■ The Postman Always Rings Twice
ニックとコーラはロスアンジェルス郊外で、カフェ+ガソリンスタンドを経営していた。
フランクという流れ者が雇われた。フランクとコーラは愛し合うようになり、ニック殺害を企てた。
浴室でコーラは金属球をいれた袋でニックを殴ったが失敗した。
次に二人は峠の道で転落事故を装ってニックを殺害した。
フランクは裏切ってコーラだけが起訴されて裁判となった。


製作:1981年、脚本:デヴィッド・マメット、監督:ボブ・ラフェルソン   予告編   予告編   フル動画  


ジャック・ニコルソン   ジェシカ・ラング  


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 ニック・パパキダス(ジョン・コリコス)
 コーラ・パパキダス(ジェシカ・ラング)
 フランク・チェンバース(ジャック・ニコルソン)

本作は1934年の原作小説があり、四度も映画化されている。紹介するのは最後の1981年のもの。またもうそろそろ映画されてもよいだろう。印象的なタイトルだがタイトルは内容とは関係がない。原作者の家にくる郵便配達がいつも二度ベルを鳴らしたかららしい。

ジャック・ニコルソンは、いかにも悪人という雰囲気の役を演じるが、本作も例外ではない。彼の風貌がいっそう、その印象を強化する(笑)。ジェシカ・ラングはいろいろな役を演じている。(私にとっては)フランクよりもコーラの方が印象深い。
 


■ あらすじ

ロスアンジェルス郊外の田舎道にあるカフェ+ガソリンスタンドの「ツイン・オークス」。フランクとコーラの店。ニックはギリシャ人である。そこに「車のことを知っている」ということで、フランクが働くことになる。フランクは別棟に住む。

ニックが外出したおりに、フランクはコーラに強引に迫り二人の関係が始まる。コーラもまんざらではないようである。

ニックが「明日帰る」とまた外出したおりに、コーラは「何かする?」と誘う。するとフランクは「シカゴに行こう」と提案する。しかし、この駆け落ち事件は頓挫して、二人は戻ってくる。すぐに戻ってきたのでニックにはばれない。詳細は下記。

駆け落ち事件から戻ってきた時にフランクが「道は必ずある。二人でいれば」と言うと、コーラは驚くべき言葉を吐き出す。「私はあなたのものよ。もし私たちだけなら、もし二人きりなら....」。「何を言ってる?」「善悪なんて関係ない」。悪人のフランクも、これ以上言葉を発することができずに、コーラの前を離れる。迷っているようである。空を見上げている。

二人はニック殺害を計画する。フランクがパチンコ玉のような鉄球が詰まった袋をコーラに渡す。コーラは浴室でニックを殴り倒すが、突然の停電などがあり、未遂に終わる。詳細は下記。

ニックは入院した。その間二人はやりたい放題(笑)。湖に行ってボートに乗る。コーラはニコニコしている。ニックが戻ってくる前の夜、コーラは憂鬱そうである。

ニックが退院した後パーティが開かれる。田舎でしかもギリシャから流れてきたニックにしては多くの人々が退院祝いに集まる。ニックはフランクを「命の恩人」として紹介する。

コーラはフランクに「もう終わりよ」と宣言する。ニックに対して微笑んでいる。

フランクは出ていく準備をしている。しかしここでコーラが入ってくる。「君はヤツの女房だ」。コーラが泣き出す。ニックは今までは子供が欲しくなかったようだが、コーラに「子供を作ろう」と提案したとのこと。コーラは泣きながら不気味に笑い出す。「あなた以外の子供は欲しくない」。

二人は再度ニック殺害を計画する。ニックを車の事故を装って峠の道で殺害した。詳細は下記。

フランクは起訴されず、コーラは起訴されるが無罪。生命保険金と損害保険金が支払われる。詳細は下記。

事件の宣伝効果は絶大でツイン・オークスには客が押し寄せる。客は喜んでコーラにチップを渡したり「お釣りはいいよ」と言う。店の外にも席を設けた。一方で眉をひそめている客もいる。

ここでコーラの母親が死亡したとの連絡が入りコーラは故郷に戻る。その間、あるきっかけがあってフランクはサンディエゴにでかける。その時にある女性と関係ができる。これはフランクの性癖である。

