頭にフケが多い。それって、脂漏性皮膚炎(しろうせい・ひふえん)かも?
こんにちは。橋本です。
子どもが頭をかゆがる原因は、アトピーや乾燥だけとは限りません。
詳しくはこちら ⇒ 子どもが頭をかゆがるけど、どうしたらいいのか?
その中でもごくまれに、「カビ」によって、かゆみや湿疹が頭皮にできている場合があります。
カビが原因のかゆみや湿疹に、通常のアトピーのケアをしても良くなりません。
それどころか、場合によっては症状を悪化させてしまう可能性もあります。
カビによる頭皮の症状は、おもに2つ
カビには、たくさんの種類がありますが、カビの仲間をすべてひっくるめて、専門用語では真菌(しんきん)とよんでいます。
頭皮に真菌が原因でおきる病気で、有名なものが2つあります。
1つが、脂漏性皮膚炎(しろうせい・ひふえん)。
そしてもう1つが、頭部白癬(とうぶ・はくせん)です。
両方とも、真菌によっておこる症状ですが、それぞれ原因になる真菌の種類がまったく違います。
頭にできる脂漏性皮膚炎(しろうせい・ひふえん)とは?
赤ちゃんにできる湿疹で、有名なものに脂漏性湿疹(しろうせい・しっしん)というのがあります。
生後2~8週で出始め、こめかみ、まゆ毛、額、頭に黄色いフケのようなものが広がる湿疹で、かゆみはほとんどないか、あってもごくわずかです。
赤ちゃんにはよくみられる湿疹ですが、一気に広がり、見た目もひどくなることがあるので、初めてみるママはびっくりしてしまいます。
脂漏性湿疹は、大変な湿疹ではなく、特別な治療をしなくても、軽いケアをすれば、ほとんどが3か月以内、長くても半年、一年以内には完治するといわれています。
赤ちゃんの時期独特の皮脂による湿疹なので、この湿疹をとくに区別して、乳児脂漏性湿疹とよんでいます。
そして、乳児脂漏性湿疹と同じようなメカニズムでおこるとみられるのが、脂漏性皮膚炎。
脂漏性皮膚炎は、一般的には思春期以降に出やすく、一番多いのが40~50代の男性。
子どもにおこるのは、まれだといわれています。
症例写真:頭皮にできた脂漏性皮膚炎(しろうせい・ひふえん)
脂漏性皮膚炎の原因は、皮脂とマラセチア
脂漏性皮膚炎は、皮脂が多いことでおこる病気ですが、真菌(カビ)も関係しているといわれています。
具体的にいうと、マラセチアという真菌です。
マラセチアは、癜風菌(でんぷうきん)とよばれ、ほかにも見た目がニキビに似たマラセチア毛包炎や、細かい鱗屑(りんせつ)をともなったり肌に色素異常をおこす癜風(でんぷう)といった症状をおこしたりもします。
マラセチアは誰の皮膚にでもいる、いわゆる常在菌(じょうざいきん)といわれる真菌です。
なので、肌にマラセチアがあれば、必ず悪さをするとは限りません。
どういうきっかけでマラセチアが増えてしまうのかは、残念ながらまだはっきり解明されているわけではありません。
ですが、脂漏性皮膚炎は、どうやらこのマラセチアが悪さをしておこっているようなのです。
皮脂をエサにして、マラセチアが分解すると遊離脂肪酸(ゆうり・しぼうさん)という物質ができる。
その遊離脂肪酸が刺激となって、脂漏性皮膚炎ができるとみられています。
頭にできる脂漏性皮膚炎の特徴
脂漏性皮膚炎は、顔にもあらわれるのですが、頭にできるものの特徴は、なんといってもフケ状のものをともなう湿疹です。
場合によっては、赤みが強く出ることもあります。
かゆみの程度は人によってまちまちで、軽いかゆみの人もいれば、強いかゆみを感じるケースもあるようです。
ひどくなると黄色がかった、うろこ状のフケのようなものが髪の生え際に多く出るようになります。
冬に悪化しやすいのも、特徴のひとつです。
乾燥や不潔による「フケ」と間違われやすい
このように頭にできる脂漏性皮膚炎は、フケのようなものが出るのが特徴なので、「単なるフケ」と間違われやすいです。
「フケがたくさん出るから、頭皮が乾燥してるか、不潔にしてるかなんかだろ」
そう軽く流されてしまうケースがあることも考えられます。
ですが、実際には、脂漏性皮膚炎なら、原因は「頭皮の乾燥」や「不潔」ではありません。
ていねいに保湿しようが、頻繁に洗おうが、脂漏性皮膚炎なら、良くなる見込みは少ないと思われます。
大きな原因は、マラセチアという真菌(カビ)ですので。
で、どうやって治すの?
頭皮の脂漏性皮膚炎の治療は、抗真菌(こうしんきん)の塗り薬が第一選択です。
抗真菌外用薬で、マラセチアをやっつけるわけですね。
おもに、ケトコナゾールという合成抗真菌成分が含まれた塗り薬を使います。
商品名でいうと、ニゾラールクリームやニゾラールローションです。
頭への塗りやすさを考えて、一般的にはニゾラールローションがよく使われます。
抗真菌成分が配合されたシャンプーなども市販されていますが、これに含まれるのは、ミコナゾール硝酸塩という成分。
ミコナゾール硝酸塩は、ケトコナゾールよりもマラセチアをおさえる力は弱いとみられています。
再発しやすいからこそ
脂漏性皮膚炎は、がんこで、繰り返し再発しやすいといわれています。
再発しやすい1つの原因が、治りきらないところで、治療をやめてしまうことです。
症状がなくなったようにみえても、マラセチアが再び活動しやすい状況にあると、薬をやめたとたん、カンタンにぶり返してしまうことがあるわけです。
そうならないためには、症状がなくなっても、しばらく抗真菌外用薬を塗り続けることが大事です。
脂漏性皮膚炎のケアは長丁場なことが多く、症状がなくなっても1か月ほどは塗り続けることもよくあります。
再発しやすいからこそ、治ってからもしっかり塗ることが大事なんですね。
ただ、抗真菌薬は、長く塗っていると接触皮膚炎(かぶれ)をおこすこともあるので、症状が悪化する場合は、かぶれていないか注意する必要があります。
生え際にフケのようなものが多ければ疑う
実際には、子どもに脂漏性皮膚炎が出ることは少ないといわれています。
しかし、可能性はゼロではありません。
かゆみがある、フケがあるからといって、ステロイド外用薬や保湿でケアをしたり、よく洗ったりしても良くならない。
そういう場合は、脂漏性皮膚炎であることも考えられます。
生え際にフケのようなものが多ければ、かかりつけのお医者さんによく診てもらって、症状をきちんと鑑別してもらう必要があります。
きちんと症状を鑑別してこそ、適切な治療ができるわけですからね。