このところ見ているロシアのエンタテイメント系映画の中では飛び抜けて西欧的というか、口の動きを見ていると全部英語でセリフを言っているのかな、と思うんですが、これ、ロシア語版と英語版と二通り役者さんにしゃべらせたんですかね。

 

英語の発音は少し優等生的で平板、音響的には吹き替え感が残る出来ばえなんですが、話そのものには引き込まれました。

 

幼いころにさらわれた父親の謎をめぐって、本人や社会に隠された秘密を解きあかしていき、そのプロセスで革命運動にも巻き込まれる、アビゲイルという主人公の物語。途中でしばしば幼いころの本人と父親とが会話しながらピンチを脱するヒントを得ていく、という形で、こども時代のアビゲイルを演じている子役の熱演が光りました。

 

世界観としては「ハリー・ポッター」「不思議の国のアリス」「移動都市/モータル・エンジン」「スチームボーイ」あたりが微妙に混ざった感じでしょうか。冒頭に伝染病が広がって、感染者は情け容赦なく隔離されていく、という描写があるんですが、まだコロナ禍前、ということもあって、マスク姿で歩き回る人々はいませんでした。

 

海洋探査から海底にいた怪獣を発見して、人間の力では退治できないので他のモンスターの力を借りる、というお話。

少しゴジラ対モスラ的な要素はありますかね。人間関係もそれなりにあって、演技はちゃんとしてるんですが、やはりローバジェットの悲しさもあり、シーンの切り替えとかカット割りには苦労している印象が。

重要な登場人物も、時に瞬殺されたりする残酷さもありますが、そういうのもこういうローバジェット映画の特徴でしょうか。

 

宇宙からのコンタクトが当たり前になってきた近未来、宇宙船が不時着して、そこから出てきたモンスターが人間を襲いだす。制御不能になったら核攻撃で一帯は壊滅する、その前に退治できるか、というお話。

主人公の「ハントレス」とおぼしき存在は基地に新しく配属されて次期隊長と目される若い女性。そんなに狩りに行く、という感じではなく、敵の正体を探ったり、現隊長の消息を探ったり。あとは宇宙人のテクノロジーを使って敵をできたいできるか、通信は回復できるか、そして宇宙人の意図は?といったところ。

オチは荒っぽく、核ミサイルを敵宇宙船に命中させて終わり、なのでカタルシスはあるけど、それでいいの?という感じ。

 

あと腐れなく楽しめる話かなと思いました。

犯罪者を護送するための特殊な飛行機がハイジャックされて、保釈される予定のニコラス・ケイジは巻き込まれる立場。糖尿病の相棒のために、降りられる飛行機を降りずに、ハイジャック犯と対峙する、という役。

少し「レッド・オクトーバー」や「ダイ・ハード」に近い構造の二面性がある話で、乗り物が予定の行路を外れるけれども捜査側からは真相がわからない。ジョン・キューザックとニコラス・ケイジという、全然タイプの違う二人の主人公がやがてタッグを組んで事件を解決するというものです。

悪役側にジョン・マルコヴィッチとスティーヴ・ブシェミという珍しい取り合わせ。この二人の側にはあまり化学変化のようなものが見られないのが少し残念。

でも、この奇妙な旅を通じて、一番の変化をみたのはスティーヴ・ブシェミで、彼の猟奇的な犯罪性は、あるプロセスを経て癒やされたのかもしれない、と思うとちょっと味な終わり方だなと思いました。

しかし、糖尿病の囚人の命さえ救えればいいところ、巻き添えで警官に死傷者多数、ラス・ヴェガスの街も半壊、なのでいい迷惑をかけられた人たちも多いんですよね。

いずれにしても、ニコラス・ケイジにしては爽やかさの感じられるアクションとして、高く評価したいです。

 

CSで番組表を見て、ざっくりと録画した中の一本。ぼくが見てきたエンタテインメントの世界では陰謀を企む側に描かれてきたロシアのエージェントの世界の内幕を描こうとしているからまずそこに興味を惹かれました。

で、見てたら「魔界探偵ゴーゴリ」や「アトラクション」で活躍しているアレクサンダー・ペトロフ主演。そして彼や他の「ユース」という若手スパイが世界中に「スリーパー・セル」として潜伏していて、彼の父親がそのボスだったのだけど、死んでしまって、彼らを活動させられるキーワードを誰も知らない、という話。で、そのスリーパー・セルたちを操ろうとしているのは誰?みたいなスリラーです。

自らのアイデンティティーを探る、という意味では「ボーン」シリーズ的な要素もあるんですが、そんなにアクションが出来るわけでもなく、カーチェイスシーンもアメリカものとくらべると道も広くて車もすくないので何となくゆるい出来。キーワードを思い出したりするシーンに伏線が散りばめてあった、というのはちょっと面白い演出だったけど、ちょっと人情ものっぽくて、最後は湿っぽいヒューマンドラマみたいになっていきました。

