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Amebaにはアクセス解析があり、アクセスランキングがわかるようになっています。
愚ブログでは、もちろん、最新の記事がランキング1位です。
常連さんが、更新たびに目を通していただいているようです。
それとは別に、息の長いベストセラー的な記事があります。
検索でたまたま見つけていただいたのでしょう。
そのベストセラー記事とは、
2016年6月15日「カスミソウは臭い」とはもう言わせない
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12160550234.html
カスミソウの出荷ケースを開けたときののけぞるような臭い、
苦しんでいる花業界の人が多いのでしょう。
その悪臭を抑制する「カスミ専用の臭い抑制剤」を、京都大学土井元章先生(現在は退官され名誉教授)の蔬菜花卉研究室が開発したというおはなし。
毎年、母の日の後の時期だけに、アクセスが急増する記事があります。
2018年5月13日「この花、来年も咲きますか?-母の日のポットカーネーション-」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12375558759.html
2018年6月1日「母の日のポットカーネーション、まだ咲いていますか?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12380465923.html
2022年5月15日「母の日のポットカーネーションは根がついた切り花」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12742872451.html
2022年5月29日「なぜ母の日のポットカーネーションは切り花より日持ちが短いのか?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12745199224.html
2023年6月25日「母の日のポットカーネーションの後始末」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12809153913.html
これらは、いわゆる母の日のカーネーションネタ。
切り花ではなく、鉢植えのカーネーション。
母の日に鉢植えカーネーションを贈られたひと、自宅用・自分用に買ったひとの多くが、日常管理、育て方を知るために検索で目にしていただいたのでしょう。
地元には鉢植えカーネーションの生産がありませんので、わたしは鉢植えについては消費者目線。
母の日には、毎年、地元イオンで鉢植えカーネーションを買っています。
プレゼントする母はすでにいないので、自宅用、ホームユース用。
前振りが長くなりました。
今回のお題は、母の日のポットカーネーションについて、愚考を展開します。
諸物価値上がりに対する庶民の防衛策、
わたしは、いままでは5号を買っていましたが、今年は4号にダウンサイジング。
それでもバッグ付きで税別1,700円ちょい、税込で2,000円弱(レシートを捨ててしまったので正確な金額は不明)。
画像1 2024年5月11日(土曜日)に地元イオンで買ったポットカーネーション(4号)
品種は「パナシエ」とラベルにありました。
2014年にジャパンフラワーセレクションを受賞した雪印種苗の優秀品種
今年は、5号を4号に変えただけではなく、色を変えました。
切り花も鉢植えも、「母の日=赤カーネーション」をかたくなに守ってきました。
切り花はともかく、鉢植えの赤は室内ではムリなことはわかっていましたが。
買った時には鮮やかな赤でも、すぐに暗い赤、茶色ぽっく、黒っぽく変色し、きわめて美しくない。
ピンクや淡色系は、萎れてもまだ見れる。
また、赤は咲きすぎが多かったので、今年は画像1のような白に赤斑入りにしました。
画像2 昨年(2023年)に買った赤ポットカーネーション(5号)
イオン系列マルナカで購入(税別1,580円)
買った時には鮮明な赤がきれい
画像3 1週間室内に置き、花が萎れると、鮮明な赤が黒っぽい、茶色っぽい赤になり、見苦しい
赤品種の弱点
今年は、
大阪のおばちゃんのように、これから咲くであろうつぼみの数が多いという理由で選びました。
カーネーションのプロを自認していますが、失敗でした。
数輪咲いた花は「がく割れ」、つぼみは開かず、じっとしたまま(画像4)。
結局、まともに咲いた花はありませんでした。
すかすかのつぼみですから咲くわけありませんよね。
つぼみのまま、枯れてしまいました。
まあこんなこともあるでしょうね。
母の日ですから。
画像4 今年のポットカーネーションは2~3輪咲きましたが「がく割れ」
そのほかのつぼみは結局咲かないまま萎れました
そもそも論ですが、
母の日のポットカーネーションはムリをしすぎ。
切り花は勝負できる期間が周年ありますが、ポットは母の日だけ。
的がピンポイント。
母の日に出荷できたことだけで拍手喝さい。
鉢植えは、母の日の象徴的存在で、品質や観賞期間、咲く咲かないなどは二の次、三の次。
そもそも、
カーネーションは切り花も鉢も、老化が進むと下葉が枯れあがるという弱点があります。
鉢植えは株元の下葉がこみあっているから、なおさら枯れあがる。
消費者が見たら、株が枯れてきたと、あわてるでしょうね。
画像5 カーネーションは、切り花でも鉢植えでも、花が咲き、老化が進むと下葉が枯れあがるという性質がある
上手な生産者のカーネーション(右)は下葉の枯れあがりが少ない
ほとんどのポットカーネーションは母の日に開花をあわせるためムリをして作っているので、花屋さんの段階ですでに 左のように枯れあがる
市場価格が高い「見かけのよさ」と、「下葉が枯れあがらない適切な栽培」とは、必ずしも一致しない
それを見分けることができる目利きは、市場担当者、花屋さん(園芸店)にどれだけいるのか?
母の日のポットカーネーションの「そもそも論」を述べます。
①鉢ものとは何もの?
