まだまだ母の日ネタが続きます。
ポットカーネーションのその後です。
今回のお題は、
根があるポットカーネーションの日持ちが、根がない切り花より短いのはなぜか?です。
個人的には、
これまで母の日にポットカーネーションを買って満足したことがありません。
それで、最近はアジサイを買っていました。
ポットカーネーションと真逆がアジサイ。
値段は高いですが、日持ちが長く、来年も確実に咲く。
花が終わったあと、地植えにすると、成長して大きな株になります。
大きくなったアジサイで庭がいっぱいになったので、ことしは再びポットカーネーションを買いました。
2022年5月8日「定番回帰の母の日、カーネーション生産者には悩ましさが・・」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12741537881.html
元研究者・技術者の性(さが)、
なんでも計る、測る、量る。
「さし」、「ます」、「はかり」が3種の神器。
5月5日にイオンで買ったポットカーネーションの日持ち(花が咲いていた期間)を調べました。
切り花とちがい鉢ものの日持ち調査はカオス。
鉢もの専門家、マニアは,
「鉢ものは育てる」に固執するため、日持ちの調査方法を決められなかった。
その混乱を、
江崎由幸さんを中心とする豊明花き、FAJの鉢もの担当者、日持ち検査担当者の目利き、腕利きが見事に整理してくれました。
農水省花き振興室の補助事業、「日持ち性向上対策実証事業」(平成29~31年度 日本花き生産協会)で、「鉢もの室内日持ち試験ハンドブック」を作成。
農水省国産花きイノベーション推進事業の日持ち性向上対策実証事業 2018年
花き生産供給力強化協議会(日本花き生産協会)
2018年5月26日「永遠の命がある鉢ものの日持ちをどのように計るか?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12378900831.html
わが家のポットカーネーションも江崎さんらのマニュアルを参考に日持ちを調査。
置いていた場所は、窓辺のレースのカーテンごしのかなり明るい室内。
室温は午前10時で19~22℃。
その結果、ポットカーネーションの日持ちは15日でした(図1)。
図1 2022年5月5日購入ポットカーネーションの日持ち調査
「鉢もの室内日持ち試験ハンドブック」による老化率が80%を超えた時点で日持ち終了
老化率(%)=(枯れた花の数/開花した花の数)×100
開花した花の数は11だから9花が枯れた時が日持ち終了
13日目から一気に枯れだした
画像 5月5日購入ポットカーネーションの日持ち
5月20日までに9花が枯れ、株全体の萎凋が激しくなる
小さなつぼみ(いわゆる孫)はすべて枯れた
一方、
5月7日にイオンで買った淡路産赤スタンダードカーネーション2本(398円税別、品種はたぶんエクセリア)の日持ちは17日(5月24日終了)でした。
STS前処理をしたカーネーション特有の枯れ方
花びらの先が褐変、黒変した状態がいつまでも続く
花びんには後処理剤クリザールを使用
おなじ日に
イオン系列のマルナカで買った香川県香花園のスプレーカーネーション1本(品種不明、カスミソウとセットで298円税別)は5月29日現在1花が枯れただけで5花がまだきれいに咲いています。
さすが香花園のカーネーション。
すらりとした上品な草姿が好きです。
購入時には4花開花、5月29日までに6花開花、そのうち1花が萎れ、
新たに1つぼみが咲こうとして います
切り花の日持ち調査マニュアル(日本花普及センター)では、
スプレーカーネーションは開花数が2花以下になった時点で日持ち終了。
5月29日現在5花が開花中だから、日持ち継続中。
花びんには後処理剤クリザールを使用
わたしは、「鉢ものは根がついた切り花」と主張してきました。
花鉢ものは、普通の消費者には、育てるものではなく、花を楽しむ商品、
花が終わったら切り花のように廃棄してよいと考えています。
もちろん、マニアは育てることを楽しんでください。
根がついた切り花の前提は、
根がない切り花より日持ちが長い(長くなければならない)ことです。
ところが、
母の日のポットカーネーションの日持ちは切り花より短いようです。
2018年6月1日「母の日のポットカーネーション、まだ咲いていますか?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12380465923.html
これはわが家だけの現象でしょうか。
専門の研究機関での調査はどうでしょうか?
鉢ものは切り花ほど日持ちの研究や調査が多くありません。
先に述べたように、鉢ものの日持ちの調べ方さえ決まっていなかったのですから。
ポットカーネーションの栽培に実績がある千葉県農林総研の非公式データ(2018年)を紹介します。
品種 「グランジュール」、4号鉢、8輪開花
気温22℃一定、12時間照明、相対湿度はなりゆき
普通の室内(約5μmol/㎡/sec=200~300ルクス?)
日持ちは14日でした。
研究機関でのデータからも、
室内でのポットカーネーションの日持ちは2週間ほどということがわかりました。
切り花より短い2週間では消費者は不満足でしょう。
今回、わが家の調査で、切り花の日持ちは、
淡路産スタンダードカーネーションは17日、
香花園スプレーカーネーションは22日以上(現在まだ継続中)でした。
これら切り花カーネーションの本来の日持ちは、母の日ごろでは1週間ほどと考えられます。
それが、
出荷前にSTSを吸わせていたこと、
花びんに切り花栄養剤(クリザール切り花用フラワーフード)を入れていたことで、大幅に日持ちが長くなったのです。
つまり、
切り花カーネーションは日持ちをのばすための技術開発に成功。
この前処理技術は、世界中のカーネーション生産者・農場で実践しています。
画像 カーネーションの冷蔵庫内での前処理
カーネーションなど多くの切り花は、収穫後、水あげを兼ねてSTS(チオ硫酸銀錯塩)を吸わせ、
老化を抑制している
しかし、
ポットカーネーションはまだ研究にさえ取りくめていません。
ポットカーネーションの日持ちは、基礎的な研究だけでなく、実態調査や、実証的な研究も手がつけられていません。
それは、
農水省花き振興室の補助事業を活用できない構造的な問題があります。
2014年に花き振興法が成立してから、花き室所管のソフト事業費が約10億円。
それらは、
予算案の国会通過(見込み)の3月に公募され、4月に事業者が決定し、6月に正式契約の単年度事業。
試験、調査がはじまるのは早くても7月、そして翌年3月には報告書提出。
このスケジュールではポットカーネーションの試験、調査がいつまでたってもできない。
ポットカーネーションは母の日ですべて終わり、実験材料が手に入らなくなる。
「鉢もの日持ち試験ハンドブック」でも44品目の鉢ものが掲載されていますが、ポットカーネーションはありません。
これでは、母の日の主役ポットカーネーションの現場レベルでの問題解決、技術革新はいつまでたってもできません。
母の日のポットカーネーションについて消費者に満足していただける日持ちを確保するためには、大学や都道府県農業試験場の基礎的な研究と、生産者、市場、花屋さん、消費者での調査や実証試験が必要です。
技術革新なくして産業の発展なし!
そのためには、花き生産協会と花業界各種団体が、農水省に、母の日のポットカーネーションについては、特例として報告書を6月末提出にしていただけるように要望することです。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.328 2022.5.29)
2015年以前のブログは
(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます