ブログラジオ ♯194 California Dreamin’ | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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ママス&パパスという。
ベスト・オブ・ママス&パパス~ユニバーサル・マスターズ・コレクション/ママス&パパス

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この方たちもまた実に古い。
デビューは65年のことになる。

しかも68年には
すでに解散してしまっている。

だから本当に、
御本人たちが現役の時代には

僕などまだ、物心さえ
ついてはいなかったのだが、

それでもかなり昔から
この人たちのこの曲は知っていた。

忘れもしないが、
80年前後の時期、

コダックのCMがこの曲と
それからモンキーズの
Daydream Believerを
続けて採用していたのである。

なんか、どっちもものすごく
格好よく響いてきたものだった。

それこそ前回前々回の
S&Gとかカーペンターズが
耳に入ってきて、


そのうちビートルズの存在を知り、
なんか洋楽ってすごいんだなと
思い始めていた頃だったのだと思う。

特にこの
California Dreamin’は

振り返ればもう発表から
当時ですでに
十五年近くも経っていたというのに
ものすごく斬新に響いた。

そういえば学校の合唱とかで
こういうのを取り上げてくれたら
真剣にやるのにな、なんて

愚にもつかないことを
考えていたようにも記憶している。


ただし、そういう訳で、
70年代からもうすでに基本的には
現役ではなかった方々なので、

人となりみたいなものについては
今回取り上げようと

いろいろ見てみるまで、
ほぼ知らなかったといっていい。

いや、名前が名前だけに、
ちょうどアバ(♯122)と同じ

男女それぞれ二人ずつの
四人編成だったことは
なんとなく把握してはいたのだが。

しかし改めて、
どうやらずいぶんと紆余曲折の
激しかったグループのようである。


ところでそもそもは、
この一風変わった名前も

当時ヘヴィーバイカーズ
なんて具合に呼ばれていた、

そういうバイク乗りたちの集団の
インタビューか何かを
メンバー四人がテレビで見ていて、

ウチの連中はつるんでいる
女の子たちのことを、
ママスと呼んだりしてるものだぜ、


みたいな受け答えが
されているのを聞いていて
思いついたのだそうで。

いや、時代である。

なお、このヘヴィーバイカーズとは
ストーンズのあの
オルタモントの悲劇に登場してくる

ヘルズ・エンジェルみたいな
人たちに対し
当時使われていた総称である。

さて、とにかくこの四人が
ママス&パパスとして
存続していた時期には


実は内部はなんか相当
ぐちゃぐちゃだった模様である。

あまり美しい話でもないので
ものすごくかいつまんでいうけれど、

ウィルソン・フィリップス(♯166)の
チャイナ・フィリップスの両親である
フィリップス夫妻が

そもそもは
ニュージャーニーメンという
バンドを組み
活動していたところへ

ほかの二人が加わる形で
このママス&パパスというのは
出来上がってきたのだけれど、

結成直後にはもう、この既婚者の方の、
つまりチャイナのお母さんである
ミッシェル・フィリップスが、

デニー・ドハーティという
男性の新メンバーと
いわゆる不倫関係に
陥ってしまっていたのである。

しかももう一人の新メンバー
キャス・エリオットの方も実は

このドハーティに
想いを寄せていたような節も
なくはなかった模様だから、


だから結成当初からすでに
内部に爆弾を
抱えていたようなものだったらしい。

それでもデビューほどなくして
フィリップス夫妻の共作による
このCalifornia Dreamin’が
トップ3に迫る大ヒットとなり、

次に発売されたシングルは
勢いに乗った形で
見事に一位を獲得している。

実績だけ見れば
順風満帆のようだけれど

さて、はたして当人たち
特に不倫の二人組は
どんな気持ちでいたものか。


たぶん音楽的な根幹を
担っていたのが
フィリップ夫の方であれば、

ちょっと一筋縄では
行きそうにはない複雑な感情が
蠢いていたのでは
なかろうかとも思われる。

まあほとんど
野次馬根性でしかないけれど。

確かにあのアバもグループ内で
くっついたり離れたりしていたが
比較にならないほど複雑である。

結局はほどなくこの不倫が発覚し、
ミシェルは一旦グループを追放され、

とはいえ人気絶頂であったから
レコード会社のサポートを得て

代役を立てるなどの手段で
どうにかしてバンドは存続する。

しかしこれもどうやら
結局あまり上手くは
いかなかったようで、

正式な解散寸前には
一時的にミシェルが復帰なんて
一幕も起きている。

でもジョン・フィリップスがやはり
彼女と一緒にステージに立つことには
どうしても耐えられないといいだし、


結局彼らはこの段階で
その活動の歴史に
一つの終止符を打ったのだった。

――。

そういえば、
B-52S(♯140)のシンディーが、

男女混成の編成のバンドで、
そういう色恋沙汰がなかったことが
長続きの秘訣よ、

でもそんなのきっと、
私たちくらいのものじゃない?


