■ Abilene Town
カンザス州アビリーン周辺には開拓民が農場を作っており、町には彼らための店ができていた。
一方アビリーンは南方からカウボウイが牛の群れを売りに来る町でもある。
たびたび二者の間にトラブルが発生していた。カウボウイたちは開拓民の集落を襲い、対抗して開拓者は有刺鉄線の柵を張った。するとカウボウイたちは牛を暴走させて柵を壊した。


製作年:1946、監督:エドウィン・L・マリン、脚本:ハロルド・シューメイト、原作:アーネスト・ヘイコックス


■ はじめに

ストーリーは「静かなる対決」とは全然違う(笑)。

◆ 登場人物(キャスト)
 ダン・ミッチェル(ランドルフ・スコット) アビリーン町保安官
 ブラーヴォ・トリンブル(エドガー・ブキャナン) ディキンソン郡保安官
 エド・ボールダー(ホワード・フリーマン) 商店主
 シェリー・ボールダー(ロンダ・フレミング) エドの娘
 チャーリー・フェア(リチャード・ヘイル) プライドの経営者
 リタ(アン・ドヴォラク) プライドのショーガール
 ヘンリー・ドライサー(ロイド・ブリッジス) 開拓民
 ハナベリー(エイド・ウォーラー) 開拓民
 


■ あらすじ

◆ アビリーンの状況

1870年、カンザス州アビリーン。カンザス州はほぼ長方形、東から三分の一、北から三分の一にある。

1862年にホームステッド法が施行された。それに伴って周辺には多数の開拓民(農業者)が入ってきた。伴ってアビリーンには商店などが増えた。いろいろな人が働いている。

またアビリーンには鉄道が通っており南部から牛を運んでくるルートとなっている。長い旅を終えたカウボウイたちに対応する場所がある。酒場、賭場などなど。言ってみれば若干怪しげな店もできている。

入ってきたカウボウイたちが地元民たちとトラブルを起こすことも無きにしも非ず。というかしょっちょうそのようなトラブルが発生している。

アビリーンの町はメインストリートを境にして片側は地元民・開拓民たちの店があり、反対側にはカウボウイたちの店が並んでいる。

◆ 人間関係

町には郡保安官ブラーヴォ・トリンブルとともに町保安官ダン・ミッチェルがいる。ブラーヴォはあまりやる気がなくチェスやトランプばかりやっている。

ダンは職務熱心な保安官で、上に示した町の両勢力、両エリアの和睦・発展のために奮闘している。しかしそれはあまりうまく行っていないようである。

プライドという酒場はカウボウイエリアにあり、酒や賭博やショーを提供している。ダンはプライドのショーガールのリタと相思相愛の中ではあるが、若干腐れ縁の雰囲気が漂っている。ダンはリタに「まともな職業」に変わるように言っている。二人は愛し合ってはいるが小競り合い状態が頻発している。

新たに開拓者たちの幌馬車が到着した。またカウボウイたちが牛を連れてきた。当然のようにトラブルが起こる。

ダンはそれを治めるために飛び込む。しかしブラーヴォは「私は郡の保安官」と傍観。

エドが町長をしていた時にダンを保安官に任命したという関係があるのだが、エドは「カウボウイたちもお客」と、こちらも動きたくないらしい。

◆ 放火事件

夜、農場の近くの森。馬に乗った一団がいる。リーダーが「松明に火をつけろ。先に馬小屋をやれ」と指示。

彼らは馬を走らせて、農場を次々に襲う。松明を投げて火をつける。たちまち猛火に包まれる。止まっていた開拓民の幌馬車も襲撃した。

多くのケガ人と死者が出た。

開拓民たちが町に来た。ケガをしている。ヘンリー・ドライサーは「カウボウイたちにやられた。戦うしかない」という。

話を聞いたブラーヴォは「カウボウイたちが犯人とは分からない」と言う。それは確かに正論ではあるが「自分は関わりたくない」という雰囲気が読み取れる。

ブラーヴォが「顔を見たか?」と聞くと開拓民の一人が「ジェット・ヤンガー」と答えた。

ダンはその場から離れてエドの店に行った。シェリーがいたので拳銃の弾丸を注文した。シェリーは「町の外で起きたことよ」と言うが「この町のものが黒幕だ」と言う。シェリーは弾丸を渡した。

この後、ブラーヴォとダンは荒野に出かけて行く。ダンはジェッド・ヤンガーを逮捕する。ダンは町保安官なので逮捕する権利がないのでブラーヴォに引き渡す。

町ではブラーヴォが逮捕したことになって、日頃のブラーヴォと違うのでみんなが感心する。

しかし後ほどジェッドは脱獄する。

◆ 有刺鉄線の柵

ヘンリーがエドの店に現れた。有刺鉄線を購入しようとする。しかしエドは売らない。

その後エドが去ったのでシェリーに頼む。シェリーも販売を渋る。「土地を守るために有刺鉄線が必要」「また人殺し?」「自分の土地を守るためだ。家族と静かに暮らしたい」と展開してシェリーは説得される。

