初心者同志 -99ページ目

子供の遊び。

子供のころの私は、新しい遊びを生み出す天才だった。


当時の私たちには、学校が終わると、

毎日集まる公園があった。


そこで私たちは、放課後になると、

いつも何かをして遊んでいたのだけど、

何をして遊ぶのかは、その日に集まった仲間の数や、

顔ぶれによって、いつも変わっていた。


たとえば、10人ほどが集まれば、自然と、野球やサッカーになった。

でも、なかなかそれだけの人数が、一度に集まることって少ないんだ。


それに、道具のこともある。


誰かが、サッカーボールやバットを持って、

集まってくれればいいけれど、

子供にとって、遊び道具としてのボールはとても高級品だ。


持っている子供は限られていて、集まった人数は充分でも、

道具が何もない、なんことも多かった。


それで、なにをして遊ぶかは、どうしても、

その日によって、いつも変えなければいけなかった。

私はそんな中で、毎回、遊びの種目を考える役割を担っていた。


その日集まった人数と、持ち寄った道具を見て、

じゃあ、今日はこれをして遊ぼうよ、と私が決めるのだ。


人の集まりが悪いときには、近所の家に、

知っている人、知らない人関係なく


「これからみんなで遊ぶから、君もおいでよ」


と、勧誘にまで行った。


今思うと、玄関を開けたら、まったく知らない子供が立っていて、

一緒に遊ぼう、と言うんだから、

かなり変なヤツと思われていたのかも知れないなあ。


でも、当時の私はそれでも、真剣だった。

ものすごく重要な立場を任されているのだと、

とても誇らしくさえあったのだと思う。


あるとき、こんなことがあった。


その日、公園に集まった五人の友達は、

みんな自転車で来ていた。

そして、ゴム製の野球ボールが一個だけあったんだけど、

バットは誰も持ってきていなかった。


五人だから、チームを分けるのも難しい。


大抵、いつものことだけど、公園にはその日も、

私たち以外は誰もいなかった。


そこで、何をして遊ぼうか、とみんなで色々と相談している中で、

一つの遊びが考え出された。


もし、奇跡というものがあるのなら、

私はそのときが、奇跡と呼べる、ただ一度きりの瞬間だったと思う。


そこで考え出された遊びは、のちに、大げさではあるけれど、

本当に、私たちの伝説になった。


五人の子供。

誰もいない公園。

たった一個のゴムボール。

そして、自転車。


もし自分が、その場所に一人の子供としていたなら、

あなたであれば、一体どんな遊びを思いつくだろうか。



詳しくは明日に。

モスマンハンター(その11)

事あるごとに、あれだけ吼えつづけた飛竜の最後は、

わずかに、か細く短い声をあげたのみだった。


私が全体重を乗せ、叩きおろした剣は、

飛竜の大きな翼をななめに裂いて、胸にざっくりとくいこみ、

厚い肉と骨をいくつも引きちぎって、

そのまま地面に突き刺さった。



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飛竜はのけぞるように喉を伸ばし、

噴水のように血を吹き上げながら、密林の大地にゆっくりと崩れ落ちた。


私は、自分が勝ったのだという喜びと、

これまでの疲労とが一気に襲ってきて力が抜け、

なんとか大剣を支えにしたものの、

今にも地面に倒れそうだった。


そんな私の足元で、倒れた飛竜がすでに動かなくなった自分の羽に、

まるで頭を乗せるような格好のまま、

私の顔をジッと、見つめ、

やがて、クチバシから、息とも、声ともつかない音を吐き出すと、

その眼から輝きがすっと薄れ、閉じられた。


私はそのとき、自分の体の中に渦巻く、

とても悲しい気持ちに気づいて、しばらく動けなかった。


ただ、倒したいと思っていた。


密林の平穏を乱す元凶を。

自分を傷つけた、この飛竜を。

弟の命を奪った、憎い相手を。


でも今、すべてが終わってみると、

私はもう取り戻すことのできない、重大ななにかを、

自分の手で失った気がして、悲しかった。


私は弟のもとに行き、その体を担ぐと、

他の弟たちが待つ、住処に帰った。


日が沈みかけたころ、思っていた通り、わずかに雨が降りはじめた。


私たちは一緒に二番目の弟を埋葬し、

私のその墓の上に、弟たちと作った剣、「護林丸」を突きたてた。


やがて太陽が、遠い山の向こう側へと落ちはじめ、

たちこめる霧をキラキラと輝かせている中で、私たちは誓った。


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この景色は、誰のものでもない。


私たちは、私たちのできる限りにおいて、

この景色のために、できることをしていこうと。


だから、弟よ、そこで見ていてほしい。

私たちが、決して道を、逸れることのないように。


たのんだぞ、私たちのヒーロー!