洗脳や脳の情報のコピーとか、SFチックでリアリティーのない要素が入ってくるわりに、最後の黒幕はちまちましていてせこい、そういうちぐはぐ感は否めないですね。

でも、何となく最後まで見てしまったら、このペトロフらしい役柄って、こういうことなんだな、と腑に落ちたり。このままちょっと情けない青年役で頑張ってほしいです。

 

結果をあげられない麻薬捜査班が解散の危機にチキン店を経営して潜入捜査をおこなうけど…、という話。

まあ、予想外にチキン店が繁盛してしまう、というのは予想できた展開なので、背景の麻薬組織同士の抗争が、単なる内輪もめで、凄味もロジックも感じないのをどう捉えるか、で評価は分かれるかもしれませんね。

アクションは爽快で、みんなよく頑張った!となるんだけど、こんな有能なんだったら、なんで最初から結果が出せなかったんだろう、と不思議に思えるのも確か。

 

ウィル・スミス演じるマイクもそれなりに歳をとって、相棒のマーカスは引退を真剣に考える時期。そんなときにマイクが狙撃される。

裏にいるのはかつてマイクが潜入した組織の女。そしてその息子が彼女の計画を次々に実行しているらしい…。

なにより残念なのは上司のジョー・パントリアーノが殺されてしまった点で、もはやしゃれにならない、容赦ない弔い合戦になるはずのところ、奇妙な親子の情愛がまさってしまう、というまさかのエクストリーム擁護。

ラストもどうやら政府のために仕事をすれば罪は帳消しになる、というおいしい話を持ちかけて終わるっぽいし、死んだボスは浮かばれないなぁ、と思ったりしました。

バッド・ボーイズとしてのコンビネーションや呼吸はまずまずだっただけに、このストーリーはちょっともやもやしました。

 

2作目。で、少しマーカスがおかしくなっちゃったり、部長含めてみんながアンガー・マネジメントみたいなことを始めたりするのが奇妙な味になってる作品です。DEAとマイアミ警察の連携の欠如から起きてるトラブルがたくさんあったりしますが。

前作のティア・レオーニはもう登場しなかったのが残念ですが、だいぶ時間が経っちゃってますからね。

主役クラスではあんまりこれといって目立った人がいなくて、ピーター・ストーメアがロシアンマフィアとして出るんですが、あまりいい活躍はできてません。

あと、麻薬課の刑事たちだからクスリが絡まないと活躍できないんですが、今回は取引の材料がエクスタシーということで、ちょっと小粒な感じもしました。悪役が、背後にいるのが警官だ、というのがなかなか把握できてないので、そこも小物感がありますかね。

あと、ラストが大げさな国際問題級にまで膨らむのがいいのかな、という感じもしました。

バディムービーとしての関係性からくる面白さは今回の方がずいぶん増したと思います。

 

ティア・レオーニの逸材ぶりがこの時期から光ってる作品ですね。あとはジョー・パントリアーノが変人じゃない管理職をやっていて、案外イケメンなんだけど、やはりもっとエキセントリックな方がこの人はイキイキしているような気もします。

最初の作品の時点ではマーティン・ローレンスの方がクレジットは先に出る、というのが象徴的ですね。

で、プロットとしてのひねりの面白さは、イケメン刑事マイクになりすまして女性証人の相手をしないといけないマーカスの苦境にあるんですが、そのシチュエーションに持っていくための理屈があまり「仕方ない」感じになってないのが残念かなと。その意味でいろんな苦境や悪役の振る舞いとかが行き当たりばったりになってしまって、まとまりを欠いたかなと思います。

でも、コンビネーションとしてのまとまりは感じさせて、新世代の「ビバリーヒルズ・コップ」という感じはしました。

 

前作の終わったところからしっかりおさらいして続けるので、実質的には大きな物語を二つに分けた、ということなんでしょうね。

なので、前作の後半のふり返り話が延々続きます。二人の対照的な王子の性格と、その二人の適性を見抜いて後継者を指名してきた「国母」シヴァガミが、ひとたび決断を誤ったために、加速度的にドつぼにはまっていく、というストーリー。個人の判断を盲目的に実行していくだけでは政治はできない、という象徴的な話でもあります。

で、現在にもどってくると、もう王位奪還しかないので、話は一直線。案外カンタンに達成してハッピーエンド、という感じかもしれません。

で、二作通してみての感想としては、単純にふり返りの部分をやめて、時系列に並べてみても、全然見られたんじゃないかなと思ったり。