公表「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」
日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」を公表しました。
監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」
今回の報告では、公開草案公表後、内部統制布令、同ガイドライン、Q&Aが公布等されたことを受け、これらに対応するため追加記載等がされているようです。
公開草案と重要な相違点などがあれば、追って、当ブログにおいて記事にします。
内部統制の重要な欠陥
昨日に引き続き内部統制の話です。
週刊経営財務(No.2841)に「内部統制の重要な欠陥の検討」という記事がありました。
青山学院大学大学院の町田教授によるアメリカにおける事例の分析結果です。
記事によれば、2004年・2005年の重要な欠陥の種類で多かったものは
(人材)
・経理手続に関する知識、経験のある人材が不足している。
・会計処理に関する知識、経験のある人材が不足している。
(経理手続)
・記帳業務に不適切な部分があった。
・締切手続に不適切な部分があった。
・調整手続に不適切な部分があった。
(会計処理)
・収益の認識にかかる会計処理に不適切な部分があった。
・税務処理に不適切な部分があった。
・その他の会計処理に不適切な部分があった。
と、やはり決算・財務報告プロセスで多く発見されています。
町田教授は、この点について、アメリカの内部統制報告制度の特徴に留意すべき、と指摘しています。
アメリカでは、決算・財務報告プロセスに係る内部統制の運用状況の評価は、当該年度の決算・財務報告をもとに実施することとされています。このため期末決算において会計処理の重要な誤りが発見されると、それをもって即、内部統制における重要な欠陥となってしまう、ということになります。
これに対して、日本では、決算・財務報告プロセスの内部統制の評価時期について、「期末日までに内部統制に関する重要な変更があった場合には適切な追加手続が実施されることを前提に、必ずしも当期の期末日以降でなくても、適切な時期に評価を行うことで足りる」とされています。したがって、四半期決算などで前倒しで評価することによってアメリカの事例ほど頻発することは回避できるであろう、ということです。
とはいえ、「人材の不足」や「不適切な会計処理、税務処理」などの改善は容易ではなく、また、評価時点では有効とされても、後に重要な誤りが発見された場合には、結果的に内部統制の重要な欠陥あり、ということになるでしょう。
やはり決算・財務報告プロセスは重そうです。
内部統制導入の準備状況
今朝の日経産業新聞に「内部統制導入の準備状況」に関する記事がありました。
記事によれば、日本経済新聞社が実施した「社長100人アンケート」によると、10月1日時点で内部統制報告制度の導入の準備をすでに完了した企業が14.8%、8割以上終えた企業が31.1%、5割以上終えた企業が31.9%という結果になったそうです。
ちなみに・・・・特に何もしていない企業は0.0%でした。失礼しました。
適用年度の開始までに準備が完了するのは、現時点で進捗率が5割以上の企業77.8%といったところでしょうか。残りの企業は文書化や必要な改善が、適用年度に入ってしまうかもしれません。
しかし、決算・財務報告プロセスについては、適用年度までに準備を完了しておくことをお勧めします!
重要性、専門性が高く、実施頻度の少ない決算・財務報告プロセスについては、重要な欠陥が報告されやすく、米国SOX法でも多くの企業が重要な欠陥を報告しています。
さらに、決算業務はただでさえ膨大で期限もあるため、整備した業務手順では決算がうまくいかない、という可能性も高いと思います。
そのため、早期に準備を完了し、できれば、適用前年度の決算でトライアルを行い、業務量の確認も含めて問題点を洗い出しておくことが望ましいでしょう。
アンケートの回答者をみると、大手企業ばかりです。
大手企業の場合は、準備に特に時間がかかるため早期に着手しているため、アンケート結果と全上場企業の進捗状況とは大きく異なっていると思います。
どちらにしても適用年度が迫ってきているので、準備がまだ完了していない企業はペースアップして進めていく必要があります。
公表「社外監査役の活動と監査役スタッフの役割」
弊社サイトTopicsでも案内しておりますが、先日、社団法人日本監査役協会は「社外監査役の活動と監査役スタッフの役割」を公表しました。
社団法人日本監査役協会「社外監査役の活動と監査役スタッフの役割」
当報告は、社外監査役の役割が十分に発揮されるため、監査役スタッフはどのようなことをすればよいか、について検討し、整理されたもので、資料として「重点監査項目の検討例」「監査方針・監査計画例」や「監査実施報告例(概況)」のほか、実務上すぐに役立つ様式・フォーマットが示されています。
また、社外監査役の活動状況と監査役スタッフの係りに関するアンケート集計結果も収録されています。
アンケートは「社外監査役の取締役会・監査役会の出席率」「監査の関与の方法」「責任限定契約の有無」など興味を引く項目があり、社外監査役のみなさまの監査実務の参考となるだけでなく、経営者のみなさまも社外監査役の役割を理解し、活用する上で有用なものです。
一度ご確認ください。
<目次>
1.はじめに
2.社外監査役制度
3.社外監査役に期待される役割
4.社外監査役の活動状況(日常の監査活動)
5.社外監査役の監査活動における監査役スタッフの役割
6.おわりに
中小の相続税8割軽減
16日の日本経済新聞一面に「中小の相続税8割軽減」という記事がありました。
(日本経済新聞より)
「中小企業の後継者の相続税負担を軽減する「事業承継税制」について、政府・与党が2008年税制改正で導入を目指す制度拡充案が明らかになった。非上場の同族会社株を相続する場合は、課税価格を8割減額する。従業員の8割以上の雇用維持などを条件にする。」
雇用維持の要件のほか、事業計画の政府承認や税務当局への実態報告などが必要となり、条件が満たされなければ、軽減した相続税を改めて納税することとなるようです。また、本業とは関係のない会社は財産管理会社などは対象から除外されます。
現行の税制では、中小企業でオーナーが死亡した場合、相続税の負担が多額となり、相続税の納税資金を確保するために、会社の株式や事業用地の売却などが迫られることとなります。この結果、株主が交代することによってトラブルが生じたり、場合によっては事業の継続が困難になってしまう可能性もあります。確かに、そこで働く従業員からするといい迷惑です。
しかし、その一方で、「財務省などには企業オーナーを優遇することへの不公平感などから制度拡充に難色を示す意見もある。」と記事にもあるように、所有する資産の評価額が同じでも企業オーナーの場合は相続税が軽減されるが、その他の資産を所有する場合は相続税が軽減されない、というような不公平が生じてきます。
税制上の優遇を受けることができるというのも裏返せば、企業オーナーの責任はそれほど重たいということですね!?
重要な欠陥
内部統制監査の結果、重大な欠陥が見つかった場合には原則期末日までに修正すればよい。日常的なコントロールに関する欠陥であれば実質的には期末日前統制テストが実施可能な日までに修正しなければ間に合わないだろう。
また、決算整理プロセスのケースであれば通常四半期ごとあるいは半期ごとにしか実施されないので中間の時点までに監査法人と十分な議論をおこない、欠陥を修正しておく必要があるだろう。
ところで内部統制の重大な欠陥はどのように発見されるのであろうか。
①内部統制の文書化の過程
②内部統制監査の実施過程
③財務諸表監査の実施過程
④不正の発覚
大きくは上記の4つがあげられる。
①、②については冒頭に記述したように内部統制監査報告書は適正となる可能性が高い(会社側が努力すれば)。
③のケースでは年度の決算監査過程で発見された場合(監査法人の指摘により発見に限定)には重大な欠陥となる可能性がある。たとえば引当金の見積額が間違っていた場合など。
簡単にフローにすると下記のようになると考えれる。
監査法人から指摘⇒重要性がある⇒文書化の範囲である⇒重大な欠陥
新市場「NEO」第一号上場承認
ジャスダック証券取引所は、9日、㈱ユビキタス(情報・通信業)の新市場「NEO」への第一号上場を承認しました。
新市場「NEO」は、成長可能性のある新技術又は新たなビジネスモデルを有する企業を支援するとともに、投資家にこうした企業への投資機会を提供することを目的として8月に開設されました。
上場基準は、既存のジャスダック市場より大きく緩和されていますが、上場審査時に「技術評価アドバイザリー・コミッテイー」による新技術の実在性の評価(①)が行われ、上場後の情報開示義務は拡大(②)されています。
①技術評価アドバイザリー・コミッティー
上場審査に際して、「技術評価アドバイザリー・コミッティー」を設け、先端的な技術開発を行う企業の技術の実在性についての評価が行われます。
②マイルストーン開示
「NEO」上場会社に対しては、適時開示に加え、「マイルストーン開示」が義務付けられます。マイルストーン開示には、3年以上の期間に係る事業計画の内容及びその前提条件、マイルストーン開示を行う時点における事業計画の進捗状況並びに今後の達成の見通し及びその前提条件等の開示が記載されます。
また、上場審査基準に「上場申請日において成長可能性のある新技術又はビジネスモデルに基づく最初の売上計上のときから10年を経過していないこと」という事業の経過年数が設けられていることもおもしろい特色です。
