観た、『マーニー』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『マーニー』を観ました。

 

マーガレット=マーニーは社員に成りすまして大金を盗んでいく女泥棒。

次の目標であるストランド社に入社したマーニーは、金庫の番号を探り当て大金をせしめるが、社長のマークにより犯行がバレてしまう。

マーニーを愛するようになったマークは、警察に突き出さない代わりに結婚を要求、マーニーはこれを仕方なく受け入れる。

詐欺や泥棒を繰り返すのみならず、男を受け入れなかったり、過剰に赤い物や稲妻に怯えるマーニーに異常性を感じるマークは彼女の過去を調べるが……といったお話。

 

タイトルにもなっている、マーニーという女性に関するお話です。

名前や髪色を変え、アメリカ各地で似たような手口で大金をせしめる女泥棒マーニーだったが、社長のマークにバレてしまい、警察に突き出さない代わりに結婚を要求され……とだけ聞くとロマンチック・コメディのような体の作品なのかなと思いきや、それも間違いではないものの、根っこはダークなお話です。ちょっとしたサイコ系と言っても過言ではないでしょうね。

 

近頃ではトラウマという言葉が、使いどころは間違っていないながらも、安っぽく口にできる時代になってきました。

本作を観た後、トラウマとは軽々しく使える言葉ではない事に気付けた人は、かなり真面目に観ていた人だと思います。

他人=観客が見知りしても、かなり胸クソ悪く感じる出来事でしたが、これを実体験したマーニーの心情を慮[オモンパカ]ると、後の人生に影響を与えてしまうのも当然ですね。

余談ながら、ミステリアス(で勝気)な女性の言動の裏には、子供だった頃の苦い経験が影を引いていて……という点において、『チャイナタウン』のイヴリンを思い出します。

 

そんなトラウマを抱えるマーニーを愛してしまうのがマークですが、これが多くの女性が憧れそうなキャラなんですよ。

金を盗むわ、嘘を付くわ、ヒスを起こすわ、挙げ句に自分を嫌うわと、並みの男性ならお手上げ状態になるであろうマーニーを、自分が愛した女だからとこれらを全て許す上に、助けてあげようとさえするんですから、実に大らかで寛容な、ゆとりある男性の鑑です。しかも社長→金持ちだし(笑)。

演じているのがショーン・コネリーさんなので、女たらしの英国スパイがチラつきますが(時折出てくるジョークや皮肉もその感を強める)、こちらは一途で健気な紳士です。

 

盗んだ金を湯水のごとく使うマーニーですが、母親にプレゼントをするような親孝行をする面もあります。

が、母親はこれをありがたく感じないどころか、マーニーとの間に壁を作ってさえいます。

自分を愛してくれない母親や過去のトラウマこそがマーニーの素行の悪さの根幹であり、二人の関係にどう決着が付くのかも見どころです。

 

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Blu-ray版は相変わらず映像特典満載です。

 

今回は2回目の鑑賞だったので吹替版で観ましたが、特にクライマックスの、マーニーが過去を思い出すシーンは吹き替え版の方が真に迫るものがありますね。

初回に観た字幕版に比べて気分が悪くなったのは、そのせいなんでしょうか…。