喜望峰から見る夕日 Part2 (前編)
Football以外で魂の疲労が溜まっているようである。日々回るFootballシーンの中で、思うことはたくさんあるのだが、キーを叩く指まで魂が働きかけて来ない。そうして日本は「世界を驚かせる」ことができるか?について語るという約束を果たす前に、日本代表は国内で香港、スコットランド、トーゴ、海外で南アフリカ、香港という5つの国際マッチを行った。当然の事ながら、9月の欧州遠征時に比べ、代表のW杯での成績を判断する材料は増えている。今回はそれらの新たな材料を加えて、改めて日本代表を“料理”してみたい。
2.日本は「世界を驚かせる」ことができるか?
南アフリカW杯で「ベスト4」に残ることと、「世界を驚かせる」ことが同義であるならば、この設問の意味はない。前回既に「ベスト4」は無理と断じているのだから、答えは“NO”である。しかし、「ベスト4」という結果を伴わなくても、「驚き」を与えることはできる。
そこでまず最初に、何をもってして「驚かせた」といえるのか、その判断基準を共有したい。もともと「驚き」とは感覚的なものであり、そこに具体的な尺度は存在しない。したがって、抽象的・概念的となることをお許しいただいた上で、「驚きをもたらすもの」を、ここでは“既存の価値観の更新”と定義する。「更新」とは既知事象が変化することであり、その更新の度合い・・・言い換えれば、既存の価値と新たに提示された価値の間の “ギャップ”こそが、人に「驚き」をもたらすのである。当然のことながら、そのギャップが大きければそれだけ「驚き」も大きく、逆にそれが小さければ「驚かない」ということになる。
そこで先日、興味深い報道を目にした。英ブックメーカーのWilliamHill(ウィリアムヒル)社が、南アフリカW杯出場32チームの最新オッズをランキング形式で発表したのである。それによると1位はスペインとブラジルが5.5倍で最も低く、以下3位イングランド7.0倍、4位アルゼンチン9.0倍、5位ドイツ13倍、6位イタリア、オランダ、フランスの15倍と続いた。
残念ながらアジア代表は22位にオーストラリアがやっと顔を出し101倍。肝心の日本はといえば26位の201倍であった。(因みに、韓国は28位の251倍、北朝鮮は同率最下位の501倍。アジアそのものの評価が低いことが良くわかる。)
南米予選であれほど苦労したアルゼンチンが4位に入ること自体、多分に人々のイメージのみで決められた評価であろうことは否めないが、日本に対する大衆の評価がこの程度のものであるということは紛れもない事実であろう。前回の通信を振り返るまでもなく、いかに「ベスト4」と掲げている目標が、坂の上の雲の更に遥か向こうにあるか・・・頭の悪い方でもお分かりいただけると思う。
このオッズの現実に対して謙虚になって考えたときに、「日本が世界を驚かせるか否か」の境目は現在の評価であるから、当然参加32チーム中の26位ということになる。即ち、「グループリーグを突破できるか否か」という結果がその判断基準となるのだ。
26位をどう捕らえるかは別として、皮肉にも、この日本に対する世界の低い評価は、「日本が世界を驚かせる可能性」が十分にあることを示唆している。しかしながら我々はもう一つの点を肝に銘じておかなければならない。驚きには、良い驚きと悪い驚きがあるということを。前者は「期待を超えて世の中に新たな価値観を提示する」もの、そして後者は「期待を裏切り、既存の価値を著しく低下させる」もの・・・言い換えれば「落胆」と「失望」いう言葉になる。甘く見てはいけない。我々は大いなる落胆を味わったではないか、2006年のドイツで・・・
さて、ここまで述べたことは一つの真実である。しかし、同時に屁理屈でもある。むしろ、そういう相対的な順位のギャップで世界を驚かせても、それは意味のないことで、岡田監督の意図する「驚かす」ということとは違うだろう。やはりFootballのクオリティで世界を驚かせたい、絶対的な価値で驚かせたいはずである。それでなければ世界を驚かせたことにはならない。
前回のテーマに戻るが、そのことをわかりやすく表現するために、岡田監督は「W杯ベスト4」という具体的な目標を設定したのであろう。高いクオリティがなければ、さすがにそこまでは到達できないからである。
