ウナギよ、さらば
2009年某月、塚本勝己教授はニホンウナギの産卵場所を探すため、学術研究船『白鳳丸』にのって太平洋上にいました。
ニホンウナギの産卵場所は長年の謎でした。調査を始めた頃は、日本近海だと思われていました。それが、沖縄、台湾沖、フィリピン沖と、だんだんと推定場所が南下していったのです。 調査中、白鳳丸を何度も台風が襲いました。その度に調査を中断し退避しなければならないので、貴重な調査期間がどんどんなくなっていきました。このままでは、産卵場所を見つけることが出来ません。
困った彼は賭けに出ました。産卵場所を北赤道海流の塩分フロントと海嶺が交差する付近と予測したのです。塩分フロントとは、ハワイ沖からの強い蒸散作用を受けた高塩分水と熱帯特有の降雨がもたらす低塩分水の境目で、海嶺とは海底山脈の事。
その付近をピンポイントで調査する事に彼は賭けたのです。名付けて『ハングリー・ドッグ(飢えた犬)作戦』。飢えた犬が嗅覚を働かせ餌まで最短距離で辿り着くように、彼はそのポイントに船を進めました。
そして4回目の網でついに、孵化直前のニホンウナギの卵を採取する事に成功したのです。
日本から2000km以上離れたグアムに近いマリアナ諸島西方海域での事でした。
さて、マリアナ海溝付近で産まれたウナギの赤ちゃんはどうやって日本まで辿りつくのでしょうか?その回遊経路や生態はまだはっきりとは解明されてはいませんが、予想されているのは、北赤道海流を西に進み、フィリピン沖で黒潮に乗りかえ日本沿岸に至る経路です。その間、3~4ヶ月。距離にして約5000kmと考えられています。
やっと日本の河川に辿りついたウナギの赤ちゃんたちを待ち受けているのが、シラス漁師たちです。満ち潮に乗って川に上ろうとするシラスウナギを一網打尽にします。シラス漁師たちの一晩の稼ぎは、最盛期で一晩に数十万だったとか。シラス漁師たちは目の色を変えて、シラスウナギを獲り続けました。
ところが、1960年代に200㌧あったシラスウナギの漁獲量が、昨年は5㌧、今年で16㌧に激減してしまいました。すごく当然の結果だと思うのですが、驚いた事に、養鰻業界やシラス漁師たちは不漁を嘆いているとの事。
一網打尽にしたシラスウナギを全部養殖池に放り込み続ける。養殖池で大きくさせられたウナギは産卵することもなく消費者のお腹の中へ消える。それを何年も何年も繰り返し続けていれば、ウナギの数が減るのは子どもでも分かる理屈だと思うのですが、養鰻業界の方の頭の宜しさには感心させられます。
今年6月、国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを絶滅危惧種に指定して『レッドリスト』に掲載しました。このままでは2016年のワシントン条約で輸出入の規制対象になるかもしれません。
業界団体は直ちに痛みを覚悟で自主的規制を定め、ウナギ資源回復に全力を注ぐ事が急務です。行政も、国と自治体が一体となった資源管理のための規制、施策を協議するべきです。
我々消費者の責任も重く、今までのように資源を食べ尽くすような下劣な消費活動を反省し、限られた資源をどうやって持続可能にできるかを考え、環境への深い配慮のある消費活動をするべきだと思います。
あなたが昨日食べたウナギについて少しばかり考えてみて下さい。どこで生まれて何処からやってきたのか?
私たちは私たちの無責任な消費活動によって、ウナギが食べられなくなってしまうかもしれないのです。
ニホンウナギの産卵場所は長年の謎でした。調査を始めた頃は、日本近海だと思われていました。それが、沖縄、台湾沖、フィリピン沖と、だんだんと推定場所が南下していったのです。 調査中、白鳳丸を何度も台風が襲いました。その度に調査を中断し退避しなければならないので、貴重な調査期間がどんどんなくなっていきました。このままでは、産卵場所を見つけることが出来ません。
困った彼は賭けに出ました。産卵場所を北赤道海流の塩分フロントと海嶺が交差する付近と予測したのです。塩分フロントとは、ハワイ沖からの強い蒸散作用を受けた高塩分水と熱帯特有の降雨がもたらす低塩分水の境目で、海嶺とは海底山脈の事。
その付近をピンポイントで調査する事に彼は賭けたのです。名付けて『ハングリー・ドッグ(飢えた犬)作戦』。飢えた犬が嗅覚を働かせ餌まで最短距離で辿り着くように、彼はそのポイントに船を進めました。
そして4回目の網でついに、孵化直前のニホンウナギの卵を採取する事に成功したのです。
日本から2000km以上離れたグアムに近いマリアナ諸島西方海域での事でした。
さて、マリアナ海溝付近で産まれたウナギの赤ちゃんはどうやって日本まで辿りつくのでしょうか?その回遊経路や生態はまだはっきりとは解明されてはいませんが、予想されているのは、北赤道海流を西に進み、フィリピン沖で黒潮に乗りかえ日本沿岸に至る経路です。その間、3~4ヶ月。距離にして約5000kmと考えられています。
やっと日本の河川に辿りついたウナギの赤ちゃんたちを待ち受けているのが、シラス漁師たちです。満ち潮に乗って川に上ろうとするシラスウナギを一網打尽にします。シラス漁師たちの一晩の稼ぎは、最盛期で一晩に数十万だったとか。シラス漁師たちは目の色を変えて、シラスウナギを獲り続けました。
ところが、1960年代に200㌧あったシラスウナギの漁獲量が、昨年は5㌧、今年で16㌧に激減してしまいました。すごく当然の結果だと思うのですが、驚いた事に、養鰻業界やシラス漁師たちは不漁を嘆いているとの事。
一網打尽にしたシラスウナギを全部養殖池に放り込み続ける。養殖池で大きくさせられたウナギは産卵することもなく消費者のお腹の中へ消える。それを何年も何年も繰り返し続けていれば、ウナギの数が減るのは子どもでも分かる理屈だと思うのですが、養鰻業界の方の頭の宜しさには感心させられます。
今年6月、国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを絶滅危惧種に指定して『レッドリスト』に掲載しました。このままでは2016年のワシントン条約で輸出入の規制対象になるかもしれません。
業界団体は直ちに痛みを覚悟で自主的規制を定め、ウナギ資源回復に全力を注ぐ事が急務です。行政も、国と自治体が一体となった資源管理のための規制、施策を協議するべきです。
我々消費者の責任も重く、今までのように資源を食べ尽くすような下劣な消費活動を反省し、限られた資源をどうやって持続可能にできるかを考え、環境への深い配慮のある消費活動をするべきだと思います。
あなたが昨日食べたウナギについて少しばかり考えてみて下さい。どこで生まれて何処からやってきたのか?
私たちは私たちの無責任な消費活動によって、ウナギが食べられなくなってしまうかもしれないのです。