フーリガン通信 -19ページ目

世界を驚かす覚悟?

「世界を驚かす覚悟がある。」・・・ご存知の通り、6月6日アウェーでのウズベキスタン戦後、めでたく4大会連続のW杯出場を決めた日本代表選手達が着用したTシャツの胸にプリントされたコピーである。


しかし、今回の選手の胸を誇らしげに飾ったコピーに、私は「おや?」と思った。いつの間にか「世界を驚かす」という表現に「覚悟がある」という言葉が繋がったからである。


「世界を驚かす」と「世界を驚かす覚悟がある」。皆様はどちらの表現に力強さを感じるだろうか。言葉尻を捕らえるのは大人気ないと思われるかもしれないが、私には元々断定的であった「決意表明」に、わざわざ「その覚悟がある」という言葉を繋げたことで、決意の達成に対する弱気、言い換えると達成できなかった時に「覚悟はあったんだけど・・・」と言い訳ができる余地を設けたように感じるのだ。


「世界を驚かす」という言葉は、岡田監督が「W杯ベスト4」と共に繰り返し述べてきたものであり、両者は同義語であろう。要するに「世界も驚かす」ためには、「W杯ベスト4」という結果が伴わなければならないということ・・・


確かに成長するためには「目標」を立てることは必要であり、その目標は頑張らないと届かないくらいの高さに設定すべきである。しかし、いくら高い目標といっても、それがどう考えても届かない高さのものであれば、逆にシラけるだけである。実際にサッカー関係者の中でも「その意気は結構だが、客観的に見てベスト4は厳しい」と見るのが一般的である。


本大会出場が4回連続といっても、日本の過去の3回の通算成績は2勝2分6敗2分。このうち自国開催2002年大会でのホームの成績を除けば、“5敗1分”の惨敗である。(どこかのTVでは「アウェーで5敗1分」と言っていたが、これはアウェーの成績ではない。対戦相手のホームでもない“中立国”での対戦成績である。)残念ながら、これまでの本大会では日本は前評判を下回るその弱さで、逆に「世界を驚かせて」来た。


今回のアジア最終予選でも下位チームが星の喰い合いをしてくれたから良かったが、実際にはバーレーンやウズベキスタン相手には大いに「驚かされた」。アジアの中位国相手でそんな状態であるから、日本は間違いなく南アフリカでも世界を相手に「驚く」ことの方が多いだろう。自身が86年メキシコ大会でベスト4になったベルギーのベルコーテルン監督は、キリン杯で日本に0-4の惨敗直後にも関わらず、日本の「W杯ベスト4」という目標について「言うは易し」と切り捨てたのも決して負け惜しみではない。


そんなレベルの日本サッカーであるから、「W杯出場」という目標を達成し、いざ「本大会で4位」という目標が現実に目の前に聳え立った瞬間に、「驚かす」という表現が「驚かす覚悟がある」という弱い表現になってしまったのではないだろうか。


もし誰も本気で「W杯4位」なんて思えないのであれば、一度立てた目標であっても、それを修正しても良いはずだろう。むしろ現実を正しく見つめ、自らの弱みを認め、それに対して取り得る最適な対策を打つ。今の日本代表に必要なのは、そんな冷静な作業のような気がする。


「世界4位になる覚悟がある」・・・同義であるはずの目標をくっつけてみた。その虚しさが分かるだろう。今更、“当たり前の覚悟”を問う必要はない。


そういえば「絶対に負けられない戦いが、そこにはある。」という、耳にタコができるようなテレ朝のキメ台詞コピーだって、見方によってはこう突っ込める・・・「えっ、勝たなくてもいいの?」


コピーライターという職業って、本当に必要なのだろうか?



魂のフーリガン


追伸: 選手諸君、南アフリカW杯出場権獲得おめでとう!


