宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

母の日商戦、お疲れ様です。
愚ブログの読者である花産業で働くみなさまは超繁忙期、長文駄文に目を通すひまなどないはずです。
そのため、今回は、遠慮なくいつもよりさらに長文駄文、グラフばかりに仕上げました。
ひまであっても読み切るのはメンドウです。
緑文字の小見出しだけでもチラッとながめてください。

前回わかった切り花の岩盤購買層は、
年収1,500万円未満までは、「年収に無関係」で、
「無職」、「年金受給者」、「貯蓄が多い」、「農家(農林漁業従事者)」でした。

すなわち、それは「高齢者」。

いつもの話を裏付けただけ。


反対に、購入額が少ないのは、

「大企業」につとめ「高学歴」な「サラリーマン」。


ツッコミどころ満載のデータで、居酒屋談義にはもってこい。

結局、

5年ごとの総務省全国家計構造調査のデータ、あるいはエビデンスが指し示しているのは、「高齢者が花の岩盤購買層」ということです。

前回同様、各調査項目の「カッコ書き」年齢は、調査した項目に該当する世帯主の平均年齢です。


切り花購入額は住んでいる市町村の人口に反比例


切り花購入額がもっとも多いのは、人口がもっとも少ない「町村」(図7)。
つづいて、人口5万人未満の「小都市B」、

5万人以上15万人未満の「小都市A」、

15万人以上100万人未満の「中都市」。
もっとも少ないのが、政令指定都市・東京区部の「大都市」。
みごとに人口に反比例しています。



図7 地域およびその世帯数と切り花購入額

  以下の図はすべて総務省全国家計構造調査2024年

  項目の(年齢)は、項目に該当する世帯主の平均年齢

 

これは、地方の小さな市町村ほど高齢化率が高く、大都会は若者が多く、高齢化率の低いことが関係しています。
また、地方には農家が多いことも購入額が多い理由と考えられます。

では、小さな町村の花屋さんは儲かっているのか?
1世帯当たりの購入額が多くても、世帯数が少ない(図7の赤折線)ので、市場規模では大都市にはかないません。


持家世帯は切り花購入額が多く、借家は少ない


持家の切り花購入額は6,120円ですが、借家は1,944円(図8)。

持家と借家との購入額の差はきわめて大きい。
それは、持家は高齢者が多く、借家は現役世代の若年層が多いからです。
調査した持家世帯の平均年齢は63歳ですが、借家は44歳。



図8 住居の所有と切り花購入額

 

家が広いほど切り花購入額が多い
持家も借家も、家の広さと切り花購入額にはみごとな相関があります。
持家では、延べ面積が200㎡以上の切り花購入額は9,114円ですが、50㎡未満では3,876円で、延べ面積が広いほど購入額が多いことがわかります(図9)。

 


図9 持家の延べ面積と切り花購入額

 

借家もまったくおなじ。
100㎡以上では6,516円ですが、30㎡未満では588円(図10)



図10 借家の延べ面積と切り花購入額

 

一戸建ては切り花購入額が多く、共同住宅は少ない。共同住宅では、高層住宅は低層住宅より多い


一戸建ての切り花購入額は6,324円ですが、共同住宅(1-2階建て)は1,428円(図11)。
共同住宅では、11階建て以上の高層住宅の購入額は3,888円、6-10階建ては3,564円で、5階建て未満の低層住宅より多い。

といっても、共同住宅の購入額は1戸建てより圧倒的に少ない。

 


図11 住居の構造と切り花購入額


住宅ローンを払い終えていると切り花購入額が多い


持家で、住宅ローンが残っていると切り花購入額は3,228円ですが、ローンがないと7,416円(図12)。

持家は、借家より切り花購入額は多い(図8)が、持家でも住宅ローンを払い終えているとさらに多い。
ローンがないと経済的、心理的に余裕が生まれるのでしょう。
調査では、ローン残高の有無の年齢は分かりませんが、当然、高齢者はすでにローンを払い終えているでしょうし、現役世代に払い終えていないでしょうから、ここでも年齢の影響が考えられます。



図12 持家の住宅ローンの有無と切り花購入額

 

子供の数が多いと切り花購入額が激減


切り花購入額は子供(未婚)の数に反比例します(図13)。
子供0人(夫婦のみ)では6,708円ですが、1人では4,260円、2人では2,700円、3人では1,572円に激減します。
子供が多い世帯では、花を買う余裕がないのでしょう。



図13 未婚の子供の数と切り花購入額

 

未就学児(乳幼児・保育園・幼稚園)がいる世帯は切り花をまったく買わない


切り花購入額は、子供の人数とともに、子供の年齢も影響します。
特に、未就学(乳幼児・保育園・幼稚園)の子供の影響は大きい。
未就学児が1人では948円(年額)、2人では768円、3人では540円(図14)。

 


図14 未就学(乳幼児・保育園・幼稚園)の子供の数と切り花購入額

 

このことは、未就学(乳幼児・保育園・幼稚園)の子供がいる世帯は、切り花の顧客にはならないということを示しています。

 

