母の日が終わり、暖地産地は改植が進んでいます。
これからは高冷地産地が主役。
次のイベントは、母の日に比べると盛り上がりには欠けますが父の日。
それにもかかわらず、今回のお題は、あいかわらず母の日。
ウンザリでしょうが、おつき合いください。
母の日に消費されるカーネーションの2/3を占める輸入カーネーションを検証します。
カーネーションが主役の母の日。
生産が減っている上に、お天気任せで入荷が不安定な国産より、注文にきっちり対応できる輸入が重宝されています。
輸入あっての母の日。
その母の日の輸入カーネーションの数量が図1。
花束加工業者などの大口需要は母の日3週間間前から始まるとクラシック西尾会長からアドバイスをいただきましたので3週間の数量。
図1 母の日の輸入カーネーション数量の推移
母の日前3週間の輸入数量
植物検疫統計のデータを宇田作図
輸入カーネーションはコロンビアが67%を占めているので、母の日もコロンビアの動向に左右されます。
2020年はコロナの影響で輸送環境、労働環境が混乱し、母の日においても激減した年でした。
それからなんとか回復しましたが、今度は円安、国際情勢、異常気象でコロンビア産も不安定な状況が続いています。
それにもかかわらず、中国産はコロナ禍をきっかけに増えつづけています。
今年の母の日のカーネーション入荷状況、
国産(日農ネットアグリ市況、母の日前1週間)が前年比4.2%減、コロナ前の19年比13.4%減(図2)。
輸入は先にあげたマイナス要因で大幅に減るとの予想でしたが、ふたをあければ前年、19年並み。
前年比0.6%減、19年比0.8%減。
恐るべき輸入パワー。
図2 2024年母の日の輸入カーネーションの23年比、19年比
国産:日農ネットアグリ市況、母の日前1週間
輸入:植物検疫統計、母の日前3週間
国別では明暗。
コロンビアは前年比6.1%減、19年比14.2%減。
一方、中国はコロナ禍までは減少が続いていましたが、21年からは増加に転じました。
前年比17.5%増、19年比94.1%増。
大きく増えています。
結局、コロンビアの減少を中国が補った2024年母の日。
さらに、輸入は減らず、国産だけが減った母の日でした。
品薄感の原因は、輸入ではなく、国産の減少でした。
輸入カーネーションは総量としては減っていないのに減った感がありました。
それは、仏花向きの中国産が増えて、ギフトのコロンビア産が減ったからでしょう。
図3は、母の日の国産と輸入数量の推移。
国産は日農ネットアグリ市況での全国主要7市場の入荷量(母の日前1週間、青縦棒)。
輸入は植物検疫統計での母の日輸入数量(母の日前3週間、赤折線)。
両者よく似た動きをしています。
国産が増えると輸入も増え、国産が減ると輸入も減ったように見えます。
例えば、2015年、国産も輸入も増え、
2020年には国産も輸入も激減。
図3 母の日の国産と輸入のカーネーション数量
国産(青縦棒):母の日前1週間、日農ネットアグリ市況、全国主要7市場
輸入(赤折線):植物検疫統計
それぞれのデータを宇田作図
このことは年間の国内生産量と輸入数量の関係を比較するとわかります(図4)。
国産(横軸):農林水産統計花き編
輸入(縦軸):植物検疫統計
それぞれのデータを宇田作図
日本のカーネーション消費量は年間6億本ほど。
国産が3億本程度の生産量があったときまでは、国産が減った数量を輸入がすべて補い、輸入は直線的に増えていました。
国産の減少分を輸入が完全に補えていました。
すなわち、国産が減った分だけ輸入が増える。
ところが、国産が最近のように3億本以下にまで減ると、輸入はすべて補えなくなりました。
輸入数量は4億本を超えることができていません。
それは、
カーネーションのマーケットが縮小しているので、輸入が調整していると考えることもできます。
国産カーネーションの単価が上昇しているのはそのおかげです。
一方、母の日の輸入カーネーションは、年間の動きとは反対です。
国産と輸入が連動して動いています(図5)。
図3におなじ
国産が増えると輸入も増えています。
それは、
母の日の輸入数量は、
大手量販や花束加工業者などからの注文や消費動向などを輸入業者が判断して数量を決めているからでしょう。
国産数量は、
集荷力がきわめて大きい全国主要7市場、
輸入業者とおなじような判断で国産を集荷しているために、輸入数量とおなじ動きをするのでしょう。
日農ネットアグリ市況のカーネーション入荷量は、全国主要7市場が強い意志と営業力、すなわち大手市場の腕力で集荷しています。
したがって、国内生産量をそのまま反映しているとはいえません。
輸入カーネーション数量から、母の日のカーネーションの位置づけが見えてきます。
カーネーションの存在感の低下です。
輸入カーネーションに占める母の日の比率がじわりと低下しています(図6)。
2015年には母の日のカーネーションは年間の10.7%を占めていましたが、2023年には7.8%に低下しています。
植物検疫統計
母の日の数量は、母の日前3週間
宇田作図
母の日=カーネーションではないといわれて久しいですが、現実になりつつあります。
母の日参りが定着しはじめ、キクまでも母の日商戦に参戦しています。
マムは洋花として、有力な母の日商材になっています。
母の日にカーネーションの存在感を高めるには、
国産の安定供給と、注文に対応できる計画生産が必須です。
今回も長文駄文でした。
植物検疫統計の解析方法、輸入の動向などクラシック西尾会長のアドバイスをいただきました。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.430. 2024.5.26)
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