Night and the City

ハリー(ロバート・デ・ニーロ)はマンハッタンの(あまりまともではない)弁護士。行きつけの酒場の経営者フィル(クリフ・ゴーマン)の妻ヘレン(ジェシカ・ラング)と関係を持っている。
突然ハリーはボクシングの興行を思い立って、あちこちと走り回る。元ボクサーのアル(ジャック・ウォーデン)を引き込んだ。
しかし金がない。フィルに掛け合ったが、いい顔はしない。ヘレンは怒って「15000ドルなんて簡単に言わないで。自分で7500ドル調達したら、フィルが貸すわ」と言った。
ハリーには7500ドルでも無理である。ヘレンはフィルには内緒で7500ドルを持ってきた。「後はハリーが貸すわ」。そしてさらに5000ドルを出して「これで店の営業許可証を取って」と頼んだ。ヘレンには前科があるので許可証は取れない。またヘレンはフィルと別れるつもり。
ハリーは努力はしたが許可証を取れない。そこで偽造の許可証を作ってヘレンに渡した。ヘレンには秘密。
ボクシングの準備は順調とはいいがたいが、ともかく進んでいった。ヘレンの開店とボクシングの開催が迫ってくる。しかしフィルの金の調達が遅れている。
さて当日。選手の計量オーヴァーや尿検査での失格がでる。そしてフィルが「俺が金を貸すと思ってたのか!」と暴言を吐いた。さらに心臓が悪いアルが喧嘩を吹っ掛けられて興奮し死亡した。開催はできなくなった。
そして許可証が偽造であることがばれて、ヘレンは店を開くことができなかった。しかしそれでもヘレンはハリーを責めたりはしなかった。
アルの弟と手下がハリーとヘレンを襲ってきた。ハリーは拳銃で撃たれて病院に運び込まれた。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1992年、脚本:リチャード・プライス、監督:アーウィン・ウィンクラー


■ はじめに

◆ 登場人物

ハリー・フェビアン(ロバート・デ・ニーロ) - 弁護士
フィル・ナゼロス(クリフ・ゴーマン) - バーボクサーズの経営者
ヘレン・ナゼロス(ジェシカ・ラング) - フィルの妻
アイラ・グロスマン(アラン・キング) - 元ボクサー、ボクシングプロモーター、通称ブンブン
アル・グロスマン(ジャック・ウォーデン) - 元ボクサー、アイラの兄
クダ・サンチェス(ペドロ・サンチェス) - ブンブンの配下のフライ級ボクサー

◆ 補足

ハリーは弁護士。ニューヨーク・マンハッタンの弁護士といえばさぞかし立派な弁護士であろうかと推測されるが、そうではない。結構ワルの弁護士である。ロバート・デ・ニーロが演じているからである。しかし巨悪と結託して巨額の金をせしめているような大悪弁護士でもない。ロバート・デ・ニーロが演じているからである。事務所もみすぼらしい。

ハリーは、何か事件が起きていないか、毎朝新聞を細かくチェックする。事件の被害者に連絡をして、賠償金の請求を持ち掛ける。大事件である必要はなく、細かな事件でよい。むしろその方が確実なので好都合である。そして加害者に接触して、被害者にいくばくかの賠償金をもたらして、いくばくかの弁護料をもらう。少額でも積もれば山となるはずである。いやしかし見たところはまだ山にはなっていない。

訴訟は好まず示談に持ち込む。その方が素早く処理できて被害者のためであるが自分のためでもある。正式な裁判になると、まずいような事案もしばしばあるからである。ハリーは相手に考える暇がないくらいに喋りまくって加害者に示談金を支払うようにせっつく。

ハリーは、ボクサーズというバーにしばしば立ち寄る。事務所の近くであるが、それよりもボクサーズの経営者フィルの妻のヘレンとできているからである。ヘレンがなぜハリーのような人物と付き合っているかは、かなりの謎であるが、ともかくそのような設定になっている。またボクサーズには、元ボクサーで、ボクシングのプロモーターをしているブンブンも、よく立ち寄っている。

