宇田 明の『まだまだ言います』

宇田 明の『まだまだ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『まだまだ』発信します。

新型コロナウイルスで世の中は大きく変わりました。
花の流通では、

既存市場のオークネット化が進行中であることを前回お伝えしました。
2020年11月22日「コロナ渦で進化する市場のオークネット化」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12639419339.html
 

オークネット化の行き着く先は、リアルセリの廃止と画像のみによる在宅セリオンリー。
それに伴いセリ場も、セリ台もいらなくなる。
セリ機能と現物の花との分離。
完全な情報だけで取引。


画像 オークネット化第三世代(大阪鶴見花き地方卸売市場)

    セリ場閉鎖+在宅セリオンリー

    買参人はセリ場にはいない

    セリ人は花をカメラにかざすだけ

 

では、

生産者は画像・在宅セリオンリーなど、オークネット化した流通の変化にどう対処すれば良いのか?

まずは出荷規格の統一。


情報取引では、表示される産地・生産者名、画像、品種、規格、入り本数などが判断材料。
その規格が産地・生産者でバラバラでは花屋さんは適正な価値判断ができない。
産地・生産者、買参人が全国化すると、ローカルな仲間内だけの慣習、専門知は通用しない。
全国の統一した出荷規格が必要不可欠。

出荷規格の統一は花産業の体質を象徴している。

「切り花全国標準出荷規格」が四半世紀もまえに定められたことを花業界はすっかり忘れている。

あるいは、忘れたふりをしているだけかもしれない。

1994年(平成6年)、

農林水産省農蚕園芸局長通達「切花全国標準出荷規格」。

その「まえがき」に切り花出荷規格の問題点と全国統一規格の必要性が述べられています。
26年前の文章ですが、現在にも通用します。
引用します(
青字)。

現在、切り花の出荷規格については、産地ごとにそれぞれ定められております。
一方、近年、花きの取扱量の増加と取扱品目の多様化、集荷範囲の広域化が急速に進展しており、今後このような情勢の変化に対応して流通の適正化、合理化を推進するためには、品質、特性を的確に表すことのできる全国統一の出荷規格が是非とも必要であります。


このため、平成元年度から、生産・流通・販売の各関係団体および、学識経験者等で構成する委員会において検討を行い、平成3年度に2品目、平成4年度に6品目、平成6年度には5品目の合計13品目について全国標準出荷規格を定めたところです(農林水産省農蚕園芸局長通達)。


つきましては、今後の円滑な推進のため、出荷団体等がこの規格を活用されるご協力願います。
平成6年5月
農林水産省農蚕園芸局果樹花き課花き対策室長


切り花全国標準出荷規格の考え方は図1の概要に示されています。

図1 切り花全国標準出荷規格(1994年農林水産省農蚕園芸局長通達)の概要

 

規格は等級(品質)と階級(ボリューム、草丈)にわける。
(1)等級(品質)
ア 等級(品質)区分は、簡素化するとともに、切り花全体として等級呼 称を統一する。
 品質のよいものから順に、「秀」、「優」、「良」とする。
 等級は欠点の度合いによって識別。


イ 欠点の種類および程度は複雑であるので、出荷責任者等は、標準審査会、研修会等を通じて等級判定の統一について、特段の配慮を行うものとする。
 
(2)階級(ボリューム、草丈)
ア 切り花の等級の基準は、従来の取引慣習として、品質を識別する上での判断基準の一つとして取り扱われてきたケースが多くみられたが、等級基準とは別の基準として明確に位置づけるものとする。


イ ミニチュア化の進展等により草丈が多様化しており、従来用いられてきた「L」、「M」、「S」では誤解を生ずる恐れがあること等から、具体的に階級(草丈)をcm表示することとし、最大限5段階とする。

全国の出荷規格はこの概要に準じており、等級の「秀、優、良」と階級は切り花長をcm表示し、「L、M、S」は使わないことが原則です。

これは26年前に決められた基準で、現在では等級の「秀、優、良」と階級はcm表示だけで、全品目の規格を表現するのにはムリがあります。
例えば、ユリ類やスイートピーは花数(輪数)表示が不可欠です。


スプレーマム、スプレーカーネーションは等級基準に花数がなく、注で、「開花数および着色花蕾数の合計が3輪以上でなければならない」と記載されているだけです。
この点も工夫がいるでしょう。

なお、バケットでの出荷規格は2004年(平成16年)に定められています。

前段で説明したように、花産業では、農水省が音頭をとって基準、約束事を決めても守られないことが日常茶飯事。
実際に基準をつくったのは生産者・市場・小売の代表と学識経験者ですが、それでも・・。


農水省のお役人は、あまりのいいかげんさにうんざりしたのか、全国標準出荷規格を決めた15年後の2009年に、規格の統一が必要かどうかを卸売業者(いちば)66社に問いました。。
その結果が図2。


図2 卸売業者が思う切り花の規格統一の必要性(n=66)

   (平成21年度「卸売業者の現況調査」(2009年)

 

統一規格は
すべての品目で必要が30.3%
主要品目で必要が45.5%
あわせて75.5%が統一規格は必要と考えている。

主要品目以外で必要と考える市場が1.5%(1社)あります。
これは、主要品種では規格がバラバラでも、経験値、専門知で判断できるが、マイナー品目では統一規格がないと品質、ボリュームの判断がむずかしいということでしょう。

問題は、規格を統一すると産地ブランド(産地の特徴)がなくなると考える市場が16.7%(11社)あることです。
2割弱の卸会社(いちば)が統一規格は不要と考えていることは、現在でも変わらないでしょう。
花が格別大きい、発色がよい、茎が硬い、水あげが良い、日持ちが長いなど、産地自慢の品質は、全国統一規格では表現できないと心配しているのでしょうか。
独自の出荷規格をもつことが産地ブランドを守ることだとは思われませんが、産地ブランドをアピールするためには、出荷規格とは別のかたちで情報発信すればよいのではないでしょうか。

全国標準出荷規格が定められて26年、統一規格が必要かどうかをアンケートしてからでも11年、花産業は大きく変わりました。
26年前の全国標準出荷規格がそのままで現在に通用するとは考えられません。
手直しが必要でしょう。


ただし、それをおんぶにだっこで農水省に頼る時代ではないでしょう。
業界自らが、汗をかき、鉛筆を持つべきです。
花業界には、日本花き振興協議会、全国花き振興協議会、日本花普及センターなど全国組織が多くあります。
どれかの組織で、時代にあった新たな全国標準出荷規格をつくればよいでしょう。
幸いなことに、農水省の花振興予算は潤沢にあります。

どんな立派な出荷規格でも、出荷者に信用・信頼がなければ絵に描いた餅。
産地・生産者がオークネット化の対応でもっとも重要なことは、市場・花屋さんから信用・信頼を得ることです。
情報取引は信用・信頼で成りたっています。

 

宇田明の『まだまだ言います』」(No.255 2020.11.29)


2015年以前のブログは

http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます