宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

今年のシルバーウイークは台風による豪雨で、いつのまにか敬老の日が終わっていたという感じでした。
しかし、敬老の日には、新聞各紙がこぞって65歳以上の高齢者人口が過去最高になったことを報じていました(画像)。

 


画像 日本農業新聞(2026年9月21日)

 

高齢者は3,624万人で、前年より2万人増えたそうです。
総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は29.6%で、比較可能な19950年以降で最高を更新。
推計では、今後も上昇を続け、団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)が65歳以上になる2040年には34.8%、50年には37.1%になるとのこと(図1)。



図1 高齢化率(65歳以上が総人口に占める割合)の推移と予測(内閣府高齢社会白書)

 

花は高齢者に支えられていることは、耳にタコができるぐらい紹介してきました。
花の岩盤購買層は高齢者。


図2は、2025年の年代別年間切り花購入額(二人以上世帯・世帯主の年齢・総務省家計調査)。


年代が高くなるほど、切り花購入額が多くなることがわかります。
29歳以下は1,074円にすぎませんが、60歳代は9,993円、70歳以上は11,491円で最大です。
70歳以上の切り花購入額は、29歳以下の10倍以上です。
園芸用品を含む鉢もの・苗もの等も同じ傾向です。
このことから、花の岩盤購買層は高齢者であることは明らかです。



図2 2025年年代別切り花年間購入額(二人以上世帯 総務省家計調査)

 

そうすると、高齢者が増えることは、花の購入額が増えることになるはずです。

ところが、家計調査での二人以上世帯の切り花購入額は図3のように、減りつづけています。



図3 年間切り花購入額の推移(二人以上世帯 総務省家計調査)

 

前ぶりが長くなりました。

今回のお題は、

「高齢化が進んでいるのに、なぜ切り花購入額が減りつづけているのか」を考えます。

消費に直接影響するのは、高齢化率ではなく、高齢者人口。


図4は、高齢者人口の推移と予測。
高齢者人口は高齢化率とは別の動きをしています。
1950年には411万人が、2000年には2,204万人に急増し、2026年には3,624万人。
2043年ごろに3,953万人でピークを迎え、その後は減少に転じる見込み。

それは、総人口の減少のほうが早いため、図1のように高齢者数が減りはじめても高齢化率は上昇し続けます。
とはいえ、高齢者人口は2000年から2025年まででも66%の増加。
本来なら、これは切り花消費にとって大きな追風のはず。



図4 高齢者人口の推移と予測(内閣府高齢社会白書)

 

それが追風にならず、切り花消費額が減った要因はなにか?

①高齢者世帯の切り花購入額減少
図5は、図2の2025年(青縦棒)に2000年の年代別購入額(緑縦棒)を加えたものです。
60歳代の切り花購入額は2000年の16,323円から2025年には9,993円に、約40%減りました。
70歳以上も14,588円から11,491円に、約20%減っています。



図5 2000年と2025年の年代別切り花購入額(二人以上世帯 総務省家計調査)

 

つまり、高齢者人口は増えたが、高齢者世帯の切り花購入額が、もっとは減ったのです。
2000年から2010年代前半までは、なんとか人口増加の力が購入額低下をカバーできていましたが、現在は高齢者世帯の購入額低下の力のほうが大きくなったのです。

 

これは「流水算」あるいは「追風・向風」で説明できます。


2010年代前半:高齢者人口増加(追風)>高齢者購入額減少(向風)
現在:高齢者人口増加(追風)<高齢者購入額低下(向風)



 

②世代交代
高齢者人口より重要なことは「世代交代」
愚ブログでは、そのことを指摘しました。

2026年4月5日「切り花購入額に影響するのは『年齢』か『世代』か?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12962011317.html


2000年の50歳代の切り花購入額は14,422円でしたが、2025年の50歳代は5,679円まで60%も減っています(図5)。
2000年の50歳代は、60歳代、70歳以上とほぼ同等の購入額があり、岩盤購買層の一角を占めていました。
ところが、2025年の50歳代の購入額は、40歳代以下に近く、60歳代との間には大きな崖があります。
このことは、「高齢者になれば花を買う」という「加齢効果」が働かなくなってきたことを示しています。

すなわち、問題は「高齢化」そのものではなく、「
花をあまり買わない世代が高齢者になってきた」です。

③高齢者の高齢化
「高齢者」の中身も変わっています。
「高齢者の高齢化」です。


2000年には65~74歳(前期高齢者)が1,301万人、75歳以上(後期高齢者)が900万人でした(図6)。
2025年には65~74歳が1,498万人に対し、75歳以上は2,155万人です。
高齢者の中心が、前期高齢者から75歳以上の後期高齢者に移りました。

 


図6 高齢者の年齢構成の変化(国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集2026)

 

75歳以上の高齢になると、移動や買い物の機会、世帯規模、生活支出の構成が変わります。
65~74歳の高齢者より、花屋へ行き、花を選び、持ち帰り、飾るという行動自体が負担で、当然購入額も減るでしょう。


④高齢者の単身世帯化
高齢者になると、配偶者を亡くした単身世帯が増えてきます。
「高齢者世帯の単身世帯化」です。
「高齢者2人以上世帯」から「高齢者単身世帯」に移行すると、いっそう総支出額が減ります。


別に、人口要因以上に大きいと考えられる「生活文化の変化」がありますが、これは高齢者の増加とは無関係ですので、本稿では省きます。

以上が、今回のお題である「花の岩盤購入層の高齢者が増えているのに、なぜ花が売れなくなったのか?」の愚ブログの答えです。



 

4つの要因は、花の消費減少の本質的な問題であり、今後いっそう厳しくなり、花が売れにくくなると考えられます。
花産業としては、この問題にどのように対応するかが課題であり、愚ブログの役割でもあります。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.551. 2026.9.27)

2015年以前のブログは(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます。

農業協同組合新聞のweb版(JAcom)に、

コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/