「アトピーはアレルギーの病気」という誤解 | 子肌育Blog アトピーに負けない生活。

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「アトピーはアレルギーの病気」という誤解


こんにちは。橋本です。


少し意外かもしれませんが、アトピーという病気を、純粋に「アレルギー疾患」とする考え方には、少し疑問があります。


なぜかというと、アトピーを「アレルギーによる病気」と限定してしまうと、適切なケアを見誤ったり、過剰なケアにおちいってしまったりするからです。


手間に見合うだけの効果が期待できない、行き過ぎた過剰なケアは、ときとして、大きな落胆をうむことも考えられます。


アトピー:環境アレルゲン


現段階では、アトピー性皮膚炎をひきおこす要因として、遺伝的な体質環境的な要因があると考えられています。


 


アトピーの要因(1): 「遺伝的な体質」とは?


「遺伝的な体質」としては、2つのことが考えられます。


1つは、いわゆる「アレルギー体質」。


体の中に異物が入ってきた時、それを排除するために働くIgE抗体(アイ・ジー・イーこうたい)をつくりやすい体質。


それによって、湿疹やかゆみといった、アレルギー反応が出やすいという体質ですね。


もう1つは、「皮膚のバリア機能が弱い体質」。


生まれつき皮膚が乾燥しやすく刺激に弱いという体質ですね。


「アレルギー体質」と「皮膚のバリア機能が弱い体質」の2つの側面。


ここまでが、「遺伝的な体質」としてのアトピーのお話です。


この遺伝的にアトピーをおこしやすい体質を、おおまかにアトピー素因(そいん)とよんでいます。


 


アトピーの要因(2): 「環境的な要因」とは?


そして次に、「環境的な要因」としてのお話。


「環境的な要因」としては、IgE抗体と結合してアレルギー反応をおこす「アレルゲン(抗原:こうげん)」が関係しています。


遺伝的にアトピー素因をもった人が、発症するにいたる因子(いんし:原因の可能性が考えられるもの)。


それから、アトピーの症状を悪化させる因子。


これらには、かび、ダニ、ほこり(ハウスダスト)、花粉、金属、卵・牛乳・大豆といった食物アレルゲン、汚れ、乾燥、体温、引っかくこと、虫歯、ストレスなど、ありとあらゆるものが考えられます。


また、人それぞれに因子は異なり、因子もひとつではなく、複数に渡るケースがほとんどです。


そのため、1つの対策を打ったからといって、劇的に症状が変わりにくい。


そこが、アトピー治療が難しいところ、患者の治療に対する「やる気」を、いちじるしく下げてしまう原因だったりもします。


 


環境的な要因は、「アレルギーだけ」ではない


で、この遺伝以外の要素、環境的な要因は、アレルギーだけではありません。


ここが、誤解されやすいところです。


生まれつきではなく、皮膚の乾燥、それから皮膚への刺激。


そういったものの小さな積み重ねが、皮膚のバリア機能を低下させることで、肌が「アレルゲン」や「刺激」を受けやすくなるために、皮膚に炎症がおこる。


これが、アトピーの湿疹やかゆみにつながると考えられています。


つまり、アトピーは、皮膚がアレルゲンを受けておこるだけではなく、皮膚が刺激を受けることによって悪化するケースも多いわけです。


アレルギーで悪化する側面が強いのか?

刺激(非アレルギー的)で悪化する側面が強いのか?


これは、ひとそれぞれなので、「あの人がこうして治ったから」ということは、ほかの人にも当てはまるとは言い切れません。


そのため、「アレルギーか?刺激か?」というのは、慎重に症状、経過、日常をみながら。


ときには、検査のデータも参考にしながら、判断しなければいけません。


もちろん、「これが犯人に違いない!」という思い込みは捨てるべきですし、治療やケアの方針については、お医者さんとよく相談する必要があります。


思い込みをなくすためにも、お医者さんの客観的な意見、知識も必要なわけですね。


そして、もう一度。忘れてはいけないのが、環境的な要因には、アレルギー的側面と非アレルギー的側面(刺激)があることです。


アレルギーによるアトピー:刺激によるアトピー


 


非アレルギー的側面(刺激)を見逃さない


たとえば、赤ちゃんなら


おむつかぶれ

(注:ただし、カンジダによる皮膚炎との区別には注意が必要です。)

口の周りのよだれによるかぶれ


さらに成長すると、


靴による湿疹ズック靴皮膚炎

肌着がこすれる部分での湿疹

髪の毛先がチクチク刺激し続けることによる湿疹


こういうのが、非アレルギー的側面(刺激)が色濃く影響しているだろうと思われるアトピーの症状です。


ほかにも、


砂遊びによる手のかぶれ


など、アレルギー的側面と非アレルギー的側面(刺激)の境界がはっきりしない症状も数多くあるのが実際です。


 


「遺伝的バリア機能の障害」と「環境によるバリア機能の低下」がある


ここまで、アトピーを発症させたり、悪化させたりするのには、「遺伝的な体質」と「環境的な要因」が関係するのではないか、というのをお話しました。


なんとなく気づくと思うのですが、ひとくちに「皮膚のバリア機能の低下」といっても、遺伝的なものと、生まれつき、体質ではないけれど日常生活で、後からおこったものがあります。


たとえば、フィラグリン遺伝子( FLG )という、今注目されているもの。


それが、遺伝的な体質が関係しているバリア機能、能力の低下だったりします。


一方で、日常生活の積み重ねで、皮膚バリアが壊れていってしまうケースもある。


同じバリア機能の低下からおこるアトピーでも、大きく違うんですね。


しかし、治療していくアプローチは、同じ。


1)まずは、炎症をおさえ


2)ていねいなスキンケアで、正常な皮膚バリアを取り戻せるようサポートし


3)悪化因子を探して、できる範囲で取り除いていく


この基本の三本柱を、バランスよく、根気強く続けることです。


ただ、バリア機能の低下が、体質の影響を強く受けていないケースでは、保湿剤によるケアが短期間で済む場合があることも考えられます。


正常な肌に、あえて保湿剤を塗る必要はないので。


反対に、体質が色濃く影響を受けているような、バリア機能、能力の低下では、長期的に保湿剤によるケアを続けていくこと。


それが、症状をおさえたり、ぶり返しをおこさないようにすることにつながったりするわけですね。


IgE抗体をつくりやすい体質の子どもだと、アトピーを長く繰り返しやすいことが考えられるのはたしかです。


しかし、アトピーは、アレルギーだけが原因とは限らない。


だからこそ、アレルゲンだけにこだわりすぎず、症状をよくみながら、微妙にケアを工夫していく必要もあるんですね。


 


 


 


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