本作は「(1950)町の野獣:ナイト・アンド・ザ・シティ/Night and the City」のリメイク。リチャード・ウィドマーク、ジーン・ティアニー、グーギー・ウィザースなど出演。
 


■ あらすじ

◆ ボクシング

ハリーは、ブンブンの手下のサンチェスが暴力を振るったという話を耳にした。例によって条件反射をして被害者に連絡を取りサンチェスに賠償金を要求した。しかしサンチェスは示談に応じず裁判となった。原告はハリーの指示で大げさな偽のギブスをして登場した。裁判長は原告と被告を起立させた。原告の方がはるかに体格がよい。ハリーは裁判長に注意された。あえなく敗訴。

さてハリーは、この裁判のために、あるボクシングジムを見学した。多くの若者が一生懸命に練習をしている。ジムの経営者に話を聞いた。ここでハリーはボクシングのプロモーションをやろうと思い立った。ボクシングの試合をやる。選手はこのジムのメンバー。これがハリーのおっちょこちょいなところであり、またよいところでもある。

これがこの映画のストーリーの始まりであり、後になってハリーに終わりをもたらす。つまり俗な表現をすれば「終わりの始まり」となった。

ハリーは数年前までジムに来ていたアル・グロスマンに連絡を取った。元ボクサーで今は老人ホームにいる。心臓が悪いようである。

450ドルを払ってプロモーターの免許も取った。会場はディスコを借りることにする。ハリーはこの話に憑りつかれてしまった。

◆ 資金の調達

もちろんこれだけでは試合ができるわけではない。いろいろと費用が掛かる。ざっと見積もると15000ドル。貧乏弁護士のハリーが持っているわけもない。

いくつか当たってみたが不調である。そこでハリーはフィルに話を持ち込んだ。フィルもハリーの無駄話に付き合うつもりはないが、後がないハリーは一生懸命である。

その話を聞いていたヘレンが割り込んできた。「15000ドルなんて簡単に言わないで。そんな簡単に稼げない金額よ」。ふだんはハリーに優しいヘレンが怒っているようである。ハリーはヘレンの迫力に気押され、フィルは「その通りだ」と頷いている。ヘレンは「貸してほしいなら、自分で7500ドルを持ってきなさい。それを持ってくればフィルが7500を貸すわ」。

それでハリーは7500ドルを調達することになった。しかし7500ドルとは言ってもハリーにとっては簡単ではない。また走り回ってみるが、見込みが立たない。

ヘレンが訪ねてきた。意味ありげに笑いながらバッグから封筒を二つ取り出した。一つの封筒には7500ドル。ハリーに渡して「これで後は7500ドルね」。さらにもう一つの封筒を渡す。こちらには5000ドル。「これで店の営業許可証を取得して頂戴」。

ヘレンには前科があるので、簡単には営業許可証は取得できない。フィルと別れて店を出したいと言う。ヘレンがこのような金を持っていたのかは疑問があるが、ヘレンの言葉を信用すれば、こつこつと貯めたらしい。

「フィルと別れてどうする?」「あなたがパートナーに」。そして「あなたは誠実だわ」と信じられない言葉が。ヘレン基準では誠実かもしれないが、世間基準ではそうではない。ヘレンがハリーにイカレテいるのは確実である。

ハリーは、その金を持ってフィルに会いに行った。フィルは「こんな金をどこで?」と言ったが、約束なので7500ドルを貸すという。ただし今ではない。もう少し先になる。ヘレンは、そばでニヤニヤしながらタバコを吹かしている。

ハリーは試合の準備とともにヘレンのためにある男に接触した。しかし簡単には許可証は手に入らない。そこでハリーは、その男から未記入の許可証の用紙を取得して、さらに他の人物に依頼して許可証を偽造した。簡単にはばれない出来上がり。ヘレンに渡すと大喜び。

試合と同じ日にヘレンの店が開店することになる。

◆ ブンブン

一方ブンブンはハリーとアルが動き回っていることを察知する。ブンブンとアルは仲が悪いが、それでも兄弟である。ブンブンは「兄貴に何かあったら、お前を殺す」と脅す。

さて大問題。ブンブンの手下のサンチェスがハリーとヘレンが仲良くしているところを目撃。当然ブンブンに報告。そしてブンブンはフィルにチクった。しかしフィルは不思議なことに特に行動を起こさない。