岡田監督が何を言うのもいいだろう。目標は自由。達成出来れば歴史に残る名監督、出来なければ責任をとって辞任。既にその退路は用意されている。問題は、誰もその真意を読まずに「ベスト4」という言葉に踊らされていることだ。Footballを知る者は誰一人信じていないことを、何故いつまでも繰り返し唱えているのか。無責任で短絡的な啓蒙活動の怖さは、それを信じて盛り上がる無知な人たちが、その真実に気付いた時の行動である。もう見向きもしなくなるという・・・
それでは日本代表は、順位に関係なくそのクオリティで、その絶対的な価値で「世界を驚かせることができるのだろうか?」・・・という訳で、ここからが今回の本論となる。
・・・そしてその本論は次回に・・・って、いつ終わるのだろうか、オレ(汗)
魂のフーリガン
喜望峰から見る夕日 Part 1
いよいよ2009/2010のシーズンが始まったというのに、今回がシーズン最初の発信となる。相も変わらず忙しさを理由に怠慢をこいている訳だが、それ以前に今一つ私の魂のノリが悪いことも事実である。その理由は先の日本代表の欧州遠征・・・
オランダに0-3、ガーナに4-3と、来年のW杯出場国を相手に1勝1敗に終わった岡田一族のツアーに関しては、既に多くの方々が詳細に語っているし、今更それらゲームそのものについて後追いで語るつもりもない。しかし、一方で何かを語っておかないと、魂に引っかかる違和感もなくならず、何かすっきりしない。なので、今回はその違和感を吐き出したい。
吐き出す内容は次の通り。
1.日本は「世界4位」になれるか?
2.日本は「世界を驚かせる」ことができるか?
3.日本は「グループリーグを突破」できるか?
言うまでもなく、この私の魂の上の方、つまりもう咽喉から出掛かっている順番に並んでいる。
1.日本は「世界4位」になれるか?
もったいぶっても仕方がない。答えは“NO”である。僅かの期待も無い。誰が何と言ってもNOはNO、その事実は変わらない。W杯アジア予選では、明らかにオーストラリアに水を空けられたことが露呈した。オランダとの親善試合では欧州の強豪にはとても歯が立たないことが判った。結果的に勝利したガーナ戦でも、明らかに個々の能力の違いを見せつけられ、チームの中では世界に通用するレベルと思われていた中澤、闘莉王といった中央の守備がいとも簡単に切り裂かれた。
今回の欧州遠征の目標は、オランダやガーナとの対戦を通して「世界との距離を知る」ことだった。そして我々は、その距離がまだ非常に長いものであることを知った。確かに目標は高く設定すべきだし、そういうストレッチゴールを設定することは間違ってはいない。しかし、何度も言うように、現実の能力と目標の高さの間に存在する距離を見誤ってはいけないのだ。正しく把握してこそ、その距離を縮めるために論理的なアプローチを策定することが出来る。
距離を正しく把握することと同様に、目標を正しく設定することも重要である。即ち、目標を設定するためには、そこに設定する根拠が必要なのである。恐らく岡田監督は2002年の韓国やトルコの躍進を意識して「世界4位」という目標を設定したのだろう。特に同じアジアのライバル韓国が出来たのに、日本も立場上あまり控えめな目標も立てられなかったのかも知れない。しかし、それにしてもいきなり4位とは、やはりあまりにも現実離れした目標といわざるを得ない。
まず、我々は2002年の韓国とは事情が全く違うことを承知すべきだ。韓国が勝てた理由は以下の通りである。
①全試合ホームゲーム(選手の高いモチベーション・圧倒的な応援・有利な判定)
②アジア特有のくそ暑さ(夜でも高温・多湿の中での消耗の激しさ)
③有名選手のコンディションの悪さ(シーズン直後の欧州強豪クラブ中心選手/特にレアルの選手)
④ヒディンクによる長期間のフィジカル強化
もちろん、韓国の4位という成績を評価しないわけではない。あの真っ赤なスタジアムにも負けないくらいの燃える闘志を見せた選手達には素直に感動した。しかし、あの結果を残す過程には無視できない要因もあったということだ。
これら①~④の内、では南アフリカで日本が期待できる要因は・・・ゼロ。①~③は外的要因であるが、①については南アフリカ以外はアウェーだから他国もほぼ同じ条件、②は南半球の6月は冬であるから各国とも北半球の大会のような悲惨な消耗はない。③は国内でリーグとカップ戦のタイトルを争い、欧州CLに最後まで残るようなクラブの中心選手は皆同じ問題を抱えるが、それに対応してここ数年の強豪クラブも急激に選手層を厚くしているため、以前に比べ中心選手の疲弊は軽減しているだろう。