切り花とちがい「鉢もの」はとらえどころがない商品。
「苗もの」は花壇やプランターに植えて育てるもの。
これからを楽しむもの。
マニアにとっては、「鉢もの」も育てるものですが、マニアは少ない。
マーケットが小さい。
大多数の消費者には、鉢ものは観賞するもの、見て楽しむ・癒されるもの。
グリーンインテリア。
青木英郎さんが開発した「ギャザリング」。
画期的なことは、育てないこと。
それまでの「寄せ植え」のように、「適切な管理をすればそのうちに育ち、きれいな状態になる」のではなく、最初からきれいに仕上がっている。
「根がついたアレンジ」
切り花のアレンジを育てるひとがいないように、ギャザリングも育てる必要がない。
母の日のポットカーネーションに求められるのは、ギャザリングのようになること。
これは、園芸のプロが思いつかなかったこと。
「鉢もの=育てる」を前提にしていては、鉢ものマーケットはますます縮小する。
ポットカーネーションを育てたい消費者には、「シクラメン」に対する「ガーデン・シクラメン」のように、「ガーデン・カーネーション」を別に提供すればよい。
②鉢ものの日持ちはどのように測るか?
鉢ものの専門家は、鉢ものには永遠の生命があると考えています。
したがって、切り花のように日持ちを測るという概念がありません。
花がいったん萎れても、秋にはふたたび咲いてくる。
それでは商品としての鉢ものは成りたちません。
鉢もの日持ち検査マニュアルを、豊明花きとFAJの鉢もののプロが作ってくれました。
鉢もののマーケット縮小に危機を感じているひとたち。
鉢ものの日持ちはどのように測り、どんな環境で検査し、水やりはどうするのか?
「鉢物室内日持ち試験ハンドブック-鉢物業界の活性化に向けて-」(2019年3月)
花き生産供給力強化協議会(事務局 日本花き生産協会)
農林水産省「国産花きイノベーション推進事業」
根がついたポットカーネーションは、
根がない花びんに生けられた切り花カーネーションより日持ちが長いと、花業界人は思いこんでいます。
現実は、切り花のほうが圧倒的に日持ち=観賞期間が長い。
そんなアホな!
ホンマです。
今年買ったポットカーネーションは実質観賞期間ゼロでしたから、論外、
日持ち試験の土俵にも立てません。
昨年のポットカーネーション(画像2)の日持ちは17日でした。
毎年、2週間+αぐらいです。
一方、香川県香花園の切り花、スプレーカーネーションは24日。
最終的には39日間観賞できました。
(鉢ものも切り花も室内の明るい窓辺)
昨今の国産切り花カーネーション、これぐらいの日持ちはあたり前。
「あたりまえだのクラッカー」
なぜポットカーネーションの日持ちが切り花より短いのか?
それは切り花カーネーションの日持ちが長くなったから。
切り花カーネーションは、
1980年代に日持ちを延ばす技術(前処理)を開発、
40年間その普及と改良に取り組んできました。
その成果。
ポットカーネーションは母の日に花を咲かせるのが精いっぱい。
出荷したあとの日持ちにまで手が回っていない。
さらに、
切り花カーネーションは1年中、日持ちの試験ができるが、ポットカーネーションは5月だけ。
花が咲いた時には生育調査、品質調査で手いっぱいで、日持ちまで手が回らない。
しかも、研究者が少ない。
切り花の日持ち、水あげを調べる花屋さんはいても、母の日のポットカーネーションの日持ちを調べる花屋さんはいない。
ポットカーネーション、前途多難です。
④母の日のポットカーネーションは室内で観賞するもの
ポットカーネーションに付いているラベル。
「長く楽しんでいただくために、日当たりがよい場所で栽培してください」
ポットカーネーション生産者は勘違いしています。
母の日に贈り贈られるポットカーネーションは「栽培」するものではありません。
日当たりがよい場所に置かなければならないものでもありません。
室内のいちばん目につく場所で、眺めるものです。
ギャザリングとおなじで、「根がついたアレンジ」
そもそも、鉢ものは人間の生活環境でパフォーマンスするものです。
人間=消費者が鉢ものに合わせる必要はありません。
人間の生活環境で生きれれない鉢ものは、大衆商品ではありません。
生産者は、室内で観賞することを前提に、ポットカーネーションを商品化しなければなりません。
消費者目線での結論は、
母の日のポットカーネーションは、母の日だから、なんとか売れている発展途上商品。
母の日だけ目にする一合一会商品。
いっときにあれだけの数を売りさばくのですから、クレームがあるのはあたり前の確信犯的商品。
どんだけ売ったかが花屋さんの武勇伝。
売った商品が、消費者のもとでどんなパフォーマンスをしているか、考える余裕がない花産業。
ポットカーネーション、
栽培技術的な改良・改善はゆっくりではありますが進むでしょうが、
それよりも先に母の日にポットカーネーションを贈るという「コト」が衰退しつつあります。
母の日にふさわしい「モノ」があって「コト」があります。
今回も長文駄文でした。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.431. 2024.6.2)
2015年以前のブログは
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農業協同組合新聞のweb版(JAcom 無料)に、
コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
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