誇り<打算 

ブンデスリーガ王者、ブォルフスブルクの大久保嘉人が神戸に戻ってくるらしい。うすうす予想はしていたが、一方でそうならないことを祈っていた私には悲しいニュースである。まだ、決まった訳ではないが・・・


嘉人の海外挑戦は、今回が2回目である。2004年のアテネ五輪で惨敗する中、3試合で2得点と1人気を吐いた男は、04-05シーズンにセレッソ大阪からリーガ・エスパニョーラのマジョルカにレンタル移籍で、念願の欧州進出を果たす。デビュー戦では切れの良いプレーで1得点1アシスト、怪我で消えたかと思えばシーズン終盤に復活しクラブのリーガ残留の立役者となった。


小柄ながらもスピードと技術を兼ね備え、積極果敢に相手に向かうそのスタイルは、以前バリャドリードで確率を重視してなかなかシュートを打とうとしなかった日本人FWのイメージを覆すものだったが、リーガの底辺をさまようチームでは、そこそこの日本人選手を完全移籍させる余裕もなく、結局05-06シーズンはレンタル移籍の延長。クラブも本人も泣かず飛ばずで、有名な「キャバクラ事件」のお客の1人としてジーコジャパンから外され、結局そのままドイツW杯出場も逃すことに。そしてシーズン終了後、失意の中でマジョルカからレンタル元のセレッソに戻った。


セレッソで1年戦った後に移籍した神戸で、嘉人は再び得点力を見せ始め、代表にも復帰を果たす。そして欧州08-09シーズンの“冬のマーケット”で以前より嘉人に目をつけていたというフェリックス・マガト監督の熱望を受け、今年1月にドイツのヴォルクスブルクに念願の“移籍”を果たしたのである。


自身の海外挑戦の失敗により前回のW杯出場を逃した嘉人にとっては、今回のヴォルクスブルク移籍にいたるまでには大きな葛藤があったに違いない。「行くっきゃないよ」と背中を押す“天使”と、「行ったらやばいよ」という“悪魔”の囁き。天使にも悪魔にもそれぞれの言い分があったからである。


天使の囁きは・・・

・海外でプレーするのが夢なんだろ。願ってもないチャンスじゃないか。

・しかも今回はレンタルじゃなくて最初から“完全移籍”。相手もマジ(本気)だぜ。

・あの名監督マガトが、再三直々に誘ってるんだから、試合にも絶対出られるって。

・スペインでは言葉で苦労したけど、今回はハセ(長谷部)がいるから何とかなるだろ。

・欧州じゃ26歳は若くないよ。こんなチャンスを逃したら二度と来ないかもよ。

・スペインの経験は失敗じゃない。学んだことを生かしてドイツで成功すればW杯もついてくる。


一方、悪魔の囁き・・・

・マガトは調子ええこと言うとるけど、でかいのや上手いのが揃ってるし、本当に出られるんかな。

・W杯出るために代表戦は絶対に帰るとして、移動時間と時差で、半端じゃなく疲れそうやな。

・それよりも代表戦でおらん間に、チームでポジション取られたらどないすんねん。ほならW杯もパアや。

・ハセはおっても、これからドイツ語勉強すんのもしんどいな~。あんた勉強苦手やろ~。

・子供も現地の幼稚園に通うのに苦労するで。生活、しんどいんとちゃうか。

・スペインで一回失敗しとるやんか。W杯出るために危険は侵さん方がええで。


いつまでたっても“やんちゃ坊主”のイメージが強い嘉人であるが、さすがにこの程度のことは考えていただろう。前回スペインでの挑戦で失敗しているだけに、むしろネガティブなイメージは痛みとして持っている。しかし、彼はその上でドイツ行きを決断した。つまり「リスクを取った」のである。私は彼のサッカー選手としての魂に、心の中で拍手を贈った。「そうだ。それでこそ嘉人だ!」


そして彼のブンデスリーガデビューは“衝撃的”だった。ウィンターブレーク明け初戦となるケルン戦、後半22分にピッチに立つや、そのわずか1分後のファーストタッチで惜しいシュートを放ち、その5分後にはグラフィッチの得点を導く初アシストを記録、その後もポストを叩くシュート・・・スタンドの観客は見慣れない小柄な選手の躍動にどよめき「こいつは何者だ!どこから来たんだ!」という声が上がったという。


スペイン時代と同様、スタートは素晴らしかった。しかし、リーガ下位のマジョルカに対し、ヴォルフスブルクは上位を争うチーム。やはり求められるのはプロとしての結果である。結果としてシーズン28ゴールのグラフィッチ、26ゴールのジェコという2大エースが君臨するチームでは、嘉人の出番が限られるのは仕方がない。限られた時間で結果が出せればよかったのだが、ブンデスリーガはそんなに甘くない。嘉人を連れて来たマガト監督もシーズン途中で来シーズンはクラブを離れることが決定した。それと関係するかどうかは不明であるが、嘉人はピッチサイドからも姿を消すことが多くなった。


