アベイルブログ -6ページ目

不二家の問題の本質

記憶に新しい不二家の消費期限切れの牛乳使用の不祥事について「Nikkei Business 2007年9月10日号」で以下の内容の記事があった。


「不二家は埼玉工場で過去7年間に18件の消費期限切れ原料を使用したという「事実の」公表に踏み切った。が、この「事実」は従業員からのヒアリングによるもので、記録による裏づけがなかった。」

というもの。


さらに、本誌はこう指摘している。

「問題の本質は、曖昧な事実を公表してしまった点ではなく、曖昧な事実しか把握できなかった点にあった。コンプライアンス(法令遵守)の「イロハのイ」である帳簿類の記録、保存がなされておらず、「隠す以前に、事実を把握できていなかった」(久保利弁護士)」


---------------------------------------------------------------------------------------------

コンプライアンスが叫ばれる今日、不正行為があった場合にその事実を速やかに公表するという面に視点に重点が置かれているように思えるが、問題の本質はまさにその事実を把握できる能力が企業にあるかという点である。

企業の内部統制監査がもうすぐ制度化されるが、このような事実の把握という視点で内部統制が整備・運用されているかという点にも着眼する必要がある。


モック 株式併合、新株予約権の有利発行を実施

結婚式場を運営するモックは、

(1)発行済株式数の約30%に相当する極めて大量の新株予約権を可能とすることを目的として、既に発行されている株式について10株を1株とする「株式併合」を行うこと

(2)この株式併合後、権利行使された場合に既存株式の株主持分が著しく希釈化される大量の詩株予約権の「第三者割当」による発行を特に有利な条件をもって行うことにつき定時株主総会に付議すること

を同社取締役会で決議し、開示しました。


「株式併合に関するお知らせ」

「第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ」


これに対して、東京証券取引所は、流通市場への混乱をもたらすおそれがあるとして、注意喚起の公表措置 を実施しました。


株式併合、新株予約権の発行および行使が実施されると・・・

・株式併合の結果、株主全体の約8割にあたる約6,700名が株主たる地位を失うこととなります(株主には端株の売却代金が分配されますが、新株予約権発行による希釈化のため売却代金は現時点の理論株価より低くなると思われます)。

・その後、9月6日終値(8,700円)を基準に算出した場合の株式併合後の理論価格87,000円を約83%ディスカウントした15,000円という行使価格で新株予約権を付与します。

・この新株予約権の割当先(Maxi Point Investment Limited)が新株予約権を行使すると、96.8%となり、筆頭株主となります。

・調達した59億円の資金は、主に店舗開発等の設備投資資金として活用し、一部を借入金の返済に充当します。


要するに、上場して多額の資金を一般株主から調達しておきながら、一般株主を強制的に退場させて、代わりに他の者が現時点の市場価格より安く株式を取得し大株主となる、というようなことになります。一般株主は、強制退場させられるか、持株比率が大幅に低下するため、仮に調達した資金をもとに業績が回復したとしてもほとんど恩恵に与ることはできません。


こんなことが認められるのですか?


東証一部・二部上場会社であれば、96.8%をもつ大株主が登場すると、上場廃止基準(少数特定者持株数基準)に該当し上場廃止となりますが、マザーズ上場会社の上場廃止基準には当該基準はなく、上場も維持されそうです。


上場廃止基準概要(東京証券取引所)


やりたい放題やるのであれば、TOBするなりMBOするなりして一般株主より株式を買い集め、非上場化してからやるべきです。

このようなアンフェアなやり方は上場会社として決して容認できる行為ではないと思います。

「公認会計士試験実施の改善について(中間報告)」の公表について

リガヤパートナーズ提供「CFOのための最新情報」 で知りました。


金融庁の公認会計士・監査審査会は、9月6日、「公認会計士試験実施の改善について(中間報告)」を公表しました。


「公認会計士試験実施の改善について(中間報告)」


内容は、平成20年試験より短答式試験、論文式試験それぞれの役割・意味合いを明確化し、出題範囲の絞り込み行う、試験日程を改善し受験しやすくする、平成22年試験より短答式試験を年2回実施する、など非常に良い改善であると思います。


試験科目の削減や免除などの安易な試験制度改革はどうかと思いますが、このような実施面の改善は大いにやるべきでしょう。平成20年からの実施ということで、金融庁の対応の迅速さにも驚かされます。


三菱樹脂 環境会計、初の黒字

日経産業新聞に「三菱樹脂 環境会計、初の黒字」という記事がありました。


環境会計は、まだまだ馴染みが薄いですが、「事業活動における環境保全のためのコストとその活動に得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み」をいいます。

企業等の活動を貨幣単位で表現した財務パフォーマンスである環境保全コスト及び環境保全対策に伴う経済効果と、物量単位で表現した環境パフォーマンスの部分である環境保全効果とを体系的に認識・測定・伝達する仕組みで、環境会計の結果を分析・評価することにより、より効率的・効果的な環境保全活動に取り組むことができることとなります。


・環境保全コストは、環境負荷の発生の防止、抑制又は回避、影響の除去、発生した被害の回復又はこれらに資する取組のための投資額及び費用額とし、貨幣単位で測定します。

事業エリア内コスト(公害防止、地球環境保全、資本循環)、上・下流コスト、管理活動コスト、研究開発コスト、社会活動コスト、環境損傷対応コスト、その他コストを集計し、算定します。


・環境保全効果は、環境負荷の発生の防止、抑制又は回避、影響の除去、発生した被害の回復又はこれらに資する取組による効果とし、物量単位で測定します。

事業活動に投入する資源や事業活動から排出する環境負荷及び廃棄物などより生じる環境負荷量を基準期間(原則として前期)と当期で比較することにより算定します。


・環境保全対策に伴う経済効果は、環境保全対策を進めた結果、企業等の利益に貢献した効果とし、貨幣単位で測定します。

リサイクルによる売却益や資源投入に伴う費用の節減などを集計し、算定します。


記事によると「環境保全活動による経済効果が14億7千万円で、同活動にかかった経費13億6千万円を上回った。23の全グループ会社で、埋め立て処分する廃棄物の排出は二年連続でゼロだった。」とあります。


これは、環境保全コストを上回る環境保全対策に伴う経済効果が得られたということで、より効率的に、より効果的に推進できるように、長年にわたって努力してきた結果であるといえるでしょう。
このような企業がたくさんでてくることを期待します。


【参考】
「環境会計ガイドライン2005年版」(環境省)

環境goo

「ふるさと納税」原案明らかに

日経新聞に「ふるさと納税」の政府原案に関する記事がありました。


ふるさと納税とは・・・・・

これまで住民税はすべて居住地に納税していたが、その一部をふるさと(居住地以外の自治体)に納税できるようにする制度で、都市と地方の税収格差の是正することを目的としています。


地方で育ち、就職のために都市に出て、老後は故郷で過ごす、といったよくあるケースで考えると、働きはじめるまでの教育コスト、老後の医療コストなど地方ではたくさんのコストを負担しているにも関わらず、肝心の元気に働いている間は都市に出ているため税金は都市で納められてしまいます。


これでは地域格差は広がるばかり。行き過ぎると地方での教育や医療のサービス水準が低下してしまうことにもなりかねません。


今回の原案では、自治体への寄付金相当額を個人住民税の納税額から差し引ける税額控除制度を採用し、税額控除の上限は住民税納税額の一割程度となるようです。


住民税納税額の一割程度であり、また自治体への寄付の手続きも行わないといけないので、おそらくあまり実効性がないと思いますが、一つの試みとしてはおもしろいのではないでしょうか。



人気blogランキングへ

酒井重工業 不適切な会計処理

9月3日、酒井重工業株式会社は、匿名通報により「確定受注案件の早期売上計上」という不適切な会計処理が行われていた事実が判明したことを公表しました。


「平成18年(2006年)3月期以前の不適切な早期売上計上処理に関する過年度業績の訂正予定について」


平成18年(2006年)3月期以前に行われていた「確定受注案件の早期売上計上」という不適切な会計処理に対して、売上計上の期間帰属のズレを過年度に亘って調整し、過去5期間の決算短信並びに過去3期間の中間決算短信を訂正する、というもの。


■不適切な会計処理の概要

・翌会計期間に計上すべき確定受注案件について、客先との所有権移転行為の実現無しに、工場組立完了製品を工場在庫等のまま、前倒しで早期売上計上し、一連の関係書類の一部を改ざんし、会計監査により発覚することを逃れていた。


会社は、不正行為が行われたことに対する問題認識として、以下の事項を挙げています。

1.法令等の厳格化に関する認識の曖昧さ

2.取締役・組織指導層の法令・会計知識の不足

3.不正行為に対する内部統制システムの弱点

4.二次輸送を伴う売上計上処理ルールの曖昧さ


会社の挙げている問題の多くは、財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目のうち「統制環境」に不備があったことによるものであると考えられます


「統制環境」とは、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるとともに、他の基本的要素の基礎をなるものをいいます。


たとえば、


・経営者が信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示すため、「財務報告の基本方針を制定し、社内外へ浸透させる。財務報告に係る内部統制の役割を明確にする。社内管理職から社内宣誓書を入手する。など」