その後にヘンリーは「僕はずっと君を見つめてきた」と告白する。

農場の周りに有刺鉄線の柵が完成した。

カウボウイたちは、これを見て牛の群れを暴走させて柵にぶつけた。柵はたちまち壊された。

牛の群れはさらに荒野を暴走した。開拓者たちが襲われた。木の陰、岩の陰に隠れた。それで多くの人が犠牲になった。

家屋も牛の群れに突撃されて壊された。七人の死者が出た。

ヘンリーもケガをしたが、町に来てダンに知らせた。ヘンリーが「仲間と川辺で落ち合う」と言うので「こちらに連れてこい」と言って、けが人収容のために他の者と一緒に行かせた。

ダンはエドの店に行った。「誰が有刺鉄線を売った?」。エドが否定する。

シェリー「自分が売った。ヘンリーを信じた。彼らは善良な人たちよ。あの人たちとなら平和に暮らしていける。悪いのはカウボウイたちよ」と興奮している。

◆ 襲撃に備える

ダンはすべての店を回って店を閉めさせた。従わないと拳銃を使って強制した。カウボウイたちの襲撃に備えるためである。補足。なぜカウボウイたちが襲撃してくるのかは論理がはっきりしないが、そのようなストーリーになっている。

ブライドも閉店させた。リタは「私の仕事を奪った。あなたの味方は誰もいない。でていかないと殺すわよ」と叫んだ。

みんなは「彼らには叶わない」と言うが、ダンは「人が殺されたんだ。この町だけではないカンザス州全体のことだ」と説得する。そして他の町に応援の依頼を出す。

■ 最後の対決

真っ暗な町にカウボウイたちが来た。彼らは道路の片側にあるカウボウイのためのエリアを襲撃した。

反対側の店は防備を固めた。

ドアを壊して入り店の中を壊して回った。いつまでも続いた。住民たちは道路の反対側から見ていた。誰も制止しようとしない。

他の町からの応援が到着した。

カウボウイたちは、カウボウイエリアを壊したので住民エリアを壊そうと通りに出てきた。

住民と応援の部隊も通りに出て来て対峙した。ダンが進み出て「向かい側には絶対に行かせない」と言い渡した。

人数を比べるとカウボウイたちよりも住民+応援部隊の方が圧倒的に多い。カウボウイたちに詰め寄った。

カウボウイたちは馬に乗って去っていった。
 


■ 補足

最後にヘンリーとシェリーはハッピーエンドとなる。

テキサス州にもアビリーンがある。本作のレヴューでテキサス州のアビリーンとしているもがあるが間違い。

「ホームステッド法」。アメリカ西部の未開発の土地を一区画160 エーカーを無償で払い下げるもの。これをきっかけに西部に開拓者たちが殺到した。

西部劇映画の中には農場と牧場の対立を描いたものが非常に多いが、背景にはホームステッド法がある。

牧畜を行っていた土地に開拓者が進出して対立が発生する。そもそも牧畜は、未開の誰のものとも分からない土地でやっていたわけで、法的には開拓者たちが正当である。

この時代の牧畜は放牧であって、自然に生えた草を勝手に牛に食べさせていた。後に牛を柵の中に入れて、人間が飼料を与える形式になった。

「赤い河/Red River(1948)」(モンゴメリー・クリフト、ジョン・ウェイン)ではテキサス州からアビリーンに牛の群れを連れてくる。
 


■ 出演作品

◆ ランドルフ・スコット
(1939)地獄への道/Jesse James
(1945)海賊キッド/Captain Kidd
(1952)西部のガンベルト/Carson City
(1962)昼下りの決斗/Ride the High Country
(1949)ウォーキング・ヒルズの黄金伝説/The Walking Hills

ロンダ・フレミング
(1945)白い恐怖/Spellbound
(1946)らせん階段/The Spiral Staircase
(1947)過去を逃れて/Out of the Past
(1949)腰抜け大捕物/The Great Lover
(1951)犯人を逃がすな/Cry Danger
(1957)OK牧場の決斗/Gunfight at the O.K. Corral
(1951)最后の砦/最後の砦/The Last Outpost
(1952)ゴールデンホークの復讐/The Golden Hawk
(1952)楽園の死闘/Hong Kong
(1953)楽園の決闘/TropicZone)
(1953)地獄の対決/Inferno
(1955)対決の一瞬/Tennessee's Partner
(1946)静かなる対決/Abilene Town
(1954)風雲のバビロン/バビロンの女王/The Queen Of Babylon
(1956)口紅殺人事件/While the City Sleeps

(1960)奴隷の叛乱/Revolt of the Slaves
(1965)甘い大陸/THE AMERICAN WIFE
(1950)メキシコの鷲と鷹/The Eagle and the Hawk
(1956)オドンゴ/odongo