嘉人の苦悩をよそに、快進撃を続けたクラブは最後に大きな歓喜に包まれた。クラブ史上初のブンデスリーガ優勝。クラブ2年目の同僚・長谷部はボランチ以外にも複数のポジションをこなし、クラブの快進撃を支えた。3月の膝の手術から短期間で復帰し、終盤には頭部に7針も縫う裂傷を負いながら奮闘した。優勝を決めた最終節もバンデージを頭に巻いて先発のピッチに立ち、最後は歓喜のサポーターに向かって、そして日本に向かって、誇らしげにマイスターシャーレを掲げた。一方の“助っ人”嘉人は、その瞬間にピッチにもいなかった。ベンチ外で失望のシーズンを終えた後に残ったもの・・・それは、リーグ出場6ゲーム、得点“0”という記録であった。


サッカーのみならず人生においても「れば・たら」の話はすべきではないのだろうが、あえて語らせてもらえれば、嘉人自身の運命は“衝撃的”と報道されたドイツ・デビュー戦で決まったように思う。あの強烈にポストを叩いたシュートがもし入っていれば、ウィンターブレーク後でサポーターの注目が最も高かったゲームで、嘉人はクラブに2-1の劇的な逆転勝利をもたらしていたはずなのだ。“驚き”の代わりに“歓喜”をもたらしていれば、彼はクラブにもサポーターにも“救世主”として認知され、その後の使われ方も愛され方も違っていたはずである。決して難しいシュートではなかった。力む必要はまったくなかった場面で、思い切り振りぬいた結果だけに、一層惜しまれる場面であった。確かに同じゲームで彼は勝ち点1を積み上げる貴重なアシストを記録したが、残念ながら欧州ではアシストという記録は存在しなかった・・・


話を冒頭に戻そう。ドイツで殆ど出場機会が得られない状況への不安から、W杯出場のために試合勘を重視した嘉人は、コンスタントにゲームに出場できる古巣・神戸への復帰を最優先に考えて移籍交渉しているという。そして、ヴィッセル側もサポータに愛される男の復帰と、守りのツネ様と攻めのヨシトの2枚看板の実現を、咽喉から手が出るほど欲している。相思相愛の移籍、金の問題さえ解決すれば障害はないだろう。


しかし、考えてみよう。前回のマジョルカでの“レンタル期限切れ”の帰国と今回のケースは異なる。ヴォルクスブルクからまだ「要らん」と言われたわけではなく、実際に契約期間は2011年6月まである。そして、今シーズンの活躍で主力選手の何人かは移籍すると思われ、来シーズンは欧州CLに参戦するためにゲーム数は増える。つまり嘉人が出場するチャンスは増えるのである。そんな中での“弱気”・・・「そうじゃないだろ!!」・・・彼のチャレンジを素直に応援していえた私は、大いに異議を唱えたい。


嘉人よ。君は「リスクを取って」ドイツに行ったのではなかったのか。こういう状態になることも覚悟の上で、飛び出したのではないのか。ほんの数ヶ月の挑戦で「行ってはみたけど、ゲームに出られないから帰る」・・・そんな甘い考えで海外で成功するはずはない。さらに、「神戸に戻ればゲームに出られてW杯に行ける」という発想自体が甘い。Jリーグを、日本のサッカーを冒涜している。そして、そんな目で「日本代表」を見ている選手が選ばれるなら、そんなレベルの選手がレギュラーとしてピッチに立つのなら、岡田監督も「世界で4位」等とは二度と語って欲しくない。


嘉人が望み、神戸が願い、そしてヴォルフスブルクも表面で残留を希望する態度をとれば、契約破棄の違約金約3億円に更に多くの移籍金が積み上がる。一見、関連する全てのステークホールダーが利益を得るかのような話ではあるが、その中で、実は1人だけ大損をする者がいる。それは、失敗から学ぶことなく安易な道に逃避し、その持ち味であった挑戦する“魂”を失った「大久保嘉人」、その本人である。「欧州でのプレー」と「W杯出場」を秤にかけての決断だとしても、私にはそれは「誇り」と「打算」という全く別の分銅の重さ比べにしか見えない。


