昔は,見習い大工さんが、
独り立ちをする卒業試験に、
「 四方転び」の踏み台を、
作らされたそうです。
昭和時代、どこの家庭にもあった、
高さ30~50センチぐらいの、
木製の踏み台。
柱の四隅が、ピラミッドの様に、
中央に向かって傾斜し、
安定した形状を、「四方転び」と言います。
板で組み込んだ、箱形をした物や、
側面を丸くクリ抜いた、
くず入れとして使える物や、
引き出し付きの踏み台もありますが、
ほぞ接ぎや、組み接ぎなど、大工仕事の、
基本的な要素が凝縮されているので、
相当な技術力がないと出来ない代物です。
その踏み台の出来ばえで、
その家を建てた、大工さんの腕前が判るとも、
四方に広がった踏み台が、
万代まで「すえ広がる」とも言われ、
昔は、新築祝いのサービスとして、
家主にプレゼントしたそうです。
1家に1台、あると重宝しますし、
日曜大工するなら、
一度はチャレンジしてみたい!。
さて、大工道具の代表格と言えば、
金槌(カナヅチ)。
この金槌は、トンカチ、ハンマー、
玄翁(げんのう)とも呼ばれ、
本来玄翁とは、叩く頭の両端に、とがった部分のないのが特徴で、
石を割ったり、ノミを叩いたりするのに用います。
この玄翁という名前は、
「玄翁和尚」という人名が、
語源になっているそうです。
その昔、不思議な妖術を操って、悪行三昧をくりかえし、
中国やインドなど、アジアを又にかけて
次々と国を滅ばしていった「白面金毛九尾の狐」という、
九つの尾を持つ狐の妖怪がおりました。
中国で疫病をはやらした後、
日本にもやって来て、
玉藻の前という絶世の美女に化け、
当時の支配者、日本の朝廷に取り入り、
翻弄させ、日本を滅亡させようとしました。
ところが、高名な陰陽師に、
正体や企みが見破られ、
那須野が原へと逃れたところ、
魔力を持つ矢に射抜かれて、
退治されました。
しかし、一旦、討ち果たされ、
力を失ったかと思われた妖怪が、
「殺生石」という猛毒を発する毒石に、
変化(へんげ)し、飛ぶ鳥や、
獣など、近づくもの皆、殺傷して、
近隣の住人を悩ませていました。
この事態を納めようと、
「玄翁和尚」という人物が名乗りをあげ、
殺生石を封印せんが為、
金槌を使い毒石を砕いた事から、
この金槌を「玄翁」という様になったそうです。
このように海外でも、工具や日用品が、
宗教と強く関わっているケースがあります。
「スレッジ・ハンマー」というカクテルは、
ガ~ンとくる衝撃的な口当たりから、
両手で持って振り下ろす、
大きなハンマーのインパクトに肖り、
邪気を払う飲み物として親しまれています。