未就学児の親の年齢は30歳代。
30歳代の切り花購入額がきわめて少ないのは、経済的にも精神的にも物理的にも育児で精一杯な生活をしているためです。


全国約9万世帯を調査した全国家計構造調査で、もっとも切り花購入額は少ない世帯は、この「未就学児3人」の世帯で年に540円です。


政府が全力を挙げて取り組んでも少子化が止まらないのは、切り花購入額が最低額であるのと同様に、現実の生活が厳しく、子供を2人、3人も育てられないからでしょう。


ちなみに、2人以上世帯は全国に3,234万世帯ありますが、未就学児1人の世帯は140万世帯、2人の世帯は78万世帯、3人に至っては54,000世帯しかありません(2024年)。


子供が小・中・高校生になっても花を買う余裕がない


子供が何歳になったら、花を買う余裕がうまれるのか?
子供が小・中学校、高校に行くようになっても、花を買う余裕はないようです(図15、16)。

小中校生(長子)が3人では購入額は1,440円、高校生(長子)3人では792円にすぎません。
また、子供の数が多いほど購入額が少ないのは、未就学児とおなじです。

小中高校生の親の40歳代の切り花購入額が低いのも、子供の世話、教育費の負担が大きいからでしょう。

 


図15 小中学生の子供の数と切り花購入額

   小中学生2人・3人は長子

 


図16 高校生の子供の数と切り花購入額

   高校生2人・3人は長子

 

子供が22歳以上になり教育費から解放されると花を買う余裕ができる


切り花購入額は、子供(長子)が22歳以上になり、世話や教育費がかからなくなると、やっと夫婦のみの世帯とおなじになります(図17)。
22歳以上の子供1人では7,044円、2人では6,684円で、夫婦のみの6,708円にならびます。
このときには、世帯主の年齢は60歳以上で、高齢者になっています。


逆に、高齢者の切り花購入額が多いのは、子供の教育費などの負担がないからです。
それでも子供3人では、長子が22歳以上でも、まだ末子などに手がかかるためか、購入額は低いままです。

高齢者がいる世帯はいない世帯より切り花購入額が多い

 

切り花購入額にもっとも影響しているのは高齢者です。
したがって、高齢者がいる世帯の購入額は7,848円ですが、いないと3,840円に減ります(図18)。



図18 世帯に高齢者の有無と切り花購入額

 

高齢者夫婦のみの世帯より二世代・三世代同居世帯はさらに購入額が増える


夫婦のみでは7,836円ですが、二世代同居では8,772円、三世代同居では8,724円で、夫婦のみより増えます(図18)。



図19 高齢者の同居世代と切り花購入額

 

 

高齢者は要支援・要介護になっても花を買いつづける
 

乳幼児は日に日に成長するが、高齢者は日に日に衰える。
高齢者がいつまで花の岩盤購買層でいられるのか?

自立が困難になった要支援・要介護認定者がいる世帯は切り花を買わなくなるのか?


要支援認定者がいる世帯の購入額は、いない世帯よりも多く、要支援状態が切り花購入の妨げになっていません(図20)。
要支援認定者がいない世帯の購入額4,656円に対して、要支援1人では6,396円、2人(夫婦ともに要支援)では8,568円もあります。
2人とも要支援認定者であっても、まったく購入額に影響していません。



図20 要支援・要介護認定者の有無と切り花購入額

   要支援:基本的に一人で生活できるが、部分的に介助を必要とする。
   要介護:日常生活全般で誰かの介護が必要。

 

要支援のさらに上のステージ要介護であっても、1人ならまったく切り花購入額に影響せず、7,456円もあります。


さすがに、2人(夫婦ともに要介護)では切り花を買いつづけることが困難になり、購入額は2,208円に激減します。

このことが示唆していることは大きい。
①高齢者は、少々身体が不自由になっても花を買いつづける。
②自分で買い物に行けなくなると、家族やヘルパーさんに購入を依頼するのでしょう。
③高齢者は、花をお供えするという伝統文化を継承しており、その習慣が身体に染みついている。

④その伝統文化や習慣は、農家や二世代・三世代同居世帯では継承しやすい。

これまで3回にわたり、全国家計構造調査から、切り花購入額に関係する要因を探りました。


それらをまとめると表のようになります。

 


 

全国家計構造調査が指し示しているのは、切り花の岩盤購買層は「高齢者」ということです。
そして、高齢者の切り花購入行動は揺るぎません。
世帯主あるいは配偶者が、要支援・要介護の自立困難になっても購入額は減りません。
花産業は高齢者に足を向けて眠れません。

反対に切り花購入額が少ないのはどんなひとたちか?
前回紹介した高学歴で、大企業に勤めるサラリーマンおよび弁護士・税理士・会計士・開業医・芸術家・デザイナー・コンサルタントなどの自由業。


そして、今回示したのは、未就学児がいる30歳代の世帯。

小中高校生がいる40歳代の世帯も同様。
花どころではない育児生活の厳しさがデータから読みとれます。

これらのひとたちが、花を買う習慣がない7割の世帯の一部を構成しています。
高校生以下の子供がいる世帯は730万世帯で、総世帯(単身・二人以上・その他)の14%、二人以上世帯の23%を占めています。


次回も全国家計構造調査データを解析します。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.530. 2026.5.3)

2015年以前のブログはhttp://ameblo.jp/udaakiraでご覧頂けでます。

農業協同組合新聞のweb版(JAcom)に、

コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/