ブログラジオ ♯41 Maggie May | 浅倉卓弥オフィシャルブログ「それさえもおそらくは平穏な日々」Powered by Ameba

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さて、ロッド・ステュワートである。

実はIn My Lifeの時に一度触れているのだが、
改めてきちんと取り上げておくことにする。


Every Picture Tells a Story/Rod Stewart

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なんというか、本当にタフな人なんだろうなあ
なんて印象を勝手に持っている。


とにかくすごいのは、ほぼ時代ごとに
一世を風靡した代表曲がある点である。

SailingやTonight I’m Yours辺りは
たぶん誰でも一度ならず
耳にしたことがあるだろうし、


ディスコミュージックに大胆に接近した時代の
マンモス・ヒットI’m Sexyはもちろんのこと、
Hot LegsやYoung Turks辺りも、
聴けば思い出す方が多いのではないかと思う。


80年代前半のアルバムこそやや苦戦した
印象もあるが、それでも91年に発表した、

トム・ウェイツのカヴァーである
Downtown Trainなんかは
当時とにかくいろんなところで
オンエアされまくっていたものである。


そうやって、時代の潮流を敏感に吸収しつつ、
かつ、自分のスタイルを堅持し続ける。


これたぶん、なかなかできることではない。
あの歌声があるからこそのことである。

これまでに発表されたフル・アルバムは、
ライヴ盤やベストを除いても30枚に迫る。


もっとも彼の場合は、各作品ごとに
カヴァー曲の比重が多いからこそ
到達できた枚数とはいえるかもしれない。
さすがに全部は聴いていない。


今回の御紹介は71年発表のアルバム。
だから、その膨大なカタログの中でも
極初期の作品ということになる。
それでもソロとしてすでに三枚目。

もっともこの人のデビューって
ちょっと変わっているというか、
むしろ非常にややこしいのである。


そもそもはあのジェフ・ベック・グループの
ヴォーカリストとして起用されたことで、
キャリアのスタートを切っているとは
たぶんいってしまって大丈夫だろう。


実際にはそこに至る前史のようなものも、
あるにはあるだが、今回は割愛。

そしてそのグループの活動停止後、
ソロとしての作品発表と前後して、
フェイセズなるバンドのシンガーとしても、
同じ年に活動を開始しているのである。


しかもそれぞれ違うレコード会社から。
まあ、こういうケースはあまりない。


ちなみにこのフェイセズのギタリストが、
現ストーンズのロン・ウッドである。
だから二人は今でも盟友なのである。


さて、このMaggie Mayはロッドにとって
初の全英ナンバーワンとなった楽曲である。


アルバム・ヴァージョンの方には
短くはないギターの前奏曲みたいなものが
本当はくっつけられているのだけれど、


たぶん普通にラジオ等でかかる場合は、
やや変則的なストロークプレイの
箇所からになることが多いと思う。

このラインが、後半トレモロで
リフレインされてくるところが、
またすごくいいのだけれど。とにかく。


で、二拍、ドラムやらギターストロークやらが
いい感じにブレイクを作って歌がスタートする。


一言でいって名曲である。
物悲しさを備えたカントリー・タッチとでも
いえばいいのだろうか。

オルガンを始め、使われている楽器は
時代柄、どうしても今聞くと古臭い音色である。
ドラム辺りもずいぶん安っぽく聴こえてしまう。


だがむしろ、このタッチでなければ、
この曲は成立しなかったかもしれない。
そう思わせるくらいに
すべてが見事にはまっている。



マギー・メイとはお察しの通り女性の名前。
しかも主人公よりたぶん少なからず年上である。

巧妙にロッド自身のイメージと
重なるように設定された主人公が、
彼女との別れを告げることを
決意せざるを得ない心情を綴っていく。


もう顔を見ることもなければいいのに。

そんなことを歌う同じ声が、
サビではこういっている。

あんたは僕の心を盗んだ。
そいつが一番たまらないんだ。


このマギー、未亡人か何かなのだろうか。
曲中で明確に説明されてはいないけれど、
なんとなくそんな感じである。


彼女は自分の淋しさを紛らわせるために、
この主人公を誘惑したらしいのである。

僕が必要としていたのは、
手を差し伸べてくれる友人だった。
でもあんたは恋人になり母親になった。
そうやって僕をすっかり消耗させちまった。


この一節を聴いてしまうと
どうにもそんなふうにしか想像しかできない。


それこそ一編の小説のようである。
収録アルバムのタイトルである
EVERY PICTURE TELLS A STORYをもじって、

EVERY SONG TELLS A STORYなんて
ちょっと気障なことを
いってみたくすらなってくる。


だけどこの曲、そういう泥臭さというか
猥雑さみたいなものを一切感じさせない。


むしろ、シンプルに美しい。
そこが極めて不思議なのである。

考えてみれば、こんな設定の
ある種のラヴ・ソング(?)を、
よく商業ベースで成立させたよな、とも思う。


しかもトップワンにまで押し上げているし。

だから、この声あっての
この表現力だからこその
結果だったのだと思うのである。

リアルタイムで聴いていた、80年代の
R.パーマーのカヴァーである、
Some Guys辺りも結構好きである。


それでもやっぱり、ロッドのヴォーカルは、
トラッドっぽいテイストのトラックの時が
一番決まるんじゃないかな、
なんて思いを改めて強くしているこの頃である。


だからまた彼に関しては、ほかの曲についても、
たぶんエクストラの方で取り上げる場面も
きっと少なくなくあるだろうと思っております。


まあじゃあ、今回のトリビアは、
上で触れたロン・ウッドってことで
いかがでしょうか。


ちなみに二人は、先述の
ジェフ・ベック・グループ時代からの
つきあいになります。


いや、さすがにちょっと、ネタ探すのが
そろそろきつくなってきたのは本当です。

頑張りますが。