このあたりで今までのコーラの印象が一変する。素直で明るくなる。「あなたの赤ちゃんを作るわ」。今まではタバコ、動作、言動、目つきなど、いわばスレッカラシという印象。

ここで裁判の時の弁護士の助手が脅迫に訪れる。コーラが弁護士の傍で作成した書類を助手が盗み出してきた。その書類を銀行に預けているという。その助手を逆にフランクが脅して書類を持ち帰ってくる。

フランクが戻ってくるとコーラが怒っている。原因は、例のサンディエゴの女性の件。その女性か訪ねてきたらしい。以前のコーラの雰囲気。フランクが証言書類を渡すとコーラは投げ捨てる。「私は裁判が終わったから関係ないの、今度はあなたの番」。コーラは電話をかけようとする。フランクが電話を取り上げる。注、フランクは、その女性の前でツイン・オークスのマッチを使ったので場所が分かったらしい。

コーラが外に出て景色を眺めている。フランクがそばに来る。結婚を提案する。「私の口を封じるため?」「それなら、もうやってる」。コーラの表情が元に戻ってにっこりする。

二人は結婚式を挙げる。ドライブに出かける。
 


■ 補足

◆ 駆け落ち事件

ロスへ行く。バスターミナルで切符を買う。出発までの間フランクはバスターミナルの一角で行われていた賭けに参加する。コーラは、その間待合室でタバコを吸いながら待っている。

フランクは賭けに勝っていたが、さらにコーラに「金を貸してくれ」と言ってくる。コーラが拒否すると、バスの切符をサンフランシスコ行に振り替えて、できた金を賭けにつぎ込んだ。

フランクは賭けで勝った。終わって戻ってくるとコーラがいない。仕方なくフランクは戻る。

フランクは戻ってきて儲けた金の一部をコーラに渡す。「眠れなかった。本気だと思ったのに」と言う。コーラは金を受け取るが、機嫌が悪そうな顔をしている。フランクが渡した金の根拠は明示されていないが、おそらくバスの代金をコーラが払っていて、それを戻したもの。

◆ 浴室殺害未遂事件

コーラはフランクから渡された鉄球入りの袋を受け取る。自分で袋を振ってみて、何をするかを確認する。「危険な時は二度ベルを鳴らせ」とフランク。注、本作のタイトルとの類似性を思わせるが郵便配達とは無関係。

二階の浴室でニックを殴って窓から外に出る。フランクが梯子を用意しておく手筈である。「私を愛してる?」とコーラ。目が血走っている。

しかし浴室でニックを殴った瞬間に停電が発生。コーラは焦って叫び声。フランクは浴室に跳びこみ、コーラは救急車を呼んだ。ニックは入院した。

「ニックは闇を憶えているだけ、振り向いていたら私たちは死刑よ」。

停電の原因は、猫が電源箱に入り込んだため。ニックがなぜコーラの仕業と認識しなかったのは不思議だが、そのようなストーリーである。ニックはフランクを命の恩人と認識している。

◆ 峠転落偽装殺害事件

三人で車で出かける。ガソリンスタンドに寄る。ちゃんと目撃者を作って抜かりがないようにするため。ニックとフランクは酔っている。コーラが運転する。ニックは助手席。店員の前で、フランクが「俺が運転する」と言い、コーラは「酔ってるでしょ」と答える。注、フランクが本当に酔っているかは不明、もしかすると目撃者用の演技かも。

峠でエンジンがオーバーヒートして停車。これは偽装。コーラがフランクに「早く直して」と言い、そのタイミングでフランクがニックを後ろの席からバールで殴る。車を崖から落とす。

二人が崖をおりて車の傍に来る。ここで二人は殴り合って事故の怪我を偽装する。さらに下に車を落とす。車は炎上する。道路に上り通りがかった車に助けを求める。

◆ 裁判

ニックには一万ドルの生命保険が掛けられている。また店や車に対して二万五千ドルの損害保険が掛けられている。

二人は入院する。フランクのところに生命保険会社の社員が訪ねてくる。保険会社はできれば保険金を払いたくない。フランクは今までいろいろと悪いことをしてきた。これを把握しておりフランクを脅す。そしてフランクにある書類にサインするように要求する。