唯一内的要因である④選手のフィジカル強化については、やろうと思えばできることだが、今のところ岡田監督にその動きは見られない。フィジカル強化(特に走力・持久力)が必要なサッカーを目指しているにも関わらず、そのための専門のコーチを加えたという話も、その為の長期合宿を行うという噂も聞こえてこない。当時の韓国が国家指令として代表強化を最優先できたのに対し、景気後退の影響でクラブの存続すら危うくなってきているJリーグの状況下、サッカー協会もJリーグを無視して代表強化を優先するようなことは出来ない状況にあるということは容易に想像がつくが・・・
しかし、改めてカレンダーを見ると大会開幕まであと8ヶ月。前述のような外的な好条件を一切期待できない中で、残念ながら、短期間で現在のチーム力を大幅にアップするような魔法はそうそうないだろう。かといって個人の力でチームを牽引するような救世主も存在しない。オランダ・リーグの新参クラブで活躍が目立つ本田や、セリエAの中位以下のクラブでやっとFWに定着したばかりの森本がこれだけ騒がれること自体が人材不足の証明であろう。同じ監督で、同じ選手が見せる同じサッカー。それでいながら、いまだに「敗北」を容認しながら「世界4位」を連呼するマスコミやサポーター。信じる者は救われる?馬鹿な、宗教でもあるまいに・・・
さらに信じられないことに、選手たちの中からも「W杯ベスト4」を疑問視するようなコメントが聞こえてこない。指揮官が立てた目標に対し反論すれば、代表には呼ばれないと恐れているのだろうか。「出来っこないよ」と腹の中で思いながら、表向きには「やろうとしていることは正しい」、「目標は世界4位!」と言い続ける。自分達の本当の力を、世界との距離を身をもって知っている選手達こそ、一番大きな違和感を感じているはずだ。違うか?
選手、マスコミ、サポーター。皆そろそろ思っていることを正直に語るべき時ではないだろうか。現実を正しく見つめて、今出来ることから確実にやることが、結果として目標に近づく最適の手段となる。無理な一歩を狙って失敗するよりも、二歩、三歩かかって着実に目標に近づく。そういうアプローチもあっていい。
前述の通り、高い目標を立てそこに到達するために努力した結果、以前よりレベルが上がるという方法論も確かにあろう。しかし、この手の目標設定には大きな欠点がある。それは、終わった後に誰も責任を取らないということだ。元々「無理だ」と思っている目標であるから、「頑張ったけど仕方ない」で済んでしまうのである。もっとも恐ろしいのは日本サッカーには、実際にそういう曖昧な傾向があるということだ。
W杯後に岡田監督は退くだろう。しかし、彼にその先まで契約があるわけではないから、彼は責任を取っての更迭ではない。そして、岡田のサッカーを承認し、岡田体制を推進してきた責任者であるはずのサッカー協会幹部もまた、誰も責任を取らない。そして総括も反省もないまま、次期監督を選び、その監督に責任を負わせるのだ。
振り返って見よう。2006年、サッカー協会が最大限の信頼を寄たはずのジーコ・ジャパンのドイツW杯。そして2008年、「メダルを獲る」と言い続け不安の中で続投した反町ジャパンの北京オリンピック。いずれも期待を大きく裏切る惨敗であったが、その後日本サッカー協会の幹部は責任を取っただろうか?責任ある立場での総括や反省はあったか?何の責任もないような顔をしたまま川淵氏から犬飼氏に会長の顔は変わったが、日本サッカー協会の無責任な体質は全く変わっていない。反省がないから対策も出ない。問題を先送りしているから進歩もしない。今の日本サッカーの停滞の原因は、中田や小野のような才能ある選手がいないからではないのである。
思えば日本サッカーはもはやアマチュアスポーツではない。選手もプロ、監督もプロ、そしてそのスポーツを推進する責任者は当然プロの経営者であるべきである。しかし、現在の日本サッカー協会幹部はまるで名誉職、安定株主に胡坐をかいた同族会社の無能経営者に見えてくる。どうでもいいようなことに対しては偉そうに口を出すが、肝心の日本サッカーの強化に関しては経験も理論もないから何も言えない。できるのは事業担当者の首を変えるだけ。この悪しき体質はそろそろ断ち切らなければならないだろう。
だから私は改めて、声を大にして言いたい。
日本は「世界4位」という誰も責任の取れない目標を、今すぐに取り下げるべきである。
もし取り下げないのであれば、その勇気すらないのであれば、その結果に対して、今度こそ日本サッカー協会として責任を取らなければならない。監督に責任を取らせてお茶を濁すのではなく・・・
では、2.日本は「世界を驚かせる」ことができるか?については次回に語ろう。
魂のフーリガン
ホワイト・サマー・バーゲン2009!!
