”Benchwork study Laboratory" 英国式 靴作り教室 -135ページ目

ハーフ・ミッド・ソール

この間の『12時間。。。』の時に撮影して貰った写真がWさんのブログに載っておりますのでhttp://blogs.yahoo.co.jp/penftgin どうぞ。Wさんのブログ、Wさんの靴作りに通じるセンスの良さが光ってます!!



 さて、今週で八月も終わり。。。。海にも行かず、旅行にも行かず、墓参りにも行かず、息子と都内の博物館や美術館へ行ったくらいでしたが、ワークショップ内で今後やらねばならぬこと、やりたい事などの準備も含め、仕事は充実してましたので、良しとしましょう。これから冬にかけて仕上げるオーダー靴に変わったスタイルが数足あったり、使いたかったスウェードもオーダーが数足入り、革が不足で今年はスウェードのオーダーを早々とストップしました。下半期の仕事も楽しみです。


 日本でオーダーを始めてから、『ハーフ・ミッド・ソール』のオーダーがちょくちょく入る。イギリスではめった注文の来ないスタイルなのですが、日本では『スペード・ソール』という、間違った呼び名で広がっているようですが、(きっとどこかの雑誌や既製靴屋がミスプリントしたのではないでしょうか?)スペード・ソールとは底面がスペードの形をしているものですが、『ハーフ・ミッド・ソール』はフォアパート(ソールの爪先から土踏まずまでの、地面と接地する部分)に、薄めのソールレザーを一枚挟んで縫う製法。厚さは8ミリから12ミリ程の分厚いものになりますので、カジュアル使用として作られた製法だと思いますが、日本ではドレッシーなオックス・フォードでの注文が今まで数足ありまして、面白いな~と。意外と変じゃないんです(笑)。もちろん、薄いソールのエレガントさはありませんが、バリバリ働く男の仕事靴としては良いな~と。


 この製法の利点は、フォアパートにソールが2枚になるわけですから、クッション性と耐久性が増し、踏まず部分は普通の一枚のソールなので返りが悪くないと言う点。作る側としては、オールソールの修理の時に、フィラーの上にもう一枚革がある為に、フィラーを取り替えなくてよいという点。好ましくない点は、フォアパートのソールが分厚くなる分、出し縫いの時は結構大変!!ヴェベル・ウェイストの場合、フォアパートからヴェベルになる部分の厚さの違いで処理が難しい!!


 履く側の方には、好ましくない点はありませんね(笑)。好みで好き嫌いはあると思いますが。


 私は個人的に『ハーフ・ミッド・ソール』の場合、ダービーでスクウェア・ウェイストが好きです。ちなみに、ヒールの上にも出し縫いが入るシート・ウェルトだと、かなりごつくてカジュアルなブーツにいいですね。ライト・ブラウンの小さい型押しなんて最高!!私が履きたいわ!!(笑)


 

無事終了。ホッ!

土曜日は『12時間耐久靴作り』、お疲れ様でした。怪我人もリタイヤも出ず、無事に完走。


 朝10時からの開始でしたが、普段は5分前位からしかクラスに出てこない生徒さん達なのに、10分前には参加者の半分が席に着くという気合の入れように驚きましたが、その後の12時間、皆さん無駄口を叩くでもなく、ひたすら集中してモクモクと作業をしていました。『いい加減休憩しなさいよ~』とランチを取るように促進しても、みんなすぐに戻って来て休憩は全然取らないし、とにかく止めない、止まらない。。。。。


 

 12時間終えて感想を聞くと『結構出来るモンですね。』と。物づくりしていると、本当に時計が早く動くように感じる。昔アルバイトで販売の仕事をしてた時は、本当に時計ばっかり見ていたけれど、ちっとも時計が進まずに、労働時間が凄く長く感じたものですが、靴作っていると3,4時間なんてあっという間。


 途中、生徒さんから差し入れが入って(ありがとうございました!)やっと、皆さんチョコット休憩を取りましたが、本当に勤勉でしたね。1分も惜しまずにがんばっていました。



 みんな帰宅する時は若干疲れが顔に出ていましたが、まだまだ出来そうな感じでした。来年は時間をもっと伸ばしますかね?(来年もやるのか?)