その書類はコーラによるニック殺害を証言するもの。これが通れば保険金を払わずに済む。脅されたためかフランクはサインする。

コーラは起訴されて裁判となる。コーラはフランクが裏切ったと言うことで法廷の中でわめき叫ぶ。

ここでフランクとコーラの弁護士がコーラに証言を求めて書類を作成する。助手がタイプする。これはコーラとフランクの罪状を認めるもの。注、この書類は裁判の行方とは関係ないのだが、この時の助手が、後で二人を脅迫に訪れる。

さて、この弁護士は(自分の利益のために)工作する。生命保険会社に損害保険会社の社員を連れてきて、生命保険会社と交渉する。生命保険会社はフランクがサインした書類を持っている。しかし裁判で勝てるとは限らない。勝てなければ保険金を支払わなければならない。そこで弁護士は、生命保険会社が保険金を支払わずに済む方法を提案し、裁判を取り下げるように提案する。

もう少し具体的に説明すると、生命保険会社は(形式的に)保険金を支払う。そして損害保険会社から支払われる保険金から生命保険会社に同額をバックする。さらに損害保険金から弁護士の報酬を支払う。損害保険の支払いは確定しているので、生命保険会社は損をせず、コーラは無罪となり、弁護士は儲かるという素晴らしい提案である。

整理すると以下のようになる。
1.生命保険金一万ドルはコーラに支払われる。
2.損害保険金二万五千ドルはコーラに支払われる。
3.損害保険金のうち一万ドルは生命保険会社にバックされる。
4.損害保険金のうち一万ドルは弁護士の報酬となる。
5.残りの一万五千ドルはコーラに残る。

蛇足だが、本作の解説で「コーラには金が残らなかったが、有罪にならずに済んだ」としているものがあるが、ストーリーをきちんと見れば上記の計算が正しい。

本作の原作は1934年なので、一万ドルはかなりの金額と思われる。またそれ以上の損害保険金はちょっと多いかと思う。店と車で、これだけの額になるとは思えない。店は無傷状態なので、損害保険金が全額支払われるとは思えないが、不問にしておく。

ただし金額が原作通りかどうかは未確認。
 


■ 蛇足

最初にフランクがツイン・オークスに立ち寄ったときはフランクは他の車に乗せてもらってきた。そしてフランクはトイレに入り、用を足さずに待っていて、もう一人が出ていくのを確認してトイレから出る。そして「財布を持っていかれた」と言って無銭飲食をする。これはストーリー展開には無関係だが、フランクがどのような人物であるかを示すためだろう。

フランクを雇うときに、ニックはコーラに前任者の給料を確認する。自分では知らんのか?

生命保険会社は「裁判を取り下げる」が、本件は人が死亡しているので、このようなことが可能なのかは疑問である。警察は殺人であると判断すれば強制捜査し、検察は強制起訴するはずで、本件は生命保険会社が告訴したわけではないはず。

そして後ほどコーラはフランクと言い争いになったときに「私は無罪になった」と言っているが、裁判が取り下げられたのならば、そもそも裁判は行われておらず、無罪も有罪もないはず。

上記を読めばわかるように、二度の事件はコーラの言動がきっかけである。フランクの悪人ぶりもすごいが、コーラもかなりの悪人(笑)。こんな役のジェシカは好きだな(笑)。

上の紹介では最後は二人にとってハッピーエンドのように書いたが、そうではない。原作もハッピーエンドではないらしい。
 


■ 出演作

ジェシカ・ラング
(1981)郵便配達は二度ベルを鳴らす/The Postman Always Rings Twice
(1988)熱き愛に時は流れて/When I Fall in Love/Everybody's All-American
(1991)ケープ・フィアー/Cape Fear
(1992)ナイト・アンド・ザ・シティ/Night and the City
(1992)開拓/O Pioneers!
(1994)ブルースカイ/Blue Sky
(1997)シークレット-嵐の夜に/A Thousand Acres
(1998)沈黙のジェラシー/Hush
(2016)素敵な遺産相続/Wild Oats