嘉人の去就が正式に決まるのは、実際には6月末頃になるかも知れないという。売るなら高く売りたいヴォルフスブルクと、買うなら安く買いたい神戸の腹の探りあいのために時間が掛かる(を掛ける)のである。出来ることならその間に、私は嘉人の「魂の復活」を願う。昨年末、移籍を決めた時のメンタルに。ヴォルフスブルクでの活躍の結果としてのW杯出場という目標。まだ26歳のプレーヤーとして、チャレンジして決して損はないはずである。


まだ心のどこかに、その道を選ぶ“魂”が存在しているはずだ。私の知っている「大久保嘉人」であれば・・・


魂のフーリガン





ベルギービールの味

早いものでキリンカップも開催30周年だという。日本サッカーがアマチュアで、しかも滅茶苦茶弱かった頃に始まったこのキリンカップは、当初は代表チーム相手ではなく、クラブチームの招待であり、当時「全日本」と呼ばれたアマチュアの日本代表は、毎回と言って良いほど外国のプロ選手を相手に苦汁を飲まされた。


そんな、当時はW杯はおろか、オリンピックにも出場することができなかった日本が、今は4大会連続でオリンピックに出場し、さらに4大会連続のW杯出場にもまさに手が届こうとしている。第1回大会ではボルシアMGのデンマーク人FWアラン・シモンセンのプレーが興味の対象であった私も、30年後の今は、日本の“勝ち方”にまで拘るようになった。


改めて思えば、30年という時間は、今50歳の私の人生の6割に当たる長さである。ゲーム毎に行われるスポンサーから勝者への飲料プレゼントセレモニーは相も変わらず醜悪の極みであるが、「慈善事業」から始まったといっても過言ではない、キリンの日本サッカーに対する超長期的な「社会貢献」には、いくら頭を下げても足りないくらい感謝している。でも私は「ラガー」や「一番絞り」よりは、「スーパードライ」や「黒生」の方が好きなので、肝心のキリンのマーケティング活動の効果のほどは不明である。


さて、キリンへの感謝はともかく、日本サッカーがこのスポンサーの協賛金を生かすも殺すも、それは日本サッカー協会がどんなマッチメイキングをするかに掛かっている。今大会はチリに4-0、ベルギーに4-0、合計8得点、無失点は長い歴史で最高の成績で、“決定力不足”という霧が一瞬晴れてW杯への視界が良好になったと多くのサポーターは感じたことだろう。本当にそうなのだろうか。


私が見たところ初戦のチリとは点差ほどの力の差はなかった。しかし、昔感じた南米相手の無力感はなく、むしろ目新しいメンバーの躍動に爽快感すら感じた好ゲームであった。実力がそんなに違わないと思えわれる相手に対し4-0という結果を出して見せたことも大いに評価できる。


しかし、ベルギー戦はどうであったか?現在のベストメンバーと思われる選手を並べ、仮想ウズベキスタンといわれた欧州の古豪相手に前半2点、後半2点の4-0。しかも得点はいずれも流れの中からである。結果だけ見れば満足すべきなのだろうが、問題はベルギーが仮想ウズベキスタンとして評価できるだろうか?


答えはNO。ベルギーにしてみればシーズンを終えたばかりで疲れが蓄積している上に、欧州からの長距離移動に時差もある。更にキリンカップの招待チームが常に抱える“ハンディキャップ”である「中1日」でのゲーム!欧州のW杯予選でもグループ4位で選手の代表チームに対するモチベーションも低い。そんなベルギーのフィジカルとメンタルのコンディションの悪さは開始早々からミエミエだった。


なのに日本代表は点が取れない。もっともしっかり守らないばかりか、攻撃する気も見せないベルギーなので、見ている側にも緊張感はゼロ。そして程なくノープレッシャーの中で長友と憲剛のシュートが入る。いずれも綺麗な得点で手元のビールも進むのだが、どうも今宵のベルギービールは温すぎた。