 人間って好きなことにはいくらでも集中力が出るのですね。普段のクラスは3時間だから、丁度気分が乗って来た所でクラスが終わる。。。。って感じなのかしら?やはり、週末6時間ぐらいの自習をお勧めします。


 今回参加してくださった方達、腰痛大丈夫かな?

 


 



8月半ば

 8月もあっという間に半ばを過ぎ、日本に原爆が落とされて63年が経ちました。参院選で自民党は大敗したけれど、圧勝した民主党も『憲法改悪』に積極的だし、国民に『NO!』を突きつけられた安倍首相は、ずうずうしくも辞任せず、年々戦争に対する不安が消える事はないのですが、こんな本を読んだ。


http://www.amazon.co.jp/gp/reader/4794214081/ref=sib_dp_pt/249-5286895-1089945#reader-link

『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』


http://news.goo.ne.jp/article/jiji/world/jiji-03X701.html   ついでにこの記事もどうぞ。


は~、原爆投下のお陰で何百万もの命が救われたってのはやっぱり大嘘だった!!アメリカは原爆を使いたくってしょうがなかった。だから、45年5月8日にドイツが降伏した状況下で日本も降伏できたはずなのに、アメリカはわざと終戦集結を伸ばした。広島だけでなく長崎にも落としたのは、アメリカは2種類の原爆を持ち、両方試したかった為に広島に『ウラン型』、長崎に『プルトニウム型』を投下した。日本人をモルモットにしていたのです。


 『しょうがない』じゃ済まされない事なのに。しかも、現在、広島の原爆ドームには昔のような無残なただれた死骸の山の写真などはほとんどなく、展示といえば『原爆の威力』『どれだけの破壊力』などの『原爆とはすごい物!原爆のお陰で日本は現在幸せ!』などと思わせる展示ばかりだと友人から聞いたのですが、実は現在の原爆ドームの館長はなんとアメリカ人です!!!原爆投下について一切の謝罪もしないくせにぬけぬけと!!何を考えているんだろう。ふざけるにも程があると思いませんか?


 たまに『戦争は絶対無くならないよ。戦いは人間の本能だから』という人いますけれど、これも嘘っぱち。


 500万年の人類の歴史の中で、集団同士の暴力や殺戮は数千年前から始まったきわめて新しい現象であること。つまり、人類の歴史の99.9%は戦争なんてやっていなかったし、無差別に同種(同類)を殺す本能があったら、人類は絶滅していますよ。とっくの昔に。ゆえに、本能なんかではない。


 アメリカに洗脳されているんですよ。戦争賛成者は。戦争は人間が起すものなのだから、人間が起さなければすむ事なのだ。無くならない訳がない。自分の事として認識できない、想像力のない国民にされてしまったのも、国の教育から受けた洗脳なのかな。安倍政権は我々国民をどこへ導こうとしているのだろうか?

8月17、18日はお休みです。

 この暑い中生徒さんの出席率も高く、家でも着々と靴作りをしていて、経過をデジカメで見せてくれる方もいて感心しました。ベビー靴を作って先日売れました!!と嬉しそうにお話してくれた方もいましたし、みんながんばっていますね。やればやっただけ自分に自信がつき、顔つきも違ってきますね。


 さて、今週17日(金)18日(土)のお教室はお休みですが、特別企画『12時間耐久靴作り』を18日に行います。参加者9名で締め切りました。まだ参加希望の方もいたのですが、12時間狭いスペースでの作業はあまりにむさくるしいので(笑)、申し訳ございませんが今回はこの人数で、がんばっていきましょう!!どんなことになるやら(涙)


 今日は久々に10時間以上寝た。普段は睡眠5時間位が快調なのですが、夏の疲れが出てきたのかな。今月は仕事のスケジュールをゆる~くしていたので、友人と遊ぶ機会も多くかなり活動的に動き回っていたので、たっぷり睡眠を取れて体もすっきり!!ついでに頭もすっきりさせようと、なかなか読めずにいた本を読んだりして充電ばっちり。


