パパ・パパゲーノ -103ページ目

キャッと叫んでろくろっ首

 時と所を選ばずに、かつての恥の記憶が突然よみがえることはありませんか?


 ウワッと声が出たり、手で振り払おうとしたりします。


 言わずもがなのことを言ってしまって、思わず人を傷つけたり。卑しい気持で自分のものでもないのに手をだしたり。できないと言うのが悔しくて、できると言ってしまって、さあやってみろ、と言われはしないか、ビクビクしたり。具体的に、圧倒的に、記憶の魔物が目の前に襲来します。


 「実際にどんなのだい?」と聞かれても、忘れたいほどのことだから、今さら思い出せない、思い出したくもない、というようなことなのです。書いていて、我ながらまだるっこしいことです。


 こういう状況のことだと思いますが、吉行淳之介が「キャッと叫んでろくろっ首」と呼んでいました。感じは出ています。身の置きどころを失って、狼狽してしまう様子を表現したものでしょう。


 よい記憶、幸福な気持、などは、襲ってくるということがありません。マドレーヌを食べると記憶がまざまざとよみがえる、と書いた人がいましたね(じつはその作品は未読ですが)。食べ物とか、メロディーとか、温泉の香りとか、よいほうの記憶は、具体的な物件とともによみがえってくるもののようです。


 「ろくろっ首」のほうは、いきなりやってくるので油断がなりません。昨日もそれがやってきたはずですが、なんであったか、もう忘れてしまいました。年のせいばかりでもないと思いたい。

申される

 敬語の本にはときどき翻弄されることがあります。分類が細かすぎて理解がしにくいもの。書いてあることが、素人の私が見てさえ矛盾しているもの、などなど。


 後者の最近の例。《「とんでもございません」はとんでもない誤用》、と始めに言っておきながら、後のほうで、「課長、大変申し訳ございません」というのが正しい謝罪だと書く。おそろしく売れている本だそうですが、おかしいと思います。


 「とんでもない(ことでございます)」が正しいのなら、「申し訳ない(ことでございます)」でなければ首尾整わないでしょう。私は、こう言うべし、という意見です。言葉に関しては人はおそろしく保守的なものだとは、前にも書いた記憶があります。


 「申される」という言い方は、そう多くはないにしても、見かける言い方です。おかしいという感じがしない。しかし、謙譲語の「申す」(言う)に、尊敬語の「(ら)れる」がついていて、どう説明するのかなあと思っていました。ようやく、納得できる説明に出会いました。


 萩野貞樹『みなさんこれが敬語ですよ。』(PHP文庫、680円)がそれです。この先生の本は前にも読みましたが、人のワルクチを言うときにストレートすぎるところがあって、ちょっと敬遠していました。


 官房長官が首相に申された件は私も聞き及んでおります。


という例文が、「申す」を縷々説明した後になって出てきます。


 申す=下位の者が上位の人に言う(身分の上下に限ることではない)

 (ら)れる:それを言う人に対して、話し手が敬意を表わしている場合に使う


 もちろん、同じことを他の言い方でもできるわけですが、気になっていた表現にスッキリした説明があたえられたので、私は満足しています。今でも書店で入手できますから、興味のある方はどうぞ。

年齢差

 小柳ルミ子は、こんど石橋正高という人と結婚するようですね。27歳年下。俳優・石橋正次の息子だったと思う。前のご亭主、大澄賢也という人もずいぶん年が離れていました。


 漫才の内海桂子師匠も、20いくつ年下の男から是非にと望まれて、かなりの年齢になってから結婚しました。


 「人の恋路を邪魔する奴は馬にけられて死ねばいい」というくらいですから、どなたがどなたと一緒になっても、私の容喙するところでは、そもそもありえません。おもしろいなあ、と思って見ているばかりです。


 江馬修(えま・なかし,1889-1975)という作家がいました。「綴方教室」で名を馳せた豊田正子という作家と夫婦でした。そこへ、50歳も年下の女子大生と恋に落ちて、というか、その女子大生に惚れられて、ついに結婚しましたね。そのことを書いた本を読んだことがあります。もちろん別人の作品です。


 「愛があれば年の差なんて」という言い回しがありました。こういう例を聞くにつけ、そういうものかしら、と思うばかりであります。

ヘッドホン

 iPod という仕掛けは、じつに驚くべきものです。歩いても走っても音がぶれるということがない。耳にイヤホンを差し込むようにして聞いていますが、電車の中などでは、外の音が大きくて音量を上げないと聞こえないことになります。耳にいいわけがない。案の定、遠くなっていた耳がいっそう遠くなってしまいました。


 耳をすっぽり覆うようなヘッドホンをしている人をよく見かけるので、そろそろああいうものが必要だと感じていた矢先です。『週刊朝日』の記事で、BOSEクワイエット・コンフォートというもののあることを知りました。この写真ページは、しゃれて Goods Bless You! という連載です。


 飛行機のパイロットたちも使う、ノイズキャンセリングという機能を持ったヘッドホンなのだそうです。なんと4万7千円もする。補聴器をつけるのが先に延びることを祈って、エイヤッと注文を出しました。今では、何でもネット画面で注文できてしまうんですね。


 昨日それが届きました。着用して、電車に乗ってみました。機械音が見事にシャットアウトされます。音楽もボリュームをあまり上げずに聞くことができる。


 安全のために人声は排除しないようになっているのだとか。バッテリーを充電して、スイッチを入れる仕組みです。何らかの電波を発しているはずですが、このヘッドホンは、飛行機に持ち込むことができるらしい。早く乗ってみたい。


 


 

蕩児帰る

 ブラックアウトしてしまったパソコンが、24日の夜、家を出ていきましたが、26日午後には帰宅しました。電光石火の処置をほどこしてくれたデル・サポートセンターに感謝。


 LCD(Liquid Crystal Display)すなわち、液晶画面のバックライトというものが、光っていなかったもののようです。他は、正常に作動しているので、かくも短時間の退院ということになりました。


 自家用のパソコンは、このDELLが3台目です。最初はシャープの Mebius 33万円だったか、次は東芝 Dynabook 24万円くらい、いまの Inspiron は、17万円。ホップ・ステップ・ジャンプの感じですが、最安値が最高の機能です。


 この世界は、ナントカの法則というそうですが、ナントカが思い出せません、1年で様相が一変するくらいの進歩のスピードなのだそうです。それを実感しています。