老いる日本、
少子高齢化に歯止めがかからない。
日本農業新聞(2024年6月6日)
出生率 1.20過去最低
厚生労働省は5日、2023年の人口動態統計を公表した。
1人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す合計特殊出生率は1.20で、22年の1.26を下回り、過去最低を更新した。
低下は8年連続。
年間出生数は8年連続減の72万7,277人で、過去最少を更新。
出生数から死亡数を引いた人口自然減は84万8,659人で、少子化と人口減少に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった。
人手不足の深刻化や農畜産物の需要減など、農業への影響も懸念される。
(青字は引用)
出生率低下の主な原因は、婚姻数の減少。
いわゆる未婚化。
23年の婚姻数は47万4,717組。
前年比3万213組減少。
今回のお題は、婚姻数の減少に切り花生産者はどう対応するか、です。
婚姻数は1970年には100万組を超えていました。
2000年に80万組を割り、その後はつるべ落とし(図1)。
23年には50万組をも下回った。
婚外子が少ない日本では婚姻数の減少=出生数減少に直結。
図1 婚姻数の推移
厚生労働省男女共同参画局のデータを作図
出生率の低下、出生数の減少は、米や野菜などの食料農産物には直接的な需要の減少。
胃袋の数が減る。
食料ではない花産業には間接的なボディブロー。
「婚姻数の減少=結婚式の減少」であり、ブライダル・マーケットの縮小。
ブライダル需要がどれだけ減っているのか?
ブライダルで消費される切り花(金額)は農水省の資料では、2021年に372億円(図2)。
農林水産省「花きの現状について」のデータを作図
葬儀用が1,727億円、稽古用が392億円、
業務需要全体で2,688億円(2021年)。
(農林水産省「花きの現状について」2024年3月)
農林水産省花き振興室が政府統計などから推定した金額。
結婚式や葬儀で消費した切り花の金額は直接的に調べた統計データはないのですから、推定するしかなく、担当者はご苦労をされていると思います。
なお、大田花き花の生活研究所の婚礼用推定額は2021年474億円、2022年575億円です。
一般論として、婚姻数が減ると、切り花生産にどんな影響があるのでしょうか?
現在はなんでもAIに頼る時代。
わたしが愚考するより、まずChatGPTに聞いてみましょう。
ChatGPT
婚姻数の減少が花を生産する農家に及ぼす影響は以下の通りです:
①需要の低下:
婚姻数の減少により、結婚式や結婚記念日などの特別なイベントに使用される花の需要が減少する可能性があります。
結婚式やその他の結婚関連のイベントが減少すれば、花の需要もそれに比例して低下するでしょう。
②需要の変化:
需要の減少により、農家は販売先を変更する必要があるかもしれません。
結婚式向けの花の需要が減少する一方で、日常的な贈り物やイベント用の花の需要が増加する可能性があります。
農家は需要の変化に柔軟に対応し、新たな販売先を見つける必要があります。
③価格の変動:
需要の低下により、花の価格が下落する可能性があります。
需要が減少すると、市場には余剰の花が生じ、それにより価格競争が激しくなるでしょう。
これは花を生産する農家にとって収益の減少をもたらす可能性があります。
④生産計画の調整:
需要の変化に適応するために、農家は生産計画を調整する必要があります。
需要が減少すれば、生産量を減らすか、他の作物にシフトする必要があるかもしれません。
また、需要の増加が見込まれる市場に向けて生産量を増やすことも考えられます。
⑤事業の多角化:
需要の低下に対処するために、花を生産する農家は事業の多角化を検討する必要があります。
例えば、他の作物の栽培や観光農園の運営など、新たな収入源を見つけることが求められるかもしれません。
これらの影響を踏まえて、花を生産する農家は需要の変化に柔軟に対応し、事業の持続可能性を確保するための戦略を検討する必要があります。
AIの回答は、ごもっともとしかいいようがない。
あたり前のことで、花産業の住人ならわかっていることばかり、たいした内容でないといえばそうでしょうが・・。
しかし、これだけのまとまった内容を瞬時に、無料のアプリが示してくれるとは、「人間技」ではない。
わたしなら、何日もうんうんと脂汗を流しながら、書いては消し、消しては書き・・・。
もはや長文駄文の愚考は必要がなくなったようです。
生身の人間にできることは、AIの微調整と若干の追加ぐらいでしょうか。
輪ギクが葬儀の簡素化、家族葬の増加などによる増ぎ需要減少で生産を減らさざるを得なくなりました。
婚姻数の減少=ブライダルマーケットの縮小では、バラの方向転換が求められます。
花が大きい高品質なバラを周年生産するためには、設備投資と多大な生産コストが必要です。
そのため高単価で売らなければ採算があいません。
その高品質・高単価のマーケットの代表がブライダルです。
ただ、ブライダルに特化した品種、花色、花型は店売りには適さないことが多いという問題点があります。
そのことがバラ経営の弱点。
また、ChatGPTがいうように、
ブライダル業者の競争激化で、
生花にかけるコストが減り、バラから草花系などの「安い」花への転換がいっそう進むでしょう。
花だけ見ればバラそっくりな品目、すなわちトルコギキョウを筆頭に、ラナンキュラス、八重チューリップ、カーネーション、はたまた葉ボタンまで大量に登場しています。
婚姻数の減少によらずとも、すでにブライダルのバラ離れは進んでいます。
いよいよバラの用途の拡大をすすめるときが来ています。
カーネーションには、高品質で安定供給のコロンビア産と安価な中国産が、国産の両脇を固めています。
輸入が増えないバラは、国産だけで全方位に対応しなければ、消費が回復しません。
そこがバラのしんどいところ。
得意分野の高級ギフト以外に、日常的な贈り物、ホームユースへなどへの対応が不可欠です。
ChatGPTが教えてくれることは、
オリジナルではなく、すでに誰かがネット上で、主張したり、つぶやいたことです。
だれもがわかっているが、実現しないことばかり。
実現を阻んでいるのは、すべての品目共通。
「生産者のプライド」と、
「そこそこの単価で採算をあわせる経営技術の経験がない」。
生産者の思いこみ、
「ブライダル一流生産者、ホームユース二流生産者」
「ホームユースをつくって成功した経営事例はない」
今回は、ChatGPTのご高説を紹介しました。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.432. 2024.6.9)
2015年以前のブログは
(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます
農業協同組合新聞のweb版(JAcom 無料)に、
コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/