 本日読み始めた本は『歓喜する円空』。12万体もの異形の神仏を彫った仏師・円空についての本。私は仏像好きでいつかは自分で仏像を彫ってみたいと思っているのですが、円空の仏像は荒削りで、丸々していて可愛らしく、見ているだけで優しい気持ちになれる。八面荒仏像でさえ、彼の彫ったものはどことなく優しさが現れていて素直に拝めそうです。読み終わるのが楽しみ。老後は仏像めぐりの旅をするのが夢なのだけれど、益々楽しみになりそうです。


 人間生きていれば、さまざまな困難、苦悩を持って乗り越えつつ、信念や思想も経験や体験によって変わっていくと思いますが、それを何かの形で表現しつつ、他者を感動させたり共感を与えたりという『小さな種』を落としていく。そしてその『小さな種』は少しづつ成長し『文化』になっていく。先を見るものは、先人の通った足跡も見ていかないと学びは少ないのでしょうね。


 先週、靴のお受け渡しでお客様と話していて、『伝統』が途絶えてしまった後に再び復元する事の難しさについての話になったのですが、お客様の着物の復元をしているご友人が昔の絹を復元しようとして、蚕から育てているそうで、それでも同じものにならない。それで、桑から復元して耕している方がいらっしゃるとのお話で、感嘆を持って聞いていたのですが、先人の持っていた技術の高さ、仕事の丁寧さは大量生産や機械化で失ってしまったものですが、失っていくものは時代と社会に適応できなかった故ですが、そこまで高めた技術は何とかして残して行きたいですね。我々が失ってしまったものは、多分その『技術』だけではないでしょうから。本当の『豊かさ』とは何か?常に考えて生きて行きたいと思います。


 

大盛況のオープン・デイ

 もう~ビックリしたな~。本日のオープン・デイ。オープン10分前には『果たして人が来て下さるのだろうか?』とパニック状態になって、即席で作られたスタッフ6名に『どうしよ~どうしよ~』と涙目で訴えていていましたが、オープンから6時半まで来客が途切れることなく、ピーク時には人が歩けないほど込み合いました。DMも作らず、お教室内での告知と、このブログでの宣伝のみでこの込みよう。。。(号泣)ありがとうございました。


 来て下さった方々は始めての”つり込み”体験、"すくい縫い”体験、ハンドステッチによるカードケース作りに参加して、初めて作ったカードケースを嬉しそうにお持ち帰りしてくださってました。『こんなに楽しい展示会は始めて見ました!』とおっしゃって下さった方も多く、本当にありがたく嬉しかったです。だって、2~3時間も展示会に足をとどめてくれてた方々が大勢ですよ!!全然知らない人達が、物づくりを通してお知り合いになり、会話を交わしてワイワイしてくれているのは、素晴らしい事ですよ。こんな経験他じゃめったにないですよね。


 即席スタッフをして下さった生徒さん達もテキパキと”靴作りの実演”をしたり、カードケース、つり込みなどを来客に手ほどきして、休むことなく5時間がんばってくれました。本当にありがとう。『人に物づくりを手ほどきする楽しさが病みつきになりそう!!』とスタッフの人達は言ってましたし、良い勉強になったようです。みんな上手に教えていましたし将来楽しみ。きっと素敵なお教室を作れるのではないかと思いました。がんばれ!!


 私のオーダー靴のお客様まで来て下さって、なんて幸せ者なのでしょう。感謝に耐えません。


 生徒さん達の靴もかなり褒められていて、他の学校に通っている靴作り好きの方々も皆さんのレベルの高さに唸ってましたよ!!プロの靴職人の方も多くお越しになり靴談義をしたり、コードウェイナーズの後輩も沢山来てくださいました。生徒さんのお友達、ブログの読者の方々も多く皆さん楽しんで下さったようで、大成功でした。


 来年ももっと盛りだくさんの内容を企画しがんばります!!本当は、糸作り体験や、生徒さんが徹夜で作ってくれたナイフの研ぎ方の紙芝居もあったのですが、そこまで手が回らなかったことが残念でしたが、ワイワイと楽しいオープン・デイになって講師冥利に尽きます。これは文化祭に近かったですね。多くの靴作り好きの輪がまた一回り大きくなりました。今回お越しになれなかった方々、来年は是非是非!!