・適切な経営理念や倫理規程に基づき、社内の制度が設計・運用され、原則を逸脱した行動が発見された場合には、適切に是正が行われるようにするため「経営理念、倫理規程の制定と周知徹底、社内通報制度など逸脱行為の発見手段の設置、制裁措置の制定。など」

・経営者が適切な会計処理の原則を選択するために、「客観的な裏付けのもと、最も適切な会計処理の選択を行うという経営者の姿勢を明示する。外部専門家意見などの客観性を確保するための手段を明示する。など」


といったことができており、有効な統制環境を備えていたならば、今回のような不正を防止することができていたのではないでしょうか。


会社は「社内意識改革の徹底と、魂のこもった有効な内部統制システムの再構築によって、二度とこのような間違いを起こさないよう健全な経営体制を全力で構築して参ります。」と言っています。


「魂のこもった有効な内部統制システムの再構築」とは頼もしい限りです。

他の上場会社も、2008年4月からの内部統制監査制度の導入を一つの機会と捉え、同じような問題が発生することのないよう魂のこもった有効な内部統制システムの構築を目指して欲しいと思います。


フレームワークス 監査法人、意見表明せず

8月30日、東証マザーズ上場でシステム開発のフレームワークス(3740)は、2007年5月期の連結および個別財務諸表で、監査法人トーマツより監査意見を表明しない旨の監査報告書を受領したことを公表しました。


「平成19年5月期 連結および個別財務諸表に対する監査意見不表明について」


上場会社と監査契約を締結する監査法人は、財務諸表が適正に作成されているかどうかについて監査を行い、その結果としての意見を表明する必要があります。


監査意見の不表明は、極めて限定的なケースとして

①重要な監査手続を実施できなかった場合(災害により会計記録が焼失した場合、監査人が長期投資先の評価に当たって投資先の監査済財務諸表を入手できなかった場合、監査証拠の提供を拒否された場合、など)

②巨額な損害賠償請求訴訟や係争事件がある場合など、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況があり、その事象が財務諸表に重要な影響を与える場合

に行われます。


フレームワークスは、二期連続赤字や債務超過、財務制限条項への抵触により、継続企業の前提に重要な疑義が生じていました(倒産してしまう可能性がある)。この状況のもとで継続企業を前提とした財務諸表を作成するためには、期末日から一年間は倒産しないことを裏付ける合理的な経営計画が必要です。フレームワークスでは増資や金融機関の協力を得て、事業を継続しようとしていましたが、その実現や協力を確定するには至らず、経営計画は実行可能性が低く合理性のないものとなりました。


フレームワークスの平成19年5月期の財務諸表は、

増資などが実行できるならば・・・企業は継続するので、継続企業を前提として作成されている現在の財務諸表は正しい。

増資などが実行できなければ・・・企業は継続できない可能性が高いので、継続企業を前提としない財務諸表(清算財務諸表)を作成すべきであり、現在の財務諸表は誤りである。

ということになり、財務諸表が正しいかどうかを判断するためには、合理的な経営計画が不可欠な状況です。


監査法人トーマツは、合理的な経営計画が提示されなかったため、財務諸表が正しいかどうかを判断するための重要な監査手続が実施できなかったことから、意見を表明しませんでした。



新興市場上場企業の決算や情報開示体制に対する不信によって株価が低迷していることは、まともに経営している企業にとってはいい迷惑であり、また、資本市場の効率性という観点からも決して望ましい状況ではないと思います。このような企業は退場していただいて、新興市場が本来の役割を果たすような市場に早く変わってもらいたいものです。



(参考)今年監査法人が意見を表明しなかった新興企業 日経金融新聞より

インターネット総合研究所(トーマツ)・・・経営破綻した子会社の監査手続きを実施できず

オープンインターフェース(隆盛)・・・貸付金などの回収可能性の不確実性

アーティストハウスホールディングス(アスカ)・・・スイスの関連会社の監査未了と今後の資金繰りの不確実性

フレームワークス(トーマツ)・・・5月期末で債務超過。増資の実現が未確定。


「会計士試験の簡素化提言」にひとこと

今朝の日経新聞に「会計制度監視機構 会計士試験の簡素化提言」という記事がありました。


『会計問題の専門家らで構成する民間組織の会計制度監視機構は三十日、公認会計士試験制度の簡素化を求める提言をまとめた。試験範囲の絞り込みや、試験科目が一部免除される資格を増やすことなどを提案した。

会見した森重栄委員長は「会計士の不足は近いうちに社会的な問題になってくる」と、会計士試験を受験しやすくする必要性を強調した。』


『委員を務めるTACの斎藤博明社長は「大学の就職状況が好転したことや、試験が難しいことで潜在的な受験志願者も減っている」と述べ、試験制度の改革で受験者の増加を増やすことが必要だとした。』


会計制度監視機構 とは、森重榮氏(元日本公認会計士協会副会長)を委員長とし、学者を中心とした委員により構成される民間組織ということです。初耳でした。


それにしても・・・・・

大学の就職状況が好転すれば、試験を易しくすべきなのでしょうか?専門家としての知識や能力は二の次なのでしょうか?