やがて、この密林に、また、いつもの静かな夜が訪れた。





オンラインゲーム「MHF」

これは、一人のヒーローの物語。

お金を届けたら。

小学生のときに拾った、大量の一万円札 ほどでは

ないけれど、私はそれ以外でも、

これまでに、けっこう、お金を拾ったことがある。


誰もがそうなのかは、わからないけど、

私の場合、お金が落ちているのを見つけると、


まず、最初は驚いて、


次に、ものすごく興奮するんだけど、


すぐに、ちょっとだけ冷静になって、


さて、どうしよう、と思う。


だってさ、お金だもんなあ。


もちろん、拾って、交番に届ければいいんだろうけど、

それも時と場合と、金額にも、よるような気がする。


拾ったといっても、例えば、それが十円玉一枚だったとしたら、

それを、わざわざ交番にまで持って行く人なんて、いるだろうか。


うーん、いないだろうなあ、やっぱり。


たとえば、私は道に千円札が落ちているのを見つけたことがある。


いきなり、ふつうに一枚だけ、道に落ちていたんだ。

さて、問題はここから。


見つけたのはいい。

うん、少なくとも、

誰かが見つけているのを、見つけるよりは、ずっといい。


ちょっとだけの優越感と、ちょっとだけの幸運を、私はかみしめる。

でも、これを、どうしたらいいのか、となると、悩むんだよぉ!

金額は千円だ。

うーむ。

まず、考えるのは、拾うべきかどうか、だと思う。


もちろん、自分の気持ちに正直になれば、これは拾いたいんだけど、

でも、こんなに無造作に落ちているとなあ。


誰かが電柱の陰からとか見てないかしら、とか、

少し冷静になった私の頭は、ついつい、考えてしまう。


あと、本当に誰かが、誤って落としたものだとしても、

拾おうとしたとたん、落とし主がヒョコッ、と現れて、

ちょうど目なんかが合ってしまって・・・・・・、


「あっ・・・・・・」


なんてことになったら、ううっ、絶対、私は耐えられないぞっ!


で、そんなことを、色々と考えているうちに、

気がつくと私は、千円札の前でうーん、うーん、と唸っていたりする。


それで、結局は、拾うのをやめてしまって、

名残惜しい気持ちでいっぱいなのに、

精一杯、虚勢だけはって、振り返りもしないで、歩き去ってしまったりする。

わーん、私の意気地なしっ!

偽善者ーっ!

財布を拾ったこともある。

ああー、こういうのも、ほんっとに困るっ!

ただ、お金そのものがポツン、と落ちているのを見つけるよりは、

少しだけ、気持ちは楽だ。

とりあえず、拾う。

そこまでは違和感はない。


問題は、その中を見るかどうかだ。

だって、拾うだけなら、それはまだ、ただの好奇心と親切心からの

行動と思ってもらえるだろうけど、

そこから先の中身に関しては、完全に他人のプライバシーだ。

一番いいのは、中を確認したりはしないで、

そのまま交番に届けることなんだと思う。

うん、まあ、そうだよね。

でも、好奇心が、私を誘惑するんだ。

心の声が言う。

持ち主が分かれば、警察に届けるまでも、ないかも知れないぞ。

ふむふむ。確かにその通りかも知れない。

で、さらに、こう囁く。

落とし主はきっと、すごく困ってるぞ。一刻も早く返してやるなら、

警察にとどけないで、直接届けてやったらどうだ。

あー、確かにそうかも知れない。

で、悪いと思いつつ、私は見てしまう。

ただ、少しだけ言っておくと、私の拾った財布は、

きっと、皆さんがイメージしただろう財布とは、かなり違う。

革張りで、見るからに高級感が漂っていて、

パンパンに膨らんでいたり、はしない。

上からはお札が束になって入っているが見えていたり、もしない。

その財布はガマ口で、すり切れかけた布製で、

持った瞬間、チャラチャラと中で音がして、

手のひらに収まるくらいのサイズで、しかも、とても軽い。

で、私は中を開ける。

入っていたのは、近くのスーパーのレシート。

十数枚の小銭。

そして、一枚の千円札。


また、千円札っ!