 オープン・デイが終わって、スタッフ一同と残っていた来客さん達とビールで乾杯し、ナイフ研ぎ紙芝居を鑑賞し(これ、忘年会でもやっていただきましょうね!かなり良い出来で驚きました)、国産牛革にエールを送る為に焼肉屋に皆でなだれ込みやんや、やんや。お酒も焼肉も美味しさ格別でした。あ~素敵な素敵な一日でした。私はパニックのあまりスッピンであったことに気付いたのはビールを飲んでいるときでした。皆さんに怖い思いをさせたことを深くお詫びします(笑)。



 

オープン・デイ

 8月5日(日)のオープン・デイ&展覧会の準備を少しづつ初めております。展覧会って言っても、ただ見て頂くのでは面白くないので、当日は『靴作り体験コーナー』のスペースを設けて、ワークショップに来て下さった方々に、”糸作り” ”つり込み” ”だし縫い” を体験して頂こうと予定しております。興味のある方は是非是非!!

靴作りの楽しさを分かち合いましょ~!!


 8月18日の『靴作り12時間耐久レース』は続々と勇者達が集まってきております。あと3名程の空席あり。こちらも楽しみです!!『今回の12時間が成功した暁には、来年は24時間耐久にしましょう!皆で黄色いT-シャツ着て、募金を募って、誰かにマラソンしてもらって。。。』って言ってる人もいますが(笑)、どうなることやら。。

 

 ま、気合を入れて、夏の暑さを吹き飛ばそう!!エイエイ・オー

ワークショップの夏のイベント!!

 暑中お見舞い申し上げます。


 さて、前々からお話しておりました、bench work study の製作靴の展示を8月5日(日)13時から18時の間で行います!!


 2足目以降の靴を作っている方は、1足目に作った靴などを8月4日までにワークショップに持って来てください。既に履いている靴でかまいません。靴は履いてなんぼの物。履く前の靴よりも、履きこんだ靴により靴の魅力はあると思いますので、履いて履く人の個性の出てきた靴も展示したいと思います。


 当日はワークショップのオープン・デイも兼ねますので、靴作りやお教室に興味のある方々は、どうぞお気軽にお越しくださいませ。生徒の皆さんもお友達やご家族をどうぞお連れになって、日頃の成果を見ていただきましょう。毎週毎週、「靴作りに行ってくる」と家を出て、いつまでたっても靴を家に持って変える気配もないので、奥様に怪しい目で見られている生徒さん達も(笑)、名誉を挽回できるチャンスです!!(笑)お待ちしております。

 

 さてさて、そして8月17日(金)18(土)は、お教室はお休みです。が、 8月18日(土) は、私から皆さんへ感謝の気持ちを込めて、参加費無料で『12時間靴作り耐久レース!!(別にレースではありませんが。。)』を行います!!朝10時から夜10時まで12時間、集中して靴作りを行い、ペースアップ、レベルアップをはかりましょう!!現在のところ参加希望者4名です。参加希望者はご連絡ください。もし、参加者が10名に満たない場合は、12時間は無理だけれど、数時間は参加したい!という方も参加できる事にしたいと思います。


 お教室でこのイベントの話をした時に『食事はどうなるんですか?』とパニックになってた方もおりましたが(笑)、別にトライアスロンをしようって訳ではないので、適当にどうぞ。私は、皆さんが12時間集中している間、90分全身マッサージに出かけたり、薬局へトイレットペーパーを買いに行ったり、ギターの練習をして皆さんにメンタル面でのダメージを与え、より過酷なレースとなるよう盛り上げたいと思います。お教室を出る頃にはきっと皆さんは、一回り大きな人間となって帰宅する事でしょう。では、勇者の皆さんの参加をお待ちしております。

 


                                            

 