会計士の受験者を増加するためには試験を易しくする以外の方法はないのでしょうか?


公認会計士が増加し、監査法人だけでなく、社会のあらゆる場面で活躍することは望ましいことだと思います。

しかし、公認会計士制度が社会に信頼され続けるためには、公認会計士の品質も大切なはず。

公認会計士が社会により貢献できるような制度作りを目指して、試験制度だけではなく、いろいろな観点から踏み込んだ議論をして欲しいと思います。





大手監査法人 未上場企業の獲得慎重

本日の日経新聞に「大手監査法人 未上場企業の獲得慎重 IPO低調の一因に」という記事がありました。


会計監査の厳格化の流れを受け、監査法人が業務の引き受けに慎重になっていることや内部統制ルールの導入による業務量の増加で人手が不足しているといったことが背景にあるようです。


株式上場をするためには、上場前2年間の財務諸表について監査法人(または公認会計士)の会計監査を受ける必要があります。大手監査法人が上場準備会社の獲得競争をしていたこれまでは、多くの上場準備会社と契約し、その中から2年目に上場基準をクリアした会社が上場していく、というような流れもあったかと思います。


しかし、最近は大手監査法人の方針が変わってきているようです。

その理由としては、

・相次ぐ新興市場上場会社の不祥事を受け、内部統制や成長性の項目についての上場審査が厳しくなっており、新興市場へのハードルが高くなっていること。

・会計監査の厳格化により監査の必要工数が増えている中、特に内部統制が脆弱な上場準備会社の監査についてはコスト面で割りが合わないこと。

などが考えられます。


今後は、新興市場といえども、事業の新規性・成長性が高く評価され、かつ、内部統制がしっかりと整備されている会社のみが上場会社となれるのではないでしょうか。

そのような会社に対しても監査法人が会計監査を躊躇するということはあり得ないし、日本の証券取引市場にとっても、あってはいけないことだと思います。


記事では次のように締めくくっています。

「大手監査法人の動きは企業の新規株式公開にとって短期的には、向かい風だが、契約獲得競争の中で緩みが指摘されていた監査の質が向上すれば、不祥事や業績不振の企業が目立った新興株式市場の信頼回復につながるとの声もある。」


内部統制ルールの定着や公認会計士の増加により、数年後には大手監査法人の人手不足が解消することも考えられます。しかし、大手監査法人は証券取引市場の担い手として今後もブレない姿勢を保持して欲しいものです。

減価償却にかかる税制改正と会計方針の変更について

平成19年度税制改正の中で減価償却制度の見直しが行われました。この改正で企業が減価償却にかかる会計処理を変更するケースが増えると考えられることから、会計監査上の会計方針の変更との関係をまとめてみました。

今回の改正は法人税法上強制されるものではないため基本的に企業は新・旧どちらも選択することが可能である点、最初に述べておきます。

また、新規取得資産(平成1941日以降に取得)と既存資産(平成19331日以前に取得)とを分けた方がわかりやすいため、建物を例にとり下記の表のように分けて記載した。

なお、新規取得資産の「従来方法」は建物の償却方法として採用していたものと理解ください。

【新規取得資産】

パターン1

パターン2

パターン3

従来方法

旧定額

旧定額

旧定額

今回採用

旧定額

新定額

旧定率又は新定率

会計方針の変更にあたるか

あたらない

あたる

あたる

正当な理由があるか

ある

ない

【既存資産】

パターン4

パターン5

従来方法

旧定額

旧定額

今回採用

旧定額

旧定額以外の方法

会計方針の変更にあたるか

あたらない

あたる

正当な理由があるか


ない

上記のようなパターンになるのですが、通常最も採用されると思われるのが、2と4の組み合わせではないでしょうか。2の場合には会計方針の変更にはあたりますが、法令等の改正に伴う変更に準じた正当な理由による会計方針の変更になりますし、既存資産についても普通は4を採用する企業が多いのではないでしょうか。

減損会計導入により減損会計適用前後の償却額を別管理している会社などの担当者からは「もういい加減にしてくれ」と嘆きの声が聞こえてきそうです。