前回通信でレアル・マドリーのこの夏のお買い物を総括したが、それだけでは片手落ちだろう。いくらお買い物好きとはいっても、ピッチには11人しか立てないのがFootballである。いくらたターン・オーバー制で同じポジションに同等の選手を複数用意するといっても、欲しいものをどんどん食べているだけではメタボ体質になり、ファーガソンが指摘するように、明らかに「バランスを欠く」ことになる。
経営の観点から見ても「在庫は罪悪」。在庫が適正水準を超えたら処分しなければならないのは、会社経営者であるペレス会長にしてみれば当然の話。そこで、前回のお買い物に続き、今回は売り物を整理しよう。
前回7品のお買い物をご紹介したが、さすがペレス会長、一方で既に8つの品物を整理している。その品目を売値(移籍金のみ)で並べてみると・・・
品物 原産国 種類 売値 お客様 備考
クラース・ヤン・フンテラール オランダ FW €1500万 ACミラン インセンティブ付き
ハビエル・サビオラ アルゼンチン FW €500万 ベンフィカ・リスボン
ダニエル・パレホ スペイン MF €300万 ヘタフェ レンタル戻り再放出/買戻しOP
ガブリエル・エインセ アルゼンチン DF €150万 マルセイユ 07年に€1200万で獲得
クリストファー・ショルヒ ドイツ DF €100万 1FCケルン 07年に€60万で獲得
ファビオ・カンナバーロ イタリア DF €0 ユベントス 契約満了
イェジー・デュデク ポーランド GK €0 ? フリー獲得⇒契約満了
ミチェル・サルガド スペイン DF △€α※ ? 合意の上で契約解除!!
合計 8 品 €2,550万 = 約34億4千万円+α(\135/€1.00)
注※: 功労者サルガドは契約をまだ1年残しての契約解除。まだ現役続行の意志のあるサルガドにとって移籍金ナシで次のクラブ探しが容易になるという利点もあるが、契約は契約、合意の上とはいってもレアルは中途解約の違約金αをサルガドに支払うことになるだろう。
さて7品買って、8品を処分したのだから、倉庫のスペースはお買い物前とほぼ変わらない。従ってこれ以上の在庫処分は不要とも言えるが、その売値総額は買値総額の約1/10。やはり要らない物は安い。従ってこの夏の営業活動の収支はまだ300億円を超える大赤字なのである。
夏の買い物にすっかり満足した白い巨人も、できればまだまだ要らない物は減らしたい。それが経営というものだ。当然のことながら、欧州の各クラブはそんなレアル・マドリーの「ホワイト・サマー・バーゲン」を待っている。
他ならぬペレス会長の積極的なお買い物の影響で、今年の夏の品動きは活発で各クラブぼぼお買い物は終了したかに見えるが、サマー・バーゲン期間は8月31日まで。期限間近の「ファイナル・セール」で、“白いお買い得品”を少しでも安く手に入れようと、水面下で動いているのだ。
ではファイナル・セールで出品される可能性のある目玉商品を並べてみよう。
出品候補商品 原産国 種類 希望価格 見込客 備 考
ヴェスレイ・スナイデル オランダ MF €2500万 インテル 07年€2500万で購入/落札相場€1900万
ラファエル・ファン・デル・ファールト オランダ MF €1300万 インテル 08年€1300万で購入/移籍志願中
アリエン・ロッベン オランダ MF €2500万 ?? 07年€3600万で獲得/故障の多さがネック
アルバロ・ネグレド スペイン FW €1200万 ローマ 09年買戻しオプション€500で獲得/再放出?