ハーフタイムにはどうやら岡田監督の檄があったようで、交代メンバーのモチベーションもあり後半少しは美味しくなったが、やはりすでに優勝賞金の望みのなくなったベルギーは、相変わらず「攻めない、守らない、走らない」の三無主義。後半の2得点も綺麗な展開ではあったが、真剣勝負ではあんな「ご馳走」はまず出てこない。たとえアジア相手でも。


結果的に4点も見ることが出来たのだから、普段は代表の決定力不足でイライラしてきたサポーターにしてみれば、大いに楽しめただろう。スポンサーが期待するイベント性、娯楽性、話題性は十分で、興行的には大成功と言えるのだろう。しかし、それはあくまでも“ショー”としての話。日本サッカーとして一番重要な、日本代表のW杯準備試合としての目的は果たせなかった。私はそう思うのである。


ゲーム後の会見で、岡田監督はキリンカップでの結果について「ウズベキスタン戦では何も保証してくれるものではない」とマスコミに対し冷静な談話を披露した。実際に手応えのない相手と戦った選手達もこの結果に浮かれる程バカではないだろう。しかし、周囲にはバカが沢山いる。


守らない相手だからこそ通用した憲剛のトップ下起用に大きな希望を見出す評論家、つまらない内容だからこそ発生したスタンドのウェーブに喜ぶアナウンサー、そして、何の意味もない「W杯最速出場決定」を騒ぎ立てるマスコミ・・・こんな二流国が集まってササッと3試合するだけの冠大会で、よくここまで騒げるものである。恐らくチリの選手もベルギーの選手も、たかが“親善試合”で、スタジアム一杯の観客が入ること自体が信じられなかったのではないだろうか。


賢明な読者の皆様はそうではないだろう。思い出して欲しい。2000年6月にモロッコでのハッサンⅡ世杯で、フランス2-2でPK戦にまで追い詰め大騒ぎされたトルシエジャパンは、翌年3月にサンドニで同じフランスに0-5という惨敗を喫している。2005年6月のコンフェデ杯でブラジルに2-2、加地の“幻のゴール”があれば勝っていたと騒がれたジーコジャパンも、2006年のドイツW杯では不調のロナウジーニョにまで弄ばれての1-4の惨敗。そういえば、ドイツW杯直前のドイツとの準備時試合でもも2-2と開催国を慌てさせ、国民の期待も最高潮に達した後はご存知の2敗1分。日本は世界で最初に出場を決めた大会から、最も早い段階で姿を消した。


そう、親善試合は親善試合。生きるか死ぬかの真剣勝負となるW杯予選や本大会とは全く異なるものなのである。フランス、ブラジル、ドイツとは違って、チリやベルギーに次の対戦で一蹴される心配はないだろうが、岡田監督の言うとおり、今後に向かって「その結果は何も保証するものではない」。多くの国民がそのことを理解していないことこそが、サッカー後進国の証なのである。


成功から学ぶことは少ない。むしろ成功体験にしがみつく人は先に進むことが出来ない。しかし、失敗から学ぶことは実に多い。痛みを伴う失敗の反省があるからこそ、人間は次の1歩を踏み出すことができる。マスコミは小さな成功でも大きくして賛美しておきながら、同じ乾かぬ舌で次の失敗を非難する。「進歩が見られない」と。


進歩するためには「失敗」が必要だといっても、毎回毎回失敗して学んでいるわけにも行かない。だからこそ、私は“親善試合”を上手く活用して欲しいと思う。キリンカップはそのための良い機会だと思う。特に先のアジア杯に負けたためにコンフェデ杯に出られない日本にとっては、尚更その意味は大きかったのだ。「負けてもいい」親善試合だからこそ、日本より強いチームと対戦し、日本の力を試し、抱える問題を見つけて欲しかった。安心感より危機感が欲しかった。次に待っている「負けられない」真剣勝負で、失敗から得た学びを活かして勝つことができるように。W杯出場が決定する前ではあるが、「W杯で4位」という高い目標を真剣に目指しているのなら、尚更そうあるべきではないだろうか。勝ち癖をつけるlことも大事かも知れないが、弱いチームを相手に“勝ち”を得ても、そこには“価値”はないのである。


ビールはキーンと冷たくて、苦いから美味しいのだ。“キリンカップ”で飲んだ“ベルギービール”、カップも冷えていないし、中身のビールも気が抜けていた。少なくとも、私は「お代わり」は要らない。


魂のフーリガン