『エイリアン』を観ました。
宇宙貨物船ノストロモ号は地球への帰路に就いていたが、新たな任務として、何やら信号を発している惑星の調査を命じられる。
惑星に降り立ち、奇妙な建造物内にある産卵場らしき所で、船員の1人が謎の生物に襲われる。
船に戻った後に復調したように見えたが、その生物は船員の腹を突き破り、船内のどこかに逃げてしまう。
謎の生物を探し回る中、船員たちは次々に殺されて行き……といったお話。
異形の怪物との対決を描いた作品は多々ありますが、本作の面白い点は密室劇の要素を加味している点にあるとも思います。
舞台=ノストロモ号内がだだっ広くはあるものの、あくまで限定された空間ですからね。
乗組員同士の人間ドラマが最低限程度にしか描かれていないのも良いですね。一歩間違えれば対立や確執、果ては色恋ネタなんてダッセー展開に走りそうなものですから。
尺が2時間くらいある規模の作品なのに、“主演”ではなく、“登場人物”がたった7人という潔さが良いですね。この辺にも密室劇風味を感じます。
そこから、登場人物7名の中の主役は誰だろう?と聞かれれば、誰もがリプリーの名を挙げるでしょう。続編を(先に)知ってしまった証左です。
リプリーも最終的には本作でも主人公としての働きは見せていますが、中盤あたりまでは乗組員の中の一人としてしか描かれていません。
登場人物が少ない事から、各キャラの見せ場を多めに作れるという意味で、中盤までは主人公は不在、もしくは全員が主人公と捉えても良いんですよ。ランバートはあまり爪痕は残せなかったけど。
今や『エイリアン』シリーズの座長として周知されているリプリーですが、1作目では主人公主人公しておらず、今日の座を築いているのは繰り上げ昇格によるものなのです(笑)。
本シリーズにおけるもう一人の主役は、やっぱりエイリアン。H・R・ギーガーさんの名を一気に有名にした名デザインで、様式美すら感じますよね。
暗い画面にチラッとしか映らなかったり、エイリアン自体をガッツリ見せない作風もミステリアス。
ただ、本作の公開は79年だけあって、今の視点で見れば造形が追い付いていない場面もチラホラあり、着ぐるみ感丸出しなのはご愛敬といったところでしょうか。
ダラス船長が単独で捜索した際の、振り向いた直後に現れたエイリアンとか、“いないいないばぁ”みたいだし(笑)。
終盤でも可愛い真似をするんですよ、この子ったら…。
ホラー要素を多分に含んでいる本作ですから、怖いもの見たさの感情も相まってエイリアンの姿をしっかり見たいところですが、それを克明に映さないのは演出の一環と捉えます。
しかし、画面が過剰に暗かったり、クライマックスにおいて照明が明滅する間隔が短かったりと、目が疲れる要素が多いのは良くないですね。軽いストレスを感じます。
ああ言えばこう言うような、“じゃない方”の意見を大声で書き散らす連中が増殖中ですが、そんな視点で見ると、本作最大の悪人はリプリーになるんでしょうね。
船外探査中にケインが大怪我をして戻ってきたけど、病原菌の恐れがあるから隔離しなければならないという規則を知っていたにもかかわらず、結局リプリーは彼らの入船を許可した、悪いのはリプリーだ!とか、モンスター遺族の非難を一身に受ける事でしょう。
…あ、もちろん、そんなクソくだらねぇドラマはありませんのでご安心を…。
*****************
*****************
*****************
今回観たのはBlu-ray版だったんですが、もうね〜……字幕に関するストレスが半端じゃなくって。翻訳に関してではなく、字幕自体の話です。
何しろ字幕量が少ないんですよ。必要最低限にも満ちないくらいで、画面内にいるキャラが喋っているのに字幕表示がない場面なんてザラです。
バカたちに混じってamazonのレビューでクダを巻きたいくらいです(笑)。
例えば二人で言い合いをする場面があったとして、“ああでもあない”“こうでもない”というやり取りの後に、“なら、こうしよう”という流れが常ですが、“こうでもない”の部分が表示されないんですよ。結果的に見れば不要だった部分だったんでしょうが、これは必要な情報じゃない?
テレビのバラエティ番組にありがちな、今言った言葉をテロップにする際、“うん”とか“はい”なんて相槌すらテロップ化するのはムダの極みだし、映画でもそこまでやれとは言わないけど、本作のそれに関しては情報が不足どころか過不足です。
かと思えば、とっくに喋り終えたセリフがずーっと出っ放しだったりとか(笑)、ホントにひどい。
――そんなストレスを、かつてDVD版を観た際に感じたものですが、今回のBlu-ray版でも改善はされていませんでした。ユニバーサルから発売してるのかと思ったよ(笑)。
字幕に関する話題になると翻訳家を攻撃したがる連中が多いけど、字幕を付けるかどうかの判断を翻訳家が指示しているのであれば、これは翻訳家の罪ですね。かなり重罪のレベルですよ、コレ。
本作を何回も観た上で、話しの流れのみならず、全てのキャラ名や次に来るセリフを熟知しきっている人にとっては、最小限の情報(=字幕)のみで楽しめる仕様になっています。
反対に、そうではない圧倒的なマジョリティ、かつ洋画初心者にとっては実に見にくい仕様なので、別メディアで楽しむのがいいと思います(配信版がどうなってるのかは未知)。
字幕がこんなヘボ仕様であれば、否応ながらも吹き替え音声のニーズは高まりますね。
============