思いと形

今日も楽しい一日だったな~。お客様の仮縫いのフィッティングでしたが、人の『思い』について色々とためになるお話をしてくださり、靴袋を作ってくれている友人もワークショップにいたのですが、一緒に深いうなずきと共に共感し気持ちが浄化された思いです。人間の思ったことは、ビジョンをはっきりさせれば絶対に叶い、いつも明るく、楽観的にしていれば、何でも良い方向に良いようにまわっていくというお話だったのですが、すべて自分の気持ち次第ですね。他にも焼き物のお話や、興味をそそられる素敵なお話ばかりで元気を沢山頂きました。作る者の気持ちの状態は形に表れるので、いつも楽しくしている事が大事ですねと言われましたが、本当にそうです。気持ちの沈んでいる時は、糸も切れやすいし、ミスが多いいので靴作りはせずに事務仕事をするようにしているのですが、いつも明るく前向きにしていないと自分にとっても周りにとっても良くないですね。


 昨日は靴のお受け渡しだったのですが、こちらのお客様はびっくりするくらい靴磨きがお上手で、丁度靴磨き用のブラシの良いものはないかと探していたところ、『これなら!!』というかなり良いブラシを見せていただき、本当にありがたい。http://home.g08.itscom.net/ishikawa/index/  ←こちらのHPから見れるのですが、手植えの馬毛ブラシなのですが、毛足の長さも毛の硬さ具合も、持ち手の幅なども手に馴染むように考えられていて、ものの解る方の作ったブラシだな~と感心。早速購入して、靴磨きをしたいと思います。靴ブラシの良くないものは毛が抜けて、せっかくクリームを塗っても、取れた毛が靴に付いてあとをつけてしまいますし、柔らかすぎる毛のものはクリームが浸透しませんし、大きさも小さすぎると力加減が出来ませんし、あまり大きすぎてもクリームばかり大量に使う羽目になり、細部には行き届かなかったり。。。ブラシは大事ですね。



 お客様と靴以外のことで色々とお話しする機会が多く、勉強にもなりますし本当にありがたいです。しかも皆さんかなり面白い!!昔、イギリスの高級靴屋はサロンのようになっていた所もあるそうですが、今はそういう状況がわかる気がします。自分のこだわっている物を通して、リラックスして共感したり情報交換したり出来る空間に靴屋がなりうる状況って。靴屋ではいったん靴を脱ぎますから、そこで気分的にもリラックス出来ますものね。私のお客様同士も、きっと集まったら面白いコミュニケーションができると思うな~。盛り上がりそう!!そんな事が出来たら素敵ですね。


 生徒さん達ともそうですが、靴を通して靴以外のことも学べる。靴を作るようになってから、物の考え方が変わりました!と何人かの生徒に言われましたが、本当に生き方から変わる人もいます。靴作りは足と木と革と手が作る物。靴は小さな物なのに、靴作りは深く大きい。頭だけで考えるのでなく、手を使って考える。現代人が忘れてしまった何かがそこにあるように思います。誠実な『思い』を形にしたいですね。『思い』を叶えよう。

ブラック・ワックス・ボール

前々からお話していた、お教室のオープン・デイを8月5日(日曜日)に行います。生徒さん方の今まで作ってきた靴の展示を行いますので、8月に入りましたら展示するものをお持ち下さい。ご家族、お友達をお誘いの上、日頃の成果を発表いたしましょう~!また、お教室に興味のある方々も是非お立ち寄りくださいませ。



 さて、このところ蒸し暑い日が続いておりますが、靴を作りながら『夏の靴作りは大変だ~。』としみじみ感じております。私がクーラー嫌いなのが状況を悪化させていると思いますが、夏の暑さの中の靴作りは冬のそれとは色々と違ってきます。水に浸したソールやヒールも作業途中で乾くスピードが早いし、糸につけているワックスも溶け易く手にべたべたくっ付く。作業の3工程くらい先を計算してチャッチャか作業しなくては、革が最も作業しやすい状態を逃してしまう。ブラック・ワックス・ボールには少しビーズワックスを足して硬めにしてみたり、夏の靴作りは一手間かかる。


 そうそう、この糸作りに使う『ブラック・ワックス・ボール』について良く質問されますが、このボールは蜜蝋(ビーズワックス)と固形タールを混ぜ合わせたもの。日本では絶対に手に入らない。固形タールが日本にないから。。。(涙)。イギリスでもジョン・ロブでしか使ってないので、貴重です。ま、レアさで使っているわけでなく、日本のチャン(松脂)とは質感が違い、柔らかく糸に付けやすく、タールの黒い色もつくので糸を染める必要がない。それと、タールは防腐剤でもあるので糸が長持ちする。チャンだと気温によってぼろぼろ割れたり、ねとねと解けたり、どうも長持ちすると思えない。何十年も履ける靴にするには、こういうところにも注意が必要だ。