みたいなことを
どこかでいっていたような
気もするのだが、

けだし名言といえよう。


なお、このママス&パパスが
80年代に再結成された時には
女性二人は全く別のメンバーで、

さらに後年90年代に
初来日を果たした際には

オリジナル・メンバーは
ドニーただ一人に
なっていたのだそうである。


ほかにもなんか見てみると
いろいろと小ネタみたいな
話ばかりが出てきてしまう。

たとえばこのもう一人の
女性シンガーである
キャス・エリオットは、

落ちてきた鉄パイプが
頭にぶつかるという事件があって、
以来音域が三音上がったとか、

ミシェルはその後、
デニス・ホッパーと
8日間だけ
結婚していたことがあるとか、

ジョン・フィリップスは後に
ボウイのあの
『地球に落ちてきた男』で
音楽を手掛けているとか等々である。


一番びっくりしたのは
このキャス・エリオットという方、

74年にイギリス公演の最中に
32歳の若さで急死して
しまっているのだが、

この数年後その同じホテルの
まさに同じ部屋で

ザ・フーの最初のドラマーだった
キース・ムーンが
亡くなっているのだそうである。

しかも享年は同じ
三十二歳だったらしい。


ちなみにこのキャス、
死体で発見される前夜には、

どうやらミックの家の
パーティーに招かれて
いたりもしたようである。

もちろんストーンズの
ミック・ジャガーのことである。

なんかいろんなものが
60~70年代という雰囲気で、

いったいこの頃世界は
どんな場所だったのかなあと
改めてなんだか不思議に思う。

憧れというのとも
ちょっと違うことは
確かなのだが。

なお、念のためだが、
一応このキャスの不審死、

検死の結果では
薬物の反応は
出てこなかったそうである。


そんな訳で短命っちゃ
短命に終わったこのグループだが、

後世に与えた影響は
絶大であると書かれているのを
あちこちで目にした。


なるほど彼らがいなければ
アバやあるいは
マンハッタン・トランスファーといった

混声のコーラスを
主体としたグループの幾つかは、

ひょっとすると我々が
知っているのと同じ形では
決してなかったりも
したのかもしれないとも思う

たぶん本邦のサーカスなんかも
この系譜に含まれるのだろう。

それに何よりやはりこの
California Dreamin’は
今聞いても十分強烈なのである。


ギターだけなのに
極めて独特なイントロと

その後すぐ雪崩込んでくる
男女の掛け合いによる
コール&レスポンスめいた、

でもそれぞれに独立した
メロディーの絡み合いの
その迫力がもう、なんかすごい。

間奏のフルートも
これ以外はないというハマり方だし、

奔放で何度か
リヴァイヴァルヒットしているのも
なんだかすごく頷ける。

マイナースケールで
かつこのテンポで

クールな曲というのはきっと
僕らの肌にすごく合うのだと思う。

カリフォルニアなのに
全編が冬景色なのも、
なんだかすごくシュールである。

あ、この歌、タイトルの通り、
カリフォルニアを夢見る話である。

この辺もまたすごく
70年代というか
それ以前っぽいのである。



では小ネタ。

いや、今回は上でほとんど全部
使ってしまったものだから

正直なかなか思いつかなかった。

という訳で半ば苦し紛れである。

さて、このグループの命名が
ヘヴィーバイカーズたちの


一部の言動に由来することは
最初の方で触れているのだが、

このネタは僕も最近知ったのだが、
実はあのプリテンダーズ(♯27)も

その名前の由来に、
似たような背景を
持っていたらしい。

いや姉御、そんな理由で
プリテンダーズになったんですかいと、

この話を読んだ時には
思わず体が椅子から
ずり落ちそうになったりもした。

まあ言葉そのものは
The Great Pretenderという
プラターズの作品で

ジョージ・ハリスンや
サム・クック、

それどころかさらには
ロッド・ステュワート(♯41)に

クィーンの(♯33)の
フレディー・マーキュリーなんかも
カヴァーしているという

超有名なスタンダード・ナンバーから
取られていることはいるのだけれど、


この名前が決まった時の
挿話というのが、

何、そんなんで決めちゃったの?
という感じだったりしたのである。

もちろん
ヘヴィーバイカーみたいな人物が
関わってはいる訳だけれど、

でも、この種明かしは改めて
別の機会とさせていただくことにする。

だからまあ一応は上の
The Great Pretenderのくだりが
今回のトリビアということで。