唐突ですが、デリー空港と市内を結ぶ空港アクセス列車と、羽田空港アクセスの勝手に比較してみたいと思います。
<東京モノレール>
開業:1964年
区間:浜松町-羽田空港第2ターミナル
総延長:17.8㎞
所要時間:空港快速18分、区間快速21分、普通25分
最高速度:80㎞
運転頻度:朝ラッシュ時3分30秒間隔(普通のみ)、日中は毎時15本(平均4分間隔)
駅数、平均駅間距離:11駅、1.78㎞
軌道諸元:跨座式モノレール、直流750v、複線(浜松町駅のみ単線ホーム)、途中の昭和島駅に退避設備があり空港快速が普通を追い抜く。
沿線概要
浜松町駅は山手線、京浜東北線と接続しこれらの路線に乗り継ぐことで新橋、東京駅などへのアクセスも良い。
隣駅の天王洲アイルは埋め立て地の新興都市の中にあり駅自身もJTBビルというビルの中にある。また、倉庫街にも近くそうした企業への通勤需要、さらにお台場に至るりんかい線との乗換駅でもある。
大井競馬場はその名の通り公営競馬場の最寄り駅であるが、同時に近隣に団地もあり、近年はショッピングモールも出来た。さらにJR東海の新幹線の車庫やJR貨物の東京貨物ターミナルにも近くそうした施設への通勤需要もある。
流通センター駅はもその名の通り、倉庫・流通センターが多く、そうした企業への出勤・訪問客の利用が多い。
整備場、新整備場は空港関係に勤務する人の通勤需要がある。
羽田空港第1、2,3ターミナル駅は名前の通り羽田空港各旅客ターミナルのアクセス駅である。
<デリーエアポートメトロ>
開業:2011年(ただし高架橋に欠陥があり2012年に1年程運休)
区間:ニューデリー(国鉄とメトロイエローラインのニューデリー駅近く)-Dwarka Sector 21駅間(空港駅は終点の1駅手前)
総延長:22.7㎞
所要時間:19分
最高速度:時速135㎞ (表定速度71.6㎞)
運転頻度:終日15分間隔
駅数、平均駅間距離:6駅、4.5㎞
軌道諸元:交流2万5千ボルト(インド国鉄と同じ)架空電車線、軌間1435㎜(インド国鉄より狭い、メトロと同じ)、集団見合い式クロスシート、4両編成
デリー駅
沿線紹介
始発駅のニューデリー駅は国鉄駅に近いものの、ビジネスの中心地ではない。だが、メトロイエローラインとつながっているため利便性はいい。
次のShivaji Stadium駅は他路線接続もなく地味な印象
Dhaula Kuan駅は、メトロピンクラインと接続(と言ってもかなり離れたところにホームがあり乗り換えには20分以上かかる)、また並行するNH8(ナショナルハイウェイ8)の主要なバス停があり、日本企業が多いマネサール、ニムラナ、レワリをはじめ、ラジャスタン州の州都ジャイプールへの長距離バスも発着するバスターミナルでもある。
Delhi AeroCityは地下駅で、空港近くにある新興ビジネスセンターであり、高級ホテルなども立ち並ぶ場所に隣接している。日系商社の支店などもあり、ビジネスセンターへの通勤需要もになっている。
IGI Airport は空港の真下にある(IGI とはインディラ・ガンジー・インターナショナルの略)文字通り、空港のアクセス駅である。
終点のDwarka Sector21は、メトロブルーラインと接続し、また周辺も商業・住宅の再開発が進んでいる地域である。
デリーエアポートメトロ車内
考察
東京モノレールはもともと羽田空港へのアクセスのために作られたものであり、開業当初は浜松町から空港まで途中駅はなくノンストップであった。
しかし現在は駅間が2㎞未満で地下鉄や都市近郊私鉄並みである。しかし、ダイヤについては、都心部起点(浜松町)と羽田空港をダイレクトに結ぶ空港快速と途中の天王洲アイルや大井競馬など沿線需要に対応した普通、区間快速がある。つまり
1本の複線路線で空港アクセスのみならず沿線の通勤、通学、レジャー、と幅広い需要を取り込んでいる。
一方デリーエアポートメトロは、全線複線の路線という条件は同じだが、空港アクセスに特化している感が強い。駅間距離も4.5㎞と長く、運転間隔も普通列車のみ15分間隔(普通と言っても1駅が長いので快速列車のような感じである)のみ、途中駅Dhaula Kuan駅など、上手く整備すればバスターミナルとメトロの結節ターミナルになりそうだが、そんな気配はない。接続しているメトロ路線も、線路は交差しているのにとてつもなく両方のホームが離れている。
AeroCity駅は確かに新興都市商業地に隣接しており、ホテルや商業施設に勤務する人の通勤にも使われるが、中心からはやや離れており、アクセス歩道もなく街の外れにある印象である。
デリーエアポートメトロは市内-空港間を直結することに重点を置いており、地域輸送や他の路線、交通機関との連携に消極的である。
という感じがする。
これは、同じく羽田空港へ乗り入れる京急、成田空港に乗り入れる京成やJR成田線、関空に乗り入れる南海とJR阪和線、セントレアに乗り入れる名鉄常滑線にも言えるが、日本は既存の鉄道路線と後からできた空港を結んだ例が多く、それらの路線は既存の沿線需要に加え空港アクセス機能が追加されたかたちである。
当初から空港アクセスを目的に作られた東京モノレールは、デリーエアポートメトロと背景が似ているが、それでも沿線の開発に対応する形で沿線需要を取り込んできた。
デリーエアポートメトロについては、現状は空港アクセス以外に関心が無いようであるが、複線電化の線路がもつキャパシティは大きい。新駅設置、緩急接続設備、他路線との接続改善などで、多くの需要を取り込み、沿線の発展にも寄与できると思う。
デリーに限らず、エアポートアクセス路線を持つ都市はぜひ検討してほしい。