私は仕方なく、交番に届ける。

だって、持ち主と思われる証となるものが、何も入っていないんだもん。


もちろん、もう一度地面に置いて、そのまま去りたい衝動に

何度も駆られる。

でも、なんとか近くにあった交番へそれを持っていく。


警官は、「財布を拾いました」、と言う私に、

少し前屈みになって、興味を持つ。


でも、その拾ったという財布を見せると、かなり興味をなくす。


警察官も人の子で、私とあまり変わらないな、と私はあとで思う。


拾った場所や、経緯を聞かれる。

名前と住所と、電話番号を聞かれる。

連絡先と、身分を証明するものはあるか、と聞かれる。


私はうんざりしてくる。


そして、交番で、二人の警官に、ほとんど事務的に

どんどん質問を投げかけられるこの状況に、

ちょっとだけ、恐ろしくなる。


最後に書類を出される。

そこに、住所や名前を書き込んでほしいといわれる。


持ち主が現れたら、知らせるから、と言われる。


「知らせてくれなくても、いいです」


と、私は言いたかった。


でも、なんだか言いそびれる。


交番で、警察官を前にして、

自分の名前と住所を書く経験は、ぜったいに、これで最後にしたい、

と、心から思う。


たしか、私は財布を拾って、それを届けにここへ来たはずなのに、

外に出た私の心は、晴れやかどころか、曇っている。


そして、誓う。


もう、ぜったい、財布なんか拾わないからなっ!


だから、私は皆さんに心から忠告したい。

お金なんて、拾ってもいいことは、決してないんだよっ!


モスマンハンター(その10)

飛ぶわけでもなく、

ただ、その場で、何度も羽をばたつかせ、

怒りとも悲しみとも、つかない感情で吼え叫び、

もはやその焦点を失った目には、

なにも見えていないようだった。


飛竜は、頭と尻尾をめちゃくちゃに振り回し、

手当たり次第に大樹の幹にぶつかっては、それをなぎ倒し、

体からの出血をさらに増やしていた。


私は剣を抱え持って、そんな中に飛び込んでいった。


尻尾が肩をかすめ、

大きな羽が私の額を切って、過ぎていく。

でも、そのどれも気にならなかった。


私は持っていた大剣が届く距離まで近づくと、

ただ、力の限り振り下ろした。

手ごたえを感じる間もなく、すぐにまた持ち上げ、

また振り下ろす。


それを二回ほど繰り返したとき、

飛竜のクチバシがまともに私の横腹に直撃して、

私を横へとなぎ倒した。

さらに、地面に叩きつけられそうになった寸前、

今度は、下から跳ね上がってきた尻尾が胸に食い込み、

私は宙に浮かんだ。


そのとき、飛竜と眼があった。

さっきまで焦点のまったく合っていなかった黄色い眼が、

私の姿を捉えたとたん、ギラリと輝いて、燃えるように真っ赤に変色するのを、

私は見た。


受身の姿勢もとれず、ただ落下する私の体に、

飛竜は大きく吼えながら、体当たりしてきた。

直後、ズドンと、鈍い音がして、全身に痺れるようショックがはしり、

私は後ろにすっ飛ばされて、大木に当たって下に落ちた。


体の中のものが全部出ていきそうな、ひどい気分で、

視界がグラグラと揺れた。

立ち上がったのは本能だったが、足は一歩も動かなかった。


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ああ、やっぱりだめだった。

これが、私の限界だったんだ。


そのとき、飛竜の口がバチッと火花を飛ばして、

灼熱色に燃えはじめた。

私は真っ白になった頭の中で、それを呆然とただ、見つめた。


できるだけのことはやった。

もう、仕方ないよ。


そして、頭を下げ、眼を閉じようかと思ったそのとき、

視線のすぐ先に、弟の動かなくなった体があった。


決意して、まっすぐ前を向いたままの弟が、

私の方を見返していた。


もう諦めるの?

