus Bifluorée"... 某レコード店輸入新譜コーナーの「シャンソン」の棚にずっと置いてあった正体不明のCD、ちょっと「シャンソン名曲選」の類いとは思えない、ジャケットの放つ怪しげな雰囲気に何ヶ月間か手を出しかねていた。それがレ・フレール・ジャックLes Frères Jacquesの流れを引き継ぐ男声カルテット名と知り、あわててそのアルバム『なんでキリンなんだ?Pourquoi les girafes?』を探し求めた時は、既にバーゲン・コーナーの方に流れてきていた。
 こうして危うく掬い上げることになったこのCDは、コーラス、パロディー、スケッチ、コミックetc.と、まるで50分間のヴァラエティ・ショウ。まず強く印象づけられたのは、ワールド・ミュージックからクラシックまで何でもこなす多芸さもさることながら、その音楽的魅力。どんなデタラメや冗談も完璧な音楽として「しれっとした顔で」やってのけているので、歌の内容についていってないとどこまで本気にしていいのか分からない。例えば「ダンス狂 Fou de danse」などハンパなロック系アイドル曲よりずっとイイ(と思ってしまうところに自分のアイドル好きが暴露されてしまう)。パロディーの圧巻は「ラ・メール La mer」。オリジナル[シャルル・トレネの名曲]に忠実、いや本家顔負けのカヴァーで半分まで進んだところでいきなりカリビアン調に転じたかと思いきや、続いてフルコーラス延々とヴェルラン verlan(逆さ語:tomberをbétonとするなど)で歌われる。その歌い方がまたverlanの元祖(?)ルノー Renaudそっくり。という具合にヴォーカル・テクニックの芸達者ぶりは、口トランペット・口ドラムから三重唱での女声パートまで、その一方「セーヌの歌 Chanson de la Seine」などで聴かせてくれるハーモニーの絶妙さ!!
 レパートリーの選択でプレヴェールの詩に曲をつけたのが2曲、アリスティッド・ブリュアン[ロートレックの絵で有名な世紀末モンマルトルのシャンソン歌手]をアレンジしたのが1曲、というあたりに彼らの路線が窺えるが、同じ場所に安住せず、新しい可能性と冒険を求めようという姿勢が、後日入手した新アルバム『ジョバール Jobard』からは伝わってくる。新たに取り込んだ音楽ジャンルとして、ヤッパシというべきかラップ(♪Dur dur d'être bœuf bœuf! )[5歳児のラップとして一発ヒットした「Dur dur d'être bébé・コドモだって楽じゃない」をもじって「牛だって楽じゃない」]、でもグレゴリアン・チャントも忘れていないのはさすが。タイトルだけで笑ってしまった「谷間の失業 Chômage au fond de la valée」は勿論ピアフ&シャンソンの友「谷間に3つの鐘が鳴る」のパロディー。ヴォーカル面では前作に比べて4人の個性をよりはっきりと打ち出している。また声を音素材としてどんな使い方ができるか実験してもいるようだ。今回全アレンジを担当しているC.ラシュナル Lachenal(前作では3曲)の手腕も見逃せない。レコーディングは至極楽し気な雰囲気の中で行われたらしい。アルバム全体からそれが伝わってくる(悪ノリ寸前!)。
 この4人組についての情報は、残念ながら全くお届けできない。当の筆者が一番知りたがっているのだから。中毒のように2枚のアルバムを聴くのみ。ああ生のステージが見たい!!見たい!!見たい!!が昂じてとうとうフランスまで「追っかけ」する羽目に...(以下次号)

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