お待たせしました。
今回は、日本花き生産協会が担当する日持ち性向上対策実証事業で、
江崎さんを中心に、豊明花きとFAJのみなさまが
熱き想いを込めてまとめた業界初の「鉢もの日持ち検査マニュアル案」を紹介します。
平成29年度日持ち性向上対策実証事業「鉢もの日持ち性実証試験の実施概要」
(平成30年3月 日本花き生産協会)から抜粋して引用します。
黒字は報告書から抜粋して引用
青字は宇田のコメント
「鉢もの日持ち性実証試験の実施概要」
(一社)日本花き生産協会 平成30年3月
1.「日持ち終了」基準の考え方
①日持ち試験は、園芸的な発想(育てて咲かせる)とは別物と考える
②調査対象は、購入(入荷)段階での花、蕾、葉
③消費者目線を取り入れる前段の基準作成を行う
2.日持ち終了基準
(1)花および蕾
花の老化等に伴う症状が、
開花可能な花および蕾の面積や総数の80%以上に及んだ場合を終了とする
・花の老化とは、花弁や蕾に関する変色、萎れ、落下等のこと
・対象となる花や蕾は、調査開始時に確認できる花や蕾とする
(2)葉
老化等に伴う症状が、
葉の面積や葉数の25%以上に及んだ場合」を終了とする
・葉の老化とは、葉の黄化、乾燥に伴う縮れ、葉色等の異常や枯れ及び落葉のこと
・対象となる葉は、調査開始時に確認できる葉とする
3.鉢もの日持ち試験(室内)を行なう上での統一事項等
多くの消費者が鉢物を楽しむと考えられる一般家庭の室内を想定
(1)日持ち試験環境(室内)
・切り花の試験環境と同じ
・室温 25℃一定
・照明 蛍光灯により1,000ルクス、12時間照明(6:00~18:00)
・相対湿度60%(目標)
切り花のリファレンステストマニュアルでの環境基準を鉢ものにも用いる。
25℃、1,000ルクスが適さない鉢ものがあるが、
現状では、鉢もの専用の日持ち試験室を新たに設けることはコスト的に大きな負担で、
切り花日持ち検査室と兼用せざるをえない。
画像 日本農業新聞 2018年5月24日
(2)試験準備
①試験鉢数
同一品種5鉢(最低でも3鉢以上)とする。
②鉢の大きさ等
試験対象となる鉢物品目に応じるが、同サイズ、同じ形、同一素材の鉢で統一する。
4.試験の実施
(1)調査の基本
①鉢ごとの変化の記録
観賞部位(花や葉)の変化、老化判定した数
病害虫の有無等
②対象植物の画像撮影
基本画像3枚(対象植物の上、横、斜め上)と植物の変化(萎れや変色等)があればその部分のアップ画像等を鉢毎に撮影する。
③日持ち終了の判定
鉢毎に、観賞部位等が日持ち終了基準を超える状態となった場合に日持ち終了と判定し、
日持ち日数を鉢毎に算出する。
日持ち日数は調査開始日を0日として算出し、5鉢(又は3鉢)の平均とする。
なお、病害虫等の影響がある鉢は、調査対象から除外。
画像 チランドシアの日持ち終了規準
本当の花は紫色の飛びだした部分で、数日で枯れる。
観賞するのは「苞(ほう)」(切り花のクルクマと同じ)
苞の変色(緑化)が80%を超えると日持ち終了
(2)調査頻度
週当たり2回を基本とする。
調査開始時の花の変化等が少ない場合や特性上変化が少ない品目の場合は
週当たり1回でも可能とする。
逆に調査後半や品目特性上変化が激しい品目の場合には、
必要に応じて調査回数を増やし、場合によっては毎日の調査観察を行う。
(3)水やり
水やりは、標準化と簡略化で大きな課題があるが、
通常の鉢を簡易に底面吸水にできるキットも開発されつつあることから、
これらによる今後の水やりの標準化と簡略化を検討。
(4)肥料
調査期間中は、固形肥料はもちろんのこと液体肥料等も一切与えないで管理する。
ただし、元々鉢に置いてある固形肥料がある場合は、わざわざ除去する必要はない。
(5)病害虫への対応
調査開始時、期間中に関わらず、
日持ち終了判定に影響を与える病害虫が確認できた場合は、調査対象から除外する。
また、病害虫のついた鉢は、直ちに試験室外に移動又は廃棄するなどし、
他の鉢に移らない対策を講じる。
(6)傷んだ花等の除去
傷んだり、枯れたりした花や葉等は必ず除去し、新たな病気の温床にならないようにする。
画像 アジサイの日持ち終了規準
花(装飾花:がく)が褐変せず緑化する品種がある
この場合は、緑化も老化とみなす
5.試験担当者
鉢物試験は、切花試験に比べ、
調査保管上の手間が掛かり調査期間も生長し続けるため、
調査期間が長くなる。
また、植物特性に応じた調査の実施、
臨機応変な対応判断や結果に対する専門的なコメントや考察を求められるので、それらに対応できる能力を有する専任担当者を配置することが望ましい。
画像 ハイビスカスの日持ち終了規準
いわゆる1日花。
光と水を好むため、室内では2~3週間連続開花後、開花が2~3週間中断し、その後再開花することがある
日持ち検査では購入後の連続開花が中断するまでを調査期間とし、その間に開花可能な花、つぼみの80%以上が
終了で、日持ち終了。
残された問題があります。
①調査中の水やり
平成28年度には、土が一定の乾燥になったら水やりする方法を提言しました。
土の乾湿をはかるPFメーターや簡易水分計を試験しましたが、実用的な精度が得られませんでした。
それで、平成29年度には、「土の表面が明らかに乾燥したら水やり」に後退しました。
今年度は発想をかえる予定。
土の乾燥ではなく、土がいつも一定の湿り気がある状態にするために、簡易な底面給水の試験予定。
労力的にも室内で、大量の鉢に水をやるのは大変です。
②日持ち終了の決め方
原則は、「老化花数/調査開始時の花数+開花可能なつぼみ数=80%以上で日持ち終了」
分子の老化した花数は、定期的に数えれば調査できます。
分母の、調査期間中に成長してくるつぼみをどう扱うかが悩ましい。
ここが鉢もの日持ち試験の根幹。
具体的なデータをもとに、わかりやすく、調査しやすい方法を
関係者が議論して、合意することが今年度の課題。
「宇田明の『まだまだ言います』」(No.124 2018. 5.27)
2015年以前のブログは
なにわ花いちばHP(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けます