密林を守るんじゃなかったの?


弟に、そう言われたような気がした。


終われない。

そう、思った。

これで終わることなんて、絶対できない。


だって、もし、このまま終わってしまったら、

たとえ死んでも、弟とは、とても顔を合わせられないぞ。


そのとき、空気の中をバチバチッと火花が走っていった。


私は、とっさに大剣を平らにかざして前へ飛び出した。

ワッと、熱風が押し寄せ、真っ赤な炎が渦を巻いて向かってくるのと、

私が弟の体の前に少しだけ出るのとが、ほとんど同時だった。


私は両足でしっかりと大地を踏みしめ、歯を食いしばった。


やってやる!

こんなところで、終われるもんかっ!

見ていろよ、弟っ!


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炎の勢いが小さくなるのと同時に、

私は全身の痛みを、胸の中から湧き起こる、強い感情の中に押し込めて、走り出した。


これで、決着だぁーっ!




オンラインゲーム「MHF」

これは、一人のヒーローの物語。


お金を拾ったら。

宝くじに当たった人のインタビューや、

道端で、思わぬ大金を拾った人の話を、

テレビや新聞で、ふと目にする機会があると、

いつも思い出してしまう、子供の頃のエピソードがある。



当時小学生だった私は、近所の子供たちと一緒に

学校に登校している途中だった。


ニワトリの飼育当番や、花壇の水やり当番みたいなのが、

みんな当時、それぞれにあって、

学校に向かっている時間は、いつもよりちょっと、早めだった。


そして、歩いていると、誰が最初に、ということもなく、

ほぼ全員が、一斉にそれに気がついたのだった。


それは、お金だった。

近づいてみると、それは一万円札だった。


しかも、一枚じゃない。


小学生が、やっと四人くらい横に並んで歩ける程度の狭い路上に、

大量の一万円札が、ばら撒かれるみたいに、

あちこちに落ちていたのだ。


もちろん、私たちは騒然となった。


ただ、誰も拾おうとはしなかった。

当時、純真な心を持った、幼い私たちは、

大量に落ちている一万円札を見て、まず、思ったのが、


恐ろしい。


という思いだった。


一万円札は、学校へ行くためには、

まさに、これから通らなくてはいけない、道路上に

落ちていたのだけど、

私たちは、その上を通ることさえ、怖く感じていた。


で、どうしたのかというと、

その一万円札が、落ちていない僅かな隙間を選んで、

一歩一歩確認しながら、私たちは避けて進むと、

一目散に、学校へ駆け込んだのだった。


そして、すぐに先生を呼んできて、

とりあえず、それをすべて回収したのだけど、

小学生の私たちは、ただそれだけのことで、

心臓はドキドキ、足はガクガク。


テレビでインタビューされる場面を想像したり、

新聞記者に話を聞かれるところを想像して、

私たちはしばらく、気持ちが高揚してしまって、

その日の勉強なんて、とても手がつかなかったのだった。


ただ、結果からいうと、そのどちらも、私たちが経験することはなかった。


教室で話題になって、

みんなから少しだけヒーロー扱いされたりしたけど、

それも、ほんの一瞬のことだった。


持ち主は、すぐに名乗り出てきた。

警察に届ける間もなかったらしい。


しかも、そこに事件性など欠片もなく、

ただ、農家のおじさんが、うっかり落としただけ、という

面白味もなにもない、真相が明らかとなっただけで、

もちろん、拾った金額の一割が貰えたわけもなくて、

なんだか、気がついたら、

いつのまにか、その話は終わってしまっていて、


私たちは、そんな事の顛末を、後になってから

全てまとめて聞かされたのだった。


お金を拾ったからといって、

必ず大きな事件になるわけじゃないんだ、という

見本のようなお話。


でも、これって、今、冷静になって思うと、

私の住んでいたところが、ただ、とんでもない田舎だった、

というだけのような気もする。


あるいは、私たちが、素直な人間すぎたのだろうか。


うーん・・・・・・。