 このブラック・ワックス・ボールは現在もロブの職人のおじさんに作ってもらっている。タールと蜜蝋を鍋でぐつぐつと溶かし、良く混ざったら水の入ったバケツに流し入れて手でねちょねちょと丸めていって、冷えたら出来上がり。かなり匂いがきつい。新品道路の匂い。そもそも、このタールは道で道路工事をしているのを見つけては、作業員に『ちょっとタールを分けて~』とお願いしてブロックのものをもらってくる。日本でも道路工事現場を見つけて同じ事を頼んだが、日本ではなんと固形タールは使っていず、液体タールなので作れなかった。ところが。。。。。2年前に液体タールをビンに入れたままにしていたら、液体タールが分離して水分が上に、タールは下へ沈殿している!!もしかしたら、固形タールが手に入るかも!!とビンのふたを開けようとしたら、タールで固まって、蓋はびくともしない。私の怪力でも空かない。。。。下手にビンを動かすと、せっかく分離したものが混ざってしまう。。。(涙)。腕力自慢の方がいらしたら、どうぞこの蓋をあけてください~!(祈願)


 イギリスでタールは購入するものでなく、貰ってくるもの(笑)ですが、その他に『ガラス』もそうでした。日本でも良心的なガラスやさんは2ミリ厚(が一番使いやすい)のガラスの割れたものはありますか?と聞くとただでくれたりしますが、イギリスではお店の周りの画廊へ行って、絵を入れる額縁用のガラスの割れたものを貰ってくる。厚さも丁度良いし、画廊の人も処理に困るので喜んでくれる。私は使いっぱとして、よく画廊に貰いに行かされていましたが、画廊の人達に絵を見せてもらったり、色々教えてもらったりも出来て楽しかったな。


 靴作りには多くの材料と工具が使われ、それらを作る人達がいる。その他に、道路工事や画廊が関わっていたとは誰も知らないよね(笑)。人は誰も1人で生きていない。靴は1人では作れない。人との関わりは本当に大切です。

お勧めの本

 先週、今週と寝不足の日が続いております。仕事で徹夜をしているわけではなく、読書に時間を注いでいます。長い間、通勤時間が読書の時間という癖がついていましたので、自転車通勤するようになって、本をほとんど読めないでいたのですが、どうしても読みたい本と出会ってしまい、睡眠時間を削っておりますが、削る価値のある本です。


 その本は、法隆寺、薬師寺などの復興を果たした最後の宮大工 ”西岡常一”氏の本達。

     『木のいのち 木のこころ』『木に学べ』『斑鳩の匠 宮大工三代』



 読みながら、深くうなずき、共感し、驚愕し、西岡氏と対話をしながら読んでいます。職人とは何か、道具を使う心、木を扱う事、人を組む事。。。。読んでいて、熱くなりました。『樹齢千年のヒノキを使えば建築物は千年はもつ』と木の癖を生かした日本人の知恵。日本の伝統の凄さを思い知りました。法隆寺は千三百年前の建物です。千三百年!!ですよ!!先人達は千年先を見て生きていた!素晴らしいと思いませんか?今の時代、人々は何年先のことを考えているんでしょうか?千年先を見つめる事を止めないでいたら、温暖化なんかもなかったはず。我々は愚かです。


 宮大工のスケールの大きさ、伝統の凄さ、理にかなった技巧について考えさせられました。そして、西岡氏の境地まで近づきたいと真面目に思いました。


 そうそう、これらの本達の合間に、マンガ『バガボンド』も1巻から24巻まで一気に読み感動。宮本武蔵の話ですが、面白すぎ!!かっこよすぎ!!本物だ!! こちらもお勧めです。(読んでた生徒さんも多いいようですが)


 西岡氏、バガボンドの井上氏、同じ事を言っている。


 『理にかなったものは美しい』  


靴作りも同じだ。(号泣)