ハリーの方の準備は、着々とはいかなくても、ドタバタしながら進んでいく。しかし会場主の横暴などで、12000ドルが必要になる。注、まだフィルからの7500ドルは貸してもらっていない。

一方、ヘレンはフィルに離婚を申し出る。フィルに殴られるが離婚成立。そして開店準備は順調に進んでいく。店をきれいにして設備を入れて従業員の教育を行う。

ハリーは再度フィルを訪れて借金を申し込む。その時に「ヘレンが出ていった」と聞いて「それゃ~、ひどいやつだ」としらばっくれる。フィルは思いがけず12000ドルを貸すという。ただし手続きがあるので、試合の前日だと言う。そして前日に出場メンバーを店に招待してバーティを開くことになった。

そして盛大なパーティが開かれる。楽しいバーティが終わってみんながフィルに感謝しつつ店を出ていった。ハリーは金の件を持ち出した。「銀行の手続きが遅れている。明日には必ず」と言う。ハリーは焦るが仕方がない。

◆ 当日

さて試合当日となった。大混乱である。計量にパスしない、尿検査に落ちるなどが続出する。慌ててジムに代わりの選手を用意してもらう。

そして問題は金。ハリーは会場を抜け出してフィルを訪ねる。フィルは不在。気が急く。

やっとフィルが現れた。「金を」と言うとフィルは「何のことだ?」と知らないふりをする。「12000ドルを貸してくれると言っただろ!」「あの話を本気にしてたのか?」ととんでもない返事が戻ってきた。ハリーはフィルに殴りかかるが、けっきょく店から叩き出された。

さてその間に、もっと重大なことが起こっていた。アルが会場にいる若いやつにからかわれた。アルは大人の対応をしていたのだが、あまりにしつこく嫌味をされるので、アルの怒りが爆発し、喧嘩となった。アルは心臓マヒで倒れた。アルは死亡した。

◆ ラスト

この事態に至ってハリーは試合の開催を諦めた。そしてヘレンの店に行った。今日が開店のはず。

しかし店のライトは消されていて一人ヘレンだけが座っていた。許可証が偽であることがバレテしまった。

普通ならばハリーはヘレンに殴り倒されるところであるが、ヘレンはハリーを批判しない。ハリーは試合の顛末も話した。ヘレンはカリフォルニアの義理の兄の店とこの店を交換するつもりらしい。

外を見るとブンブンの手下がこちらに向かってくる。アルが死亡したからである。慌てて逃げ出した。手下が追いかけてくる。拳銃を持っている。

二人は逃げたが、行き止まりの路地に迷い込んだ。二人は追い詰められた。ハリーは何とかいろいろしゃべって弁解しようとするが、それが通用するような状況ではない。

拳銃で射たれてヘレンの腕の中で息絶えるのだった。


いや違う。死んではいない。ハリーは救急車で運ばれていく。例によってハリーは救急車の中でもヘレンを相手に喋りまくっている。

他のレヴューではハリーが死んだように書いているものがある。しかし救急車で運ばれていく場面が最後。その後でハリーとヘレンはカリフォルニアで店を開いたものと推測される。
 


■ 出演作

ジェシカ・ラング
(1981)郵便配達は二度ベルを鳴らす/The Postman Always Rings Twice
(1984)カントリー/Country
(1988)熱き愛に時は流れて/When I Fall in Love/Everybody's All-American
(1991)ケープ・フィアー/Cape Fear
(1992)ナイト・アンド・ザ・シティ/Night and the City
(1992)開拓/O Pioneers!
(1994)ブルースカイ/Blue Sky
(1997)シークレット-嵐の夜に/A Thousand Acres
(1998)沈黙のジェラシー/Hush
(2016)素敵な遺産相続/Wild Oats
(1980)ひと妻窃盗団/How to Beat the High Co$t of Living
(2007)多重人格・シビルの記憶/Sybil