上場対象企業はマザーズなどの新興市場と大きくは変わってこないと思います。既存市場とどこまで差別化を図れるのか注目です。
上場廃止基準 抵触相次ぐ
9日の日経金融新聞に「上場廃止基準 抵触相次ぐ」という記事がありました。
(日経金融新聞より)
「新興株市場で、株式時価総額の低迷で上場廃止基準に抵触する企業が増えている。9月末以降、4つの新興市場でそれぞれ1銘柄が基準に抵触。業績不振や新興株相場の低迷で時価が下落したことが要因。企業は一定期間内に時価総額を回復させる必要があり、早急な対応を迫られることになる。」
上場企業は、上場時に証券取引所や証券会社により上場企業として適格かどうかの審査を受けますが、上場後は増資時や市場を変更する場合などを除き、基本的には直接審査されることはありません。
しかし、市場として一定水準の質及び流動性の保持を目的として、一定の基準(上場廃止基準)を設けています。この基準に抵触し上場企業として不適格と判断された場合は、市場から退場することが求められます。
上場廃止基準には、市場によって異なりますが、株主数、株主分布、時価総額、債務超過、虚偽記載、不適当な合併(未上場企業が上場企業と合併するし、審査を経ずして上場会社となるような場合(いわゆる裏上場)など)、売買高、倒産などの項目があります。基準によっては改善のための猶予期間が設けられており、一定期間で改善が見られなければ上場廃止となります。
新興市場の設立により、上場のためのハードルが下がった分、今後は退場を求められる企業も増えてくるものと考えられます。
(参考)
■上場廃止の猶予期間などに入った新興市場銘柄(重複上場を除く)
社名/市場(J:ジャスダック、M:マザーズ、H:ヘラクレス、C:セントレックス、Q:Qボード)/理由
フリード/J/時価総額
佐渡汽船/J/債務超過
タスコシステム/J/債務超過
ディーワンダーランド/J/不適当な合併等
AS-SZKi/J/不適当な合併等
LTTバイオファーマ/M/不適当な合併等
アドバックス/M/不適当な合併等
シー・エフ/M/時価総額
シーフォーテクノロイー/M/債務超過
エルゴ・ブレインズ/H/時価総額
コムシード/C/不適当な合併等
TRUCK-ONE/Q/時価総額
(日経金融新聞より)
■上場廃止基準
内部統制報告制度に関するQ&A(問9)の解説
10月1日付で金融庁より「内部統制報告制度に関するQ&A」が公表されています。
http://www.fsa.go.jp/news/19/syouken/20071002-1.html
「問9」の解釈について、 知人の公認会計士の間で議論になり、その中の一人が金融庁に問い合わせを行いました。その結果をまとめてみます。
「(問9)監査人の中には、従来から、財務諸表監査の過程において、監査計画策定のために自らフローチャート等を作成し、内部統制の有効性を評価しているところがある。
そのような場合、監査人の中には、内部統制報告制度への対応として、フローチャート等の作成を経営者に求めるとともに、引き続き、監査人としても財務諸表監査のためのフローチャート作成を行い、そのための情報提供等を経営者に求めるものがある。これでは作業が二重になり、無駄が生じることになるのではないか。
(答)フローチャート等を二重に作成することが、効率的でない結果となりうることは御指摘のとおりであり、その場合には、例えば、以下のいずれかのような対応が考えられる。
(1)監査人は経営者が作成したフローチャート等内部統制の記録の信頼性を検証した上で、それを財務諸表監査にも利用する。
(2)経営者が提供する情報等を基に、監査人において、財務諸表監査のためのフローチャート等の作成が可能であるとすれば、経営者においても、当該情報等に基づき内部統制の評価を行うことが可能であると考えられる。この場合、内部統制の評価に必要な業務プロセスに係る内部統制の整備及び運用に関する適切な記録について作成してるものがあれば、経営者において、それを利用することができる。
(注)実施基準においては、必ずしもフローチャート等の作成を求めているものではなく、会社の独自の記録等により内部統制の評価を行うことができるのであれば、それで足りるとしている。」
答(1)については特に論点はないと思います。
答(2)について、問のテーマが二重作業の防止ということもあり、一見すると、監査人側で財務諸表監査のためのフローチャート等を作成するのであれば、経営者においても当該情報(監査人が財務諸表監査のために作成したフローチャート等)を利用することができる、と受け取ってしまいそうです。
これについて、
・監査人が経営者にフローチャート等を提供し、経営者がそれに基づき内部統制の評価を行うのであれば、内部統制監査の対象が監査人の作成したフローチャート等となってしまい、二重責任の原則に反するのではないか!?