フェルナンド・ガゴ アルゼンチン MF ?? ユベントス EU選手枠内(イタリア・パスポート所有)
ゴンサロ・イグアイン アルゼンチン FW ?? ?? 06年€1200万で獲得/昨季クラブ得点王
ルート・ファン・ニステルローイ オランダ FW ?? ?? 06年€1500万で獲得/故障中で高額週給
単価を見れば、その多くがいずれもこれまでに売れた品物よりも高い価値のある品物であることが分かるだろう。当然のことながら、購入時の価格と希望小売価格を比べれば、これら品物の販売でレアルが損をしたくないという想いは伝わってくる。レアルにすれば「ウチは別に売らなくてもいいけど、この値段なら売ってやってもいいよ」、一方の見込み客にすれば「どうしても欲しいわけじゃないけど、この値段まで下がれば買ってやってもいいよ」という正反対の立場の交渉になる訳だが、明らかに在庫金額が適正水準を超えていることが分かっているだけに、これから先は買い手が有利になると思われる。
これらの商品の内、スナイデル、ロッベン、イグアインは最近のシーズン前準備マッチにも出ているし、レアル側も「放出の意志はない」とコメントしている。確かにいくら夏の収支赤字でも、キャッシュフローに問題なく、投資回収の見込みがあれば、倉庫が足りない訳ではないので問題はないかもしれない。しかし、裏を返せばレアルの姿勢も「ウチで必要な選手なんだから、安い値段じゃ売らないよ」という無言のアピールとも見て取れる。レアルがセール期間内にどこまで売りさばいて収支の赤字幅を減らせるか、どこのクラブがレアル相手に上手い買い物をするのか、今年のホワイト・サマー・バーゲンの行方は最後まで目が離せない。
しかし、「売る・売らない」の話はあくまでもクラブ側の都合である。売れなきゃ在庫しても良いと開き直るレアルも、重要な真実を考慮しなければならない。それは、これらの“品物”は皆、その一つひとつが“魂”を持った人間だということである。彼ら自体が商品なのではく、彼らのパフォーマンスにこそ商品価値が存在するからである。実力もプライドも自信もある優秀な選手達が、レアルの一方的な飼い殺し状態に満足できるだろうか。
しかも、その全てが自国代表クラスであることが、更に大きな問題を引き起こす。裏の事情はもちろん、来年に控えた南アフリカW杯である。ワールドカップ出場は全てのFootballerの夢であり、その場所に行くためにはまずは自国の代表選手に選ばれなくてはならない。しかし、レアル・マドリーでロナウド、カカ、ベンゼマの控えに回り、プレーする機会が失われたら・・・。
そう、代表監督にアピールする機会がないだけでなく、実戦から離れることでゲーム感が失われる。ただでさえ選手としてのピークが短い競技において、4年に1度しかない機会を失いたくないという思いは選手として当然のことで、自律性を備えたプロフェッショナルであろうとも、その境遇はモチベーションに影響する。
フロントや監督への不信感、チームワークの乱れ、それらをコントロールしなければならないペジェグリーニの心労も半端じゃないだろう。ファーガソンが指摘する「バランスの乱れ」という警鐘は、まさにこのポイントに対してのことなのである。やはり賢人の言葉、耳を傾ける価値がある。
もう一つ上のリストを見て気が付かないだろうか。そう、ファイナル・セールの目玉品の殆どは“オレンジ”だということ。前回のリーガ連覇の際には大きな貢献を果たしたオランダ人達が、ペレス船長の下、再び遥か銀河系を目指して大きく舵を切ったクラブの中でその立場が危うくなってきたのである。
既に代表に未練のないファン・ニステルローイはレアルでの引退を希望しているが、他の選手達はまだまだ他なら暴れられると思っているだろう。スナイデル、ロッベン、ファン・デル・ファールト、皆メタボ状態のレアル以外のクラブであれば中心選手として活躍できる選手達だ。高い値で決まりかけたシュツットガルトを蹴って、ミランに行くことになったフンテラールのように、まだまだ大きな野心を持っている。
W杯欧州予選でグループ9を7戦7勝16得点2失点と快調に飛ばすオランダ代表でストレスを発散できるなら良いが、一方でその実力がクラブで過小評価されるように感じ出したら・・・集団心理は力学的に大きな作用を生み出すことがあるが、そこに民族の結束力が加われば大きなパワーを生むだろう。高い値で売れないまま彼らが残留した場合、これもまたペジェグリーニの悩みの種になるだろう。
何、大久保も同じ?・・・冗談じゃない。チンピラ大久保のセコイ考えと同等に扱うこと自体が、レアル・マドリーという偉大なクラブに対する冒涜である。
魂のフーリガン