・いくら二重作業を防止するとはいえ、監査調書の一部を経営者の求めに応じて提供する必要があるのか!?
というような論点が生じてきました。
金融庁への問い合わせを行った結果、
(2)前段は、監査人は経営者が提供する情報を基にフローチャート等を作成しているのだから、その情報があれば経営者も内部統制の評価を行うことが可能なはずである。(結局、二重作業となる)
(2)後段は、フローチャート等は必ず作成を求められているものではないので、他に内部統制の整備及び運用に関する適切な記録について作成しているものがあれば、それを利用すればよい。(二重作業とまではいかない)
という理解が正しいようです。一度理解してから読み返すと、素直に受け入れることができます。
「作業が二重になり、無駄が生じることになるのではないか」という問に対して、肯定的な結論の答となっているため、解釈がかなり紛らわしいですが、監査人の作成したフローチャート等を経営者が利用することを認めたものではないようです。当然ですね。
J-SOX 外部アドバイザーの選び方
WEDGE10月号に「M&A,内部統制で群がる「軍師」企業よ食われるな」という記事がありました。
(WEDGE10月号より)
「・・・・・ 思惑通りに会社を誘導するために、企業に不要な出費をさせる提案や、企業の信用を失墜させる倫理違反行為に踏み込む軍師が出現している。しかも事態はM&Aだけにとどまらない。来年の「日本版SOX法」施行に向け、「軍師ビジネス」の矛盾は、今後さらに深刻になる。・・・・・」
J-SOXに限ると、一般に日本企業は内部統制についての意識が薄く、また、内部統制評価のノウハウもありません。そのため、J-SOX対応のため外部アドバイザーを利用することは、有効かつ効率的であり、事実上不可欠になっていると思います。
その一方で、外部アドバイザーへの報酬は多額となるし、また、誤った方向に導かれる可能性もあります。
そのようにならないために重要と思われる事項を3つ挙げます。
・外部アドバイザーを利用する範囲を限定する!!
J-SOXが適用されると、以後、継続的に作業が発生することになります。適用2年目以降、自社で完結できるようにするためにもできる限り自社が作業の中心となってプロジェクトを進めることを前提に計画を立てることが望まれます。自社でのリソースの不足が見えた段階で、外部アドバイザーに追加作業を依頼することをお勧めします(外部アドバイザーにそういった対応が可能であるかを予め確認しておくことが必要です)。
・外部アドバイザーの能力を見極める!!
コンサルタントの数が圧倒的に不足しており、中には知識や経験の乏しい若いコンサルタント中心にプロジェクトが進められるというケースも耳にしています。対応できるアドバイザーは限られると思いますが、まず限られた範囲で(たとえば業務プロセスのうちの1プロセスなど)外部アドバイザーに作業を委託し、その作業の結果で能力を見極める、というような方法もあるかと思います。重要な要素の一つであるコミュニケーションレベルもそこで把握できます。満足のいくよい結果を得られた場合には、そのまま追加で依頼するとよいでしょう。
また、多数の会社の内部統制を把握し、会計・監査の専門家である公認会計士の関与は不可欠です。公認会計士がどの程度、関与してもらえるかを確認しておくことが重要です。
・最初は文書化支援システムは利用しない!!
文書化支援システムを利用すると効率的な部分もありますが、相当規模の会社でもWORDやEXCELで文書化を行っているところもあり、不可欠なものではないと思います。当面はWORDやEXCELを利用し、必要とする機能が明確になった時点で、その機能をもつ文書化支援システムを導入することをお勧めします。